ほどいて、また   作:たかやまたろう

3 / 6
BLEACHはかなりにわかな知識で書いています。
設定や時系列など、できる限り確認しながら進めていますが、解釈違いや間違いがあるかもしれません。

また、本文の構成や執筆にはAIを利用しています。

そのあたりも含めて、ゆるく楽しんでもらえたら嬉しいです。
よければお付き合いください。



第三話 向いていること

入学してしばらく。

 

 授業にも。

 

 寮にも。

 

 食堂にも。

 

 少しずつ慣れてきた。

 

 分からないことは、まだ多い。

 

 けれど。

 

「向いてない」

 

 久世伊織は木刀を見た。

 

「何が?」

 

 隣にいた桃が聞く。

 

「これ」

 

「斬術?」

 

「うん」

 

「さっき当ててたじゃん」

 

「外したのもある」

 

「そりゃあるよ」

 

「じゃあ普通?」

 

「普通じゃない?」

 

「そっか」

 

「それで納得するんだ」

 

 桃が笑う。

 

 少し離れたところから声が飛んできた。

 

「伊織!」

 

「なに?」

 

「次、俺とやろうぜ!」

 

 恋次が木刀を振っている。

 

「嫌」

 

「何でだよ!」

 

「恋次、痛いから」

 

「木刀だぞ!」

 

「木刀でも痛いよ」

 

「当てなきゃいいだろ!」

 

「それ私が勝つってこと?」

 

「何でそうなる!」

 

「阿散井!」

 

 教官の声が飛ぶ。

 

「騒ぐな!」

 

「はい!」

 

 恋次がすぐに姿勢を正した。

 

 伊織は桃を見る。

 

「怒られた」

 

「伊織ちゃんも原因だと思う」

 

「私?」

 

「うん」

 

「そっか」

 

     ◇

 

 午前は斬術。

 

 午後は鬼道。

 

 その次は歩法。

 

 死神になるために必要だと言われるものを、一つずつ習っていく。

 

「破道の一、衝!」

 

 桃の放った術が、正面の的へ当たった。

 

「おお」

 

 伊織が言う。

 

「今の綺麗だった」

 

「本当?」

 

「うん」

 

 桃が嬉しそうに笑う。

 

「久世、次!」

 

「はい」

 

 伊織が前へ出る。

 

 構える。

 

「破道の一、衝」

 

 霊力を流す。

 

 放つ。

 

 的には当たった。

 

 ただ。

 

 少し中心から外れている。

 

「もう一度」

 

「はい」

 

 二回目。

 

 今度は中心に当たる。

 

「そこだ。術式を崩すな」

 

「はい」

 

「お前は霊力を出す量にばらつきがある。まず一定にすることを覚えろ」

 

「分かりました」

 

 戻る。

 

「ちゃんと当たってたね」

 

 桃が言う。

 

「二回目は」

 

「最初から全部できる人なんていないよ」

 

「そう?」

 

「たぶん」

 

「桃も分かんないんだ」

 

「私だって一回生だもん」

 

「それもそうか」

 

「次、吉良!」

 

「はい」

 

 吉良が前へ出る。

 

 詠唱。

 

 放つ。

 

 的へ当たる。

 

 少し位置を修正するように、二度目。

 

 今度は中心だった。

 

「吉良くん、うまいね」

 

 戻ってきた吉良に伊織が言う。

 

「久世さんとそんなに変わりませんよ」

 

「そう?」

 

「そうです」

 

「でも二回とも近かった」

 

「たまたまかもしれません」

 

「じゃあ次も見よう」

 

「確認されるんですか?」

 

「うん」

 

「妙なところ真面目ですね」

 

     ◇

 

 歩法。

 

 走る。

 

 止まる。

 

 方向を変える。

 

 また走る。

 

「恋次速い」

 

「当たり前だ!」

 

「なんで?」

 

「俺だからだ!」

 

「ルキアみたい」

 

「一緒にすんな!」

 

 恋次が振り返る。

 

「阿散井! 前!」

 

「うおっ!」

 

 正面から来た学生とぶつかりかける。

 

 ぎりぎりで止まった。

 

 教官が額を押さえる。

 

「お前は走っている時くらい前を見ろ」

 

「……はい」

 

 伊織は少し笑った。

 

「何笑ってんだ」

 

「別に」

 

「絶対何かあるだろ!」

 

 恋次は速い。

 

 斬術も上手い。

 

 桃は鬼道が得意そうだ。

 

 吉良は何をやっても大きく崩れない。

 

 それに、よく見ている。

 

 伊織は自分の手を見る。

 

「私、何だろ」

 

「何がです?」

 

 隣にいた吉良が聞いた。

 

「向いてること」

 

 吉良が少し考える。

 

「まだ分からなくても普通じゃないですか?」

 

「そう?」

 

「入ったばかりですし」

 

「じゃあ、そのうち分かるかな」

 

「たぶん」

 

 伊織は吉良を見る。

 

「吉良くんは?」

 

「僕もまだ分かりませんよ」

 

「でも何でもできる」

 

「何でもはできません」

 

「そうなの?」

 

「そうですよ」

 

「そっか」

 

 少しだけ安心した。

 

     ◇

 

 昼休み。

 

 食堂。

 

 伊織たち四人が席について、しばらくした頃。

 

「伊織ちゃん、今日何杯目?」

 

「二杯目」

 

「まだ普通」

 

「まだって何」

 

「昨日四杯食べてたから」

 

「お腹空いてた」

 

「毎日だろ、それ」

 

 恋次が言う。

 

「恋次も二杯目じゃん」

 

「俺は身体動かしてんだよ」

 

「私も動いた」

 

「またそれか!」

 

「恋次」

 

 声に、恋次が振り返った。

 

 盆を持ったルキアが立っている。

 

「ルキア」

 

「ここ、よいか?」

 

「もちろん!」

 

 桃が隣へ詰めた。

 

「すまぬ」

 

 ルキアが腰を下ろす。

 

「そっちの組、どうだった?」

 

 恋次が聞いた。

 

「何がだ?」

 

「授業」

 

「ああ。こちらも斬術と鬼道だったぞ」

 

「ルキアはできた?」

 

 伊織が聞く。

 

「何が?」

 

「斬術」

 

「まだ始まったばかりだ。できたともできぬとも言えぬな」

 

「そっか」

 

「お主はどうだった?」

 

「分かんない」

 

「何がだ?」

 

「何が向いてるか」

 

 ルキアが少し首を傾げた。

 

「それがそんなに気になるのか?」

 

「ちょっと」

 

「まだ色々始めたばかりだろう」

 

「桃と吉良くんにも似たようなこと言われた」

 

「なら、皆そう思ったのだな」

 

「そうみたい」

 

「続けておれば、そのうち分かる時が来るかもしれぬな」

 

「そっか」

 

 恋次が口を挟む。

 

「斬術なら俺だな」

 

「誰も聞いておらぬぞ」

 

「何でだよ!」

 

「お主が勝手に入ってきただけだろう」

 

「俺も話してたんだからいいだろ!」

 

「恋次、声大きい」

 

「伊織まで言うな!」

 

 桃が笑った。

 

     ◇

 

 午後。

 

 組み手の演習。

 

 相手は同じ一組の学生。

 

 打つ。

 

 避ける。

 

 受ける。

 

 交代する。

 

「そこまで!」

 

 教官の声。

 

 伊織は木刀を下ろした。

 

「次!」

 

 別の二人が前へ出る。

 

 数合。

 

 その時。

 

「っ!」

 

 鈍い音がした。

 

 一人が倒れる。

 

「止め!」

 

 教官がすぐに駆け寄った。

 

 伊織も見る。

 

 倒れた学生が、足を押さえている。

 

「動くな」

 

 教官がしゃがむ。

 

「痛むか?」

 

「はい……」

 

「誰か救護を呼んでこい!」

 

「はい!」

 

 一人が走る。

 

 伊織はその場に立ったままだった。

 

 足。

 

 痛そうなのは分かる。

 

 けれど。

 

 何をすればいいのか。

 

 分からない。

 

「久世」

 

「はい」

 

「下がっていろ」

 

「……はい」

 

 言われた通り下がる。

 

 少しして、救護担当の死神が来た。

 

 足を見る。

 

 触れる場所を確かめる。

 

 固定する。

 

 担架へ乗せる。

 

 運んでいく。

 

 伊織は、その一連の動きをずっと見ていた。

 

     ◇

 

 授業が終わった後。

 

「伊織ちゃん」

 

「なに?」

 

「さっきから静かだね」

 

 桃が隣に来た。

 

 恋次と吉良もいる。

 

「怪我した奴のことか?」

 

 恋次が聞く。

 

「うん」

 

「教官、そんな重くねえって言ってたぞ」

 

「それは聞いた」

 

「じゃあどうした?」

 

 伊織は少し考えた。

 

「何もできなかったなって」

 

 桃が見る。

 

「伊織ちゃんが?」

 

「うん」

 

「でも、教官に下がってろって言われたでしょ?」

 

「そうなんだけど」

 

 少し間を置く。

 

「何したらいいのかも分かんなかった」

 

 吉良が口を開く。

 

「救護のことを知らないからですか?」

 

「たぶん」

 

「俺も知らねえぞ」

 

 恋次が言う。

 

「私も知らないよ」

 

 桃も続ける。

 

「うん」

 

 伊織は頷いた。

 

「だから知りたい」

 

「救護を?」

 

「うん」

 

 恋次が少し考える。

 

「それ、向いてることとは別じゃねえの?」

 

「たぶん別」

 

「じゃあ何で?」

 

「分かんないけど」

 

 伊織はさっきまで使っていた演習場を見る。

 

「知らないままは嫌かも」

 

 桃が少し考える。

 

「じゃあ、習ってみる?」

 

「どこで?」

 

「四番隊じゃない?」

 

 吉良が答えた。

 

「治療や救護を担当している隊です」

 

「四番隊」

 

「知らなかったんですか?」

 

「うん」

 

「今知りましたね」

 

「うん」

 

「行くの?」

 

 桃が聞く。

 

「行ってみたい」

 

「今から?」

 

「行けるなら」

 

 恋次が伊織を見る。

 

「場所知ってんのか?」

 

「知らない」

 

「だと思ったよ」

 

「恋次知ってる?」

 

「知らねえ」

 

「じゃあ同じじゃん」

 

「そういう話じゃねえ!」

 

     ◇

 

 放課後。

 

 四番隊舎へ向かう道。

 

 伊織。

 

 恋次。

 

 桃。

 

 吉良。

 

 そして。

 

 授業を終えたルキアも途中で合流した。

 

「それで」

 

 ルキアが言う。

 

「なぜ皆で四番隊へ向かっておるのだ?」

 

「伊織が救護を教わりたいんだと」

 

 恋次が答える。

 

「救護?」

 

「今日、演習で怪我した人がいて」

 

 伊織が言う。

 

「私は何したらいいか分かんなかったから」

 

 ルキアが伊織を見る。

 

「それで知りたくなったのか」

 

「うん」

 

「なるほどな」

 

「ルキアも来る?」

 

「もう来ておるではないか」

 

「そうだった」

 

「今気づいたのか?」

 

「一応聞いただけ」

 

 ルキアが少し呆れた顔をする。

 

「向いてるかは、まだ分かんないけど」

 

「まだそれを気にしておるのか」

 

「ちょっとだけ」

 

「なら、まずやってみればよいではないか」

 

「うん」

 

 伊織は頷いた。

 

「そうする」

 

     ◇

 

「何の用だ?」

 

 四番隊舎。

 

 入口で、一人の隊士に止められた。

 

「学生か?」

 

「はい」

 

「怪我人?」

 

「違います」

 

「なら何だ?」

 

 伊織が一歩前へ出る。

 

「救護って、一回生でも習えますか?」

 

 隊士が瞬きをした。

 

「……何?」

 

「今日、演習で怪我した人がいたんです」

 

「ああ」

 

「その時、何したらいいのか分からなかったので」

 

「それで?」

 

「少し教えてほしいです」

 

 隊士が伊織を見る。

 

 その後ろ。

 

 恋次。

 

 桃。

 

 吉良。

 

 ルキア。

 

「全員か?」

 

「私は付き添いです」

 

 桃が言う。

 

「僕もです」

 

 吉良。

 

「俺も」

 

 恋次。

 

「私は途中からついてきただけだ」

 

 ルキア。

 

「結局全員付き添いじゃねえか」

 

 隊士が呆れた。

 

「名前は?」

 

「久世伊織です」

 

「久世。回道はまだ習ってないだろ」

 

「はい」

 

「応急処置も?」

 

「まだです」

 

「なら、回道を教えるのは無理だ」

 

「そうですか」

 

「ただ」

 

 伊織が顔を上げる。

 

「怪我人を見た時に、やってはいけないことくらいなら教えられる」

 

「本当ですか?」

 

「ああ」

 

「お願いします」

 

「今?」

 

「駄目ですか?」

 

 隊士は少し伊織を見る。

 

「……少し待ってろ」

 

「はい」

 

 奥へ消えていく。

 

「よかったね、伊織ちゃん」

 

 桃が言った。

 

「うん」

 

「本当にそのまま聞くんだな、お前」

 

 恋次が言う。

 

「聞かないと分かんないし」

 

「そりゃそうだけどよ」

 

「伊織」

 

 ルキアが呼ぶ。

 

「なに?」

 

「向いているかどうかなど、今はまだ分からぬだろう」

 

「うん」

 

「なら、知りたいと思ったことをやってみればよい」

 

 伊織は少し考える。

 

「そうだね」

 

 四番隊舎の奥を見る。

 

 向いているかは。

 

 まだ分からない。

 

 でも。

 

 知りたいことが。

 

 一つ増えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。