ガールズ&パンツァー 〜幼馴染は『戦場のローレライ』〜 作:三坂
イケメン戦車道講師につられて飛び出した沙織…だったが、駐車場あたりまで出たところでその戦車をどう探すのかという問題を思い出だし、絶叫ともいえる悲鳴を上げていた。
「…とは言ったものの……、何処にあるっていうのよー!!」
まあ流石に駐車場に止まってたら誰かが気づくというもので、ここにはないんじゃないかと華は指摘していき、沙織はだって一応は車じゃんと返答を返す。
…ちなみに戦車は、軍事や法律の専門的な分類において「車両(軍用車両)」という大きな車グループの一部には属しており、一般的なマイカー(自動車)とは目的が異なるが、一応は車らしい。
「駐車場に戦車は止まってないかと…」
「だって一応は車じゃないー…」
「まあ確かに車の分類ではあるけどねー、正確には軍用車両なんだけど」
その後裏の山林ならあるかもしれないということで行ってみようと沙織が提案しながら歩き出していき、みほもその後をついていこうとしたのだが…
「じゃあ裏の山林に行ってみよ!」
丁度そのタイミングで木陰に隠れて後をついて行こうとした優花里と目が合い、慌てて彼女は隠れていた木陰に戻ってしまう。
もちろんみほも気にはなったもののどう声をかけていいか分からないため、2人についていこうとしかけたのだが…
「……あっ…!」ささっ
「……?」
そんな隠れていた優花里の背後に何処からともなく再び現れた玲が、一緒に探そうよーと声をかけながら飛びついていき、思わず優花里は変な声を出してしまう。
「…ねーっ、そんなところに隠れてないで一緒に戦車探そーよっ♪」
「ひゃん!?」
だがそのお陰でみほも声をかけるタイミングをつかめたのか、自分からもよかったら一緒に探さないかと提案していく。
「私からも…!良かったら一緒に探さない?」
「いっ…いいんですか!?」
恐らく自分からはなかなか声をかけるタイミングが掴めなかったのかもしれない、だが誘われたことが嬉しかったのか優花里は恥ずかしそうにモジモジしながら自己紹介をする。
「あっあの…普通Ⅱ科2年C組、秋山優花里といいます…!えっと…」
が自己紹介をしたことで緊張がほぐれたのか普段の雰囲気(普段を知らないため何とも言えないが)に戻った優花里はビシッとした表情で頭を下げていく。
もちろん華たちもこちらこそ…と挨拶していき、みほや玲と後に続こうとしかけたのだが…
「不束者ですが、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします、五十鈴華です」
「武部沙織でーす!」
「あっあの私…」
だが存じ上げていたのかみほと玲の名前を述べていき、軍人並みのビシッとした敬礼を返す。
「存じ上げおります!西住みほ殿と西園寺玲殿ですよね!!」
「あ…はい」
「おー、知ってるんだー」
「では…!よろしくお願いいたします!」
こうして互いの自己紹介が終わったタイミングでふと優花里は、玲の顔を見てどこかで見たことがあるな…そんな気がしていた。
「……あの、玲さん」
「ん?」
「玲さんって、もしかして……」
玲が振り返る。その後そのことについて触れようか少し優花里は少し迷ったあと、意を決して口を開いた。
「『戦場のローレライ』って――」
「はい、次!」
「え?」
…がその前に玲は満面の笑みを浮かべ、優花里の言葉を遮った。
「戦車探そ!」
「え、あの……」
「ほらほら! まだ見てないところいっぱいあるよ!」
玲はなんとか制止しようと試みる優花里の背中を軽く押して、駐車場を後にしていく
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「んー?」
「今、私が言おうとしたのは……」
「戦車の話でしょ?」
「いえ、そうではなくて……」
「じゃあ、なおさら戦車探さなきゃ!」
「どうしてそうなるんですか!?」
優花里が困った顔を浮かべるが、玲はそんな優花里を見て、楽しそうに笑いながら相変わらず背中を押していき、話題を逸らすかのように話を続ける。
「だって、せっかく戦車道やるんだよ?」
「……はい」
「だったら、まずは戦車を探さないと!」
だが優花里は玲が見せていたその表情からは、先ほどまでの軽い雰囲気が少しだけ消えていたことにかすかに気づいていた。
「どんな戦車があるのかな」
「……玲さん」
「ほら、秋山さんも一緒に探そう?」
優花里は少し考えた、玲が何かを隠しているのはほぼ間違いない。
しかし――。
「……分かりました!」
優花里は笑顔になる。
「では、私も一緒に探します!」
「よしっ!」
玲は嬉しそうに拳を握り優花里はちらりと玲を見る。
――『戦場のローレライ』…その名前を口にした瞬間、玲の雰囲気が一瞬だけ変わった。
やっぱり何かある…そう思いながらも、今はそれ以上追及しなかった。
その後戦車を求めて学校校舎裏にある山林へと訪れた5人は、地図や目視を使い分ける形で戦車が転がってないか当たりをキョロキョロ見渡しながら探していた。
すると華が何かの匂いを感じ取ったのかクンクンしながらとある方向を見つめていく。
「どうかしたー?」
「あっちから匂いが…」
彼女自身華道をやっているということもあってか、かなり鼻の匂いが効くのかもしれない。
どうやら花の匂いに混じって油と鉄の匂いを嗅ぎ取ったららしく、相変わらず匂いを嗅ぎながらそちらの方向へと歩み寄る。
「匂いでわかるんですか?」
「花の香りに混じってほんのり鉄と油の匂いが…」
するとそれを聞いた沙織と玲が華道をやってるとそんなに敏感になるのかと食い気味で驚きを見せていき、優花里も決心した表情でパンツァー・フォー(戦車前進)と決めゼリフっぽく叫んでいく。
「華道やってるとそんなに敏感になるの!?」
「いいなー、私も華道やってみようかなー」
「私だけかもしれませんけど…」
「…っ!パンツァー・フォー!!」
が普通の人には別の意味に捉えられたらしく、沙織はパンツァー・フォーをパンツのアホォ!?と捉えられてしまい、これには優花里もガックシとした表情を浮かべる。
その隣ではみほがパンツァー・フォーの意味を説明しており、挟む形で隣にいた玲は優花里をフォローするように肩をポンポンと叩いていた。
「パンツのアホォ!?」
「パンツァー・フォー…戦車前進って意味なの…」
「まあ普通の人からそうなるよねー、どんまいどんまい!」
その後草木をかき分けながら華についていく形で山林の奥地へと歩みを進めると斜面に鎮座するかたちで佇む戦車を発見した。
38(t)戦車B/C型(Panzerkampfwagen 38(t))、第二次世界大戦初期にナチス・ドイツ軍が使用した、チェコスロバキア開発の名作軽戦車。
なのだがやはり倉庫に置かれていたIV号戦車に比べると野ざらしで放置されていたこともあって状態はあまりいいとは言えず、小柄ということも相まって沙織的にはいいイメージが持てない様子。
「あっあった!」
「38(t)…」
「なんかさっきのより小ちゃい…ビスだらけでゴツゴツしてる…」
ただ38(t)戦車の史実での活躍を知っている優花里は、装甲を嬉しそうにスリスリしながらそれをヲタク全開の知識で述べていく。
「38(t)といえばロンメル将軍の第七装甲師団の主力を務め!初期のドイツ電撃戦を支えた重要な戦車なんです!」
ちなみに38(t)戦車の活躍といえばポーランド侵攻(1939年)はもちろんのこと、フランス侵攻(1940年)でもエルヴィン・ロンメル少将が率いる第7装甲師団にてドイツ軍の主力として活躍。
「とにかく頑丈で壊れない」ことやドイツ軍が大量保有していた1号戦車(機銃のみ)や2号戦車(20mm砲)に比べ、38(t)戦車は強力な37mm砲と最大25mm(のちに50mmに強化)の装甲を持っており、戦闘力が格段に高かったらしい。
フランス侵攻はもちろんのこと、初期のバルバロッサ作戦(ソ連侵攻)にて当時の英仏の連合軍やソ連軍を圧倒。電撃戦の象徴としても欠かせない戦車となっている。
「軽快で走破性も高くて…!はっ!tっていうのはチェコスロバキア製ってことで、重さのことではないんですよ!」
とまあ今までにないほど生き生きしていた優花里であったが、しばらくすると我に返ったのかハッとした表情を浮かべやってしまった…と煤がついたほっぺをシュンとさせる。
しかしここでも玲がフォローするように、物知りだねーと褒めながら自分もそこまでの知識はないから羨ましいよーと褒めていく。
「はっ…!?」
「…いま…生き生きしてたよ」
「すみません……」
「まーまー、そんなに物知りなのはすごいと思うよー。私もそこまで戦車の歴史に詳しくないからー」
ただ彼女の本当の姿を知っている優花里からすれば、それ以上に…下手をすればみほよりもすごい人であり、本当はそんなことないのにな…と内心呟いていくのであった。
「……」
ー本当はすごい人なんですけどねー…、西住殿と同じくらい…いえ下手をすればそれ以上に…ー
38(t)を発見した一行は学校で待機している生徒会に連絡を入れ終え一旦戻ろうとしかける、がその中で玲は、先ほど見つけた戦車を見ながら少しだけ周囲を見回していた。
「……ん?」
「どうしたの、玲ちゃん?」
するとそれに気づいたみほが尋ねるが、玲は何か変じゃないかと答えながら森の奥へ視線を向け続ける。
「なんか、変じゃない?」
「変?」
どうやら彼女はハッキリとしないもののこの戦車以外にともう1台あるような気がしてならないらしく、それを聞いた優花里が驚きの声を上げた。
「うん。ここ、戦車一台分だけじゃない気がする」
「玲さん、何か分かるんですか…!?」
「ううん。まだ分かんない」
ただ直接確かめてみないとはっきりしないため、ちょっと行ってみないかと提案した玲は、み達と共に38(t)から一旦離れながら山林の奥へ進んでいく。
「だから、ちょっと探してみよう!」
その後しばらく歩いていると華が再び鉄と油の匂い、それも先ほどより少し匂いが強いものを鼻でキャッチしたのか足を止めていき、またしても優花里は驚きの声を上げる。
「……また、何か匂いがします」
「えっ、またですか!?」
「油と鉄……それも、先ほどより少し強いですね…」
やっぱり!とそれを聞いた玲は嬉しそうな表情を浮かべながら引き続き匂いがする方に歩きながら、一行は木々を抜ける。
「やっぱり!もう1台あるんだよ♪」
すると木々を抜けた先、先ほどと同様に斜面に佇む形で草に覆われた大きな戦車があった。
「……あれ?」
これには沙織が目を丸くしながら驚きの声をあげていき、優花里も慌ててその戦車へと駆け寄っていき、玲もゆっくりと近づいていき、車体を確認する。
「もう一台あるじゃん!」
「……これは、……Ⅲ号戦車」
Ⅲ号戦車、それは第二次世界大戦前半期にドイツ軍の主力として活躍した20トン級の中戦車。
敵戦車との戦闘を想定し、機動性と装甲のバランスを重視した非常にバランスの取れた戦車であり、画期的な3人乗り砲塔は戦車長が指揮や周辺警戒に専念できる仕組みを取り入れた。
尚本車はその中でもⅢ号戦車J型と呼ばれる型式であり、車体前後の装甲や設計が大きく見直された本格的な改良型。初期型は短砲身の50mm砲を、後期型はより強力な長砲身の50mm砲を搭載し、対戦車戦闘においても火力アップが図られる。
更に:車体前面や側面などの基本装甲が厚く強化され、防御力が格段に向上することに。
当然Ⅲ号戦車であることは優花里やみほも知っている情報であり、やっぱりそうですよね!と優花里が興奮気味に話しているのに対して、玲はそのなかでもJ型だと答えていく。
「やっぱりそうですよね!?というかこのⅢ号戦車ってもしかして…!」
「うん。J型だと思う」
さっき見つけた戦車よりは大きいよね、とそんなことを見上げながら呟く沙織に対して、優花里が興奮気味に…だがなんとかセーブしながら先ほどは軽戦車でしたが、こちらは中戦車であると解説する。
「なんかさっきより大きい戦車だね?」
「まあ先ほどの38(t)は軽戦車でしたが、こちらはそれよりも大きい中戦車ですから。その分車内も広いんですよー」
「あっ、ゆかりん今回はちゃんとセーブした」
「ゆかりん!?」
そんなやり取りをしている間にも玲は車体の周囲を歩きながら確認していく。
砲塔、履帯、車体…その見る目は、普段の明るい玲とは違っており、それに気づいたみほは呼びかける。
「玲ちゃん……?」
だが玲はそれに応えることなくしばらく黙ったあと、車体に手を触れていき、少しの間瞳を閉じてまるで戦車と話しかけるように深呼吸していく。
「………」
その後瞳を開きながら手を離した玲は、みほたちに向き直ると、いつもの明るい表情を見せる玲に戻りながらこの子(Ⅲ号戦車)がいいと口にし、みほに気に入ったのかと尋ねられるとうんと答える。
「……この子、いいな」
「気に入ったの?」
「うん」
もちろん38(t)もいい戦車であることには間違いない、だが玲にとってⅢ号戦車は特別な存在そのものであることには変わりなく、見上げながら明るく…だが力強い返答を返していくのであった。
「38(t)もいいけど――」
「私は、この子がいい」
はい、玲ちゃんの相棒はⅢ号戦車J型となりました。
ちなみになんでⅢ号戦車のかというと、特に理由はありません。個人的に好きだからです((