聖剣に選ばれた孤児の少女は、10歳で騎士団長になる ―少女と精霊の聖剣十年戦記― 作:美風慶伍
そして、孤児院で拉致られ、馬車に乗せられ5昼夜を経た。
そこは山の中だ。まわりには人家一つない。
「ここは? 学校?」
建物があり、宿舎があり、そして、訓練場のような広場が有る。だが、そこへと至る道は人家のあるところから恐ろしく遠い。歩いて逃げることは無理だろう。
「降りろ」
慈悲のない冷酷な言葉で馬車から引きずり出される。
カリナたちがたどり着いたのは、とある軍学校の訓練場だったのだ。
「こっちだ」
兵士に囲まれ逃げられない状況で訓練場の施設の中へと連れて行かれた。服を脱がされ身体検査をされたあと、清潔な服を与えられた。孤児院では着回しの粗末な服に、使い古しのサンダル履きだったから、真新しい服も革製の靴も生まれて初めてだった。
そして最初に訓練場でやったことはお腹いっぱいご飯を食べること。
貧しい孤児院での生活では食事もないことはしょっちゅうだった。
「まずは3日間休息を与える。体の不調があれば申告しろ」
簡素な部屋が与えら、そこが寝泊まりする場所だとしらされた。1人用と言っても差し支えのない大きさだったが、強引に寝台を2つ並べている。そこにはすでにカリナより2つくらい上の年の少女が体を休めていた。
「あ、あの――」
カリナは恐る恐る声をかける。声に気づいてその少女は顔を上げて振り向いてきた。
「あ、新入りの子?」
体を起こした彼女は愛嬌のある顔立ちの栗毛の少女だった。
「あたし、リルケ、よろしくね」
「カリナと言います。よろしくお願いします」
状況が分からず怯えるばかりのカリナをリルケは手招きすると、近寄ってきたカリナをそっと優しく抱きしめた。彼女のその胸元には金色のチェーンが下げられている。それが妙に心に残った。
「怖いよね、何が何だか分からないよね」
「はい」
「でも今はあの連中の言うことを聞いてじっと耐えて! いたずらに抵抗すれば扱いは悪くなる。でも真面目に頑張れば、目をかけてくれる人は必ず現れる。いい? 分かった?」
「はい――」
まだまだ幼いカリナにはリルケの善意にすがるしかなかったのだ。気持ちも休まらぬまま4日目の朝が訪れる。4日目からは地獄が待っていた。
「お前達には訓練を受けさせる。拒否は認めん。脱走は処分対象となる。死にたくなければ命令に従え」
強面の上士官の男が告げた。数十人ほどが集められた訓練場の中ではカリナたちより同い年か少し年上の男女たちが早朝から軍事教練を受けさせれられていた。最初に始めたのは体力をつけるための基礎鍛錬だ。正規の軍属の少年兵として扱われ、走り込みから始まり筋力をつける基礎特訓、重い荷物を背負っての行軍訓練と続いた。
男女の区別もなく6歳足らずのカリナには虐待そのものでしか無かったが仕方が無かった。でも死にたくないから食い下がった。
そんな事が続いたある日、異変に気づいた。カリナはリルケに問いかけた。
「リルケさん、あの赤毛の女の子、どこに行きましたか? 姿が見えないんですけど」
「昨日、訓練を嫌がった子ね?」
「はい」
リルケと話しているとさらに2つ年上の男の子がこっそり教えてくれた。
「失格になったやつは売り飛ばされるんだ」
「え? 人間を? 売る?」
「ここはそういう所だよ。諦めることだね」
そう告げる男の子に顔に笑顔はなかった。怯えるカリナにリルケはその頭をそっと抱きしめて慰めるのだった。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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