少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
話題はさらに今回の任務のそれぞれの戦闘状況の評価へと進む。言葉の口火を切ったのはやっぱりレイモンド将軍だった。
「それにしても――まさか、事件解決のために大聖堂の塔をぶった切るとは思わなかったな」
オーシアが食いついた。
「あぁ、それか――、話を聞いた時はワシも驚いたぞ!」
アルトゥールも同意する。
「英霊の力を得ていたとは言え、あの大聖堂の構造物を一刀両断――、剣の太刀筋の見極めができる技量がなければ通常は無理ですな」
ローランも頷いた。
「そうだな。そして彼女はそれをやった。実に見事だ――」
七王国諸侯の中でも武闘派3人――オーシア、ローラン、アルトゥール――3人の視線をうけるカリナだったが、ちょうど料理のマッシュポテトを口にしていたときであった。
「はぇ?」
自分がなんで注目されているのか解っていない様子である。
レイモンドはそんなカリナの反応に苦笑する。
「そこで御本尊様が話題を理解できてないのは御愛嬌だな」
「そうだな」
カリナはようやくそこで自分が注目されているのだと理解した。ポテトを飲み込むと、諸侯に向き合う。
「ご評価いただき、恐縮です」
照れ隠しも交えてカリナはきちんと謝意を口にする。そこにレイモンドが言った。
「今回の戦い、王都の市民のあいだでは相当話題になっていると言うぜ?」
モントクラウドのヘレナが言った。
「吟遊詩人たちの間ではすでにカリナを称える唄が広がっているそうだ」
「え? そうなんですか?」
「当然だろう? 空を華麗に舞って、英霊とともに魔族を見事に打倒した美少女剣士――、それが10歳の幼女となれば、興味を惹かないわけがない」
アクアリスのオーシアも頷いていた。
「当面は街の話題になるであろうな。だが、唄に読まれるということは、それだけ人々が好意を抱いている証、胸を張り給え」
「はい!」
ミリアが言う。
「そう言えば、カリナが吟遊詩人の歌に読まれるって初めてかもしれないわね」
エルリックも同意する。
「戦いにて名を挙げる者たちには、唄に読まれるということはある種の誉れだからな。これから戦歴に応じて、もっとたくさんの唄が読まれるだろう」
その言葉にカリナは笑顔をはじけさせて頷く。
「それは――楽しみです!」
そのさまはまさに10歳の年相応の少女だったのである。
宴の時間は流れて日が傾き始めてお開きの時間になりかける。
七王国の諸侯も帰り支度を始めていた。そしてそれぞれにカリナへと言葉を残していくのだった。
エーテルノヴァのシルビアが言う。
「あなたの聖剣の使いこなしの技、実に見事だわ。でもこれで慢心せずこれからも自らを磨きなさい」
「はい! これからも精進を続けます」
ガルガンダインのローランと、ヴァルハイトのアルトゥール、武道派の両翼の両候がそれぞれにカリナに語りかけた。
まずはローラン――
「聖剣の巫女殿、この魔法剣士騎士団が始まって4ヶ月、組織としては形が見えてきただろう。今回の勝利で実践の機会もさらに増えるはずだ。その機会を生かして団をさらに成長させられるかは、君次第だ」
それにアルトゥールが言葉を添えた。
「月並みな言葉だが君ならできる。古人いわく〝精進を重ねるものに勝利は必ず訪れる〟――君さえよければお相手をしよう」
2人のその言葉にカリナは気色ばんで、嬉しそうに声を返した。
「ありがとうございます! 私はまだ10歳の子供です。これから学ぶこともたくさんあると思います。お2人の存在に追いつけるようにこれからも努力と精進を重ねていこうと思います」
そこにアルトゥールがカリナの頭を撫でながら言う。
「頑張れよ」
「はい!」