TS憑依転生強化さやかちゃん 作:愛しのマルゲリータ
に、日間ランキング一桁順位!?
感想や高評価ありがとうございますっ!!(感涙)
「なんで……どうして……」
その日、上条恭介は入院している病室で自暴自棄に陥っていた。
「現状の医学では、君の左手を治すことはできない」と、担当医からそう宣告されたからだ。
恭介はかつて神童と呼ばれていた、将来有望なヴァイオリン奏者だった。
しかし事故によって彼は大怪我を負い、二度と演奏のできない体になってしまった。
「動け! 動け! 動いてくれよ……」
どれだけ恭介が念じても、この左手の感覚が戻ることはない。
「う、うう……」
絶望に打ちひしがれた一人の少年が枕を濡らしていた、その時、
「もう大丈夫だよ、少年!」
病室に、突如場違いなほど明るい声が響いた。
「だ、誰!?」
恭介が声のした窓の方へと振り向くと、
「とう! 魔法少女マジカルスタイリッシュ不良スレイヤー……参・上っ!」
「ふ、不審者!?」
開け放たれた窓から月光と共に、片目以外を顔に巻いたぐるぐる巻きの包帯で隠し、魔法少女のコスプレ衣装を纏った不審者が病室に侵入して来た。
やけに気合の入ったコスプレで、背中には作り物とは思えない美しい六枚羽の光翼まで生えている。
「俺は公序良俗を乱す不良たちに絶望を振りまく者。そして……個人的に助けたいと思った人に希望を運ぶ者!」
侵入して来た不審者は、アルトヴォイスで一方的にそう名乗り、恭介のベッドの方へづかづかと歩み寄る。
「俺は君のファンなんだ。だから、今日は君のために特別な奇跡の魔法を届けよう」
そんな気取ったセリフを言い放つと、不審者は、おもむろに彼の怪我を抱えた左腕にぴとりと手で触れた。
「な、なんなんだお前はっ!」
理解が追い付かなかった。不審者の目的もわからない。
突然病室に押し入って来たかと思えば、ただ、もう何の役にも立たない左手に触れるだけ。一体何がしたいのか。恭介の頭の中は疑問符でいっぱいだった。
「……てあれ?」
ふと、不審者が触れている左手に意識を向けた瞬間、違和感があった。
感覚を失い、つい先ほどまでピクリとも動かなかった左腕。
どんなに祈っても、願っても動かせなかったその左腕が……
「え、あ……う、動くっ、動いた!?」
事故に遭う前。ヴァイオリンを弾くことができていた在りし日の時のように、指先まで意のままに動くようになっていた。
「ついでに他の怪我も治しておいた」
用は済んだとばかりに、不審者がくるりと背を向ける。
そのまま彼女は窓の方へと歩を進めた。
「ま、待って!」
慌てて恭介はその後を追う。
医者から治せないと言われた怪我が治ったのは、間違いなく目の前の不審者……否、恩人であるこの女性が何かしてくれたからだ。
ならせめてお礼を言わないと。
そう思ってベッドから立ち上がり、そういえば足も怪我していて、今は歩けなかったことに気付く。
ところが。
恭介はふらつくこともなく立ち上がることができていた。
それだけではない。
体が絹のように軽かった。
今なら、入院する前よりずっと速く走れる気さえした。
「待って、待ってください!」
恩人の背に向かって、恭介は駆け出した。
「あ、ありがとうございます。僕の怪我を治してくれて! あ、あの、何かせめてものお礼を……」
「そんなに礼がしたいなら……そうだな」
彼女が一瞬だけ振り向く。
恭介は改めて彼女の姿を目に焼き付けた。
背丈は自分と同じぐらい。髪色はよくお見舞いに来てくれる幼馴染と同じ水色。あとよく見たら背中にバットケースを背負っていた。
「その治った腕で、とびっきり美しいヴァイオリンの音色を奏でてほしい。そして、今度は君が音楽で多くの人々に希望を届けてくれ」
そう言って彼女は、唯一露わになっている片目を細める。
きっと、微笑みかけてくれたのだろう。
「僕が、音楽で、希望を……」
「そうだ。君ならできるよ、きっとね」
彼女が光翼を広げる。
その姿は、まるで宗教画に描かれていた熾天使のように神々しく、そして美しかった。
「では、さらばだ少年! 頑張って、世界一のヴァイオリニストになれよ!」
恭介が見送る中。彼女は光翼をはためかせ、夜空を照らす月に向かって飛び去っていった。
翌日、恭介の怪我が完治していることが確認され、医師や看護師の間で大騒ぎになった。
「奇跡だ!」「おめでとう!」といった、たくさんのお祝いの言葉を貰いながら、恭介は昨日出会った彼女へと思いを馳せる。
「名前……なんだったかな。そう、確か――」
後日。
「魔法少女マジカルスタイリッシュ不良スレイヤーさん、聞こえますか?」
夕暮れ時の病院の屋上で、恭介は久方ぶりに美しいヴァイオリンの音色を奏でた。
「僕から貴女への、
あの夜、絶望から救ってくれた人に。希望を運んでくれた彼女に捧げるように……。
♪♪♪♪♪♪♪♪
キュゥべえと契約した俺は、さっそく魔法少女の姿に変身してみた。
「変・身ッ!」
美樹さやかの魔法少女姿といえば、マントを着用した剣士スタイル……のはずが。
「なあにこれぇ……」
「翼だね」
マントの代わりに背中からなんか光る翼が生えていた。
アルまど様に生えていたものと似たようなものだ。
重さは全く感じないが、見た目が無駄に仰々しい。
憑依転生の影響か、あるいは願いの違いの影響か。
魔法少女としての姿も原作とは違うものになっていた。
「よし、さっそく力試しに行くか」
「魔女退治に行くのかい?」
「いや、魔法を得て進化した、魔法少女マジカルスタイリッシュ不良スレイヤーとしての初仕事だよ」
次にやったのは能力の確認。
とりあえず、家にあった包帯を魔法でなんかいい感じに巻いて顔を隠してから、夜の街へと出撃。
これまで戦闘力不足で襲撃できていなかった、見滝原最大の暴走族グループを強襲してみる。
戦闘結果? 圧勝だったね。
魔法少女の身体能力は凄い。人間の限界を余裕で超えた動きが出来るのだ。
暴走族のバイクだって片手で持ち上げられるし、バイクの最高速度のさらに倍速以上の速度で走ることもできた。
魔法少女としての武器は原作と同じ剣。
スパタやサーベルといった多種多様な刀剣類の召喚にも成功した。
ただ普通の人間相手には殺傷力高すぎて、今回の戦闘では殆ど使えなかったけど。
結局暴走族は、剣ではなく持ち込んだ金属バットに魔法を込めたマジカル金属バットで丁寧に加減してぼこぼこにした。
暴走族には中卒や高卒で立派に働いている人が多かったから、戦利品も結構な額手に入ってめっちゃ美味しい。これからは、騒音を巻き散らす暴走族も積極的に狙っていこうと思う。
お次は、願って手に入れた回復魔法の性能試験。
軽傷の暴走族相手に使っただけでは物足りなかったから、ついでに現代医学では治せない上条の怪我で実験してみることにした。
「とう! 魔法少女マジカルスタイリッシュ不良スレイヤー……参・上っ!」
「ふ、不審者!?」
病室に侵入し、頑張って声低くしながらなんか適当に魔法少女っぽいセリフを言って、回復魔法を使って上条の怪我を治してみる。
まあ、余裕で治せた。
まだ自分の体に直接使ったことないけど、この感じなら、腕の欠損ぐらいは瞬時に治せそう。
やっぱり便利だな回復魔法。
「あ、ありがとうございます。僕の怪我を治してくれて! あ、あの、何かせめてものお礼を……」
帰り際、上条がしきりにお礼をしたいと言ってきた。
別に見返りを求めてやったことじゃないし。
あくまで、魔法の実験のために治しただけだし。
親友だから特別だし。
というわけで、別にお礼とかいらんから治った腕でヴァイオリンを弾くの頑張れよ、と軽いエールを送ってから病室を去った。
♪♪♪♪♪♪♪♪
翌日。
まずはマミさんとまどかにキュゥべえと契約して魔法少女になったことを報告した。
「というわけで、私、魔法少女になっちゃいました!」
「もう契約したの、さやかちゃん!?」
まどかは目を見開いて驚いていた。そして、なら私も……と言いそうになっていたから、一旦全力で止めておく。
やっぱりまどかは危うい。願いや覚悟もなしに、この詐欺に等しい魔法少女契約なんてさせられない。今度、魔法少女になる過酷さを何らかの形で見せておいた方がいいかもな。
「……本当に後悔はない?」
「はい。マミさんみたいなかっこいい魔法少女に私もなりたい。それに欲しかった魔法も貰えたし、貰った魔法で親友の怪我も治せたので特に後悔もしてません」
俺がマミさんの目を見つめてはっきりそう言うと、マミさんは「そ、そう……納得してるなら、大丈夫そうね」と、顔を赤くしながら嬉しそうにしていた。
元弟子の杏子と喧嘩別れしてから、マミさんはずっと一人ぼっちで魔法少女やっていて寂しかったはずだ。同じ魔法少女の後輩ができて嬉しいのだろう。
「今日からよろしくお願いしますマミさん……いや、マミ師匠!」
「師匠っ……そうね。任せて、美樹さん!」
こうして、俺はマミさんの弟子になった。
「それじゃあ、行きます!」
その日の放課後。
俺の魔法少女研修兼まどかの魔法少女体験コース第二弾が始まった。
今回の相手は、委員長の魔女。
首だけがない、セーラー服を来た少女の姿をした魔女であり、マギレコでリセマラのために飽きるほど倒した相手だ。
確か、アニメ十話でメガほむ時代のほむらもこの魔女と戦っていたはずだ。
「さて、色々試させてもらいますか」
召喚したサーベルの柄を強く握りしめる。
今回は魔女と使い魔相手だから、暴走族相手には使えなかった刀剣類も本格解禁できそうだ。
基本的には魔女の相手をマミさんが、使い魔の相手を主に俺が引き受ける予定だ。
「美樹さやか、いっきまーす!」
虚空に魔法陣を展開し、踏みしめ、跳躍。
弾丸のような速さで椅子のような姿をした使い魔たちへと飛びかかり、すれ違いざまに斬り捨てる。
「まずは一体」
空中に魔法陣で足場を作り、それを踏みしめて角度を付け、鋭く方向転換。
再び別の使い魔をすれ違いざまに斬る。
だが使い魔の数は一向に減らない。
委員長の魔女のスカート中から次々と増援が湧いてくる。
「一体ずつ斬っていくと時間がかかりそう。なら……」
今度は、召喚した剣をソードビットのように浮かせ、自在に操れないか試してみる。
「――I am the bone of my sword……」
某赤い弓兵リスペクトの詠唱をして、空中に召喚した刀剣類を展開する。
十、二十……だいたいこれぐらいでいいか。感覚的には、無理しないで同時に展開できるのは千本ぐらいかな。
「射出」
展開した剣に向かってそう命令すると、使い魔の群れめがけて高速で射出された。
成功だ。
放たれた剣が使い魔たちを串刺しにしていく。
なら、これもできるか?
「
使い魔を串刺しにしている剣たちに向かって、爆発しろと命令してみる。
刹那、使い魔たちに刺さっていた剣が一斉にカッと眩い光に包まれて大爆発を起こした。
これも成功だ。
ならなら、次はただ射出するだけでなく、射出した剣に敵を追尾させたり、イメージした複雑な軌道で剣を動かしたり……と色々試してたら、いつの間にか使い魔たちは在庫切れで全滅していた。あれ、あと魔女しか残ってなくね?
「ティロ・フィナーレ!」
その魔女の方も、ちょうどマミさんに撃破された。
程なくして、結界も解ける。
だがこの魔女、せっかく倒したのにグリーフシードがドロップしなかった。ハズレやんけ。
でもまあ、武器の扱いを色々試せたから良しとしよう。
その日は、師匠であるマミさんからお褒めの言葉をいただき、マミさんの家で魔法少女デビュー祝い兼祝勝会をやってから解散した。ケーキうまうま。
次回予告
マミさん「可愛い魔法少女の後輩ができたから、もう何も怖くない……私、一人ぼっちじゃないもの!」(フラグ)