少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
エルリックたちがカリナのそばに並びたち声をかけた。
「ご苦労だったなカリナ」
「ただの歓待式だったのが、面倒なことになっちゃったわね」
「でも無事に問題を解決できたのですから」
「まあそれはそうだな」
そしてエルリックはカリナを抱き上げる。
「まずはゆっくり休め。疲れただろう?」
「はいまずはお風呂に入ってゆっくりしたいです」
「じゃあ早速、湯あみの準備をするわね」
「ありがとうソフィア!」
エルリックに抱き上げられ、ソフィアに頭を撫でられて嬉しそうにカリナは微笑んでいた。
ミリアもその傍らに頼んでカリナに声をかけた。
「それじゃお風呂上がりに何か美味しいもの用意しますね」
「うん!」
笑顔をはじけさせるカリナ――、彼女は優しい仲間たちに囲まれて今日もこの魔法剣士騎士団アルカナヴァンガードの中で日々を生きていくのである。
§
そして、すっかり日が暮れて夜――
お風呂に入り、夕食をとり、のんびりとした時間を過ごす。
魔法剣士衣装は脱いで、シュミーズ姿にガウンローブを着ているくつろぎ姿だ。
お風呂はソフィアと一緒に入り、夕食はエルリックやミリアも交えて、4人での夕食となった。
デザートにはミリアが作ってくれたミルクプディングが出てきた。
戦いがないところでは、彼らはまさに〝家族〟だったのだ。
湯を浴びて、食事をして、語らい合って――、お腹も心もいっぱいになった頃――
カリナはうつらうつらと船を漕ぎ始めた。
「そろそろかしら?」とミリア、
「そうだな」とエルリック、
「それじゃ、寝かせるわね」とソフィア、
ソフィアが抱き上げてベッドに運ぶ。毎日のように行われている光景だ。
そして、寝間着のシュミーズ姿でベッドに寝せる。その枕元には聖剣のレギオンブレイドが横たえられる。
カリナが寝付いた事を見届けたエリュシオが3人に語りかける。
『みなさま、お疲れ様でした』
「エリュシオもご苦労さま」
『はい、ここから先はお任せ下さい』
「よろしくね」
寝付いた後のカリナを見守るのは聖剣に宿る精霊のエリュシオの役目だった。
そして、部屋の明かりが落とされて、寝室の扉が閉められる。あとにはカリナとエリュシオだけである。
こうして、わずか10歳の勇者の少女の日々は過ぎる。
『お疲れ様です。カリナ、今はゆっくりとおやすみなさい』
カリナはすっかりと寝具の中で寝息を立てている。
「……すぅ……すぅ」
寝付いた姿はどこにでも居る普通の少女である。
だが、カリナははじめから勇者だったわけではない。
『6歳であなたと出会って、今日まで来ました。これからもあなたと生きてまいりましょう』
エリュシオは優しく見守り続ける。
そして、思い出す。カリナがエリュシオと出会う前、
まだ、勇者としてはおろか、剣士としても目覚めていない頃、
両親と死に別れて、1人で放浪していた頃、
そして、孤児院――、軍事国家の教練施設――と、過酷な道を歩き続けてきた。
カリナはずっと1人だった。
ここから先は、時を4年ほど巻き戻して、カリナがひとりで歩み始めた時へと向かう。
剣を持たず、聖剣も知らず、精霊に導きもなかった頃だ。
カリナ・ウィングス――6歳――
のちに聖剣の巫女と呼ばれることとなる剣士少女の歩みはそこから始まるのである。