加速世界の鴉――レイヴン――(仮)   作:非正規人類

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 これでプロローグ的なものが終了。次一気に原作1話目付近まで飛びます。


00-02『最後の日常・後』

 

 ― ― ―

 

 レイヴンは声のする方へと視界を移す。

 倒壊した建物の柱の上、見覚えのある赤い影が此方を見下ろしていた。

 

「なんか用か、ライダー」

「おいおい、親しい友人が声を掛けたのに素っ気ないね。お前は」

 

 よっと、と真っ赤なアバター――レッド・ライダーは声を溢し柱から飛び降りる。

 狙撃してやろうか、と思うも万全でない状態でやり合うのはだるいので大人しくする。

 ライダーは着地すると爆心地となっている周囲を見渡すと肩を竦めやれやれ、と今のご時世アメリカ人もやらない大袈裟な動作をとった。

 

「あんなの単独討伐とか普通しねーよ」

「小さい奴狩るよりポイント溜まるからな。それに〝王〟の連中ならこれくらいできるだろ」

「ま、仮にも王ですし」

 

 効果音にドヤァ、と着きそうな言い回しでライダーは胸を張る。

 アバターの表情は基本変わらないので顔はわからないが間違いなくドヤ顔を決めているだろう。鬱陶しい。

 

「しっかし、なんでそんなライフル使ってんだ? もっといいのもあっただろうに。それにあの手の奴ならいつも近接系の武器で斬ったり突いたりして倒してるだろ」

「ああ、今ちょっと新しい戦い方を練ってんだよ。知ってるか? このライフルって刺さるんだぜ?」

「なにそれ恐い。さすがギガスレイヤー、頭がおかしい」

 

 失礼な、自分でできることを見極めるのは大事なことだろうと思うも、そのことを口に出す前に気になる言葉があった。

 

「なんだ、そのギガスレイヤーって」

「ああ、お前の数多ある異名の一つだ。やったな、王を除けばお前ほど異名が多い奴は他に居ないぜ」

「知らない間にまた変なのが増えてたのかよ……。王、てか青が異常なだけだと思うが」

 

 しかし恥ずかしい二つ名だな、とのレイヴンの呟きにライダーは笑う。

 

「それだけ偉業や問題ばかり起こしていると言える。加速世界において平面速度最速。傭兵。開幕九秒で対戦相手を沈める。使用武器が多すぎる。わざわざ巨大ロボになるのを待ってから勝負を開始する。巨獣エネミー以下の全種エネミーを一度は単独で討伐する」

 

 挙句に、とライダーは続け

 

「レベル9に達した俺ら王に対戦を申込み、勝ち星をもぎ取る。これだけやらかしてる奴なんていねえよ」

「それに関してはその後再戦とか受けて最終的に負け越しになったがな。王になるだけあって、全員血の気が多いこった」

 

 もっとも一人だけ例外はいるが、とレイヴンは心の中で呟く。

 

「そりゃそうよ。王だレベル9だつったって、俺らは結局バーストリンカー。勝負事にアツくならなくてどうするよ。ま、お前とは長い付き合いだから馬鹿みたく戦ってはいるが勝率俺の方が上だし」

「……低レベルの時から換算すると勝利数は俺の方が多いはずだが?」

「バッカ、お前レベル4の無制限フィールド入りできるようになってから数えるだろ普通」

「…………」

 

 なにそれ、俺ルールなの? とレイヴンは無言で冷ややかな視線を送った。

 無言の重圧にライダーはわざとらしく咳払いをした。

 

「つーか、お前と俺とのレベル差はほとんどなかったはずだぜ。それこそお前も9になっててもおかしくないくらいに。何で低いんだ? 俺その辺りの経緯聞いてないんだが」

 

 逃げやがった、と思ういつつもそういえば話すのを忘れていた。

 正直、思い出すとけっこう苦々しい記憶だ。

 

「あーそれな……」

 

 レイヴンは空を見上げる。先程と変わらない星空がそこにはあった。

 

「以前、四神に特攻してな。その時にセイリュウのレベルドレインくらっちまったんだよ……」

「……馬鹿だ馬鹿だと思ってたが真性の馬鹿だったんだな、お前」

 

 大きなため息を吐くライダーにウルセー、とレイヴンは苦笑しつつも返す。

 あの頃、神獣クラスのエネミーを狩りレアドロップ武器まで手に入れ調子に乗っていた。

 その時四神の話を思い出しどの程度のものかと単身で特攻。結果は惨敗。死にはしなかったがレベルが3つほど下がってしまった。

 幸いなことに武装には影響がなかった。喪失したポイントはかなり痛いが。

 

(まあだからこうやって日々エネミー狩りに勤しんでいるわけだが……)

 

 元のポイント、とまではいかないがある程度は戻った。時間を掛ければ元通りにできるだろう。

 そんなことより

 

「俺の事はいいとしてお前は今日会議があるんじゃないのか? 七王の」

「……ああ」

 

 レイヴンの言葉に静かに頷くライダー。普段は能天気な奴だが何か思うところがあるのだろう。

 会議とは同時期にレベル9に達した七人のバーストリンカー――通称〝純色の七王〟と呼ばれる者たちが行う話し合いの事だ。

 純色と言う名が示す通りその七名はそれぞれ赤、青、黄、緑、紫、白、黒の名を冠している。

 七人はそれぞれ複数名が集まるバーストリンカーの集団――通称レギオンの中でも最大級の人員を誇る巨大レギオンのレギオンマスターだ。

 議題は他のレギオンに戦いを挑むことを禁止する、不可侵条約について。

 

「お前は」

 

 ライダーが口を開く。その口調はどこか重い。

 

「お前はやっぱり反対なのか? 俺達がやろうとしていること」

「……俺が何を言ったところでお前の意見は変わらんだろ? それに俺はどこのレギオンにも所属していない無所属だ。正直関係ない」

 

 そう、例え七つのレギオンで不可侵条約が結ばれようとレイヴンには関係なかった。

 ライダーを含む七王とはそれなりの交友はある。しかし、もしかしたらレベル9にこそ達していないが王と同等の力を有し、傭兵というイレギュラーである自身の存在を危惧して排除する流れが生まれるかもしれない。

 

(もっともそういったことは既に経験済みなので今更な心配だが……)

 

 不可侵条約。正直思うところが無いわけではない。だがそれを言っても変わらない流れが今ここにはある。

 いや、流を作り変えようとしている奴が一人居た。

 数日前、この状況に一石を投じる、と彼女は言った。あれはどういう意味なのだろうか。

 

「レイヴン?」

 

 ライダーの声に思考を止める。

 

「ああ、すまない。ちょっと考え事をしてた」

「そっか……」

 

 それだけいてライダーは特に追求してこなかった。彼女はいつも意味があろうとなかろうと面倒な言い回しが大好きな人物なので考えるだけ無駄だろう。

 

「ところでお前は今日の会議、見に来るのか?」

 

 ライダーが話題を無理矢理変えてきた。気を使ったのかはたまた気まずかったのか。

 

「いや、今日はこの後姉の職場に行ってやることがあるから行かん」

 

 それに俺が言ったらなんかややこしくなりそうだし、と心の中で呟く。

 とりあえず

 

「今日はもう落ちるか。ライダーも現実に戻るだろ?」

「ああ、ちょっと無制限フィールドを歩きたい気分だっただけだからな」

「じゃあ一緒にポータル行くか。ここでいきなり襲撃、て事もないだろうけどなんかあったら紫がキレる」

「おいおい、俺の彼女を悪く言うなよ。いいじゃねーか、可愛いんだぞ」

 

 はいはいノロケノロケ、とライダーをあしらいながら二人は近くのポータルへ向かう。

 他愛のない話をしながら。

 

「ライダー」

「ん?」

 

 ポータルに入る直前にライダーを呼び止める。

 

「とりあえず明日いろいろ聞かせろよ」

「おう、朝にでもお前の家に行くわ。また対戦しよーぜ!」

「ああ、勝つのは俺だけどな」

 

 言ってろ、と笑いながらライダーはポータルへ姿を消した。

 そしてレイヴンもそれに続き、現実世界へと戻った。

 

 その後、二人の約束が果たされることはなかった。

 そしてその日を境にレイヴンは傭兵を辞め加速世界に干渉することがなくなった。

 

 ― ― ―

 





 レイヴンの戦法その1
 ライフルは射撃機能付属の突き武器
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