新エリー都で宇宙キターッ! 作:一般天高生徒
キャラクターのエミュが難しい……
邪兎屋の三人について歩き始めて、数分。
「なあなあ」
「…………」
「なあって!」
「……俺ですか?」
「他に誰がいるんだよ」
いつの間にか隣まで来ていたビリーが、俺の顔を覗き込んでいた。少し前ではニコが歩き、そのさらに前をアンビーが警戒しながら進んでいる。そして、最後尾を任されたはずのビリーは俺の隣。
「というか、後ろの警戒は?」
「してるしてる」
「こっち向いてるじゃないですか」
「俺は高性能だからな。前を見ながら後ろも気にできるのさ!」
「それ絶対ニコさんに怒られるやつでは」
「シーッ!」
口元に人差し指を立てるビリー。機械人なのに妙に人間臭い。
「で、さっきから気になってたんだけどよ」
「はい?」
「結局アンタ、何者なんだ?」
「…………」
何者。
そう聞かれると、今日一日で一番答えるのが難しい質問かもしれない。
散歩中にホロウへ巻き込まれた普通の学生。前世の記憶を取り戻した転生者。月面に残されていたフォーゼシステムを偶然受け継いだ人間。
どれも間違ってはいない。
けど、そのどれも説明できるわけがない。
なら。
今、この姿で名乗れるものは一つだけだ。
「……仮面ライダーフォーゼ」
「カメン……ライダー?」
ビリーが首を傾げた。
「はい。仮面ライダーフォーゼです」
「へぇ~……」
俺の頭から足先までじっくり眺める。
「いいじゃねぇか! なんかめちゃくちゃヒーローっぽい名前だな!」
「ありがとうございます」
「仮面ライダー……」
アンビーもこちらへちらりと視線を向けた。
「仮面を被っているから、仮面ライダー?」
「いや……そういう意味では……」
違う。たぶん。
でも、いざ説明しろと言われると困る。そもそも仮面ライダーという名称について真面目に考えたことなんてない。
「……そういうものなんです」
「説明を諦めた」
「すみません」
「まあ名前なんてそんなモンだろ! 響きがカッコよけりゃそれでいい!」
「それはビリーの基準」
「大事だろ!?」
ビリーが笑いながら頷いたところで、ふと何かに気づいたように俺の周囲を見回した。
右。
左。
後ろ。
「……ん?」
「どうしました?」
「いや」
もう一度周囲を見る。
「ライダーなんだよな?」
「そうですけど」
「…………バイクは?」
「…………」
痛いところを突かれた。
「ないです」
「ないの!?」
「今は!」
「ライダーなのに!?」
「俺だってちょっと気になってるんですよ!」
劇中のフォーゼにはちゃんと専用マシンがある。
マシンマッシグラー。
でも、ラビットハッチにそんなものはなかった。少なくとも俺が確認した範囲では。
「徒歩?」
アンビーが言った。
「…………」
「徒歩ライダー」
「やめてください! 急にめちゃくちゃ弱そうになる!」
「でも今は歩いてる」
「事実で殴るのやめてもらえます!?」
「ハハハハ! 徒歩ライダー!」
「ビリーさんも笑わないでくださいよ!」
「ビリー」
前を歩いていたニコが振り返る。
「あんた後ろの警戒は?」
「…………あ」
「『あ』じゃない!」
「悪い悪い!」
笑いながらビリーが最後尾へ戻っていく。
「……自由だなぁ」
「ビリーだから」
「納得していいんですか、それ」
「いいと思う」
「いいんだ……」
そんなことを話しながら進む。前世でゲームをしていた時から知っていた。邪兎屋は騒がしい。ニコが怒鳴り、ビリーがふざけ、アンビーが淡々と妙なことを言う。
でも実際にその中へ入ってみると、画面越しに見ていた時よりずっと騒がしくて──思っていたより、居心地が悪くない。
「なあフォーゼ!」
「はい?」
後ろに戻ったばかりのビリーが、また声を飛ばしてくる。
「さっきのロケットとドリル以外にもあるんだろ?」
「ありますよ」
「どれくらい?」
「…………」
俺は手にしたアストロスイッチカバンへ視線を落とした。この中に入っているのは五番から二十番まで。ドライバーには一番から四番。ラビットハッチには二十一番から三十九番。そして四十番は、ない。
「……いっぱい」
「雑だな!?」
「いや、説明すると長いんですよ」
「じゃあ今度じっくり聞かせてくれよ!」
「今度?」
「おう!」
何の迷いもなく頷かれた。
「また会う気満々なんですね」
「そりゃそうだろ。こんな面白そうなヤツ、一回会っただけで終わりじゃもったいねぇ!」
「面白そうって……」
「褒めてるぜ?」
「たぶん褒めてないですよね、それ」
「ハハハ!」
明るい笑い声がホロウ内へ響く。
「ビリー」
「今度はちゃんと後ろにいるぜ!」
「声が大きい」
「そっちか!」
本当に騒がしい。
しばらく進んだところで、先頭を歩いていたアンビーがこちらを振り返った。
「フォーゼ」
「はい?」
一瞬、反応が遅れた。
今。
普通にフォーゼと呼ばれた。
「確認したいことがある」
「どうしました?」
「あなた、ホロウに入ってからどのくらい経ってる?」
「え?」
時間か。散歩中にホロウへ巻き込まれて、ラビットハッチへ行って、前世を思い出して、先代の録音を聞いて、戻ってきて、戦って。
「……数時間くらい?」
「正確には?」
「分からないです」
「そう」
アンビーの視線が俺の身体を上から下へ移動する。
「それにしては平気そう」
「平気?」
「侵食」
「…………あ」
言われて思い出した。先代は録音で、フォーゼにホロウ内で活動するための対策を施したと言っていた。
「このスーツ……ホロウの中でも活動できるようになってるみたいです」
「みたい?」
「俺も今日知ったので」
「…………」
アンビーが黙り、ニコもこちらを見る。
「本当に何も知らないのね、アンタ」
「面目ないです」
「エリート級を倒せるくらいの力があって、ホロウ内でも侵食をほとんど受けない装備……」
ニコの目が細くなった。
「…………」
「何よ」
「……売りませんよ」
「まだ何も言ってないでしょ!?」
「今ちょっと値段考えてませんでした?」
「考えてないわよ!」
「ニコ」
「何よアンビー」
「考えてる顔だった」
「アンビー!?」
「やっぱり!」
「考えただけ! 売れなんて言ってないでしょ!」
「考えてたんじゃないですか!」
後ろからビリーの笑い声が聞こえてくる。
「ハハハ! さすがニコの親分だぜ!」
「ビリーも黙ってなさい!」
「止まって」
不意に、アンビーの声色が変わった。さっきまでの空気が一瞬で消える。全員が足を止め、アンビーが腰を落とす。ビリーもいつの間にか二丁拳銃を構えていた。
「何かいるんですか?」
「前方」
数秒後、瓦礫の影から複数のエーテリアスが姿を現した。さっき戦ったような巨体ではない。比較的小型の奴が数体。
「なら、俺も──」
まだ変身中だ。こっちにだって戦える力はある。そう思って一歩前へ出たところで、アンビーの腕に止められた。
「待って」
「え?」
「まだその装備に慣れてないでしょ」
「いや、でも」
「ニコ」
「分かってる」
ニコも既に身構えている。
「フォーゼはそこで見てなさい」
「え」
「せっかく助けた遭難者に、また壁へ突っ込まれたら困るのよ」
「ぐっ……」
何も言い返せない。
「行くよ!」
ニコの声と同時に、アンビーが駆け出した。
「え?」
一瞬、消えたのかと思った。それほど速かった。
あっという間にエーテリアスとの距離を詰め、斬撃が走る。一体が大きく体勢を崩した直後、乾いた銃声が連続して響いた。
「ヒュー!」
ビリーだ。さっきまで俺を徒歩ライダー呼ばわりして笑っていた奴が、二丁拳銃を正確に撃ち込んでいる。逃げようとする相手の進路を銃撃で塞ぎ、そこへアンビーが追撃。別方向から迫った一体をニコが吹き飛ばした。
それから、ほんの僅か。
気づけば戦闘は終わっていた。
「…………」
俺は何もしていない。ただ見ていただけだ。
「よし。行くわよ」
「…………」
「どうしたの?」
アンビーが振り返る。
「いや……強っ」
思わず漏れた。
「ん?」
ビリーが銃を弄びながらこちらを見る。
「何か言ったか?」
「普通に強いなって」
「だろ?」
得意げに胸を張る。
「俺たち邪兎屋をナメてもらっちゃ困るぜ!」
「別にナメてたわけじゃないんですけど……」
前世では何度も見ていた。ゲームなら当たり前のように戦わせていたし、敵を倒すのも普通のことだった。
でも現実で見ると分かる。
こいつらは、ホロウで仕事をして生き残ってきたプロだ。
俺はフォーゼになって、さっきエリート級のエーテリアスを倒した。でも、それはフォーゼの力があったからだ。戦う技術も経験も、俺なんかこの三人の足元にも及ばない。
「……俺、やっぱり練習しないと駄目だな」
「何を?」
「ロケットとか」
「ああ。必要だと思う」
「即答」
「壁にぶつかってたから」
「見てないはずなのに何で知ってるんですか」
「ビリーが言ってた」
「ビリー!」
「悪い悪い!」
また笑い声が上がる。
そのまましばらく歩いていると、ニコが何かを思い出したようにこちらを見た。
「そういえば」
「はい?」
「フォーゼっていうのは分かったけど、アンタ自身の名前は?」
「…………」
来た。
「本名ってことですか?」
「他に何があるのよ。呼び方はフォーゼでいいとしても、名前くらい聞いておこうかなって」
「それは……」
どうする?
本名くらいなら教えてもいい──とは、どうにも思えなかった。今後もフォーゼとして動くことがあるなら、本名とこの姿が結びつくのはたぶん良くない。
この世界でフォーゼがどういう扱いになるのかすら分からないのだ。治安局や防衛軍なんかに目をつけられる可能性だってある。
「えっと……」
「ちょーっと待ったぁ!」
突然、後ろからビリーが割り込んできた。
「うわっ!?」
「何よビリー」
「ニコの親分!」
ビリーがびしっと指を立てる。
「変身ヒーローに本名を聞くなんてご法度だぜ!」
「…………は?」
ニコの顔が露骨に歪んだ。
「何そのルール」
「あるんだよ!」
「ないと思う」
「アンビーまで!?」
ビリーはめげずに両腕を広げた。
「考えてみろって! 普段はどこにでもいる普通の市民! だが悪が現れたその時、秘密の力で変身して人知れず街を守る! 正体は秘密! 本名も秘密! これぞ変身ヒーローの王道ってヤツだろ!」
こいつ。
ビリー。今だけは、お前が神に見える。
「そもそも、あたしはちょっと気になっただけなんだけど」
「なら聞かない方がロマンがあるだろ!」
「ロマンで決めないでよ」
「秘密の正体がある方が絶対カッコいいって!」
ビリーが勢いよく俺を見る。
「なあ、フォーゼ!」
「え? あ、はい」
「本名は秘密なんだろ?」
「…………」
これは。
乗るしかない。
「……秘密です」
「ほらな!」
「今絶対ビリーに合わせたでしょ」
「そ、そんなことは」
「間があった」
「アンビーさん!」
「まあいいわ」
ニコが肩を竦める。
「言いたくないなら無理に聞き出すようなことでもないし。あたしたちもフォーゼって呼べばいいんでしょ?」
「……はい」
「ただし、もしアンタが犯罪者だったりしたら話は別だからね」
「違いますよ!」
「それはまだ証明されてない」
「アンビーさん!?」
「安心しろフォーゼ! ヒーローに秘密は付き物さ!」
「ビリーさんヒーローについて詳しいですね……」
「好きだからな!」
こうして。
俺の本名は邪兎屋には伏せられた。
フォーゼ。
前世では弦太朗が変身していた仮面ライダーの名前。それが今、この三人にとっては俺自身を指す名前にもなった。
「……フォーゼ」
小さく呟いてみる。
妙な感じだ。
でも、悪くない。
「そろそろ出口」
アンビーが前方を指した。
「本当ですか!?」
「多分」
「多分!?」
「ルートに大きな変化がなければ」
「急に不安になること言わないでくださいよ!」
「ホロウだから仕方ない」
「大丈夫よ」
ニコが歩きながら言う。
「ここまで来ればあと少し」
「……よかった」
ようやく帰れる。
どれだけ時間が経ったのかも、もうよく分からない。散歩に出ただけだったのに、本当に長い一日になった。
「ところで」
ニコが俺の身体を見る。
「その格好、外でもそのままなの?」
「…………」
忘れてた。
この姿で新エリー都を歩いたら、どう考えても目立つ。
「……まずいですよね」
「まずいっていうか目立つでしょ」
「ですよね」
「解除できないの?」
「できますけど……」
邪兎屋の三人を見る。
今しがた本名を隠したばかりなのに、ここで変身解除して素顔を見せたら意味がない。
「ちょっと事情があって、人前では解除できないんです」
「へぇ」
ニコが目を細めた横で、ビリーが大きく頷く。
「やっぱり正体を隠してるんだな!」
「……そういうことにしておいてください」
ビリーが勝手に納得してくれるの、こういう時はかなり楽だ。
「問題ない」
アンビーが言う。
「使う出口は人通りが少ない」
「助かります」
その後も何度か道を曲がり、崩れた建物と歪んだ空間を抜けていく。やがてアンビーが一か所で立ち止まった。
「ここ」
「ここ?」
目の前の空間が僅かに揺らいでいる。
「抜けるわよ」
ニコを先頭に、アンビー、俺、最後にビリーの順でその揺らぎを通り抜ける。
「──っ」
空気が変わった。
遠くから聞こえる車の音。街灯。建物。見慣れた新エリー都の景色。
「…………帰ってきた」
思わず立ち止まった。
朝までは当たり前だった、何の変哲もない街並み。それが今はものすごく安心する。
「大げさね」
「いや、本当に死ぬかと思ったんで……」
「まあ、一人であそこに放り込まれて生きて帰れたなら、大げさでもないか」
「ですよね」
出た場所は古い倉庫が並ぶ区画の裏手らしく、周囲に人影はない。少なくとも今すぐ誰かに見つかる心配はなさそうだった。
「ここまで来れば一人で帰れる?」
「はい」
「本当に?」
「さすがに街中で迷子にはなりませんよ」
「ホロウに散歩で巻き込まれた奴が言うと説得力ねぇなぁ」
「ビリーさん、それ事故ですからね!?」
ビリーが楽しそうに笑う。
「じゃあ、あたしたちはここで」
ニコが手を振った。
「ありがとうございました。本当に助かりました」
「いいって」
少し照れたように視線を逸らしたニコだったが、すぐに人差し指を立てる。
「その代わり、今度ちゃんと仕事を頼む時は邪兎屋をよろしく」
「やっぱり営業するんですね」
「当たり前でしょ!」
「ニコらしい」
「アンビー!」
「またな、フォーゼ!」
ビリーが大きく手を振った。
「次会った時は他の装備も見せてくれよ!」
「約束してませんよ!」
「じゃあ今した!」
「勝手だなぁ!」
「ロケットの練習もしておいた方がいい」
「……それは本当にそうします」
「人のいない場所で」
「はい」
「建物もない場所」
「はい……」
「できれば壁もない場所」
「そこまで言わなくても!」
最後まで容赦がない。
「じゃあな!」
「またね、フォーゼ」
ニコにもそう呼ばれて、一瞬だけ反応が遅れた。
「何?」
「いや……何でもないです」
「変な奴」
「よく言われ……いや、言われたことないな」
「どっちよ」
俺も軽く手を上げる。
「……じゃあ、また」
「おう!」
「また」
「じゃあね」
三人が離れていく。
俺はしばらくその場に立ち、足音と話し声が完全に聞こえなくなるまで待った。それから周囲を見回す。右、左、後ろ。
「……行ったよな?」
誰もいない。
「解除……」
フォーゼドライバーのトランスイッチを戻す。装甲が光へ変わり、白い身体が消えていく。
「ふぅ……」
久しぶりに見る、自分自身の手。
「ようやく帰ってきた……」
ほっと息を吐き、アストロスイッチカバンを持ち直す。
「…………」
「重っ!!」
腕が一気に下がった。
「そうだった!」
変身中は余裕で持てたせいで完全に忘れていた。
「これ持って帰るのかよ……!」
家まで。
「先代ぇ……もうちょっと変身前の持ち運びも考えてくれよ……」
文句を言ったところで軽くなるわけでもない。仕方なく両手でカバンを抱え直し、家へ向かって歩き始めた。
◇
部屋へ入った瞬間、アストロスイッチカバンを床へ下ろした。
ドサッ!!
「無理……腕が死んだ」
何キロあるんだよ、これ。
フォーゼドライバーを外して机の上へ置き、ゲートスイッチもその横へ並べる。
「…………」
改めて見る。
フォーゼドライバー。アストロスイッチ。ゲートスイッチ。朝にはこの部屋に存在すらしていなかったものばかりだ。
「……夢じゃないんだよな」
呟いてみても、当然返事はない。
最低限のことだけ済ませると、俺はベッドへ身体を投げ出した。身体も重いし、頭も重い。もう何も考えたくない。
「疲れた~~~~……」
『いや~、今日はホントに大変だったね~』
「ほんとだよ……」
枕へ顔を埋めたまま返事をする。
「散歩に出ただけだったのにホロウに巻き込まれるわ、月に行くわ、前世思い出すわ、フォーゼになるわ、エーテリアスと戦うわ……」
『うんうん』
「そのあと邪兎屋に会って、何とか帰ってきて……」
『うんうん』
「カバンはクソ重いし……」
『それはごめん』
「ホントだよ。もう少し軽く──」
そこで、言葉が止まった。
「…………ん?」
今。
誰と喋った?
ゆっくり顔を枕から上げる。この部屋には今、俺しかいない。
なのに返事があった。それも一回じゃない。俺は今、完全に誰かと会話していた。
「…………え?」
一瞬で眠気が吹き飛んだ。
恐る恐る、声が聞こえた方へ顔を向ける。
床に置いたアストロスイッチカバン。その上に、いつの間にか淡い光が浮かんでいた。
「…………は?」
淡い光が、人の姿を形作っている。
宇宙飛行士が着用するような青いスーツ。その頭部は、顔全体を覆う銀色のヘルメット状の仮面に包まれている。
半透明ではあるものの、その姿には見覚えがあった。
知っている。
前世で見た。
「……タチバナ?」
『仮面ライダーフォーゼ』に登場した、あのタチバナ。
その姿と瓜二つのホログラムが、アストロスイッチカバンの上に浮かんでいた。
腕を組みながら、何故か「うんうん」と満足そうに頷いている。
「…………」
口を開けたまま固まる。
向こうもこちらを見る。
目が合った。
数秒。
すると、タチバナの姿をした何かは気軽に片手を上げた。
『こんばんは~』
ひらひらと手を振ってくる。
「…………」
一回、瞬き。
二回。
三回。
「…………誰?」
『え?』
向こうが首を傾げる。
「タチバナ……だよな?」
『ああ、見た目?』
ホログラムは自分の青いスーツを見下ろした。
『うん。そうだね』
「…………」
そうだね、じゃない。
「いや……誰だよお前ぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
今日一番の叫び声が、自分の部屋に響き渡った。
主人公
今日一日だけで色々なことがあって疲れている。
ニコ
フォーゼの機能に興味を持っている。売ったらいくらになるのかしら?
アンビー
主人公がただの一般人だと確信。なぜこんな装備を?
ビリー
仮面ライダーの響きが気に入った。主人公を面白いやつだと思っている。
タチバナ?
こんばんは〜