聖剣に選ばれた孤児の少女は、10歳で騎士団長になる ―少女と精霊の聖剣十年戦記― 作:美風慶伍
突き出された剣の柄を恐る恐る握る。
(お願いです、陰性になって下さい)
そう心から願う。目を閉じて判定の声を待つ。
「陽性・特別加算」
無情だった。カリナは陽性と判断された。
「え? 特別加算って?」
カリナは何を言われたのか皆目見当がつかない。対して、兵隊たちを率いていた分隊長がニヤリと笑う。
「特別加算か! 素晴らしいな! 上玉を引き当てたか!」
「稀に見る反応光の輝きです。鍛えれば相当に優秀な素材に仕上がるでしょう」
「上層部に報告だ! 報奨金が出るぞ!」
それはもはや人間の会話ではない。人間を品物のように扱う外道の会話である。
「何という事を!」
「神も恐れぬ所業!」
さすがのシスターたちも言わずにはいられなかった。だが、厚顔無恥な人狩り兵士たちにはなんの痛痒も与えなかった。
意気揚々と分隊長が問う。
「結果、陽性は何人だ?」
「特別加算1人に、単純陽性が2人です」
「合計3人、まぁまぁだな。連れて行け」
「はっ」
兵隊たちが集まり〝陽性〟と指定された子供達を引き立てていく。
「何をするんですか! 子どもたちを返して下さい!」
「やかましい!」
子供達を取り返そうとするシスターを兵は槍の竿で殴打した兵士の一人が金貨の詰まった袋を投げ捨てる。
「ガキどもの代金だ! 食い物でも買ってやれ!」
有無を言わさぬ態度だった。何か叫びをあげれば攻撃を加えられるのは間違いないだろう。恐怖に怯えながら兵員輸送の馬車に乗せられる。カリナを含む3人の子どもたちはもはや恐怖に飲まれて震えるだけである。その連れ去られる3人の1人が耐え切れずに救いを求めた。
「先生! 助けて!」
「やかましい!」
兵は容赦なくその子供を殴りつける。そこに一切の優しさも慈悲もない。兵たちは武器を持っている。戦闘慣れしている。抗っても勝てない、すでに1人怪我をさせられている。諦めるしか無いと誰もが沈黙するしか無かった。だが――
「やめろぉおおおおっ!!」
1人だけ声を上げた男が居た――、そう、ジェイクである。
「そいつらを返せぇ!」
カリナたち3人を取り返そうと馬車へと駆け出した。
「どうします? 見せしめに殺りますか?」
「まぁまて」
馬車は走らずジェイクを待ち構えた。中から降りてきたのは兵たちをまとめる分隊長格の兵士だ。剣は抜かず、足元から肩までの長さの太い棍棒を手に持っている。大人と子ども、手練の兵士と素人の少年、どう見ても戦いにはならない。カリナがその不利を悟っておもわず叫んだ。
「ジェイク! だめ!」
「待ってろ! カリナ!」
分隊長に飛びかかり殴ろうとするジェイク。だが――
――ヴオッ!――
分隊長が手にしている棍棒が唸りを上げた。そして、容赦ない力強さでジェイクの頬を横薙ぎに殴り倒す。
――ゴッ!――
鈍い音が響いてふっとばされる。だが、分隊長は容赦しない。長尺の棍棒の反対側の先端を返す動きで再び横薙ぎに殴りつける。
――ドゴッ!――
今度は胸ぐらをまともに殴打した。それでもジェイクは踏みとどまった。血まみれの顔でなおも食らいつき、分隊長に掴みかかろうとする。
「ふんっ――ガキが」
両手で横に構えた棍棒の中程を前へと突き出し、ジェイクの顔面にまともにぶち当てた。そのままジェイクを地面に仰向けに倒すとその胸を脚で踏みつけにする。
「ぐっ!」
「どうした? もうこれで終わりか? 小僧」
「ちくしょう! カリナを――」
「話にならんな――」
そう吐き捨てて分隊長は長尺の棍棒を縦に持ち、その石突をジェイクの顔面にぶち当てた。瞬時にジェイクの意識が飛び声が停まる。さらにもう一撃、さらに二撃――
――ガッ! ゴッ! ゴッ!――
繰り返しジェイクは殴打され血まみれになっていく。このままでは間違いなく死ぬ――、だれもが思った。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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