100年後のサッカーを、君に。   作:peko34

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連続投稿2話目です。


とある未来のエピローグ

「あはっ、あはははっ! ふひゅ……ひひ、ひははは!」

 

 ……待って、腹が……痛い! ふふっ、息ができない……!

 

『いや確かにすげーけど』

『なにがそんなツボったんだよ』

『早く解説しろ』

 

「ふぅぅー。ふふ、ごめんね。ちょっと巻き戻すね」

 

 芝高の11番。

 華村花音(はなむらかのん)が相手ゴール前でボールを持った選手に、物凄い加速で迫るシーン。

 そのままボールを奪ってゴールを決めた、圧倒的な光景。

 

「普通に見ると分かんないけどこの加速。実はとんでもないことしてんの。見て」

 

 視界情報の『解析』。その映像をPCに移して視聴者にも見えるようにする。

 

『でたあ……』

『お前のこの技術まじでなんなんだよ……』

 

 いくら詮索しようが無駄だって。端末の組んでくれた動画サイト。

 僕が現役時代のうちに解析、追跡されることはないと、お墨付きなんだから。

 

 画面では、花音の身体からとんでもない数の矢印が伸びている。

 

「まあまあ。あ、ここ! 止めるね」

 

 一時停止した画面では、彼女が地を蹴って、身体が浮いている。

 矢印は見えるが、花音の身体からは新しく生まれていない。

 

「これは身体中から力が抜けた、一瞬なんだけど。ほら、ここで次に着地する足に大量の矢印を送りこんでる!」

 

 マウスカーソルで注目ポイントを◯で囲って、コマ送りで、少しずつ画面を進めていく。

 

『分からん分からん分からん!』

『いや確かにそう見えるけど……』

 

 音も大きくしよう。ボリュームのつまみをマウスで上げると──

 

《ボン》

 

「ね⁉︎ これ地面蹴った音だよ? あり得なくない?」

『いや……嘘でしょ⁉︎』

 

「この加速、失敗すると矢印グッチャグチャになるんだ。一日中違和感に苦しむこともあんのに、ここで成功させてゴール奪うって……ふふ、あはははっ! バカだよバカ!」

 

 ここも見て欲しいとピッチを大きく映す。力の集中した足で蹴り上げた地面が、画面外へと吹き飛んでいく。

 

『ゴリラ過ぎて草』

『いやいやいや! 加速の仕組みすら理解できんかったが⁉︎』

『スローで見ると確かにとんでもねえ加速してるww』

 

「これ相手選手可哀想過ぎるなー。ちょっと顔アップするね。あ、この選手も顔出し許可取ってて大丈夫だから」

 

 突然180センチの長身女性が、自分に二段階加速して向かってくる。

 あはっ、あの技術自慢が腰引けて、目を見開きながらボールを溢してる。

 

『いや、これは確かに笑う』

『え、女子って今こんな超次元サッカーしてんの』

 

 知らない知らない。こんなことになるなんて思ってもなかったもん。

 というかもう、こっち来てから予想外が起こりすぎて頭がおかしくなりそうだ。

 

『待って。さっきの素人くさいギャルもピックアップ許可出てるってことは、こいつもなんかあんの?』

「あー、その子も実はエグいことしてるんだよ? ちょっとアップするね──」

 

《──時間》

「っと、ごめん。僕そろそろトレーニングに行かなくちゃ」

 

『…………は?』

 

「今日も見てくれてありがとー! では──流星の輝きが、今日もあなたを照らしあげますように」

 

 視聴者数もだいぶ増えてきたなー。この調子なら、来月はルームランナーも──

 や、パッパとマッマにマッサージチェアが先か……?

 

『待て。待て待て待て!』

『このギャルの解説は⁉︎』

 

 知らないよ。この子は既に追っかけてる視聴者も多いから、そっちに聞いておくれ。

 

「トレーニング優先だよ。なんか君ら、彼女らのただのファンになってきてるし」

 

『ここまで俺らが大事にされない配信ある?』

『てかそれ目的で配信してんじゃないの?』

 

 全然違うわ。目的なんかただのお金稼ぎと──

 四年に一度だけじゃなくて、毎日サッカーを見ろって言ってるの!

 

「それとこんな小娘たちより、僕を見ろってこと!! 一年後には流星の如く君らの前に現れるから、そっちを見るんだよ!」

 

『ここで配信閉じるようなクソを誰が見んだよ!』

『一年後っつったら御堂デビュー済みじゃん。普通にそっち見るわ!』

 

 こ、こいつら……

 

(ねえ、僕もうほとんど肉体完成してる気がするし、デビューしていい? いいよね⁉︎)

《90分走れる体力もないのに? 吹っ飛ばされて、怪我して、また引退したいならどうぞ》

(…………っ、くぅぅっ)

 

 こ、この時代のフィジカルモンスターども……!

 男子はサッカーが、いちいちスマートじゃないんだよ‼︎

 

「はあ……君らなんかに構ってる余裕なかった。僕はもう行くから──」

 

『悲報:女子高生ファンタジスタの謎の師匠。ただの妄想拗らせ大言壮語マンだった』

「…………言ったね?」

 

『怒ったw』

『効いてて草』

 

 僕の猿真似なんかし始めた愚妹が、よりにもよって僕より先に……ファンタジスタ、ねー。

 

「お前らID全部記録してるから! 本物のファンタジスタの復権まで、引退は許さないからな!!」

 




本当にありがとうございました!
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