少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
さらに、アクアリスのオーシアと、モントクラウドのヘレナが言った。
「4ヶ月前、そなたと会った時は、本当にこの子に団長が務まるのだろうか? と思ったものだ――」
「あなたのような可愛らしい少女が戦場に関わるということ自体に、我々は心を痛めていたものです」
だがオーシアはしみじみと語る。
「だがそれは杞憂だったな」
「ええ、本当に強い心をお持ちですから」
だが2人は膝を折って目線をカリナの高さにまで落とした。
そしてオーシアはカリナの方をそっと叩き、ヘレナはカリナの手をそっと握った。
「だが無理はするなよ? 気持ちが強いやつはつい困りごとを自分で抱え込む。お前はまだ10歳――、これからたくさんのことを学んで成長していくんだ」
「もしどうしようもならないことがあればいつでも言いなさい。私たちはあなたの力になるから」
2人の言葉にカリナは目に涙をにじませて笑顔で答えた。
「私は両親と死に別れて1人で生きてきました。ですがここにたどり着いて、たくさんの人に導かれてこうして生きています。本当にありがとうございます」
カリナは親がいない。魔王軍の侵略に巻き込まれて2人とも命を落としているからだ。
筆舌に尽くしがたい苦難を乗り越えて、今日この場所へとたどり着いているのだ。
そんなカリナをヘレナが優しく抱きしめた。
「これからも気をつけてね」
「はい!」
カリナは2人を見送ったのだった。
最後に残ったのがルミナリアのセリアスと、グレインリーフのレイモンドである。
まずはセリアスがカリナに今後のことについて告げる。
「聖剣の巫女どの、この度の活躍で国王陛下が褒章してくださると仰せだ」
「え? 本当ですか?」
驚くカリナにレイモンドが言った。
「驚くことじゃない。軍人や戦士団の戦士みたいなのは、戦いで大きな勝利をあげれば褒章やら勲章やら勲章やら、何かにつけて送られてくるものだからな」
その言葉にカリナ疑問の声をあげた。
「じゃあつまり、これからも戦って勝利を上げればまた褒めてもらえるということですか」
レイモンドがニヤリと笑う。
「カリナの孃ちゃんなら、あっという間にたくさん並ぶだろうぜ」
「そうだな。貴公の優れた剣の技、そして練度の高いこの魔法剣士騎士団――、この両者が両輪となって力強く未来へと進んでいくであろう」
「まあ困ったことがあれば、何でも言ってくれ。すぐに駆けつけるからよ」
「うむ。貴公ならこれからまだまだ伸びる。お互い精進しながらともに歩いて行こう」
そうして2人はカリナの手を力強く握った。
「2人のお話、胸に刻みました。アルカナヴァンガードの団長として、これからも自らを鍛えてまいります」
「うむ、おりに触れてまたお会いするとしよう」
セリアスが優しく言葉をかける。そしてレイモンド――、
「くれぐれも寝坊には気をつけてな」
いたずらっぽい笑みでレイモンドが語る。思わぬ言葉にカリナは顔を真っ赤にした。
「あの……、えっと……、気をつけます」
年相応に恥ずかしがるカリナのその頭をレイモンドは優しく撫でるのだった。
そして最後までカリナは彼らを、その馬車が走り去るまで路上に佇んで見送った。