ポケットの中の毎日 作:GPTに書かせてみた
吾輩はエネコである。
名前は、まだない。
いや。
名前なら、あるにはある。
「ミケ」
と呼ばれている。
しかし吾輩は、その呼び方を認めた覚えがない。
なぜなら吾輩には、立派な三色の毛並みなどないからである。
薄い桃色。
それが吾輩の色である。
どう見てもミケではない。
人間というものは、ときどき妙なことをする。
吾輩は、そんな人間たちの家に住んでいる。
正確には。
住ませてもらっている。
もっと正確に言えば。
吾輩が勝手に住みついた。
最初にこの家へ入った日のことは、よく覚えている。
雨が降っていた。
腹が減っていた。
軒下に座っていたら、扉が開いた。
「まあ」
女が言った。
「濡れちゃったの?」
吾輩は何も答えなかった。
猫というものは、簡単に返事をするものではない。
女はタオルを持ってきた。
吾輩は逃げた。
女は追いかけなかった。
それがよかった。
しばらくすると。
皿が一つ、置かれた。
いい匂いがした。
吾輩は食べた。
その日から。
吾輩は、この家にいる。
人間の家というのは、不思議なところである。
朝になると、男が起きる。
顔を洗う。
服を着る。
何かを食べる。
そして、急いで出ていく。
なぜそんなに急ぐのか。
吾輩には分からない。
女も起きる。
洗濯をする。
掃除をする。
料理をする。
それから時計を見る。
また時計を見る。
人間は、時計を見るのが好きらしい。
吾輩は時計を見ない。
腹が減れば起きる。
眠ければ寝る。
日向があれば、そこへ行く。
それで十分である。
昼頃になると、吾輩は窓辺で昼寝をする。
これは重要な仕事だ。
太陽の位置を確認し。
布団の柔らかさを確かめ。
最適な角度を探す。
そして眠る。
非常に忙しい。
ところが。
「ミケ、また寝てる」
女が言う。
また、という言葉が気に入らない。
吾輩は昨日も寝た。
一昨日も寝た。
たぶん明日も寝る。
それが何だというのだ。
人間は、寝ている者を見ると安心するくせに。
「気持ちよさそうね」
そう言って笑う。
ならば文句を言う必要はない。
ある日。
男が帰ってきた。
いつもより遅い。
玄関を開ける音がする。
「ただいま」
声が小さい。
吾輩は階段の上から男を見る。
いつもなら、男は吾輩を見ると笑う。
今日は笑わなかった。
靴を脱いで。
鞄を置いて。
そのまま椅子に座った。
「どうしたの?」
女が聞く。
「……仕事で失敗した」
男はそう言った。
吾輩には、仕事というものが何なのかよく分からない。
魚を捕まえることか。
昼寝の場所を探すことか。
縄張りを守ることか。
人間の仕事は、それとは違うらしい。
男は、ずっと俯いていた。
女が何か話している。
男は首を振る。
吾輩は、その様子を見ていた。
そして。
少し考えた。
吾輩は、男の膝へ飛び乗った。
「ミケ?」
男が驚く。
吾輩は丸くなった。
それだけである。
男はしばらく黙っていた。
やがて。
吾輩の背中を撫で始めた。
「……お前はいいな」
何がだ。
「何も考えてなさそうで」
失礼な。
吾輩だって考えている。
晩飯は何か。
明日はどこで寝るか。
窓の外にいる鳥は、どのくらい近づけば逃げるか。
とても重要なことである。
男は、少し笑った。
「そうだよな」
「明日になれば、また何とかなるよな」
吾輩は返事をしなかった。
ただ、膝の上で丸くなっていた。
翌朝。
男はいつもの時間に起きた。
顔を洗い。
服を着て。
朝飯を食べる。
玄関で靴を履く。
「行ってきます」
女に言う。
それから。
吾輩を見る。
「ミケも、行ってくるな」
吾輩は尻尾を一度振った。
男は笑った。
そして出ていった。
吾輩は窓から外を見る。
人間というものは。
毎日、どこかへ行く。
何かをしに行く。
失敗する。
落ち込む。
それでも。
また次の日になると起きる。
ずいぶん大変な生き物である。
吾輩なら。
嫌なことがあれば昼寝をする。
腹が減れば食べる。
雨が降れば軒下へ行く。
それでいい。
そう思っていた。
ところが。
ある日、吾輩は庭で転んだ。
木に登ろうとして。
足を滑らせた。
どすん。
地面に落ちた。
痛い。
非常に痛い。
吾輩はしばらく動けなかった。
すると。
女が飛んできた。
「ミケ!」
抱き上げられる。
吾輩は嫌がった。
しかし。
痛くて逃げられない。
女は吾輩を診療所へ連れていった。
幸い、大した怪我ではなかった。
薬を塗ってもらい。
家へ帰る。
女は吾輩を布団へ乗せた。
「今日は大人しくしてなさい」
吾輩は不満だった。
大人しくするのは、いつもしている。
しかし。
女は何度も吾輩の様子を見に来た。
水を替える。
餌を置く。
毛布をかける。
そのたびに。
「痛くない?」
と聞く。
吾輩は少しだけ目を細めた。
痛い。
でも。
少し、嬉しい。
夜。
男が帰ってきた。
「ミケ、どうした?」
吾輩は布団の中から顔を出す。
男は心配そうに近づいてきた。
「木から落ちたんだって」
女が説明する。
「そそっかしいなあ」
男が笑う。
失礼な。
吾輩はそっぽを向いた。
すると。
男が吾輩の頭を撫でた。
「でも、よかった」
その声は。
仕事で失敗した日の声とは違っていた。
吾輩は思った。
人間というのは。
案外、悪くない。
翌朝。
吾輩は布団から出た。
足はまだ少し痛い。
それでも歩ける。
窓辺へ行く。
いつもの場所である。
太陽が差している。
暖かい。
吾輩は丸くなる。
女が笑う。
「もう元気ね」
吾輩は目を閉じた。
吾輩はエネコである。
名前は、まだない。
たぶん。
なくてもいい。
名前がなくても。
帰る場所はある。
腹が減れば、ご飯が出てくる。
寒ければ、毛布がかかる。
転べば、心配してもらえる。
誰かが落ち込んでいれば。
吾輩は膝の上に乗る。
それだけで。
少し元気になることもある。
人間は。
ずいぶん難しいことを考える。
明日のこと。
昨日のこと。
仕事のこと。
お金のこと。
自分が何者なのかということまで考える。
吾輩は、そんなことを考えない。
今、暖かい。
今、眠い。
今、ここにいる。
それでいい。
……いや。
一つだけ。
考えていることがある。
吾輩は、この家が好きである。
女が好きである。
男も、まあ、好きである。
そして。
ここで眠るのが好きである。
だから今日も。
吾輩は、ここで丸くなる。
明日も。
たぶん、そうする。
吾輩はエネコである。
名前は、まだない。
だが。
帰る場所なら。
もう、ある。