かなり長くなってしまっていますが、ご了承ください。
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記憶を失って知らない部屋で目覚めてから数日が経った。メールや書類を読み返し、ネットを使い、街を歩き回ったがこれといって目ぼしい情報もない。まあ、一朝一夕で解決する問題でもないのでその辺は自分でも驚く程冷静に受け止めている。
となれば、当面の間は一人暮らしをしていくことになるのは必然なので、日用品を買ったり運動してみたり、一応ご近所さんに挨拶回りしたり、
「神山高校‥‥‥‥。」
学校に行く準備である。
この部屋で見つけた書類の一つに神山高校という高等学校への転入書類があり、最近学校側からも確認のメールや封筒が送られてきた。
書類上の俺の年齢は16歳という事になっており、記憶がない状態で学校とか仕事とかどうしようかと不安ではあったが、何から何まで新しい環境ともなれば比較的やりやすいだろう。
そういえば、普通輪運転免許証を見つけたのだが、俺のバイクもどこかにあったりするのだろうか?まあ、駐車場とか借りていないみたいだし、あっても邪魔か。
今日は神山高校に行って転入試験を行う日との事。それを知ったのはこの部屋で目覚めた2日後であり、記憶喪失かつノー勉で受かる自信がなかったので急いで市販のテキストを買って猛勉強した。無理矢理気味な詰め込みをしたせいか、夢の中でも勉強する羽目になったし。誰だよあの先生分かりやすすぎて現実で来ねぇかなって何度思った事やら。
前の学校の制服なのか、クローゼットに詰襟が入っていたのでそれを着ていくことにする。筆記用具や書類、印鑑やお昼ももった。これで準備は…‥‥‥‥
「…‥‥一応持ってくか。」
相変わらずどうやって使うのか分からない白いベルトとカプセルも鞄の中に入れておく。頑張って弄っていたら着脱の仕方は分かったが、カプセルの方は用途が分からないままだ。というか、下手に弄らない方が良いと無意識的に避けていた節もある。
「そろそろ行くか…。」
_______________
「‥‥‥一歌?」
「あ、えっと、その‥‥」
学校の帰り道で偶然にも幼馴染の一人と目が合う。私の名前を発音した声は、
何を話せばいいのか分からないけど、今日こそはちゃんと話すんだと心の中で小さく意気込む。
「志歩、今日もベース持ってるんだね。これから練習しに行くの?」
「…‥‥そうだけど。」
「そうなんだね。えっと…‥‥」
「…‥‥‥私、もう行くから。」
「あ、志歩‥‥‥。」
でも、私が振った話題は、少し考えれば分かるし、相手がどう答えるのか分かり切っている、酷く弱くて拙いものだった。
繋げる言葉をどうすればいいか、自分の中で纏まりきらずに言いよどんでいると、彼女は私から視線を外して銀髪を揺らしながら踵を返す。呼び止めようとして名前を呼ぶが、その声は細く、小さい。
(‥‥‥今日も、上手く話せなかった)
次第にギターケースを背負った背中が小さくなり、人混みの中に消えていく幼馴染を呆然と見送る事しか、私は出来なかった。
(いつからこうなっちゃんだろう?穂波と志歩とギクシャクして、咲希だって―――――)
脳裏に浮かぶのは、
約束。でも、あんなに仲良しだった私達は、今では殆ど顔を合わせることも声を交わすこともなくなってしまった。
「‥‥‥ずっとこのままなのかな?話せないまま卒業して、バラバラになって‥‥そんなの‥‥」
『♪――――― ♪―――――』
「…‥‥これ、ミクが歌ってるMVだ。」
暗くなった心を抱えて交差点を歩きだした時に聴こえてきたのは、ボーカロイド・初音ミクのMV。
私が小さい時からずっと好きで、ずっと憧れている、正真正銘の歌姫。
すごいな、ミクは。昔からずっと、どんな風にでもなれて、すごく―――――自由で。
「私とは、全然違うな…‥‥」
話すことも、動き出すことも出来ない、私なんかとは。このままじゃダメだって分かってるのに。
________________
「…‥‥‥…疲れた。」
慣れない環境で慣れない事をするというのはどうも気疲れする。だが分からない問題はさほどなかったので、ここ数日の詰め込みやあの夢も意味はあったらしい。
「夢‥‥‥‥‥。」
ポケットの中から赤いカプセルを取り出す。
思えば、夢で手に入れたこれが現実でも現れ、夢で勉強した結果が現実でも活かされている。俺が見た夢が、現実に繋がっている。
少し調べたのだが、夢と言うのは一般的には起きてから5分以内にその内容の大半を忘れてしまうらしく、夢を見たという事をはっきりと覚えている‥‥‥というか、夢を見ている間、それを夢として認識して夢を見ることを
「あの部屋も、勉強してたのも、俺が望んだから見た夢だったって事なのか‥‥‥?」
だとしても。夢で手に入れたものが現実でも手に入るのはどういう事なのか。異常現象にも程がある。だとしたら、夢で望んだ事がなんだって出来てしまう事になる。それこそ、完全犯罪とか‥‥‥‥
「はぁ‥‥‥アホらし。」
夢もいいが、現実で頑張らなければどうにもならない。まだ合格しているとは限らないし、口座にあるお金もいつまで持つか分からない、振り込みはあるのか、そもそも俺だけが使っている口座なのか。
記憶がなく、いきなり放り出されたも同然の状況では色々と不安だ。16歳ならバイトも出来るだろうし、求人を探しておく必要もあるだろう。
『‥‥‥‥続いてのニュースです。先日、都内で発生した車の暴走事故についてです。警視庁の調査によると、暴走した車両は当時無人であった事が分かりました。_______』
スクランブル交差点前の大きな電光掲示板に映るニュースが眼に入り、何故かは分からないが無意識に視線が食いついた。
何故か俺は似たような話をずっと前に聞いたことがある気がする。身近でそういう不運にあった人でもいたのだろうか?
もっとも、そんな珍しい事故なんてそう滅多に遭遇するものでは______
「おいおいおい!突っ込んでくるぞ!?」
「まさかテレビでやってた‥‥‥!?」
「嫌だッ、きゃああぁぁぁっ!!!」
「…‥‥‥‥は?」
―――――ないはずなのだが。
悲鳴や驚愕の声を上げ、蜘蛛の子を散らすように交差点の中から人々が逃げていくと、向こう側からオフロード車が甲高いエンジン音を響かせながら突っ込んできているのが見える。
まさか、たった今報道されていた暴走事故という奴なのだろう。
「逃げないと‥‥‥!」
冷静に考えている場合ではない。訳の分からない状況の連続の果てに、巻き込まれ事故なんてごめんだ。
走れ。咄嗟に動けない人達なんて考えなくたっていい。自分の事だけ考えろ。まだ何もできていないまま、思い出せないまま死ぬなんて________
「あ‥‥‥‥‥‥」
逃げようと走り始める最中、車の方をチラッと見ると、まだ人がいた。
車が目前に迫る中、動けずに声にならない声をだすしかない、長い黒髪の、青い傘を持った女子高生。その状況を把握しきれていない、後悔と絶望に染まった顔を見た瞬間、俺は‥‥‥‥
「っ‥‥‥‥!!」
「おい君っ!?」
周囲の人が怒鳴るように呼び掛けているのは分かる。だが関係ない。
「行っちゃダメだ!!」
うるさい。
「駄目だ、間に合わなねぇ!」
間に合わせるんだよ。
「おいおいおいおい、死んじまうぞ!?」
何をしているんだ俺。ついさっきまで関係ないって考えてただろ。女子高生の顔見えたからって、だからなんだって話だ。
俺の右手が半ば衝動的に赤いカプセルを握りこむ。この数日間で使い方っも分からなかったし、無意識に下手に弄っていいものではないと思って、ポケットや手の中で転がしておくだけだったのに、今使うべきだと分かった。
「
カプセルを胸に押し付けて手を引くと透明な中央部が回転する。
【フォース】
赤い電流の様な物が迸った俺の身体は、常人ではありえない加速で距離を一気に詰める。目前に車が迫る中、タイミングが良かったのか赤い電流が消えるのとほぼ同時にカプセルを持っていない手で女子高生を突き飛ばす。
「えっ‥‥‥‥」
あれ?なんで俺は‥‥‥‥この子を一歌って__________
__________________
気が付けば、俺は誰もいない交差点の真ん中に佇んでいた。
「何で誰もいない?車は、あの事故はどうなったんだ?一体どうして‥‥‥あ。」
よく見れば俺の姿は詰襟ではなく、何時ぞやかの
「って事は、夢の中なのか?俺は‥‥‥‥どうなった?」
最後の記憶は交差点での車の暴走事故。確か、このカプセルを使って俺が一歌と呼んだ女子高生を助けようとして、状況からみて俺はそのまま轢かれたのだろう。現実の俺は病院のベッドの上か、それとも…‥‥‥。
どの道、良い状況ではなさそうだ。
「こんな力があったなんて…‥‥‥」
この赤いカプセルを胸に押し当てて‥‥‥回したのか?そうしたら、信じられない力が湧いてきたというか、あの距離を無理矢理走り抜けられた。
「このカプセムの力か…‥‥‥‥‥
カプセルではなく、カプセム。俺はそう言った。言い間違えじゃない。確かにそう言った。
「一歌‥‥‥‥‥。」
俺が助けようとしたあの女子高生。なんで俺は名前を?会った事があるのか?
だとしたら、俺はまだ覚えている。思い出せる。
俺の中の、深いところに、まだ忘れたと思っていた物が残っている。
起きないと。あの子に、”一歌”に会わないと。ちゃんと話して、少しでも思い出さないと。
「そういえば、これは何の夢だ?なんでさっきの交差点で…‥‥‥」
一人だけって言うのも気味が悪い。今までの夢では、あの部屋を除けば誰かしらはいた。しかもなんだ、この嫌な感覚は。
「怪物でも湧いてきたり‥‥‥‥なんてね‥‥‥‥‥」
不安を紛らわす為に冗談めかそうと呟くが、嫌な予感は収まらない。俺はカプセムを無意識に握りしめて、感覚を研ぎ澄ませ、直ぐに動けるように足を肩幅程度に開いて僅かに重心を下にする。
「…‥‥‥‥‥っ!」
エンジン音と、やけに重々しい足音が、真っすぐにこちらを向かってくる。
【フォース】
俺はカプセムを回転させ、身体能力を引き上げて咄嗟に横に跳ぶ。すると、直前まで俺が立っていた所に何かが凄まじい勢いで通り抜ける。
「何だこれ‥‥‥‥タイヤの跡?」
それにしては深いし煙がたつ程に熱い。だがこの特徴的な形はタイヤ痕そのものにしか見えない。
「…‥‥‥‥お前、なんなんだよ…‥‥。」
煙の向こう側から聞こえる、やけに低く、無機的な声。次第に露になるその姿は、車の部品を無理矢理括りつけたような体で、ヘッドライトとハンドルを繋げたような頭に、腕にはタイヤの様な物が付いている。明らかに、人間なんかじゃない。
「まあいい…‥‥‥‥お前諸共ひき殺して、悪夢を叶えさせてもらう。」
人の夢に巣食う、怪物だ。
「…‥‥‥‥
また知らない単語を言った。なんでまた。俺はこんなのも知っているのか?
「オラァァ!!!」
ナイトメアは両腕のタイヤを高速回転させて、クラウチングスタートのような姿勢を取り、甲高いエンジン音と雄たけびを上げながら俺に向かって突っ込んでくる。
「タイヤ痕はそういう事か!?」
あんなものに当たったら体がミンチになってしまう。いや、夢だから大丈夫なはず‥‥‥‥‥
「…‥‥‥夢の世界での行為は、現実に反映される?」
夢でこのカプセル手に入れたら現実でも手に入れていた。なら夢で俺が殺されたら、現実でも殺される…‥‥?
こいつが夢の世界で車を暴走させたから、現実でも車が暴走した。でも、現実にナイトメアはいない。だから、無人だった?
「くぅっ!?」
ギリギリ避けられたが、ナイトメアは直ぐに急停止・転回していたようで、俺が体勢を立て直している間に再び接近し首を掴まれ足が地面から離れる。必死にもがきながら相手の腕を使って再びカプセムを回転。ナイトメアの腕を掴みながら赤い電流が走った足で蹴りこむ事で、ナイトメアを怯ませてどうにか脱する。
だが、どうする?逃げるか?逃げ切れるのか?しかし夢で起きたことが現実に影響するなら、コイツを放っておいたらまた事故が起きて、今度こそ誰か死ぬのではないか?
「どうやって、戦えばいい?」
俺の思考は、どうすればナイトメアを倒せるのかに不自然なほど自然にシフトする。ずっと前からそうしていたのだから当たり前_______
「ずっと、前から‥‥‥‥っ!?」
自分の思考への動揺で足が止まった瞬間、左頬に衝撃。身構える間もなくナイトメアにぶん殴られたようだ。俺の身体は建物のガラス戸に叩きつけられ、
景色は一変し俺の部屋に。相手の気配を感じてドアから飛び出ると外ではなく知らない住宅街。更に走って道を曲がると今度はついさっき試験を受けてきた神山高校。
「何で景色が‥‥‥夢そのものにも干渉してるのか!?」
だとしたら、逃げても意味はない。戦って、倒さなければならない。
『――――――なんで何時も英語でミッションを言うんです?』
『ミッションは英語で言わなければならないからだ。』
『‥‥‥‥‥そんな決まりはない。』
『○○さん!?』
『要はカッコつけって事ですよね?』
『別にいいじゃないか‥‥‥‥夢なんだから。』
「…‥‥‥‥!」
何だ、今の。俺の記憶、なのか?
「はぁ…‥‥はぁ‥‥‥‥はぁ‥‥‥‥!」
呼吸が荒くなる。頭の中がぐちゃぐちゃで、混乱してきた。
夢、明晰夢、カプセム、ベルト、ナイトメア、ミッション‥‥‥‥‥‥
『俺にはコードネーム?ナンバー?はないんですか?』
『○○○○じゃないんだ、別に数字を付ける必要はない。そんなに欲しいのなら…‥‥”11”はどうだ?あいつの前のに似ているし、丁度欠番だったから丁度いいと思うが?』
『へぇー‥‥‥じゃあそれにします。コードナンバー:イレブン‥‥カッコイイかも。』
『‥‥‥無駄話はここまでだ。さっさと行くぞ。夢を守らなければならないからな。』
「…‥‥‥‥そうだ。そうだったな。」
「…‥‥‥いい加減諦めて、悪夢を叶えさせてもらうぞ。」
振り返ると景色は最初の交差点に戻り、ナイトメアが大変ご立腹の様子だった。だが、それがどうした。
「少しだけ思い出せたよ。ありがとう。」
「……‥なんの話だ?」
「ナイトメアは夢主の心に宿り、深層心理の願いを曲解して強引に悪夢として叶える。」
「夢で起こったことは現実にも影響を与える…‥‥‥怪事現象、
「夢主の心の扉が全て開かれた時、ナイトメアは現実の夢主を取り込んで実体化し悪夢を叶えるだけでなく
「ナイトメアを、悪夢を止めるには明晰夢の力で対抗するしかない。」
「‥‥‥‥お前、何者だ?」
ナイトメアを真っすぐ見据えながら、何処からともなく表れた白いベルトを胸に当て、襷掛けにするように装着する。
”俺”の事は全然思い出せないけど、”イレブン”のやるべきことは分かる。
必要なものは揃っている。後は俺の…‥‥‥心ひとつだ。
「俺はイレブン。ナイトメアと戦って夢を守る…‥‥エージェントだ。」
右手で真ん中のソケットに赤いカプセムをセットし、跳ね上がった右胸側のレバーを押し込む。
【フォース】
【オ・オ・オンユアマーク オンユアマーク…‥】
「擬装…‥‥!」
言う必要は恐らくない。だが、口が覚えている。それに1ミリの疑問を持つことも無く左手を滑らせてカプセムを回転させると、システムボイスと共に俺の身体が変化し始める。
《b》《big》【エンフォースナイトシステム】
全身を包むように発生したが灰色の靄に包まれ、赤く光る電子回路のようなラインがスパークしながら全身に伸びていくことで靄が晴れ、濃紺のラインが走った白銀の身体が露になる。
【フォース】
顔に濃紺の仮面が装着され、奥の複眼が全身のラインとベルトと同時に赤く発光する。
「‥‥‥ドライブは終わりだ、車野郎。」
準備は整った。後はコイツを
「ぐぉおおおお!!」
ナイトメアが俺に本日3度目の突撃を仕掛けるが、擬装した事で身体能力・防御力が増大した俺には大したものではない。そもそも、あの突撃は強力だが、それ故に小回りが利かず直線的だ。
腰を落とし、ナイトメアがぶつかるまでのまずかな時間で方向、重心、速度を見極める。
「‥‥‥‥!」
重心を落し足を半歩引きつつ、ナイトメアを受けとめそのまま背後に転がり込む。
巴投げの要領で相手の力を利用して投げて、ガラ空きの脇に蹴りこむ。バク転の様に勢いよく立ち上がると、よろよろと立ち上がるナイトメアに距離を詰めて追撃する。
「はあぁっ!!」
左右からの連打。ナイトメアもやられっぱなしではなく反撃にでるが、巧みなステップで回避し、掌底や裏拳、肘で受け流し、組み付いて関節を攻撃。振りほどかれたり重い一撃が入りそうなら直ぐに距離を取るなり組み直すなりして肘や膝で鋭い打撃を叩き込む。
「‥‥しつこいィ!!」
「ぐぅっ!」
ナイトメアの両腕のタイヤが回転し始め、丸鋸の様に押し付けられる。先程のタイヤ痕から分かっていたつもりではあるが、想像以上の威力だ。ミッションスーツで覆われていなければ俺の身体はスプラッターものの惨状になっていただろう。だが、万が一ベルトに食らえば破壊されるかもしれない。
「いい加減悪夢に、堕ちろおぉ!!」
突如として景色が変わり、目の前からナイトメアが消える。これはさっきも見た、夢への干渉。この状況で戦場を変えて、姿を消すとしたら考えられるのは‥‥‥
「逃げるか、それとも…‥‥」
「オ‘‘オ‘‘オ‘‘ァあ‘‘あ‘‘!!」
――――――背後からの奇襲。
「‥‥‥‥っ!」
【フォース】
カプセムを回転させ出力を向上させると赤いスパークが足に迸る。脚力を底上げしつつ
身体を僅かに傾けることで大振りされた回転するタイヤを回避。その勢いで強化された回し蹴りを食らわす。
「グガァああ!!!」
吹っ飛ばされたナイトメアが生まれたての小鹿の様によろよろと立ち上がるのを見て、
複眼が赤く光った瞬間、低姿勢で飛び掛かるように距離を詰めると、ナイトメアは残った力で反撃しようとタイヤを回転させることなく振りかぶる。
…‥‥が、空振る。当たり前だ。もうそこに、俺のはいない。
「さっきは、こうしたかったんだろ?」
ナイトメアが夢に干渉できるのなら、俺の明晰夢でも同じことが出来るとは思ったが、当たりだったようだ。
「失せろ‥‥‥‥!」
【フォース フェイタル】
ナイトメアの背後に姿を現した俺は、灰色の靄と赤いスパークが伴った右足で鋭い足刀蹴りを放ち、ナイトメアの胸を貫く。
ナイトメアは一瞬苦しむ素振りを見せるが、直ぐに頭と腕を力なく下げて
「‥‥‥‥‥。」
ゆっくりと足を下ろして軽く息を整えると、ベルトからカプセムを外して擬装を解除。元の姿に戻る。
出来た。ベルトとカプセムを使ってナイトメアと戦って、倒せた。暴走事故での被害を食い止めることが出来た。
悪夢を…‥‥止められた。
「良かった‥‥‥‥‥。」
一安心した俺は、深く息を吐きながら目を閉じた。
___________
「ん‥‥‥んぁ‥‥‥‥あ?」
眼を覚ますと、白い天井が視界に入り消毒の匂いが鼻を通った。
「病、院‥‥‥‥ああ、そういう事か。」
女子高生‥‥‥‥一歌を助けた時、普通に車に轢かれて搬送されたのだろう。フォースカプセムで身体能力を引き上げたが身体強度までは効果が及ばなかった、或いは効果が切れていたという事だろうか。
布団をまくり上げ、ベッドの上で上半身を起こすと違和感を感じて胸元を見る。そこには病衣の内側、素肌に巻かれたベルトが。
「なっ……!?」
急いでベルトを外して枕元に置こうとすると、そこには赤いカプセムもとい”フォースカプセム”と白いスマホもとい”コードフォン”が置かれていた。
「‥‥‥‥‥少しは、思い出せたな。」
俺は明晰夢の力を持つ”エージェント”で、”夢主”の悪夢を叶え、現実への被害‥‥‥ブラックケースを起こす怪物”ナイトメア”を倒して夢を、世界を守る為に戦っていた。カプセム、ベルト、コードフォンはその為の装備。
「でも、あの部屋やデータは一体…‥‥‥。」
記憶喪失なのはナイトメアが関係していると考えるべきか。データやメールの送り主、部屋や資金、装備の提供者は…‥‥‥‥‥
「…‥‥‥‥やることあり過ぎだろ。」
だがやるべきことは分かった。ナイトメアと戦う中で記憶への手掛かりも見つかるだろうし、何よりそうしなければならないと、俺自身が感じている。
「これから忙しくなるぞ…‥‥!」
「―――――えっ、なっ、ええええ!?」
ドアが開いたかと思えば看護師らしき女性が俺を見て驚いている。病院で看護師が、それも患者を診て叫ぶとはどういう了見だ?
「あの、どうしました_____」
「直ぐに先生を呼んできますので、待っててくださいね?…‥‥先生!患者さんが‥‥!」
「…‥‥‥本当に、なんなんだ?」
「…‥‥‥‥
「…‥‥‥もしかして、」
〈所有カプセム〉
・フォースカプセム
・コードカプセム
〈ナイトイレブン〉
・イレブンが”カスタムインヴォーカー”で擬装した姿。残存していたナイトインヴォークシステムをベースに”オリジナル”及びその発展型や”ロードインヴォークシステム”からのフィードバックやアップデートが行われており、独自の機能・仕様を実装している。
〈フォースカプセム〉
・力を司る夢を叶える赤いカプセム。右手を突き出す亜人が描かれている。
イレブンが初めて出会うのは‥‥
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Leo/need
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MORE MORE JUMP!
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Vivid BAD SQUAD
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ワンダーランズ×ショウタイム
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25時、ナイトコードで。