聖剣に選ばれた孤児の少女は、10歳で騎士団長になる ―少女と精霊の聖剣十年戦記― 作:美風慶伍
訓練場での毎日は朝の食事から始まる。
起床して顔を洗い、食堂へと向かう。そして教官らに体調の確認を受けた上で朝食となる。
食事の量と種類だけは実に豊富で、ここだけは手を抜かれたというのがない。
その日もカリナがテーブルに着くと、カリナに目をかけてくれるあの教官が後ろから背中を叩いて声をかけてくれた。
「カリナ、しっかり食えよ」
怒るのでもなく、ふざけてはしゃぐ様子でもなかった。低い声で心に響くように語ってきた。
「はい」
そう答えた後なぜだかその教官はカリナの頭をそっと撫でてくれた。周りの子供たちまでもが、不思議そうに眺めるほどだった。
だが、そうした存在は極めて例外だ。
大人の兵士の軍事教練なみに過酷な訓練が毎日続く。フラフラになっても休ませてもらえない。 遅れれば捨てられるだけである。
ある日、走り込みの際に足の痛みからふと立ち止まってしまった。
「モタモタするな!」
「誰が休んでいいと言った!」
中年の強面の教官が飛んできて気を失うほど殴りつけられた。疲れ様ようが、体が痛もうが、命じられた通りの結果が出ない時は殴る蹴るは当たり前の毎日だった。
「何を泣いてる? 泣いても誰も助けに来んぞ。お前の代わりはいくらでもいるんだからな」
決まって浴びせられる侮辱の言葉だった。換えはいくらでもいる。有能であると示さないと捨てられると徹底的に叩き込まれるのだ。
「ごめんなさい」
こう答えた時はビンタされた。
「言葉が違う。〝申し訳ありません〟だろう」
「申し訳ありませんでした、教官殿」
「ふん、それでいい」
言葉遣いが悪いという理由だ。
1日の訓練が終われば、夕方時にはもはやふらふらだった。
夕暮れ時になると酔っ払った上官の中には女の子にウザ絡みして、手を引いて連れていこうとする者もいた。
「最低」
カリナがそう言葉を漏らせばリルケが吐き捨てるように言う。
「あんなやつ死んじゃえばいいのに」
誰もがそう陰口を叩いた。ある日、カリナも、そのクズの上官に手を握られた。今度は自分の番だ、全身の毛が総毛立つ様な悪寒を感じる。だが――
「おい、その子は〝特別加算〟だぞ」
強い口調で警告が発せられる。その言葉を出したのはあの厳しかった戦闘技術の指導教官だった。
「特別加算を潰すと上層部も黙ってないぞ? さすがに最近逃亡が増えたんで問題視され始まっている。ほどほどにしておけ」
その指導教官の睨むような視線にゲス教官は舌打ちしながら去って行った。指導教官はカリナに視線だけを向けてそこから去って行く。もはや何のために訓練を受けているのかその意義さえ分からない毎日だった。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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