ポケットの中の毎日   作:GPTに書かせてみた

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むかしむかしの、そのつづき

 おばあちゃんは、昔話をするのが好きだった。

 

 夕飯のあと。

 

 縁側でお茶を飲みながら。

 

 雨の音を聞きながら。

 

 冬なら、こたつに入って。

 

 いつも決まって言う。

 

「むかしむかしね」

 

 その言葉を聞くと、私は少しだけ身構えた。

 

 だって。

 

 おばあちゃんの昔話には、ポケモンが出てくる。

 

「山には、夜になると道を作ってくれるポケモンがいてね」

 

「森には、人間の落とし物を集めるポケモンがいてね」

 

「それから、湖には――」

 

「また始まった」

 

 私は笑った。

 

 おばあちゃんも笑う。

 

「本当なんだから」

 

「そんなポケモン、いないよ」

 

「いるよ」

 

「見たことないもん」

 

「見えないだけかもしれないよ」

 

 私は、ますます笑った。

 

 おばあちゃんの話は、いつもそんな調子だった。

 

 最後には必ず。

 

「昔はね、ポケモンと人間はもっと近かったんだよ」

 

 と言う。

 

 私は、それも信じていなかった。

 

 今だってポケモンは町にいる。

 

 でも。

 

 昔話に出てくるような、特別な存在ではない。

 

 電車に乗れば駅にいる。

 

 商店街にもいる。

 

 公園で遊んでいる。

 

 それは私たちの日常だ。

 

 だから。

 

 おとぎ話みたいな出来事なんて、起こるはずがない。

 

 そう思っていた。

 

 ある夏の日。

 

 私は一人で、おばあちゃんの家へ遊びに来ていた。

 

 昼過ぎ。

 

「ちょっと、山の手前まで行ってくる」

 

「どこまで?」

 

「川のところ」

 

「一人で?」

 

「すぐそこだよ」

 

 おばあちゃんは少し考えて。

 

「暗くなる前には帰っておいで」

 

 と言った。

 

「分かってる」

 

 私はサンダルを履いて家を出た。

 

 山の手前には、小さな川が流れている。

 

 子どもの頃から、何度も遊びに来た場所だ。

 

 川沿いには大きな木が並んでいる。

 

 その向こうには森。

 

 昔はもっと深かったらしい。

 

 今は遊歩道も整備されている。

 

 私は川辺に座った。

 

 水に手を入れる。

 

 冷たい。

 

 蝉の声。

 

 風。

 

 木漏れ日。

 

 何も起こらない。

 

「やっぱりね」

 

 私は一人で呟いた。

 

 そのとき。

 

 森の奥から。

 

 かさ。

 

 と音がした。

 

 私は顔を上げた。

 

 木々の間から。

 

 小さなポケモンが出てきた。

 

 タネボーだった。

 

「あ」

 

 タネボーは私を見る。

 

 そして。

 

 くるりと背を向けた。

 

 森の中へ戻っていく。

 

「待って」

 

 なぜか。

 

 私は後を追った。

 

 少し歩く。

 

 タネボーは何度も振り返る。

 

 ついてきているか確かめるように。

 

 私は森の中へ入っていった。

 

 道は細くなる。

 

 見覚えがない。

 

 それでもタネボーは進んでいく。

 

 やがて。

 

 木々の向こうに。

 

 小さな石の橋が見えた。

 

「こんなところ、あったんだ」

 

 橋の下を川が流れている。

 

 その向こうには。

 

 一本の古い道。

 

 道の両側に。

 

 小さな灯りが並んでいた。

 

 私は立ち止まった。

 

 昼間なのに。

 

 なぜか、その灯りだけがぼんやり光っている。

 

 その瞬間。

 

 おばあちゃんの昔話を思い出した。

 

『山には、夜になると道を作ってくれるポケモンがいてね』

 

 私は笑った。

 

「まさか」

 

 でも。

 

 目の前にある。

 

 灯りのそばには。

 

 ヒトモシがいた。

 

 一匹。

 

 二匹。

 

 三匹。

 

 もっといる。

 

 みんな静かに並んでいる。

 

 私が一歩進むと。

 

 ヒトモシも一匹。

 

 ぽっ。

 

 と灯りを強くした。

 

 また一歩。

 

 ぽっ。

 

 また一歩。

 

 まるで。

 

 道を教えてくれているみたいだった。

 

「……本当にいるんだ」

 

 私は呟いた。

 

 そのとき。

 

 背後から声がした。

 

「いたでしょう?」

 

 振り返る。

 

 おばあちゃんがいた。

 

「おばあちゃん!?」

 

「迎えに来たの」

 

「どうしてここが?」

 

 おばあちゃんは笑った。

 

「昔話をしたでしょう?」

 

「それだけじゃ分からないよ」

 

「分かるよ」

 

 おばあちゃんはヒトモシたちを見た。

 

「この道はね、昔からあるの」

 

「でも、普段は見つからない」

 

「どうして?」

 

「見つけようとすると、見つからないのよ」

 

「じゃあ、どうして私は……」

 

 おばあちゃんは私を見る。

 

「誰かについていったからじゃない?」

 

 タネボーを見る。

 

 タネボーはいつの間にかいなくなっていた。

 

 私は笑った。

 

「ずるいよ」

 

「何が?」

 

「そんなの、おとぎ話じゃん」

 

「そうよ」

 

 おばあちゃんは平然と言った。

 

「昔話なんて、だいたいそんなもの」

 

 帰り道。

 

 ヒトモシたちは、もういなかった。

 

 石橋も。

 

 あの細い道も。

 

 見つからない。

 

 森を抜けると。

 

 いつもの遊歩道だった。

 

「ねえ、おばあちゃん」

 

「なに?」

 

「あれ、本当にあったの?」

 

「さあ」

 

「見たんでしょ?」

 

「昔はね」

 

「今は?」

 

「今もあるんじゃない?」

 

 おばあちゃんは、それ以上何も言わなかった。

 

 家に帰る。

 

 夕飯を食べる。

 

 お風呂に入る。

 

 いつもの夜。

 

 でも。

 

 今日は、少し違った。

 

 寝る前。

 

 私はおばあちゃんに聞いた。

 

「ねえ」

 

「うん?」

 

「昔話って、本当にあったことを話してるの?」

 

 おばあちゃんはしばらく考えた。

 

「全部が本当とは限らない」

 

「じゃあ、嘘?」

 

「そうでもない」

 

「どういうこと?」

 

 おばあちゃんは笑った。

 

「昔話っていうのはね」

 

「誰かが見たものに、誰かが感じたことを足して」

 

「それを次の人に渡していくものなの」

 

「だから、百年前と今では、少しずつ違ってるかもしれない」

 

「でも」

 

 おばあちゃんは、私の頭を撫でた。

 

「残っているものもあるでしょう?」

 

 私は。

 

 今日見たヒトモシを思い出した。

 

 あの灯り。

 

 森の道。

 

 タネボーの背中。

 

「……うん」

 

 それ以上は聞かなかった。

 

 それから何年か経った。

 

 私は大人になった。

 

 おばあちゃんの家へ遊びに行くことも、少なくなった。

 

 けれど。

 

 夏になると。

 

 たまに思い出す。

 

 あの森。

 

 あの道。

 

 ヒトモシの灯り。

 

 そして。

 

 おばあちゃんの昔話。

 

 ある夏の日。

 

 私は、親戚の子どもと川へ行った。

 

「ねえ」

 

 その子が言った。

 

「この辺って、昔からポケモンがいたの?」

 

「いたよ」

 

 私は答えた。

 

「どんなポケモン?」

 

「そうだなあ」

 

 私は少し考える。

 

 そして。

 

 笑った。

 

「むかしむかしね」

 

「山には、夜になると道を作ってくれるポケモンがいたんだって」

 

「ほんと?」

 

「さあ」

 

「見たの?」

 

「……昔、見た気がする」

 

「どんなの?」

 

「それはね――」

 

 私は川の向こうを見る。

 

 木々が風に揺れている。

 

 その奥。

 

 一瞬だけ。

 

 小さな灯りが見えた気がした。

 

 ぽっ。

 

 と。

 

 すぐに消えた。

 

 私は笑った。

 

「続きは、暗くなってから話そうか」

 

 子どもが嬉しそうに頷く。

 

 私は思う。

 

 もしかすると。

 

 おとぎ話というのは。

 

 昔の誰かが見た、不思議な出来事のことではないのかもしれない。

 

 誰かが見て。

 

 誰かが信じて。

 

 誰かに話して。

 

 その誰かが、また次の誰かに話す。

 

 そうやって。

 

 物語は少しずつ形を変えながら。

 

 ずっと続いていく。

 

 そして。

 

 いつか。

 

 昔話を聞いていた子どもが。

 

 自分の子どもに話す日が来る。

 

 そのとき。

 

 物語の中には。

 

 今日見た景色も。

 

 今日出会ったポケモンも。

 

 きっと少しだけ混ざっている。

 

 だから。

 

 おとぎ話は。

 

 「むかしむかし」で終わらない。

 

 その続きは。

 

 いつだって。

 

 今を生きている誰かのところにあるのだから。

 

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