叛逆の殉教者   作:干噛カカセ

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そろそろ書き溜めていたストックが切れます。けど続けます。



孤高の思考、逆光に彷徨して

学園、昼下がりのパソコン室にて。

 

「……えっ?」

 

僕は、ネット記事を目にして呆然としていた。内容のインパクトもそうだけど、一番の問題はそのタイトル。

 

『あのドーピングウマ娘が生死不明!?狂気の……』

『失格、追放処分の■■■■■さん 廃工場で遺品発見 生存は絶望的とみて捜査 UCAC幹部は「同じ走者として……』

 

そのウマ娘を、僕は知っていた。知ってしまっていた。

 

「■■■■■、さん……?」

 

いや、ありえない。あの人がそんなことをするはずがない、ドーピングも、消えることも。何かの間違いだろう、きっと別人のはず、

 

『昨日未明、都内の廃工場で火災があり、警視庁の調べによると中央トレセン学園を永久追放処分となっていた■■■■■さん(16)のものと見られる遺留品が確認された。現場の状況から生存は極めて難しいとみられる。先日に行われた模擬レースにおける悪質な走害行為および不正薬物使用の疑いで追放処分を受けて……』

 

本人だった。何度見返しても見間違いですらない、同じ文章、同じ名前。他のネット記事も似た内容ばっかり。皆、あの人のことを悪者って。

 

「全然そんな人じゃなかったのに……」

 

あの時、転入して間もない僕を教室まで送ってくれて、結局授業に遅れたくせに。暇な時も調子の悪いときでも気づいて気にかけてくれるような、根っからドーピングも進路妨害もするような人ではない。むしろ嫌って誰にだって唾とか吐きそうな、そんな人。

 

動画サイトを流し見しても、どこもかしこも検索結果の先でけちょんけちょんに罵倒されていた。

 

『ラフプレー、ドーピングまでした最低最悪の……』

『悪行に手を染めてでも……』

『二度とこんなウマ娘を中央に……』

『戻ってくるな』

『昔のレースを返せ』

 

ネット掲示板やコメント欄は見たくなかった。きっと、もっとひどい内容だから。

 

信頼していたあの人が、消えた。似顔絵も褒めてくれたのに、きつい時にアドバイスも貰ったのに。3文字だけが信じられない。

 

「なんで、なんで……!」

 

ふと、視界の片隅。再生数の伸びあぐねる、編集もお粗末な動画がそこに見えた。その長方形にあるのは、他の動画と違うニュアンスの単語が、妙に僕が惹かれるような言葉が、

 

「『■■■■■は生きている』……?」

 

カーソルを合わせて、クリック。まあ、きっと陰謀論みたいなものかな。AI特有の外国語みたいな音声が流れる。でも、内容はチープにしてはどうも、どうも。

 

「辻褄、合っちゃう。」

 

こんなことを言っていた。

 

『えー先日■■■■■さんが消えた、という話ですけど私、色々と変に感じるんです!あのね、はい、まず明らかにおかしいでしょ!一人の生徒が、しかも高等部の女の子が廃工場に? しかもそこで事故がちょうど起きますか、火災、崩落、そんな酷い事故がちょうど本人と一緒に起こりますか!?それにその現場なら誰かが見ているはずです、それについて……』

 

聞き入ってしまう。

 

『……それにあの日付も少しおかしいように感じます、あの時は追放とかの色々の発表が17時ですよ、17時、はい皆さん覚えててくださいね、この時間に追放が発表されたんです。さて、■■■■■さんが見つかったのは発表だと翌朝!はい、翌朝です。その時間までに廃工場に行って、事故を起こして、尚且つそれで生死不明にまで傷つきますか無理です!わざとじゃないなら逃げますよ、おかしいと思いませんか!?』

 

おかしい、そうだおかしい。そしてきっと■■■■■さんなら。

 

「死のうとしない。」

 

事故なんかじゃない。きっと、誰かが事故に遭わせた、事件。

でも、誰が、なぜ?

やる人物としたら、思い浮かぶのは3つの可能性。

1つ。模擬レースで妨害されたっていうマールィドクトゥスってウマ娘。

2つ。そのマールィドクトゥスのファンとか、周りのヒトやウマ娘。

3つ。■■■■■さん本人のファン。まあ、これは無いけど一応の可能性として出すだけ出してみる。

まだ模擬レースの段階でしかないのに、ファンが居るとすれば相当持ち上げられているんだろうからまずあの人だと―――

 

―――待って、模擬レースの時点で既にファン?

 

まずあり得ない。そうそう注目されていて、トレーナーさん達からも評判が良いとかそんな天才……

 

いや、そういうウマ娘ならちゃんと1人居た。

 

「マールィドクトゥス。」

 

たしかに随分前から話題になっていたウマ娘。新聞や雑誌、テレビ番組でも特集が組まれていたっけかな。動画サイトのCMで何回スキップしたかはもう覚えていない。UCAC所属で、引退した先輩たちからのスカウトか何かで入ったって噂。教室には来ているらしいけど、帰るのは寮じゃなくてUCACの事務所に居るとか。

でも、やったのがマールィドクトゥスだとしてもやっぱりどうも理由に難がある、ような。苛立っていたとしてもやりすぎ、退学したのにやったなら人の心とかないのかな?……ウマ娘だけど。そんなことでここまでするぐらいなら、もっとこの学園は危ないはず。

 

「いやいや、そんなばかなことしない、よね。」

 

やっぱり、明らかにやりすぎ。わざわざそうやって誰かを、それも痛めつけて苦しませるかのように――

 

「……待って。」

 

単に消すだけならばやりすぎ、消す『だけならば』。

なんで僕は事故に巻き込むことが目的なのだと早とちりしていたんだろうか。なら。

 

「事故はあくまでも手段?」

 

苦しめるために、世界からしっかり消すために。■■■■■さんが、絶望するように。そのために事故に巻き込んだ。

 

「……じゃあ、どうしてそうする必要があったの?」

 

壁。ここが一番不審で、重要で、危険な、5W1H……だっけか。その1つ。合ってるかわからないけど。

 

このトレセン学園から去ったのに、消した。炎と瓦礫に埋めて、苦しめて、そこまでやった理由。一体ここはどうすれば―――

 

「オパリちゃーん!ちょっと来てくれるー?」

 

「あ、ごめんごめん、今行くー!」

 

呼ばれちゃった。呼ばれるオパリアルクスって自分の名前の弾ける感じがちょっとだけ誇らしい。

 

そういえば倉庫までトレーニングの器材を色々取りに行くんだった。まだトレーナーが居ないとはいえ、いつか走る選抜の模擬レースで、僕と将来を歩んでくれるトレーナーを勝ち取るために練習はしなくちゃ。

 

倉庫は学園の敷地でも奥の方。プレハブの小さな小屋。少し前に入った時も、色々揃ってた。ジャンプレース用のハードル、小さなものから、僕ぐらいの大きさのものまである土嚢、ずっしりと重いボールにタイヤ。大体全部使わないけど、皆に人気の器具とかなら出番があったりする。旧型だからちょっと質は劣るし、使い方の分からないような器具だっていっぱいある。

それとたしか、ほこりまみれの部屋と古いパソコン……で、いいのかな。僕が持ってるのよりも黄ばんでて、分厚い画面のパソコンもあったっけ。でも、あそこの倉庫なんて普段使ってるウマ娘もトレーナーも居ないのに。

 

気になっちゃうな。何があるのか、どんなものがあるのか。

 

……なんて思ってたけど、ちょっとだけ僕の期待よりかは下みたいな中身だった。ログインはされてたし、そもそもパスワードも掛かってなかった。中のファイルは、施設の……なんて読むのかな、これ。げんか……何(減価償却)?とか、ウマ娘の退学処理とか。日付は大抵は3年とか4年とか前のもの。けれど閲覧日が異様に新しかったファイルが、1つ。

 

 

 

「『旧版トレーナー教本_コピー(2)』って、何?」

 




次回、園田編開幕です。対戦引き続きよろしくお願いします。
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