聖剣に選ばれた孤児の少女は、10歳で騎士団長になる ―少女と精霊の聖剣十年戦記― 作:美風慶伍
こうして、軍曹のバンクスと、6歳の少年兵のカリナのマンツーマンの毎日が始まった。
ほかの年齢の子たちの教室とは違い、不思議と温かさに満ちていた。他の教官軍人が異を唱える事もあったが、それが許される事情も会った。
バンクスが真剣に言う。
「カリナ・ウィングスは非常に希少な特別加算カテゴリーの魔法適性を持っている。その才能を有効に活用しなければならん。特別加算の発生率を知っているか?」
「たしか1000人に2~3人だと」
「そう言う事だ――、生存率をあげるためにも手をかけてもバチは当たるまい」
まるで親代わりを意識してるかのようなバンクスのその言葉に異論はだれもはさめなかったのだ。
しかし、何よりバンクスが驚いたのは、カリナの物を理解する速さだった。
6歳7歳の文字の読み書きはもとより10歳くらいの子供が覚える、数学の計算問題もあっという間に身につけた。だが同時に、カリナだけの特徴も感じた。
「お前は面白い学習の仕方をするな」
「えっ? どうしてですか」
「お前は入り口の部分でつまずくことが多い。理解できない納得できないところで足踏みする」
「それは、よく言われます」
「だろう? だがお前は、その足踏みから抜け出るとものすごい勢いで上達する。いつぞや教えてみせた、剣の上段踏み込みの技がそうだ。お前はコツを掴むところで停まるが、それを乗り越えるとあっという間だ。この分なら1年で11歳か12歳相当の基礎学力はつくだろう」
そう語るバンクスは真剣だった。
「そんな、わたしまだ子供です」
「いや、子供でも、特別に才能の伸びるやつは居るんだ――、お前のようにな」
バンクスは言った。かつては軍学校で新兵に教えていたと。ならば、これまでにもいろいろな生徒や新兵を見てきたのだろう。それだけに彼の言うことには説得力が会った。
その上でバンクスは真剣に言った。
「カリナ――、どうせならもっと上の授業を目指ささんか?」
「どんな授業ですか?」
そこでバンクスはにやりと笑った。
「方面軍規模の大規模戦闘指揮術だ」
「え? 戦闘――指揮――?」
バンクスの言葉にカリナはおもわず目を丸くして驚いたのである。
「ああ、正直他の連中がやってるのは、いろんな授業はさせられるが入り口の詰め込みまでだ。より実践的な応用の部分に関してはそこまで到達しない。だがお前はまだ幼い。他の連中よりも時間がある」
「時間がある――」
「そうだ」
「時間があるからこそ、入り口だけで終わることはない。お前は、学問の〝本質〟までを学ぶチャンスがあるんだ」
「学問の本質?」
そう言われてカリナは戸惑いを見せた。
「こんなところでですか?」
こんなところ――、この訓練場を指しているのは間違いない。だが、バンクスはカリナの言葉には腹をたてなかった。
「〝こんなところ〟だからこそだ」
真剣に語られる言葉が意外だったらしく、カリナは目を見開いた。
「いいか? カリナ――お前には才能がある。そして、陽性・特別加算と呼ばれるほどに魔導の素質がある」
「はい、孤児院から連れてこられるときにそう言われました」
そう答える時、カリナの表情は少し暗くなった。ジェイクたちと引き離されたときのことを思い出したからだ。だが、バンクスはそんなカリナの両肩を掴むと、その目を見ながら真剣に語りかけた。
「だが、それは魔法の素質だけを言っているわけではないんだ」
「え?」
「お前は、お前自身では気づいていないが、お前はその〝物事の本質〟を見抜く力がある。いいか? 戦闘訓練で上級生にいじめられたときのことを思い出せ」
「戦闘訓練?」
そう言れてカリナは何かにひらめいた。
「あっ! 間合いを詰めて攻撃した時の――」
バンクスは満面の笑みで笑った。
「そうだ、お前は俺がただ一度見せた、飛び込み剣技をその場で模倣して見せた。初めはぎこちなかったが、お前の剣は上級生とどいた。お前は〝壁〟を超えたんだ」
そして、バンクスはカリナの手を握った。
「俺もお前も、あとどれだけここに居られるかわからない。だからこそだ、俺はお前に出来る限りのことを教えてやる。それがお前がこれから生き残る力になると信じている」
バンクスはカリナの目をじっと見つめた。
「どうだ? やるか?」
その言葉にカリナは揺さぶられた。そして、バンクスの真剣な表情に脳裏をよぎった顔があったのだ。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
お読みいただきありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマークや「いいね」で応援いただけると励みになります。