ポケットの中の毎日   作:GPTに書かせてみた

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ミロカロスのいる湖

 その湖には、ミロカロスがいる。

 

 町では、昔からそう言われていた。

 

 朝日が湖面に差し込むころ、長い身体を水の中から現して、静かに泳ぐ。

 

 その姿を見た人は、しばらく言葉を失うほど美しいのだという。

 

 だから、町の人たちは湖を訪れた。

 

 写真を撮る人。

 

 絵を描く人。

 

 遠くから眺めて帰る人。

 

 中には、ミロカロスに会えたことを自慢するためだけに来る人もいた。

 

 私は湖のほとりで、小さなボートを貸す仕事をしていた。

 

 ミロカロスを見ることには、もう慣れている。

 

 それでも、初めて見たときのことは覚えていた。

 

 水面がゆっくり盛り上がり、朝の光の中から姿を現したとき。

 

 あまりに綺麗で、私は櫂を握ったまま動けなくなった。

 

 けれど。

 

 ある日、湖にひとりの少年がやってきた。

 

 少年はボートには乗らなかった。

 

 湖を見ても、ミロカロスを探そうともしなかった。

 

 ただ、岸辺に座っていた。

 

 しばらくすると、ミロカロスが水面から顔を出した。

 

 いつものように、ゆっくりと。

 

 少年は振り返った。

 

 そして、少しだけ眉をひそめた。

 

「……怖い」

 

 私は思わず少年を見た。

 

「怖い?」

 

「うん」

 

 少年はミロカロスから目をそらした。

 

「みんなは綺麗って言うけど、僕には大きすぎる」

 

 ミロカロスは何も言わない。

 

 ただ、水の中でゆっくり揺れていた。

 

 私は少し困った。

 

 せっかくミロカロスを見に来たのだから、喜ぶものだと思っていた。

 

「近づかなくてもいいよ」

 

 そう言うと、少年はうなずいた。

 

 その日から、少年は毎日のように湖へ来るようになった。

 

 けれど、ミロカロスには近づかなかった。

 

 岸辺に座って、本を読んだり。

 

 石を水へ投げたり。

 

 何もしないで湖を眺めたり。

 

 ミロカロスも、少年のそばには来なかった。

 

 それでも、いつも少し離れたところを泳いでいた。

 

 ある日の夕方。

 

 突然、強い風が吹いた。

 

 湖面に波が立つ。

 

 私はボートを片づけようとした。

 

 そのときだった。

 

 少年の帽子が風に飛ばされた。

 

「あっ!」

 

 帽子は湖の上へ落ちた。

 

 少年が岸から身を乗り出す。

 

 けれど、手は届かない。

 

 波にさらわれて、帽子が遠ざかっていく。

 

 その瞬間。

 

 水面が大きく揺れた。

 

 ミロカロスが泳いできた。

 

 長い身体で波を分け、帽子のそばまで行く。

 

 そして、そっと背中に帽子を乗せた。

 

 少年は呆然としていた。

 

 ミロカロスはそのまま岸へ戻ってくる。

 

 帽子を水際へ置くと、何事もなかったように離れていった。

 

 少年は濡れた帽子を拾った。

 

「……ありがとう」

 

 小さな声だった。

 

 ミロカロスは振り返らなかった。

 

 ただ、尾びれだけが水面で揺れた。

 

 それから少しずつ、少年はミロカロスに近づくようになった。

 

 最初は湖の端。

 

 次は水際。

 

 そして何週間か経ったころには、ミロカロスのそばに座るようになった。

 

 触れることはなかった。

 

 ただ、一緒に湖を眺めていた。

 

 ある朝。

 

 私は少年に尋ねた。

 

「もう、怖くないのか?」

 

 少年はミロカロスを見ながら答えた。

 

「うん」

 

 少し考えてから、続けた。

 

「綺麗だからじゃないよ」

 

「じゃあ、どうして?」

 

「優しかったから」

 

 その答えを聞いて、私は湖を見た。

 

 朝の光を浴びたミロカロスは、やっぱり綺麗だった。

 

 けれど、その日から。

 

 私は以前とは少し違う目で見るようになった。

 

 美しい身体。

 

 輝く鱗。

 

 長くしなやかな尾。

 

 そういうものだけが、ミロカロスの美しさなのではない。

 

 誰かが困っているときに近づくこと。

 

 怖がっている相手には、無理に近づかないこと。

 

 助けたあとに、見返りを求めないこと。

 

 そういう姿もまた、美しいのだ。

 

 それからしばらくして、少年は町を離れることになった。

 

 引っ越すのだという。

 

 最後の日。

 

 少年は湖の岸に立っていた。

 

 ミロカロスが水面から顔を出す。

 

「さよなら」

 

 少年が言った。

 

 ミロカロスは、いつものように静かに泳いでいる。

 

「また来るから」

 

 ミロカロスは答えない。

 

 少年は笑った。

 

「……そのときも、いてね」

 

 ミロカロスが尾びれを水面に打った。

 

 ぱしゃん、と小さな音がした。

 

 それだけだった。

 

 けれど少年は嬉しそうだった。

 

 帰っていく少年の背中を見ながら、私は思った。

 

 美しいものは、見れば分かる。

 

 けれど、本当に美しいものは。

 

 長く一緒にいなければ、分からないのかもしれない。

 

 湖は今日も静かだった。

 

 ミロカロスは水の中にいる。

 

 誰かに見られるためでもなく。

 

 褒められるためでもなく。

 

 ただ、自分の場所で生きている。

 

 そして時々。

 

 誰かの心を、そっと助けている。

 

 その姿を見ながら、私は今日もボートを岸につないだ。

 

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