聖剣に選ばれた孤児の少女は、10歳で騎士団長になる ―少女と精霊の聖剣十年戦記― 作:美風慶伍
幌馬車は行く ―カリナたちを待つ運命―
馬車はいわゆる幌馬車と言うやつで、後部荷台に幌がかけられている。カリナたちはその中で膝を抱えて座り込むしか無かった。
馬車の中には、すでに数人の子どもたちが居た。その中のひとりの少女がカリナに語りかけてくる。
「ねぇ、あなた達も捕まったの?」
「うん」
「お父さんやお母さんは?」
「――いない」
「死んじゃった?」
「うん」
傷んだ長髪のその少女はすっかりやつれた表情をしている。希望は持てないのか相当に沈んだ表情をしていた。そして、ポツリと言葉を漏らす。
「――あたしたちと同じだね」
「え?」
他に女の子が2人、男の子が3人居た。いずれも親が居ない――と言うところに頷いていた。つまり、
「ここにいる子は全員孤児?」
「うん、そうだよ」
それは信じがたい事実だった。カリナは思う。
――私たちは何をさせられるのだろう?――
なにかとてつもなく嫌な予感がする。命に関わる、嫌な予感が。だが、幌の外からはあの凶悪な兵士たちが睨みを効かせている。これ以上は言葉を慎むべきだと、カリナの中の何かが教えてくれていた。
そこからは誰も何も話さなくなった。カリナは幌馬車の外の様子を伺う。
――誰か通りかからないか? せめて軍人が――
一番いいのはルミナリアの国軍兵士が通りかかることだ。だが、この男たちはそれも計算しているのだろう。道は裏通りや山道となるようなルートを選んでいる。
――見つからないようにしてるんだわ。徹底している――
恐るべき周到さだ。そして、さらに不安を感じた。
――この馬車、国境へと向ってる?――
つまり、ルミナリアの外へと向かっているのだ。そして、カリナは6歳の子供としては優秀すぎるほどの気づきを得ていた。
「――これは拉致?」
そのつぶやきに監視役の男たちが反応する。
「余計な事を言うな」
「――はい」
図星だった。だからこそ男たちはカリナを睨んだ。以後、カリナは口を慎んだ。
そして、馬車は山越えの道をたどり、野宿を繰り返す。
意外にも、食料は豊富に与えられた。孤児院では食事がない時もあったので、これだけは嬉しかった。
「食える時に食え。食い物はある」
「寒くて寝れないなら、毛布も有る」
男たちはそう言うところだけは奇妙に親切だった。だが今では、それもなにかの策なのでは? 思ってしまう。
そして、馬車はついに国境を超えた。
――ルミナリアの外に出た! するとここはネルガル?――
ネルガル国、魔王軍との戦いの主戦場になっている軍事国家として知られていた。
――これから何が起きるのだろう?――
そう不安に思わずには居られないカリナだった。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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