O5によるSCP世界異聞帯化計画 作:僕らは ねこです げんきです
あ、今回も話に出てくるSCP一番下に書いてるけど、大体地の文で説明してるし、説明がないやつは『ノーチラスと猫』以外登場予定ないのでそういうもんだと思って読んでもいいですよ
プリテンダーチラ見せ回
夢を見る。かつての記憶、その断片。
夢など、とうの昔に見なくなったものだと思っていたが……なるほど、契約しているサーヴァントが多いとこちらの記憶が掘り起こされる確率も上がるのか。今まで四十以上の英霊と契約を交わし、その記憶を覗きこむことは多々あれど。逆に覗き返されるのは初めてだ。それも今までは召喚してすぐに聖杯に捧げていたからなのかね。
『ぐっ……はぁ、はぁ……』
『おや、ここまで辿り着いたのかい?君に
『舐めないで、もらいたい……確かに僕は、凄い逸話があるわけでもない弱小サーヴァントだ。でも……これ、でも、僕は人類を背中に背負っているんだ……!』
暗い廊下。イエローストーン国立公園に建てられた、表の世界から隔離された地下施設の中で2人の男たちが向かい合っている。
片方は勿論俺、もう一方はサーヴァントだ。
そのサーヴァントは血に濡れて台無しになっているが王族が着飾るような豪奢な服を身にまとい、壁にもたれ掛かりながらかつての俺を睨みつけていた。
背中には、一対の妖精の羽を生やして。
『僕は、ここでお前を止める……それが、この星の全ての者たちの、総意だから…………人類は、こんなことをしてまで、生き延びたいとは思っていないのだから…………!』
『ふむ……なるほど、これが濾過人理補正現象。人類全体の総意が未来を拒む破滅願望が生み出した集合的無意識が、人類の存続を明確なカタチを伴って干渉してくる現象か。今まで致死性ミーム災害や人類の超常的進化が起こっても出張って来なかったというのに、今になって出てくるのは…………こちらの世界があちらの世界に寄って来ている証拠なのかな』
そのサーヴァントの名は、オベロン。俺の住まう世界の集合的無意識と型月世界の抑止力が合致して召喚された、俺を殺すための英霊だ。
『あぁそうか、そういう事か。この世界では本来であれば幻霊にすぎない君に
『はっ、ご明察、だよ……!これで理解してくれたかな、君がやっていることは全てありがた迷惑だってこと……!』
『ハハハ、そんなこと元より承知の上だよ!』
人理のセイバー、英霊・オベロン王。その霊基は元は幻霊にすぎない弱小霊基だが、人類のすべてと世界の意思から供給される魔力は脅威だった。
たった一騎の英霊に五騎のサーヴァントが敗れた、と言えばその恐ろしさが分かるだろうか。
『アーチャー、ライダー、アサシン、バーサーカー、そしてキャスターとのダブルクラスで召喚されたアヴェンジャー。ほんと、大したもんだ。よくその霊基でストレート勝ち出来たね?特攻宝具があるわけでもないのに』
『そうだね……本当ッに疲れたよ。でも、ここで君と最後のランサーを殺せば……僕は聖杯戦争ストレート優勝だ……!』
オベロンがどこからか取り出した剣を振りかぶる。
『おっとっと……危ない危ない』
しかしその姿はあまりに弱々しい。動きも遅く、数歩下がるだけで容易く躱せた。
『なかなかの粘りだったけど、君ももうそろそろ限界かな。世界の後押しを受けてるにしては力が出てない様子だね。ほら、傷も回復できてないみたいだよ?』
『ぐっ……!畜、生……!』
オベロンが弱っている理由はこの時既に粗方予想がついていた。
ひとつはまだ財団世界が型月世界に完全に近づいていないから濾過人理補正現象や抑止力といった型月世界特有の現象の力が弱いこと。そもそも、世界や人類の意思が本格的に聖杯戦争に割り込めるのなら七騎すべての英霊を人理側で揃えて俺を殺させればいいのだから、それをしない……できないってことはそういうことだろう。
ふたつめは単純、五騎の英霊との戦闘で霊基が削られているから。霊核にダメージは無いようだが、消耗は激しいようだ。しかしこれは本来、魔力があればすぐに回復するもの。世界をバックに付けているのなら尚のこと。
そして最後に、これがおおよその理由だと思っているんだが
『んー、まぁしょうがないよね。魔力の供給源の人間が激減していってるんだから』
すでに人類の大半が死滅しているからだろう。
『理解、できないね……!財団のトップで、人類を守ることを使命とする君が……人類を滅ぼす、なんてねッ……!』
『おや、嬉しいね。まだ君は俺を財団の一員として見てくれるのか。勿論俺自身財団の一員であるという認識は持っているがね。しかし…………君は理解しているだろう?この世界では、”やり直しのきく滅亡”と”やり直しのきかない滅亡”があるってことを。他のO5たちと組んで、俺をここまで追い詰めた君がSCP-2000を知らないはずはない。人類は一度滅んでもコンテニューできるんだ、利用しない手立てはないだろう?』
一応、サーヴァントであるオベロンは財団にとって確保すべきアノマリーであり、収容すべき異常存在だ。財団が掲げる理念に反しない範疇では手段を選ばないSCP財団でも、アノマリーと手を組むことは滅多にないはずなのだが……やはりと言うべきか流石と言うべきか、俺の計画に目敏く気づいた他のO5たちはオベロンと手を組んだらしい。
まぁ…………俺と違い彼らはみな老練にして聡明な人たちだった。いつバレるだろうか、もう露見しているのではないかと毎日考えていた。故に納得こそすれど驚きはなかったが。
彼らの行動は財団らしく隠密と速戦即決に優れたもので、か弱い俺は瞬く間に捕らえられた。
なので、まぁ。大変心苦しかったが、アサシンでO5たちと機動部隊を皆殺しにしたあと、近隣の施設の収容室を全て解放して姿を晦ましたのだ。
『君もツイてないね。財団と協力して、本気で俺を潰しにかかれば俺も本気で抵抗するから人類の総数が減る。俺は今の人類の数が減ろうと、SCP-2000さえ押さえれば計画が続行できる。O5が味方についても財団にサーヴァントを殺す手立てがない以上、君はサーヴァント六騎を単独で倒さなければならない』
SCP-2000。メタタイトルは『機械仕掛けの神』。財団の切り札のアノマリーにして、財団の敗北を告げる神。
SCP-2000はイエローストーン国立公園の地下に存在する、財団が建てた施設だ。この施設の能力は、平たく言えば『世界のやり直し』である。K-クラス世界終焉シナリオ────世界の終わりを回避できなかった時初めて稼働し、人類文明の再構築を開始する。
まず、このアノマリーは荒廃し人類が姿を消した世界で、一日に数千数万の人間を生産する。この生産された人間は滅亡する前の人類の肉体、記憶、精神を完全にコピーしたクローンで、彼らは荒れ果てた地上の文明を数十年かけて再建し、世界を滅ぶ前の状態に戻す。再建が完遂すれば最後の仕上げだ、人類を元の姿へと戻した世界各地にそれぞれ配置し記憶処理を施せば────あら不思議、世界はかつてのように何事もなく回り始める。
これが財団の切り札。財団が敗北した時にしか稼働しない故に、財団の敗北を告げる神。すべてを解決する
『結果論になるが、収容室を解放したのは間違いではなかったな。世界の再構築にかける数十年がある分、最善の選択とは言えないがね。犭貪あるいはウロボロスの到来のタイムリミットを踏まえても、要注意団体の横槍を防げたことや、魔力の供給源を減らしたことで君を確実に仕留めれるようになったことを念頭に入れると、十分におつりがくる』
そして今……いや、この夢の中の俺とオベロンが対峙しているのはイエローストーン国立公園、つまりそのSCP-2000の中。
『そう易々とやられてくれると思ってるのかな!
オベロンが姿を消す。おそらく宝具だ。しかし気配遮断のように察知されないことに特化したものではなく、姿を見えなくするだけ物。
『血の香りが消せてないよ───ほら』
『───くッ!』
しゃがむ。頭上を風が過ぎる。風の魔術?いいや違う。魔力の起こりはない。ただの剣だ。
『あた、れッ!』
一歩下がる。剣が振り下ろされる音がする。
二歩下がる。剣を振り上げる気配がする。
嫌な予感。財団に務めているとこういう勘は大事だ。これがない研究員は知識と聡明さが不足していればすぐに降格処分をくらう。横にズレる。多分、刺突。
『ちッ!出し惜しみは───無しだ!』
今度は魔術。おそらく犬───違う、犬の姿をした妖精を数体召喚した。妖精を召喚する……妖精たちを統べる王故のスキルだ。
『そろそろまずいかな。令呪を使う───おっと危ない、隙くらいくれてもいいんだぜ?』
『させるわけないだろ……!行け、僕の友達たち!』
一匹が飛びかかってくる。回し蹴りで対処、多対一にマトモに付き合ってやるつもりはないのですぐ近くにあった扉を開けて逃げ込む。その扉の先は食堂───SCP-2000で生産された次期人類たちが餓死したり退屈しないように作られた、かつてのSCP財団が総力を上げて作り上げた大食堂だ。
もちろん、相手は瀕死でもサーヴァント。こんな場所に逃げ込んでも時間稼ぎにもならないし、普通だったらむしろこちらが袋小路で危機的状況だ。
しかしこちらは令呪を使う、ほんの僅かな隙さえ用意すればいい。
『その扉をぶち抜け!』
犬の姿をした妖精たちが扉の枠ごと壁を破壊して飛び込んでくる。あーあー、何百年でも稼働し続けられるよう耐久性に拘って作られたんだろうに……
『なに壊しちゃってくれてんのさ、ここは細部に至るまで───それこそ扉の枠組みまで財団が金と技術を惜しむことなく注いで作られた施設だってのに…………あ、そうだ。このピザ食べる?』
『は?』
そう言って俺はピザボックスを開く。
そして中から飛び出るは、犬も人も等しく押し流すほど多量のピザ。まぁピザボックスの中にあるんだからピザに決まってるよね。
このピザボックスはSCP-458、メタタイトルは『はてしないピザボックス』。触れた人間の嗜好に基づいてピザを生成する、中身がからのピザボックスだ。
一見すると食用にしか役立たないアノマリーだが、こと俺に限って……は言い過ぎだな、こと俺と一部例外に限っては他の方法で応用することが可能だ。
『自己暗示魔術、型月世界では初歩の魔術扱いだけどこの世界じゃあ結構有能なんだよねー』
『ぐ───おおぉぉぉ!?』
ピザボックスを開けた人間の好みを反映してピザを生成するピザボックス、ならば『とにかく量が多いピザが好き』という暗示をかけた人間が開けばお手軽質量兵器の完成だ。
『それじゃあチェックメイトといこうか!』
食堂、つまり密室で開けばこちらも圧死しかねないが、オベロンと愉快な犬たちがぶち抜いた扉の方へ向けてピザボックスを開けばそちらに無限のピザたちは流れていく。多少詰まってもなんせこの食堂は広い、日に数千数万の人間を生産する施設なのだ、多くの人間が使用する大食堂は広くて当然だ。そうそうに圧死することはない。
『令呪をもって命ずる!』
令呪が宿った右手を掲げ叫ぶ。
『さ、せるかぁぁぁぁああああ!』
オベロンもどこからか叫ぶ───なんかピザを押しのけてる空洞があるな。そこにいたのか。
しかしわざわざ『狙ってください』と言わんばかりに令呪が宿った右手を掲げて叫んだのはブラフ。令呪を行使するのが狙いなのはそうだが、別に右手の令呪を使う必要はない。
『獲った!!!』
右手が切断され吹き飛ぶ。オベロンが剣を投擲したのだ。
しかし────俺は六騎のサーヴァントを召喚したマスター。令呪は右手の甲に収まる数ではないし、わざわざ右手に全ての令呪を集める馬鹿でもない。
『──────来い、ランサー!』
背中に移植した令呪が反応する。
『な、に───!?』
膨大な魔力を使用した擬似的空間転移。魔力で体が構成されるサーヴァントだから使える、令呪の基本的使用例。
この世界に残った二騎のサーヴァントのうちの一騎、最優のサーヴァントであるセイバーに引けを取らない三騎士のランサーが姿を表す。
『いやぁ、せっかくの聖杯戦争の決戦の地がピザ臭くて申し訳ないね、
召喚した六騎のサーヴァントの中でトップクラスに優れていて、それでいて殲滅力に長けたランサー。他の五騎は残して対セイバー用に残して、ランサーは生き残った人類の殲滅と俺が解放したアノマリーたちの再収容に取り掛かってもらっていたのだ。
もちろん、理由は人類は滅びないと稼働しないSCP-2000『機械仕掛けの神』を稼働させるため。
『…………』
ランサーは何も喋らない。まぁ当然だ、俺が令呪で自意識を奪ったのだし、そもそも生来の狂化EXで会話がもとから成立してなかったし。
『おっと、そういえば折角オベロンが召喚されたんだ。ヘクトール・オルタじゃなくてもう一つの名前で呼んであげたほうがいいかな。まぁ君にとってはどうでもいいだろうけどね、ここまで奮闘してくれたオベロンへの当てつけだよ』
『ティターニア』
『それじゃあ、さようなら。オベロン』
『は』
『そうか、そういうことか』
『僕が呼ばれたのは、僕にしかできないことがあるからなんかじゃあなくて』
『名前で縁があるから、触媒で召喚されただけか』
『はは』
『なんてもの召喚してくれてるんだ』
『最初から僕に勝ち目なんて無いじゃないか』
『これじゃあ、地上の人類たちも全滅、生き残った財団職員もいないだろうな』
『ははは』
『くそ』
『くそ……』
『くそ…………』
『負けた腹いせだと思ってくれていいけど』
『やっぱ理解できないよ、君』
『人類を守るために人類を滅ぼすなんて』
『それってまるで』
『まるで』
『──────』
『はははは』
『そうか、君、いやお前!そうなのか!?』
『行き過ぎた愛の果て!』
『この世界の!この文明の!この人類を!』
『愛ゆえに滅ぼすもの!』
『それってまるで──────!』
オベロンの処分をヘクトール・オルタに任せた所で夢から覚めた。所詮夢は夢、俺の記憶にないところは見せないのだろう。せっかくの機会だしオベロンの死に際を見届けようかと思っていたが強制的に起こされてしまった。
「ん、ん〜…………ふぅ。『若さの泉』に浸かったとは言え、時折年寄りじみた仕草が出てしまうな…………」
SCP-006、『若さの泉』。浸かるだけで身体のあちこちが改善される、時の権力者たちがこぞって欲した若返りの泉だ。財団も存在は認知していたが暫く確保出来なかった。現在、というか日本以外の地が消えるまでは財団でもO5しか入ることは出来ないようになっている。アストラカン近くにあるので今は存在してないが。
当然俺は入った。SCP-2000『機械仕掛けの神』を起動させるとかなり時間が必要になってしまうし、そもそも聖杯戦争自体が召喚に必要な魔力を貯める時間が必要なので。これが権力の力なり。
「それで、いい夢は見れたかい、プリテンダー」
寝起きの伸びをしきってソファから降りたあと。ソファの下の闇にいるプリテンダーに声をかける。
「………………」
「そうかい、まぁ君がみたいって言うんだったらいくらでも見せてあげるさ」
念話で返ってきた返答に笑って返す。どうやら言葉にするつもりは無いらしい。無いらしいが、返答を聞く限り嫌われてるわけでも無いようだ。
少し、この特異点の誕生の経緯を知られると嫌われるかもと思っていたのだが。まぁサーヴァントとしての肉体を得たとしてもアノマリーに人間の感性を押し付けるのはよくないか。人間、財団から生まれたプリテンダーだが、その根本にあるのは現象としてのプログラムのような思考回路なのだろうか。
うーん、分からん!困る!一応いまは人扱いだし、でも人扱いを押し付けるのも…………
「………………」
「ん?なんでこんな朝方に人が来るんだ?」
「………………」
「あぁすまないすまない、聞かれてもわからんよな」
念話でプリテンダーから部屋に近付いてくる人間がいる事を告げられる。敵意は無いらしいとのこと。
まぁ敵意が無くてもミーム汚染されてたり洗脳とか暗示受けてたりなど考えられるだけでもヤバい可能性は大量にあるので、万が一に備えて俺自身の影にプリテンダーを移動させて対応することにする。
ちなみにここは執務室だ。一応俺はO5としての最高権限を理事会に移譲したとはいえO5評議会の一員、俺の協力者であるO5-12同様に財団所有の豪邸が与えられているのだが、つい最近部下に書類を押し付けたことでの復讐にあってしまい、デスマーチで泊まり込みなのである。
『はい♪これとこれ、あとあれとそれとあっちのそれとあれと、あっ、ついでにこれもお願いしますね♪』
『なにとなにとなに!?この山全部俺の!?』
『スゥー…………うっす、すいませんマスター、そろそろ定時なんで帰りますね』
『裕介太郎!裕介太郎行くな!!私を置いて行くなアアアア!!』
『誰が裕介太郎ですか。俺の名前は裕介ですよ。あっ御先さん午前勤務なのに午後までお疲れ様です、失礼しますッス』
『はい♪お疲れ様です♪あら、こちらはまだ元気そうですね?ならこちらとこちらとこちらもお願いします♪』
『いま元気ないなった!いまメンタル死んだ!やめて!やめろください!その書類どっから出してるんですか(敬語)やめろォ!』
思わず無惨のモノマネが出るくらい凄惨な光景だった。
山のように積み上がる書類、怖い笑顔を貼り付ける無惨より鬼な御先管理員、どっから集めたのってくらい寄せ集められた書類、ほんとに追加された書類、このあとまた追加された書類、書類、書類、書類書類、書類書類書類、書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類書類。
ふふ、怖いね。
今でも思い出せるよ。書類の山の上で死体のように転がる己の姿が…………書類と一体化する己の姿が。
気分はさながらエベレストである。
「それで、お客様はどちら様かな?」
扉の奥からドタドタと走る音が聞こえてくる。ここまで音が近付いてきても嫌な予感は……しない。
多分普通の職員。緊急の連絡かな?大事だから端末越しだけでなく直接でも一応連絡、とかだろう。
「O5-13!緊急事態です!」
「おや、君か───ふむ、入りたまえ」
聞こえてきたのは研究助手の声。プリテンダーに霊体化してもらって本人か確認してもらうが、本人で間違いないらしい。
そういうことならと扉を開けて迎え入れる。
上級研究員や博士、階級の高い職員では無いということは研究助手でも閲覧可能なアノマリーか、それとも完全新規のアノマリーによる新しい事案、もしくはカウンターサーヴァントの出現といったところだろうか。
「座標不明の日本海上空に時空間異常を確認!」
ほうほう。
「同時に所属不明の飛行物体の出現も確認されています!」
ほう。
「その後、その……謎のきょ、巨大ロボが現れまして」
ほう?
「飛行物体を担いだのち」
ほ?
「突如現れたチェイテ城とピラミッドと姫路城が合わさった謎の建造物とともに何処かへと姿を消しました!」
…………お?
…………カルデアだな?これ。
「それじゃあ、みんな揃ったね?事前会議を始めようか!あ、ゴルドルフ君とムニエル君は自室でのリモート出席だよ」
「まぁ、そうなるよね……」
ここは中央管制室。ゴルドルフ新所長とムニエルの服を剥いだ謎の黒幕を追うため、そして異聞帯になろうとしている特異点を止めるため、私たちは特異点突入前の会議に参加していた。
場を仕切るのはカルデアの技術顧問ダ・ヴィンチちゃんとシオン。サポートはいつもムニエルがしているけど今は自室なので代わりにセレシェイラが担当している。
「それではまずは特異点の情報についてから行こうか!」
「はい、今回の特異点は日本列島全体とその宇宙まで、かなり広く発生している大規模特異点です。トリスメギストスによると空想樹特有の魔力反応が中にあり、第八の異聞帯と化そうとしているそうですが…………空想樹は隠されているのか、明確な場所を特定するには至りませんでした」
シオンが皆の前に立って言う。傍にはシオンが召喚したサーヴァント、キャプテン・ネモがいる。
キャプテン・ネモ。ギリシャ神話の海の神トリトンと『ノーチラス号』の船長ネモを合わせた霊基で召喚された、ライダーの複合サーヴァントだ。
マスターのシオンが彷徨海で習得した分割思考を取り入れて生み出した分身のネモ・シリーズたちと一緒に私たちカルデアを支えてくれていて、カルデアの本拠地であるストームボーダーも彼の宝具のノーチラス号を骨組みに入れているという、かなりの立役者。
『空想樹が見つからん、ということは広い特異点の中を探さなければならんということだな。まぁいつもと変わらんが……』
「うん。だけど悪い情報はこれだけじゃないんだ」
「えぇ、どうやらこの特異点は第六異聞帯と同じように、外部からの侵入を拒む結界…………ていうか特性があるようで、実質的にレイシフトが不可となっていますね」
第六異聞帯。イギリスに出来た異聞帯で、妖精たちが住まう場所だった。確か、あの時はモルガンの魔術か結界だったかで、いるだけで記憶を無くしていく『名無しの森』に落とされたんだっけ。
『なにィ!?それでは侵入できんではないかシオン君!私とムニエル君はいつ服を剥がれるかわからん恐怖に怯えて過ごさねばならんのか!?』
「いえ、幸いにもこの特異点は異聞帯と同様、現在の時間軸に発生しているためストームボーダーで無理やり侵入することが可能です、ゴルドルフ氏。しかし特異点侵入後は特異点の端、良くて港町や海辺、悪くて何処か海上に出ることになると思われます」
シオンが言う。
「まぁ、ストームボーダーだと大きすぎて侵入時に確実にバレるので私的にはナイナイ!なんですが…………代わりにレイシフト時と違って私たちが直接サポートすることが可能です。なので、特異点修復中我々は状況に応じて効率的な後方支援に回れるということですね」
なるほど。特異点にレイシフトした時は通信に障害があることが多々あるが、みんな一緒に特異点に行くなら現地で通信状況を改善することも出来るかもしれないし、通信ができなくても直接口頭で情報を伝えてくれたりというのはできる。それはかなりありがたい。
霊脈のある所や敵性存在の検知なんかは正直私だけだと出来ないので、オペレーターがついてくれるのは普通に助かる。
「えー、次に特異点内のサーヴァントについてです」
「ここからは私が言おうか。現在、特異点内には複数のサーヴァント反応がある。その内のいくつがカルデアに協力的なサーヴァントかは分からないけど、その多くを味方に付けられればかなりの戦力補充になるから、特異点侵入後は空想樹捜索の次に目下の目標になるかな」
シオンにかわってダ・ヴィンチちゃんが言う。
特異点には、人理側からサーヴァントが召喚されることがある。 英霊の強さや数などの程度の差があるけれど、微小特異点でも大きな特異点でもサーヴァントが召喚されることに違いはない。
人理側のサーヴァントと協力関係を結ぶことはかなり重要だ。私も特異点修復中にはぐれサーヴァント───人理側に呼ばれたマスターを持たないサーヴァントと出会ったらまずは仮契約を交わすようにしている。
「我々カルデアには様々な英霊がいる。しかしカルデアの資源は有限で、空想樹の捜索がどれだけ長期化するか分からない以上、可能な限りカルデアのサーヴァントに頼るのは重要な場面に絞りたい」
「サーヴァントの皆さんの実体化によるリソースの消費を抑えるため、ということですね。ダ・ヴィンチちゃん」
「うん。とはいえ、あまり時間はかけられない。空想樹が特異点に根付いて異聞帯へと変貌してしまう前に空想樹を伐採する必要があるからね」
「あぁ。だから僕らはこの会議が終わり次第すぐに日本に向かうことになる。カルデア全スタッフが席についてベルトを締めた後、ストーム・ボーダーの次元穿孔機構で突破、日本列島に潜入することになる。気を引き締めてくれよ」
シオンの傍に控えていたキャプテン・ネモが言葉を発する。
最近は特異点にレイシフトするばっかりで、ストームボーダーで突入することはほとんど無かったから、イタリア・フィレンツェに出来た擬似煉獄の特異点を除くと第七異聞帯ぶりの次元穿孔だ。オーディールコールはいつの間にか解決してたり、精神世界が舞台だったりと次元穿孔を使う機会が無かったもんね。微小特異点はレイシフトで解決できるし、
『それと、トリスメギストスは今回のミッションにあたり、マシュさん以外にカルデアのサーヴァント二騎と追加の一騎の同行を推奨していまーす』
突然、ゴルドルフ新所長が映っていたモニターが消え、代わりにネモ・シリーズの一人、ネモ・プロフェッサーが出てくる。
サーヴァント二騎と一騎の同行を推奨、ということは新しくサーヴァントを召喚するんじゃなくてもうカルデアにいるサーヴァントを連れていけば良い、ってことかな?第七異聞帯の時は『召喚を推奨しています〜』って言ってたし。
…………でもなんで二騎と一騎で分けたんだろう?三騎で良かったんじゃ…………?
するとその時、管制室の扉が開き二人の影が飛び込んできた。
「未来の私も理想の私もいなくなってしまいましたが、頼もしいサーヴァントはもう一人います!」
「(なんだこの子可愛いな)あ、私もいます」
「あれ、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィとセイバーのメドゥーサ?」
「はい!ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ、ここに見参です!」
「……早口大会でもしてるの?」
扉から現れた、今回の特異点に同行するサーヴァントはサンタ・リリィとセイバー霊基のメドゥーサだった。
ふたりともオーディールコールのイドとメタトロニオスで別側面の霊基で活躍してくれたサーヴァントで、どうやら今回も助けてくれるらしい。
「今回の特異点はかなり広いんですよね?まだお仕事があるのにいなくなっちゃった二人の私の代わり、私がしっかりお手伝いします!」
「私は
「そ、そんなこと言わないでください!一緒に頑張りましょう!ね!?」
(やっぱ可愛いなこの子)
サンタ・リリィはやる気満々、メドゥーサも素直じゃないけど大事な時になれば本気を出してくれるはずだから多分問題ないかな。
…………あれ?もう一騎は?
「おっと、そうこうしているうちに特異点付近だ。まもなく当艦は大規模特異点『日本』に到達する!シオン、ダ・ヴィンチ、作戦の共有はすませたね?」
「作戦の共有は完璧、ですが彼がまだ来てないみたいですね?」
「…………もうすぐ来るみたいだから心配いらないよ。食堂の方で少々…………人魚の歌声に酔いしれていたらしい」
「あぁ……お酒を飲んでまた脱ぎ散らかしたんだね?まぁ君がそう言うのならすぐに来るんだろうし、もう次元穿孔を開始しようか」
「…………彼のことについては、オウムガイのように固く口を閉ざさせてもらうけど。次元穿孔は問題ないはずだ。今からでもできるよ」
どうやらネモによるともう一騎のサーヴァントは遅れてくるらしい。精神で繋がっているネモ・シリーズの誰かが教えてくれたんだろうか?少し妙な間があった気がするけど…………
「────会議の話はここまで。じき特異点に接触する!」
「会議?彼の話じゃなくて?」
「そこダ・ヴィンチうるさい!このストーム・ボーダーでは僕がキャプテンなんだぞ!」
『あの、カルデアの所長は私なんだが?キャプテン・ネモ?一応ね?権利は主張しないと取り上げられるって時計塔の法政科では命に関わる暗黙の了解だからね、一応ね?主張させてね?聞いてる?』
「────総員、席についてベルトを締めて!」
『キャプテン・ネモォ!?まさか私が部屋から出られないのをいい事にカルデアを掌握しようとしてないよね君ィ!?』
なんだか話が進んでしまっている。兎に角もうすぐ次元穿孔、特異点への突入が始まるみたいだ。
隣で新所長とキャプテンのやり取りを微笑みながら見つめている後輩、マシュに声をかける。
「マシュ、行こっか!」
「あっ、そうですね!行きましょう、先輩!」
マシュの手を引き席に座る。
システムアナウンスが鳴り響く。
「トリトンエンジン、一号基から三号基まで並列稼働!」
そして
「推進力六割、防御障壁四割の配分で行く!」
外の景色が暗くなった瞬間、私は見た。
「次元穿孔、開始──────」
窓の外に、確かに見た。
今までの異聞帯でも見てきた、世界を覆う空間断層型
『嵐の壁』を。
歌が、聞こえる……?
歌…………いや、違う。これは、嘆きの声だ。水底で、水を伝って心の底まで震わせてくるような、諦め、悲しみ、憂鬱の声。
…………水底?
周りを見回す。確かにほんの少し前、瞬きする間ぐらい少しの前まで、私は確かにストームボーダーにいたはず。
それが今はどうしてか暗い海底のような場所にいる。
おかしい。みんなの姿は見えない。カルデアのみんなと別々の場所に飛ばされた?
「……い……せん……!」
いや、どこからか声が聞こえてくる。さっきの聞いてるだけで苦しくなるような声じゃなくて、私のよく知っている安心する声。私のファーストサーヴァント。私の後輩。私のパラディン。
マシュ・キリエライトの声が。
多分、これは現実じゃない。レムレム睡眠で飛ばされた?それも違う。眠ってるわけじゃない、ただ瞳を閉じてしまっているだけ。
それなら、目を開けた先には、眩い世界が広がっているはず。
目を閉じることを意識する。暗い海の底のような景色が完全に見えなくなる。暗い、だけど怖くない。
目を閉じたなら、いつかは目を開くんだ。眠りはきっと覚める。暗闇も、きっといつか晴れるから。
目を開ける。最初に知覚したのは、上から差し込む一筋の光。うん、多分マシュがいるのはあそこだ。
のぼる。のぼる。ひたすらのぼる。藻掻き、息が苦しくなっても、ただひたすら足掻く。あの光を目指して。
「……んぱい……!せんぱ……!」
海の底まで差し込む光。
それに手を伸ばし、掴む─────
「…………あ、れ?もど、った?」
「先輩!目が覚めたんですね!頭などは打っていませんか!?こちらの指は何本見えますか!」
瞼が上がる。目の前には、顔と顔が当たりそうな距離でこちらを心配そうに見つめてくる可愛い後輩の姿が。
状況がイマイチ掴めてないが取り敢えず質問に答えることにする。
「う、打ってないと思う!指は四本!」
「問題ないようですね!目覚めたばかりに大変申し訳ありませんが、緊急事態です!」
緊急事態?とまだ働いていない頭を起こしてなんとか周囲を見る。
あたふたと機器をいじっているカルデア職員のみんな、冷や汗を浮かべながらみんなに指示を出してるダ・ヴィンチちゃん、キツそうに椅子にもたれかかっているサンタ・リリィとメドゥーサ…………
そして
「誰も救えない 無駄死に どうして?」
「違う 僕が見殺しにした 見捨てた あの子たちが まだ 水の底に」
様子がおかしいシオンとキャプテン。
……えっと、何があったの?
SCP-3998『ウィッカー・ウィッチは生きている』 執筆者:Fantem
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3998
SCP-2000『機械仕掛けの神』 執筆者:HammerMaiden
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2000
SCP-1690-JP『犭貪あるいはウロボロス』 執筆者:physicslike
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1690-jp
SCP-458 『はてしないピザボックス』 執筆者:Palhinuk
http://scp-jp.wikidot.com/scp-458
SCP-6666『魔性のヘクトールと恐怖のティターニア』 執筆者:djkaktus
http://scp-jp.wikidot.com/scp-6666
それじゃあ、さようなら。の元ネタ
SCP-2144-JP『やぁ!そこの君。君だよ君。そこでこのページをぼうっと眺めてる君。ちょっとしたことなんだけど、このリンクをクリックしてくれないかな。』 執筆者:Mitan
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2144-jp
SCP-006『若さの泉』 執筆者:Unknown Author, Epic Phail Spy(改稿者), Proxtown(改稿者)
http://scp-jp.wikidot.com/scp-006
御先管理員 執筆者:AiliceHershey
人事ファイルが削除済なので代わりにこちらをどうぞ
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/42594.html
書類の山の上で死体と化した主人公が言ったエベレストの元ネタ
SCP-5140『エベレスト』 執筆者:Rounderhouse
http://scp-jp.wikidot.com/scp-5140
SCP-083-JP『ノーチラスと猫』 執筆者:kyougoku08
http://scp-jp.wikidot.com/scp-083-jp
【後書き】
課題の量がヤバい激キショ講義多すぎる
ゲームする時間もFGOストーリー読み直す時間も小説書く時間もねェぜ
投稿遅れたのは大学の教授のせいなので、代わりにアラフィフが腹を切ってお詫びします
あ、そういえばタイトル変えました
急ごしらえで作ったので読みづらいとことか矛盾があるとことか誤字とか見つけたら教えてください。お願いします何でもしますから!(何でも=修正)