ポケットの中の毎日 作:GPTに書かせてみた
うちの店には、花占いをするフラエッテがいる。
といっても、私は占い師ではない。
町の小さな花屋をやっているだけだ。
店先の鉢植えの間に、小さな丸いテーブルをひとつ置いている。
そこにフラエッテが座っている。
花を一輪、手に持って。
お客さんがやってくると、フラエッテはその人の顔を見て、それから花を見つめる。
そして、花びらを一枚ずつ落としていく。
――好き。
――嫌い。
――好き。
――嫌い。
昔からある、あの花占いだ。
もちろん、フラエッテが本当に未来を知っているわけではない。
でも、不思議なことに。
みんな、フラエッテの前では真剣になる。
「今度の試験、受かるかな」
「好きな人に告白してもいいかな」
「引っ越したほうがいいと思う?」
フラエッテは答えない。
ただ、花びらを一枚ずつ落としていく。
最後の一枚が残る。
その瞬間、みんなが笑ったり、ため息をついたりする。
私はその様子を見るのが好きだった。
占いの結果よりも。
占っている間の、その人の顔を見るのが好きだった。
ある雨の日。
ひとりの女の子が店に来た。
高校生くらいだった。
傘を閉じて、店先でしばらく立っている。
「花、見ていく?」
声をかけると、女の子は首を横に振った。
「……フラエッテに占ってほしくて」
「どうぞ」
フラエッテが顔を上げる。
女の子は椅子に座った。
「私、来月から遠くの町へ行くんです」
フラエッテが花を見つめる。
「ずっと行きたかった学校があって。合格したんです」
女の子は笑った。
でも、すぐに俯いた。
「だけど、おばあちゃんをひとりにしていくのが心配で」
花びらが一枚落ちた。
――好き。
女の子は少し笑った。
「行ってもいいと思う?」
フラエッテは答えない。
また一枚。
――嫌い。
「行かないほうがいい?」
また一枚。
――好き。
女の子が困った顔をする。
「どっちなの?」
私は思わず笑ってしまった。
「フラエッテに聞いても、たぶん分からないよ」
「え?」
「花占いって、そういうものだから」
女の子は黙った。
フラエッテも黙っている。
最後の花びらが、風に揺れた。
けれど、落ちなかった。
「……落ちない」
女の子が言った。
フラエッテは花を両手で抱えるように持っていた。
私は少し驚いた。
いつもなら、最後まできちんと花びらを落とすのに。
「もしかしたら」
私は言った。
「フラエッテも、迷ってるのかもね」
女の子が花を見る。
フラエッテは、女の子を見ていた。
しばらくして、女の子は立ち上がった。
「……帰ります」
「うん」
「おばあちゃんと話してみます」
店を出る前に、女の子は振り返った。
「ありがとう、フラエッテ」
フラエッテは小さく花を振った。
その日の夕方。
店を閉めようとしていると、フラエッテが私のところへやってきた。
手には、さっきの花。
「どうした?」
フラエッテは花びらを一枚、落とした。
――好き。
もう一枚。
――嫌い。
私は笑った。
「今度は私を占うの?」
また一枚。
――好き。
「何だよ、それ」
最後の花びらが残った。
フラエッテは、それを落とそうとしない。
「……私も?」
フラエッテが頷く。
「私も、何か迷ってるように見える?」
フラエッテは答えない。
私は少し考えた。
花屋を続けるか。
この町に残るか。
もっと大きな店を出すか。
そういえば私も、ずっと決められずにいた。
毎日花を売って。
毎日同じ道を歩いて。
変わらないことを、安心だと思っていた。
でも本当は。
変わるのが怖かっただけなのかもしれない。
私はフラエッテの持つ花を見た。
「ねえ、フラエッテ」
最後の一枚に触れる。
「これ、落とさなくてもいいんじゃない?」
フラエッテが首を傾げる。
「だって、好きか嫌いかなんて、今すぐ決めなくてもいいこともあるから」
フラエッテは少しだけ笑ったように見えた。
翌朝。
昨日の女の子が店に来た。
「おばあちゃんと話しました」
「そう」
「行ってきなさいって」
女の子は笑った。
「寂しいけど、行ってみることにしました」
私は「よかったね」と言った。
女の子はフラエッテの前にしゃがむ。
「昨日の花占い、結局どっちだったの?」
フラエッテは花を一枚、落とした。
――好き。
女の子は笑った。
「そっか」
それだけ言って、店を出ていった。
私はその背中を見送った。
きっと、あの子はこれからも迷うだろう。
遠くの町へ行って、寂しくなる日もある。
帰りたくなる日もある。
それでも、自分で選んだ道を歩いていく。
花占いは、未来を教えてくれるものじゃない。
たぶん。
自分が本当は何を望んでいるのか。
それに気づくための、小さなきっかけなのだ。
店先で、フラエッテが今日の花を選んでいる。
朝の光が花びらに落ちる。
私はその隣で、今日も花を並べる。
好きか。
嫌いか。
行くか。
残るか。
答えは、いつだって二つだけとは限らない。
だから最後の一枚は。
急いで落とさなくてもいい。
自分で決める、その日まで。