ポケットの中の毎日   作:GPTに書かせてみた

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殻の中の記憶

写真家という仕事をしていると、ときどき妙なものに出会う。

 

誰もいない森の奥で、見たことのない花を見つけたり。

 

何年も姿を見せなかったポケモンを偶然見つけたり。

 

そういうとき、カメラを持っていてよかったと思う。

 

シャッターを切れば、その瞬間を残せる。

 

その一枚は、あとから何度でも見返せる。

 

僕はそれを「記録」と呼んでいた。

 

その日までは。

 


 

山あいの森で撮影をしていた。

 

目的は、野生ポケモンの生態を記録すること。

 

珍しいポケモンを探しているわけではなかった。

 

できるだけ人の少ない場所を歩いて、そこに暮らしているポケモンを撮る。

 

朝早くから森に入り、昼を過ぎても歩き続けた。

 

雨が降った。

 

やがて雨が止んだ。

 

木々の葉から水滴が落ちる。

 

ぽた。

 

ぽた。

 

森が静かになった。

 

そのときだった。

 

「……ん?」

 

遠くから、何かの音が聞こえた。

 

低い声。

 

続いて、地面を踏む音。

 

僕はカメラを構えた。

 

木々の間から姿を見せたのは、ヌメルゴンだった。

 

それだけなら、珍しくはない。

 

けれど。

 

僕は息を止めた。

 

その姿は、僕が知っているヌメルゴンとは違っていた。

 

大きな殻を背負っている。

 

丸みを帯びた体。

 

角のような触角。

 

そして、全身を包むような立派な殻。

 

図鑑でしか見たことがない。

 

ヒスイのすがた。

 

絶滅したとされているポケモンだった。

 

「……嘘だろ」

 

思わず声が漏れた。

 

ヌメルゴンがこちらを見る。

 

僕は動かなかった。

 

ヌメルゴンも動かなかった。

 

しばらく見つめ合ったあと。

 

森の奥から、もう一匹。

 

そして、その後ろから小さな影が二つ。

 

合計で四匹。

 

家族だった。

 


 

僕は夢を見ているのかと思った。

 

大きなヌメルゴンが、木の根元に座る。

 

もう一匹が、その隣に体を寄せる。

 

小さなヌメイルたちは、殻のまわりを楽しそうに走り回っている。

 

一匹が転ぶ。

 

親が振り返る。

 

小さなヌメイルは何事もなかったように立ち上がる。

 

また走る。

 

ごく普通の家族だった。

 

ただ。

 

その姿が、歴史のどこにも残っていないだけだった。

 

僕はカメラを構えた。

 

手が震えていた。

 

これは大発見だ。

 

写真を撮れば、世界中が驚く。

 

研究者たちがやってくる。

 

ニュースになる。

 

僕の名前も残るかもしれない。

 

そう思った。

 

そして。

 

シャッターを切った。

 

一枚。

 

二枚。

 

三枚。

 

家族が歩く。

 

殻が光を受ける。

 

小さなヌメイルが親の殻に触れる。

 

シャッターを切る。

 

また一枚。

 


 

そのとき。

 

大きなヌメルゴンがこちらを見た。

 

まっすぐに。

 

僕を見る。

 

その目は、警戒していた。

 

でも、逃げようとはしなかった。

 

僕はカメラを下ろした。

 

それ以上、撮ることができなかった。

 

写真家としては、もっと撮るべきだったのかもしれない。

 

全身。

 

顔。

 

殻。

 

歩き方。

 

生息地。

 

何もかも。

 

けれど。

 

目の前にいるのは「絶滅したはずのポケモン」ではなかった。

 

家族だった。

 

子どもを見守る親。

 

親のそばで遊ぶ子ども。

 

雨上がりの森で、今日を生きている四匹。

 

それを僕は、急に世界中へ持ち出してはいけないような気がした。

 

「……ごめん」

 

小さくつぶやく。

 

ヌメルゴンは答えない。

 

ただ、子どものほうへ顔を向けた。

 


 

帰り道。

 

僕は何度もカメラを確認した。

 

写真は、残っている。

 

ちゃんと撮れていた。

 

四匹の姿が、はっきり写っている。

 

森の光。

 

濡れた葉。

 

大きな殻。

 

小さな体。

 

家族の距離。

 

どの写真も、信じられないほど美しかった。

 

町へ戻って、写真をパソコンに取り込む。

 

画面に並ぶ四匹。

 

僕はしばらく眺めていた。

 

そして、フォルダを作った。

 

名前をつける。

 

「殻の中の記憶」。

 

その中へ、すべての写真を入れた。

 

バックアップも取った。

 

外付けの記録媒体にも保存した。

 

それから。

 

公開用のフォルダには、一枚も入れなかった。

 


 

翌日。

 

写真仲間から電話が来た。

 

「何か撮れた?」

 

僕は少し迷った。

 

「まあ、いろいろ」

 

「珍しいの?」

 

「……珍しいと思う」

 

「じゃあ見せてくれよ」

 

僕は画面を見る。

 

そこには、昨日の家族がいる。

 

「まだ、整理できてなくて」

 

「そうか。楽しみにしてる」

 

電話を切った。

 

僕は椅子に座ったまま、写真をもう一度見る。

 

この写真を発表すれば、多くの人が見る。

 

研究が進むかもしれない。

 

絶滅したとされるポケモンについて、新しいことが分かるかもしれない。

 

それは悪いことではない。

 

むしろ、写真家としては大きな功績になる。

 

それでも。

 

あの森に、大勢の人が入っていくところを想像した。

 

カメラを持った人。

 

研究者。

 

見物人。

 

珍しいポケモンを一目見ようとする人。

 

昨日の静かな森が、騒がしくなる。

 

そう考えたら。

 

公開ボタンを押せなかった。

 


 

何年か経った。

 

僕は写真家を続けている。

 

いろいろなポケモンを撮った。

 

写真集も出した。

 

雑誌に写真が載ったこともある。

 

けれど。

 

あの四匹の写真だけは、一度も発表していない。

 

ときどき、昔の写真を整理する。

 

そのたびに、あのフォルダを開く。

 

画面の中には、あの日の森がある。

 

雨上がりの葉。

 

柔らかな光。

 

大きな殻。

 

その隣にいる家族。

 

小さなヌメイルが、親の殻に頭を寄せている。

 

何年経っても、その写真を見ると分かる。

 

あの日の森の匂い。

 

水滴の音。

 

湿った土の感触。

 

そして、シャッターを切る前に聞こえた、あの小さな鳴き声。

 

写真には写らないものまで、思い出す。

 


 

ある日。

 

若い写真家に聞かれた。

 

「今まで撮った中で、一番すごい写真は何ですか?」

 

僕は少し考えた。

 

そして答えた。

 

「誰にも見せていない写真かな」

 

「え?」

 

「写真って、見せるためだけに撮るものじゃないから」

 

若い写真家は不思議そうな顔をした。

 

僕は笑った。

 

「自分が覚えておくために撮る写真もあるんだよ」

 

その夜。

 

僕はまた、あのフォルダを開いた。

 

四匹のヌメルゴンがいる。

 

あの日と同じように。

 

今も森のどこかで暮らしているのだろうか。

 

あの小さかった子たちは、もう大きくなっただろうか。

 

新しい家族が増えたかもしれない。

 

僕には分からない。

 

分からなくていいと思っている。

 

知らないままのほうが、あの森はあの森でいられる。

 

僕は写真を一枚だけ印刷した。

 

額には入れない。

 

机の引き出しにしまう。

 

誰にも見せない。

 

それでも、ときどき取り出す。

 

そして思い出す。

 

あの日。

 

絶滅したはずのポケモンがいた。

 

奇跡だった。

 

でも、本当の奇跡は。

 

そんなポケモンたちが、誰にも知られず、誰にも騒がれず。

 

ただ家族として、そこに暮らしていたことなのかもしれない。

 

写真の中で、大きな殻が光っている。

 

まるで何かを包み込むように。

 

僕はその写真を、そっと引き出しへ戻した。

 

殻の中には。

 

ポケモンの姿だけではなく。

 

あの日の森と。

 

僕が見たものと。

 

僕だけが知っている時間が、

 

静かにしまわれている。

 

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