ポケットの中の毎日 作:GPTに書かせてみた
海辺の町では、夜になると灯台が光る。
三秒かけて明るくなり。
三秒かけて暗くなる。
それを繰り返す。
昔から変わらない。
僕はこの灯台で働いている。
父も、その父も灯台守だった。
だから僕がここにいることを、町の人は当然だと思っている。
僕自身も、そう思っていた。
灯台の仕事は、思っているほど多くない。
レンズを磨く。
機械を点検する。
窓を拭く。
海の様子を記録する。
そして、夕方になったら明かりをつける。
ただ、それだけ。
けれど、この町ではそれが大事だった。
夜の海には、漁船がいる。
遠くの港へ向かう貨物船もいる。
嵐の日には、帰れなくなった船が灯台を探すこともある。
だから、灯りを消してはいけない。
この灯台には、もう一人、働いている者がいる。
デンリュウだ。
灯台のてっぺんに立っている姿を、町の子どもたちはよく見上げている。
「デンリュウ、大きい!」
「今日もいる!」
「夜になると光るんだよ!」
そう言って喜ぶ。
けれど。
デンリュウが灯台の仕事をしているわけではない。
灯台の明かりは機械で動く。
デンリュウは、その横にいるだけだ。
僕は昔から、それが少し不思議だった。
「どうして、ここにいるんだ?」
ある日の夕方。
僕はデンリュウに聞いた。
「デン?」
「ずっと灯台にいるだろ」
「デン」
「海が好きなの?」
「デンリュ」
「じゃあ、光るのが好き?」
「……」
デンリュウは答えなかった。
代わりに、窓の外を見た。
夕日が海へ沈んでいる。
その光を受けて、デンリュウの赤い尻尾の球が少しだけ明るくなった。
僕はそれ以上聞かなかった。
*
冬のある夜。
強い風が吹いていた。
波が高い。
僕は何度も窓の外を確認した。
灯台の光は正常。
機械も問題ない。
時計も動いている。
「大丈夫だな」
そう呟いたときだった。
町の港から電話が入った。
『漁船が一隻、戻ってきていない』
僕は海を見る。
真っ暗だった。
灯台の光が海面を照らす。
三秒。
暗くなる。
三秒。
また明るくなる。
それでも船は見えない。
「……デンリュウ」
デンリュウがこちらを見る。
「頼む」
僕は灯台の外へ出た。
風が強い。
デンリュウもついてくる。
灯台の階段を上る。
最上階。
デンリュウが海を見る。
そのとき。
赤い尻尾が光った。
僕は目を細めた。
「デンリュウ?」
いつもの灯台の光とは違う。
もっと近い。
もっと小さい。
けれど、確かに光っている。
デンリュウが海へ向かって歩く。
僕もついていく。
岬の先まで来ると。
遠くの海に、小さな明かりが見えた。
「船だ!」
僕は無線を取った。
「こちら灯台。南東方向に船影を確認!」
返事が聞こえる。
船は、灯台の光を見失っていたわけではなかった。
霧が出ていた。
灯台の光が霧に散ってしまっていたのだ。
けれど。
その霧の向こうに、もう一つの光があった。
デンリュウの尻尾だった。
船から、こちらへ向かって光が二度点滅した。
僕は手を振った。
「見つけたぞ!」
デンリュウも鳴いた。
「デンリュウ!」
やがて船は港へ戻ってきた。
船員たちは無事だった。
港にいた町の人たちが歓声を上げる。
その中で、漁師の一人が灯台を見上げた。
「デンリュウのおかげだな」
僕はデンリュウを見る。
デンリュウは、少し照れくさそうに頭を掻いた。
*
次の日。
僕はデンリュウに聞いた。
「昨日の夜さ」
「デン?」
「どうして光ったの?」
デンリュウは海を見る。
しばらくして。
「デン」
小さく鳴いた。
僕には、その意味が分からなかった。
ポケモンの言葉が人間に全部分かるわけじゃない。
それでも、なんとなく想像はできる。
「……船が心配だった?」
「デン」
「それとも、灯台の光が届かなかったから?」
「デン」
「両方?」
デンリュウは笑った。
僕も笑った。
たぶん、正解なんてない。
デンリュウがどうしてこの灯台にいるのか。
誰にも分からない。
昔、この灯台で働いていた祖父の日記には、一行だけ書いてあった。
――海で迷ったデンリュウを助けた。
その次の日から、デンリュウは灯台に住みついた。
それだけだった。
きっと、それが始まりなのだろう。
*
春になった。
夏になった。
秋になった。
そしてまた冬が来た。
デンリュウは今も灯台にいる。
昼間は、灯台の裏で昼寝をしている。
雨の日は屋根の下にいる。
天気のいい日は岬の先まで歩く。
漁師が帰ってくると、港まで迎えに行く。
子どもたちが遊びに来れば、尻尾を光らせて喜ばせる。
そして夜になると。
灯台の横に立つ。
機械の明かりが回る。
三秒。
暗くなる。
三秒。
また明るくなる。
その隣で、デンリュウの尻尾も小さく光る。
昔の僕は、灯台の仕事をするためにデンリュウがいるのだと思っていた。
今は違う。
デンリュウはデンリュウの暮らしをしている。
灯台を守っているわけでもない。
船を導く仕事をしているわけでもない。
ただ、この場所が好きなのだ。
そして、この場所にいるから。
誰かの役に立つことがある。
人間だって同じなのかもしれない。
仕事のためだけに生きているわけじゃない。
誰かを助けるためだけに生きているわけでもない。
ただ自分のいる場所で暮らしている。
その結果として、誰かの灯りになることがある。
ある冬の夜。
僕は灯台の明かりを点けた。
デンリュウが隣に立つ。
「今日も頼むよ」
「デン」
「でも、無理はするなよ」
「デン?」
「お前は灯台じゃないんだから」
デンリュウが笑った。
僕も笑う。
海の向こうに、船が一隻見えた。
灯台の光が回る。
そして、その隣で。
デンリュウの尻尾が、ゆっくりと光った。
遠い海から見ると。
二つの光は、きっと一つに見える。
それでいい。
人間の灯りと。
ポケモンの灯り。
どちらが欠けても困る夜が、きっとある。
今夜も灯台は、海を照らしている。
その隣でデンリュウが、静かに光っている。