少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
「ライザック准将閣下、それでは我々は帰還させていただきます」
「うむ、ご苦労であった」
戦闘が終結、事後処理をライザック准将と王都警備の国軍部隊に託して、カリナたちアルカナヴァンガードは帰投する。
ちなみにカリナたち(おもにカリナが)ぶっ壊した、中央大聖堂の建物と敷地の後始末は、貴族諸侯の私設軍や地域の自警部隊が担当することとなる。
「なんで俺達がこんな後始末を――」
「言うな、戦いの美味しいところはあの10歳のガキが持ってったからな」
「仕事があるだけマシと思え」
「へいへい……」
その際にド派手にぶっ壊したことに対して愚痴が漏れたのは御愛嬌である。
そして、王都郊外のアルカナヴァンガードの駐屯基地に戻ると、ミリアが率いていた第二陣部隊も、先行して無事に帰投していた。
「カリナ! おつかれ様!」
「ミリアもご苦労さまでした! 守備はどうでした?」
「はい、七王国の諸侯の皆様の尽力もあって、こちらの被害無く完璧な守りで戦いを終えました!」
「良かった! 詳細な報告は後ほど」
「はい!」
そして、駐屯基地の練兵場に帰投部隊全員が集まり点呼が行われる。負傷者の姿もあり、重症者はそのまま軍病院へと運ばれることとなる。
それらの状況を、アルカナヴァンガード総本部の総務部門の要員が点呼していく。
エルリックたちとともにカリナは不安げな表情でそれを見守る。
帰参した第一陣部隊と、第二陣部隊――、それぞれの損失と消耗が報告される。総本部の総務部門の人員から女性兵士が現れてカリナたちに報告された。
「報告します。総数2117名、うち、負傷者88名、損失・未帰還0――、以上となります」
損失0――、それを聞かされた時カリナの表情に安堵が浮かんだ。
「良かった! 負傷者には十分な治療と支援を行って下さい! まずは全員で休息を!」
「はい、承知しました」
損失0――つまり自軍の死亡者は居なかったと言うことだ。エルリックが労う。
「良かったなカリナ、全員が無事で」
「はい!」
勝利したことよりも、全員が無事であったことのほうが、カリナには何よりも重かったのである。ソフィアが優しく語りかける。
「カリナ、殉職者が出るのすごく嫌がるもんね」
「はい――、甘いと言われるけど誰も死なないほうが一番いいですから」
全員が無事だったということを心から喜ぶ姿は、到底軍人らしくはない。だが、そこに苦楽の表情を浮かべる彼女だからこそ、アルカナヴァンガードの隊員たちがカリナを見つめる姿は底なしに優しいのだ。
「団長、今回の負傷者は第二陣で魔族軍と正面衝突した重装部隊と歩兵部隊が中心です。ローラン卿、アルトゥール卿、そして、セリアス卿のご教導で勝利することができました」
隊員たちがカリナに話しかけてくる。
「我々も、七王国の諸侯のご指導を得て学ぶところがありました」
「次の戦いに、活かそうと思います」
「ご苦労さまです! 戦いで得ることがあったなら何よりです! お互い精進してまいりましょう!」
「はっ!」
そして、あらためてカリナは総勢揃ったアルカナヴァンガードの隊員たちに向けて号令をかけたのである。
「総員に告げます! 我々は無事、勝利しました! ですがこれに甘んじること無く、次に備えます! それでは各部隊にて事後処理の後、休息に入ります!」
そして胸に大きく息を吸い込んでカリナは叫んだ。
「作戦終了! これにて解散とします!」
「はっ!」
ようやく訪れた、休息の時である。