少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
祝勝会始まる ―カリナを囲む人の輪―
戦いの後、七王国の諸侯たちはそれぞれの国の在邦施設へと戻っていった。そして、体を休めて後日改めてアルカナヴァンガードの宿舎へと訪れたのである。
前回は言わば、アルカナヴァンガードの視察だったが、今度はねぎらいの祝勝会である。
とは言え、アルカナヴァンガードの駐屯基地で行われるので野天での食事会という体裁ではあるが、アルカナヴァンガードをあげての歓迎に、七王国の諸侯も喜んで応じてくれたのであった。
そして、七人の諸侯とその側近の方たちが訪れ、カリナが彼らは出迎える。
アルカナヴァンガードの駐屯基地の練兵場に集まり宴が始まる。
料理や肉の匂いが立ち込める中、全員に酒杯がまわされる。もちろん、カリナは子供なので、子供用に薄めたワインを手にしていた。
セリアス卿が笑顔で挨拶を述べる。
「諸君! 此度の戦い、ご苦労であった! 我々も君たちを率いての戦いは実に刺激的だった! カリナ卿が率いる本隊による大聖堂占領魔族の攻略も無事成功し、王都数万人の命が救われたのは実にめでたいことだ! 国王陛下も殊の外お慶びだ! ここに祝杯を上げて祝おうと思う!」
そして、セリアスが酒杯を掲げる。
「乾杯!」
「乾杯!」
こうして、祝勝会は始まったのである。
宴が進む中で、七王国の諸侯はカリナの元へと集まっていた。
先に口を開いたのはモントクラウドのヘレナである。
「それにしても、予想外のタイミングで魔王軍が攻めてきたわね」
アクアリスのオーシアが頷く。
「うむ、あれだけの規模で人間に偽装しての大量潜入は前例がない。これはルミナリアだけの問題ではないな」
ガルガンダインのローランが同意する。
「左様――、敵側があらたな魔導技術を生み出したか、なにか国の垣根を超えた魔族支援の存在があるか――、新たな問題が考えられる」
ヴァルハイトのアルトゥールも頷いていた。
「事は急を要する。各国において対策を検討して情報の共有を図ろう」
エーテルノヴァのシルヴィアも同意していた。
「なれば、我々だけでも可能な限り、即時連絡が可能な手段を設けましょう」
グレインリーフのレイモンドが問いかけた。
「アルカナヴァンガードを仲介拠点にしてか?」
「えぇ、諸国の政治的な壁を超えるには、諸国連帯で発足したアルカナヴァンガードを経るのが妥当でしょう。すぐれた魔導技術もお持ちです。さしずめ〝魔導通信〟と呼べるような技術となるでしょう」
そこに会話を冷静に聞いていたカリナが声を上げた。
「我々が皆様の協力関係の橋渡しとなるのであれば、ぜひ、協力させて下さい」
魔導について差配しているソフィアも同異した。
「魔導通信技術については、いずれアルカナヴァンガードで大規模運用を検討していた技術があります。それをエーテルノヴァや諸国の魔導研究機関と連携で普及させませんか?」
その問いかけにセリアスも頷いた。
「良かろう、わたしからもルミナリアの魔導アカデミーに打診しよう」
レイモンドも同意見だ。
「そうだな――特に、アルカナヴァンガードの独立性を保つためには、諸国政府や軍上層部の支配力とは別ラインの連絡手段がある方がいい」
レイモンドは軍師だ。そして策士にして、独特の情報網を膨大に持っている。老獪で抜け目のないちょいワル親父――、曲者軍師の噂は健在である。
ヘレナも頷く。
「では、決まりね」
エルリックも同意して取りまとめる。
「では、早期に話を取りまとめるということで」
「意義なし」
「同じく」
こうして、アルカナヴァンガードへの水面下での支援はより広がることとなったのである。