ポケットの中の毎日 作:GPTに書かせてみた
トゲデマルは、丸い。
ころころしていて。
小さくて。
走ると、ころころ転がる。
だから、初めて見た人はだいたいこう言う。
「かわいい!」
そして次に。
「触ってもいい?」
と聞く。
私は、そのたびに少し困る。
「……気をつけてくださいね」
トゲデマルは、かわいい。
でも、触ると痛い。
背中の棘が、思った以上に鋭いからだ。
うちの店は、小さな電気屋だ。
私は家電の修理をしている。
トゲデマルは、店にある電気製品の近くにいるのが好きだった。
コンセントのそば。
古いラジオの横。
修理中の扇風機の下。
電気が流れると、トゲデマルの頬が少し明るくなる。
私は仕事をしながら、よくトゲデマルを見る。
トゲデマルは、人が好きだ。
お客さんが来ると近づいていく。
でも。
誰かが手を伸ばすと、すぐに丸くなる。
棘が立つ。
「わっ」
驚いた人が手を引っ込める。
トゲデマルは、その場から逃げる。
しばらくすると、また近づいてくる。
そして、また丸くなる。
私はその様子を見ていて、いつも思う。
あの子は、いったいどうしたいのだろう。
ある日。
常連の男の子が来た。
トゲデマルのことが大好きな子だった。
「今日は触れるかな?」
「無理に触らなくてもいいんじゃない?」
「でも、友達になりたい」
男の子はしゃがんだ。
トゲデマルも近づいた。
鼻先が触れそうな距離。
男の子が手を伸ばす。
トゲデマルが丸くなる。
男の子が手を止める。
しばらく、二人とも動かなかった。
「……痛いの?」
男の子が聞く。
トゲデマルは首を傾げる。
「怖いの?」
トゲデマルが、少しだけ後ろへ下がる。
男の子は手を引いた。
「そっか」
それ以上、近づかなかった。
トゲデマルはしばらく男の子を見ていた。
やがて。
ころころと、男の子の足元まで転がっていった。
「……来た」
男の子が笑う。
トゲデマルは足元で丸くなる。
男の子は触らない。
ただ、そこにいる。
それから二人は、少しずつ仲良くなった。
男の子が来る。
トゲデマルが近づく。
男の子は手を伸ばさない。
トゲデマルも丸くならない。
代わりに、足元をころころ転がる。
ときどき、男の子の靴に身体を寄せる。
「これくらいなら、痛くないんだ」
男の子が嬉しそうに言った。
私は笑った。
「トゲデマルが自分で決めてるんだよ」
ある雨の日。
男の子が店に来た。
いつもと様子が違った。
「どうしたの?」
「学校で……」
男の子は俯いた。
「友達と喧嘩した」
トゲデマルが近づいてくる。
男の子は何も言わない。
トゲデマルも何もしない。
ただ隣に座る。
男の子が手を伸ばしかける。
途中で止める。
「……触りたいな」
トゲデマルが丸くなる。
男の子は笑った。
「やっぱり駄目か」
けれど、その顔は少しだけ明るくなっていた。
トゲデマルは丸いまま。
男の子の隣にいる。
棘を立てたまま。
それでも離れない。
私は、その光景を見ながら思った。
棘は、拒絶なのだろうか。
きっと、それだけではない。
自分を守るためのもの。
怖いものから逃げるためのもの。
そして。
誰かに傷つけられないためのもの。
でも、同時に。
誰かに近づきたいという気持ちもある。
だからトゲデマルは、近づいては丸くなる。
離れては、また近づく。
近づきたい。
でも、傷つきたくない。
触れてほしい。
でも、触られるのは怖い。
その間で、いつも迷っている。
それは、人間だって同じなのかもしれない。
誰かと仲良くなりたい。
でも、嫌われるのは怖い。
本当のことを話したい。
でも、傷つくのは怖い。
だから、ときどき心に棘を立てる。
誰にも触れられないように。
そして。
誰かが、その棘を無理に抜こうとせず。
そこにいることを待ってくれたとき。
少しずつ、丸くなれる。
雨が上がった。
男の子が立ち上がる。
「じゃあ、帰るね」
トゲデマルが見上げる。
「また明日」
男の子が手を振る。
トゲデマルは、ころころと玄関までついていった。
でも、外には出ない。
男の子も無理に連れていかない。
「またね」
扉が閉まる。
トゲデマルがこちらを見る。
「寂しいのか?」
トゲデマルは答えない。
ただ、私の足元まで転がってくる。
私は手を伸ばしかけて。
やめた。
「……今日は、ここまでにしようか」
トゲデマルが私の靴に身体を寄せる。
棘が少しだけ触れた。
痛くない。
ほんの少しだけ。
私は笑った。
「近づき方って、難しいな」
トゲデマルは、ころんと転がった。
棘を立てることも。
丸くなることも。
近づくことも。
離れることも。
きっと、全部その子の大切な選択なのだ。
だから私は待つ。
触れることを急がない。
近づくことを求めない。
その子が、自分から近づいてきたときだけ。
そっと隣にいる。
店の奥で、古いラジオが鳴っている。
トゲデマルがその横で丸くなる。
小さな身体から、ぱちぱちと静かな電気がこぼれる。
丸い背中。
鋭い棘。
矛盾しているように見えるけれど。
たぶん、あれでいい。
近づきたい気持ちと。
守りたい気持ち。
その二つを抱えたまま。
今日もトゲデマルは、ころころ転がっている。