少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
今こそルミナリアの王の都のその大空を、わずか10歳の1人の少女が戦いの決戦の前と向けて力強く舞い上がっていた。
それは浮き上がるというものではなく、まさに力強い大鷲が敵に向けて爪を突き立てるべく大空を羽ばたくようなものだ。
「おお? 飛んだ?」
「団長が飛んだぞ!」
「支援攻撃を怠るな!」
「頭上を見ろ! 敵の追加攻撃だ!」
「鐘楼塔と大聖堂の上層階を狙え!」
空へと舞い上がったカリナを追い払うべく、魔族の魔道士や弓兵が攻撃を試みる。アルカナヴァンガードの諸兵は、これを阻止してカリナを守るために、魔法やら、銃やら、弓などで果敢に支援攻撃を行った。
魔法の光弾が、矢が、弾丸が――激しく飛び交う戦場を、カリナは地面を駆けて舞い上がっていく。そして、中央大聖堂の屋根の上を飛び越し、さらに大鐘楼塔の頂きの高さにまで高度を稼ぐ。そしてその時、カリナの視界の中に見えてきたのは教会の鐘の代わりに敷設された赤黒く光る小型サイズの魔法陣だ。
それを見てエアリスが叫んだ。
『あれは攻撃用魔法陣だ!』
ブレイズも叫ぶ。
『魔族の軍隊が得意とする無差別の殺戮用か!』
カリナもその危険性は即座にわかった。
「強力な呪力で広い範囲を一気に呪殺するためのものだわ!」
『ああ、あんなものここで炸裂させられたらとんでもない被害が出る! 対策はあるかエアリス?!』
カリナとともに大空に舞い上がっている風魔導士のエアリスは対策を即座に提案した。
『魔法陣を魔道的に停止させてる余裕はない! やはりここは魔法陣そのものを破壊するのが最短だ』
カリナも攻撃手段を決めた。
「ならば風の斬撃で塔ごと一気に切り落とす!」
『よし!』
『魔導・風斬撃!』
エアリスがカリナの剣に風の斬撃の力を与える。
そして飛翔する力を使い一直線に塔の構造そのものを切り落とそうとする。すれ違いざまに一気に切り落とそうとしたその時だ。
『危ない!』
ブレイズの叫びで慌てて急激に高度を上げて回避する。
『姿が見えにくいが誰かがいる!』
「あれは――」
接近したことでカリナも何が潜んでいるのかが、その不気味な気配でよくわかった。
「インビジブルワイバーン! 自らの周囲の光を歪曲させて姿を消すことを覚えたワイバーンの特殊進化系だわ」
『そんなものをどうやってここに持ってきたんだ?!』
「分かりません、ですが対策が必要です!」
するとエアリスがさらに魔法を駆動させた。
『カリナ、地上に声が届くように音声伝達の魔法をかけた』
「ありがとうございます」
カリナは地上のアルカナヴァンガードに向けて大声で叫んだ。
「魔導士部隊! 大鐘楼塔の頂に向けて、視覚系魔法の強制解除スペルを連携発動させてください!」
「分かりました!」
「詠唱急げ!」
カリナの声を聞いて地上に展開する魔導士部隊は一斉に詠唱を唱えてある魔法発動した。
――視覚妨害強制解除魔法――
目くらましや、視覚妨害のための魔法に対して、自然の光を強制的に通常の状態に戻そうとするものである。
普通ならばそれだけの高難易度魔法、呪文を詠唱するだけでもかなりの時間がかかる。それを複数の魔導士の連携行動で長時間の魔法の詠唱を一気に圧縮することができるのだ。
そして地上の詠唱の声が完了した時、軽い電流のほとばしりのような光が空間を走ったかと思うと、その特別なワイバーンのもつ魔法は消え、その姿は一気に現れた。
大鐘楼塔の頂きの、本来であれば鐘が据えられているはずの場所に一羽のワイバーンが収まっていた。そして頭部と両翼の翼を塔の構造物からはみ出させていたのである。
「あんなところに!」
エアリスが注意を促した。
『カリナ、問題の魔法陣はあのワイバーンの両足の爪の下だ。ワイバーンを排除しないとどうにもならないぞ』
「ならば一気呵成に斬り伏せます!」
そう叫んでカリナは聖剣レギオンブレイドを振りかぶりながら、ワイバーンへと突進をかけた。
「行きます!」
そしてすれ違い間際に剣を振り抜いて切りつけた。
――ズシャッ!――
『切り捨てた手応えは確かにあった。だが深さが浅い。大ダメージを与えるには至ってない!』
ブレイズが叫べば、カリナは悔しそうに歯噛みする。
「なんで……」
その理由をエアリスは見抜いていた。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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