加速世界の鴉――レイヴン――(仮)   作:非正規人類

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 一巻開始ちょっと前あたりからふらふらと。
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01-03『再接触』

 

 ― ― ― 

 

 黒い空間の中に一つの丸いテーブルがある。

 そこに椅子が六つ。均等に振られている。

 それぞれの椅子にはプレートがありローマ数字でⅠから時計回りにⅥまで振られていた。

 そこに座る影は四つ。ⅢとⅥの席は空いている。

 全ての影は同じ人の形をしており外見での違いは発見できない。

 

「どうやらNo.Ⅲは来ないようね」

 

 Ⅲの席を見ながらⅠに座る影が話す。

 その言葉にⅡに座る影が肩を竦める。

 

「彼女は少し気ままなところがあるからね。仕方ない、このまま話を進めても?」

「私は構わない」

 

 Ⅳに座る影が言うとⅤの席に座る影もそれに頷く。

 No.Ⅰはそうね、と呟き続ける。

 

「この前の一件により黒の王のレギオン〝ネガ・ネビュラス〟は解散。その後、黒の王を加速世界で見た者は居ないわ。残った王たちは彼女に賞金を懸けて情報を集めているけど、あまり期待できないでしょうね」

「黒のレギオンが潰れることはわかっていたが、なぜ戦乱の口火を切らなかった。計画ではどこかのレギオンに攻め込むのではなかったのか?」

 

 No.Ⅰの言葉にNo.Ⅳはどこか不満そうな口振りだ。

 

「彼の王は他の王を狩ることより帝城攻略を行ったのだよ。レギオン総出で」

 

 答えたのはNo.Ⅱだ。

 

「その結果、レギオンの主力である〝エレメンツ〟の内三名は無限EKに閉じ込められ、王自らレギオンを解体。まったく愚かと言うべきかなんというか」

 

 やれやれ、と両手を広げNo.Ⅱは呆れ声を出す。

 

「……このままでは我々の計画に支障を来すのではないか?」

 

 苛立ちながらNo.Ⅳが言う。

 その矛先、No.Ⅰはさして気にも留めず軽い調子で

 

「計画を変更せざるを得なくなったのは認めます。しかしこれにより一つの時代が始まった、と考えるのはいかがかしら?」

「物は言いようだな。このまま世界が窒息するのを待つというのか!」

 

 No.Ⅳは声を荒らげる。そこには明確な怒りが感じられた。

 

「セカンドプランは既に用意しているわ。これを」

 

 そう言ってNo.Ⅰが取り出したのは一枚のカード。

 それを机の中央へと滑らせる。

 それを見た反応は様々だ。ある者は笑い、ある者は感嘆し、ある者はただ黙す。

 

「災いの再来。火を燈すには十分ではなくて?」

 

 No.Ⅳはしばしの沈黙の後

 

「いいだろう、お前の茶番にまだ付き合ってやろう」

「納得してくれたようで結構。でも準備にはまだまだ時間が掛かるわ。仕込みは十全を期したいもの。まあ、私は表立って動けなから動くのはNo.Ⅱになるけれど」

「まったく、面倒事ばかり押し付ける。私にもやることが山ほどあるというのに。まあ、任されるとしよう」

 

 No.Ⅱは溜息を溢しつつNo.Ⅰに了承する。

 

「では、セカンドプランについて異存はないようね。No.Ⅴもいいかしら?」

 

 問われ、No.Ⅴただ頷き肯定を示す。

 これで会議は終了、という空気になった時にまて、とNo.Ⅳが声を上げた。

 

「〝奴〟はどうした?」

 

〝奴〟が誰を指しているのかここにいる全員がわかっているのだろう。

 その言葉に自然と視線がNo.Ⅰへと集まる。

 No.Ⅰは小さな溜息を吐き、肩を竦めた。

 

「残念ながら、彼もこの世界から姿を消したわ。無制限フィールドでの目撃情報は勿論、かつて出現していたエリアにも、ね」

「流石の貴様も、奴の心を操るのは容易ではなかったようだなNo.Ⅰ」

 

 嘲笑めいた口調でNo.Ⅳは言う。

 対するNo.Ⅰはただ黙す。

 

「復讐心もなくただ虚無感に呑まれるだけの存在だったか。まあ、所詮はその程度の存在ということだろう」

 

 姿を思い出しNo.Ⅳはフン、と鼻を鳴らす。

 かつての栄華も、その姿も全ては夢幻だ。やがて過去の遺物となり風化し、忘れ去られる。

 

「それはどうかしらね」

「何……?」

 

 No.Ⅰが言う。

 この中で一番接触していた者故、皆次の言葉を待った。

 

「彼、思ったよりずっと深いわよ、言動や行動に反して。本質は私達と一緒のはず。いや、それ以上かもね」

「……ずいぶん買っているなNo.Ⅰ。まさか惚れでもしたか?」

「さあ、それはどうかしら。少なくともあなたよりは好みかしらね」

「…………」

 

 二人は無言になりピリピリと空気が張る。

 やれやれ、と言葉を洩らしたのはNo.Ⅱだ。

 

「そのくらいにして置いたらどうかね」

 

 二人に割って入り諌める。

 No.Ⅳは鼻を慣らし、No.Ⅰは肩を竦め椅子に深く腰掛ける。

 二人の様子にNo.Ⅱはただ溜息を溢す。

 

「さて、他に何もないかい?」

 

 言ってNo.Ⅱは周囲を見渡す。

 誰も何も言ってこないことを確認し

 

「では解散のようだね。お互い次の集会まで無事であればまた会おう」

「セカンドプラン、忘れるなよ」

 

 No.Ⅳはそれだけ言い残し姿を消す。それに続くようにNo.Ⅴも消えた。

 

「私も失礼するよ。誰かさんが仕事を増やしてくれたせいで忙しいのでね」

「ええ、頼りにしてるわ」

 

 No.Ⅱも消え、残ったのはNo.Ⅰただ一人。

 テーブルの上に残ったカードを取ると手の中で遊ばせ

 

「貴方は、どう動くのかしら。黒い鳥」

 

 誰にともなく呟いた。

 

 ― ― ―

 

『なので今年から本校では――』

 

 梅里中学校の体育館に声が響き続ける。

 今は放課後。本来ならば生徒は部活動に勤しみ、もしくは帰路に着いている時間だ。

 朝方、突如決まった全校集会だそうで檀上では生徒会の役員が何やら学校生活についての風紀について説明やらを始めていた。

 ステージの生徒を見上げる形で列を作る生徒たちの中に一際目立つ存在がいた。

 二学年に属する列の最後尾。目立つ理由は単純にでかいからだ。

 身長はその年齢ではかなり大きく一八〇はあるだろう。男は心底どうでもいい、という表情を浮かべ気怠そうに話を聞き流していた。

 

(あー、帰りたい)

 

 彼はただ、サボらなかったことを後悔していた。

 ステージに立つ生徒(たしかこの前の生徒会選挙で決まった生徒会長)は何やらアツく語っている。

 どうせ後一年と少しかいない程度の場所なのになぜそこまで一生懸命になれるのかが理解できない。そもそも教育機関に何かを期待するだけ無駄というものだ。

 時計に目を移す。このくだらない催し物が終わるまであと五分。帰りに甘い物でも買って帰ろうと心の中で決める。

 時計を見ていると時間の進みが遅く感じるので周囲へと視線を移す。

 何か暇をつぶせるものは無いか、と見渡しているとふと、ステージの横に見知った顔を見つけ自然と目が行く。

 黒く長い髪と可愛らしい顔立ちの少女。確か彼女も生徒会の役員となったはずだ。役職は覚えていないがあそこにいるということはそれなりに地位のある職なのだろう。

 何やら難しい顔をしている。生徒会というものは大変なようだ。

 いつまでも見ていても仕方ない、と目を離そうと思うより早く彼女と目が合った。

 彼女は一瞬、驚いたような表情を浮かべるがすぐに元の表情へと戻った。黒い瞳は何を思っているのか男にはわからない。

 彼女は目をそらし、一呼吸。

 そして再び男に視線を移し――彼女は唇を動かした。

 体育館の端と端。スピーカーから流れる雑音にかき消され、当然彼女の声は男に届かない。

 しかし男にはわかった。何故ならその言葉は自分がよく知っているものだったからだ。

 

 ――そして、世界は静止する。

 目に映る全ては青色に染まり、周囲は一枚の写真の様に動きがない。

 瞬間、自分を残して全てが消えた。周囲は炎に包まれ体育館は不格好な鋼鉄の箱へと変貌する。

 明るかった外は暗くなり月明かりが素っ気ない室内を照らす。

 男の眼前、炎に燃える文面が表示される。

 

『HERE COMES A NEW CHALLENGER!』

 

 文字はすぐに消える。そして頭上には二つのゲージが表示された。真ん中には制限時間を示す数字が1800と表示されている。

 

『FIGHT!』

 

 文字が続き、頭上の数字は減少を始める。

 男は既に男の姿ではなくなった。もう一つの自分、黒いロボットの形――レイヴンへと変わる。

 そして視線の先、そこには少女の姿があった。否、先ほどとは違い制服ではない。漆黒のドレスに身を包み、背中には黒い蝶の羽が生えている。

 現実に限りなく近いが限りなく非現実的な存在。彼女のアバターだ。

 

「……どういうつもりだ」

 

 レイヴンは視線の先のアバターへ声を投げる。その声に宿るのは困惑、そして怒り。

 

「どういうつもりだ。不干渉を破るというのか! 黒の王、ブラック・ロータス!」

 

 他の誰も知らない、一年前に結ばれた二人の取り決めが唐突に破られた瞬間だった。

 

 ― ― ―

 





 レイヴンのリアルの特徴1
 でかい、ツリ目、三白眼。
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