少女と精霊の聖剣十年戦記 ~ひとりの少女が勇者になるまで~ 作:美風慶伍
アルカナヴァンガードの全ての兵士が揃った、閲覧歓待式を終えて兵士たちはそれぞれのも持ち場や鍛錬場に戻って行った。
諸王国の幹部たちとカリナたちは兵舎建物の応接間へと移動してねぎらいの言葉をかけたのである。
巨大な円卓のテーブルがあり、その周囲に椅子が並べられている。
その周囲にカリナたちは各々に座っていく。全員が席に着いたの確認してカリナは声を発した。
「皆様、この度はご来訪いただき誠にありがとうございました」
カリナの言葉に勇壮なる戦士であるヴァルハイトのローラン卿がにこやかに笑みを浮かべながら答えた。
「うむ、兵士たちの仕上がりは存分に見させていただいた」
エーテルノヴァのシルヴィアもアルカナヴァンガードを高く評価する。
「結成から約4ヶ月、当初から志と意欲の高い優秀な人材が集まっていると見ていましたが、その見方は決して間違っていなかったようです」
そして彼らとの会話をまとめるようにセリアスが言葉を続けた。
「まずは当初の目的は無事に達成できていると考えて良いだろう」
これにモントクラウドのヘルナが同意する。
「そうね、諸国の政府に対しても十分に目的を出していると報告して良いんじゃないかしら?」
それに対してグレインリーフのレイモンドが言った。
「貴族連中のお偉方の中には、勇者カリナの肝入の軍隊ということもあり、何かにつけて食い込もうとしているという話を聞くぜ?」
レイモンドはそれまでの飄々とした人柄とは裏腹に鋭い視線を分けてきた。
それに対してカリナは答えた。
「おっしゃる通りです、すでに1人、ある貴族の紹介で入った女性の財務担当が不正な資金操作をしていることが分かりました。それで昨夜のうちに全ての証拠を抑えて軍警察と紋章局に告発をいたしました」
オーシアが驚いた。
「手早いな。敵に行動の余地を許さないというわけか」
「はい」
「いやはや、君自身も相当以上だな」
「そうですか?」
オーシアの言葉にカリナは意表をつかれたようだ。オーシアは言葉を続けた。
「今までの行動実績報告は俺に触れて読ませていただいているが、事件の発生から現場への直行、そして解決までの時間。いずれにおいても迅速かつ隙のない行動だ」
するとそこにヴァルハイトのアルトゥール卿が言葉を添える。
「兵たちの優秀さもさることながら、やはりカリナ君を中心とするこの4人の幹部級が非常に優秀だということだ」
アルトゥールの言葉にカリナたちは聞き入っていた。
「1人1人がそれぞれの得意分野に関して隙のない完璧な行動を行っている。そしてそれがカリナ君を中心として1つの家族であるかのように綿密な連携ができている。誰が欠けても成り立たない重要な布陣だ」
「ああ、そうだな」とガルガンダインのローランが同意する。
そしてエーテルノヴァのシルヴィアが笑顔でカリナに語りかけた。
「アルカナヴァンガードはあなたの下で順調に発展しているわ。これからもさらに上を目指して頑張ってちょうだい」
お褒めの言葉が出たことでカリナも緊張が解けてほっとした表情になる。
「恐縮です、これからも諦めることなく精進していこうと思います」
カリナの言葉に全員が頷いたのだった。
するとそこにレイモンドが口を開いた。
「時に今朝は寝坊したって言うけど本当か?」
「え?」
セリアス以外にはまだ話していないはずだった。どうして漏れたのか? カリナは驚くしかなかった。
「ど、どうしてご存知なのですか?」
「やっぱり本当だったのか」
「はえ?」
いわゆるカマをかけたというやつである。レイモンドは笑顔を浮かべながら続けた。
「ここの兵士たちの中には、元はうちの軍属だったやつを少しいる。ここに来てからそいつらと少し話ししてたんだが、俺たちが来る前に、ソフィアさん達が慌ててバタバタと準備をしていたという話を聞いたんでもしやと思ってな」
「あう――、おっしゃる通りです」
「どうした夜更かししすぎたか?」
「はい、どうしても先送りできなかったので」
「ああ〝あれ〟か――」
彼らは少し顔赤らめながら申し訳なさそうに答えた。
顔を赤らめてもじもじしながら答えるその姿は、やはり年相応の10歳の少女に他ならなかった。
するとシルヴィアがレイモンドをたしなめた。
「レイモンド卿、誘導尋問とはお戯れが過ぎますけど?」
「ははは、事実を確かめた方が良いと思ってな。さっき話が出た不正事務員の摘発の問題だろう?」
「はい、その通りです」
「おそらくはそいつのケースみたいに、貴族やお大臣の推薦で、アルカナヴァンガードに自分の息のかかった人間を送り込もうとするやつがこれからどんどん増えるはずだ。こればっかりは嬢ちゃん達の自主努力ではどうにもならん」
そう語ったところでレイモンドは他の国の人物たちに鋭い視線を投げかけた。
「だからこそだ、この魔法剣士騎士団に、人物を推薦したいとかいう案件に関しては、俺たち諸王国軍の幹部級以上の検証と承認が必要とする――みたいな規定がいるんじゃないのか?」
レイモンドは軍師だ。普段から情報を集め、知識を研鑽し戦場の状況を冷静に判断する。それができる人物として切れ者として知られていた。その素顔が、遺憾なく発揮されていた。
これに関してはセリアスは同意するしかなかった。
「あなたのおっしゃる通りだ。レイモンド卿」
「あぁ、特にルミナリアはカリナたちの活動拠点だ。なおさらこういう事案は起きやすいだろう。嬢ちゃん達が困らないためにもよろしく頼むぜ」
「肝に銘じる。上層部にも伝えてすぐに対策を練ろう」
つまりは、レイモンドは話の流れからルミナリアの貴族階級に問題が生じやすいと見抜いていたのだ。
カリナはレイモンドたちにそっと頭を下げた。
「ご配慮いただき誠に感謝いたします」
「ああ、君たちの頑張りを、外部の人間のくだらぬ欲望でねじ曲げてしまっては申し訳が立たないからな」
そして老獪なオーシアがまとめるように言った。
「それぞれの国に帰った時に外部からの魔法剣士騎士団への介入への対策を早急に行うということでよろしいか?」
「意義なし」
「同じく意義なし」
昨夜からカリナを悩ませていた問題はこの時点で一気に解決がなされたのである。