ガールズ&パンツァー 〜幼馴染は『戦場のローレライ』〜 作:三坂
翌日、大洗女子学園の戦車保管場所には、発見された自動車部によって回収された戦車が並べられていた。
左から八九式中戦車甲型、38(t)軽戦車、M3中戦車リー、Ⅲ号突撃砲F型、IV号戦車D型、最後に玲が見つけたⅢ号戦車J型だ。
尚Ⅲ号戦車と38(t)軽戦車は山林で見つかり、IV号戦車は戦車保管場所で見つけたものの、残る3両。
八九式は崖下の洞窟でバレー部チームが、M3中戦車リーはうさぎ小屋の近くで一年生チームが、最後にⅢ号突撃砲は池の中に沈んでいたのを歴女チームが発見した。
どれもその場所にあった汚れ具合や損傷具合となっていたものの、何故突っ込みどころ満載の場所にあったのか…と沙織は突っ込みを炸裂させていく。
「いやいや!なんでこうも戦車がある場所が変なとこばっかなの!?池の中といいうさぎ小屋といい!」
まあ八九式に関しては玲の指摘通りどうやって崖下…というよりか中腹の洞窟に隠したのか気になるところ(実際自動車部が引き上げる際には色々と苦労した)ではあるが、気にするだけ無駄かもしれない。
「八九式に関しては崖下の洞窟だしねー、どうやってそこまで運び込んだことやら」
そんなやり取りをしている間にも生徒会のメンバーではどう乗員を振り分けるかについて話し合っており、杏からは見つけた人がその戦車に乗ればいいんじゃないかと返答が帰ってくる。
「会長、乗組員の振り分けはどうしますか?」
「うーん、見つけたもんが見つけた戦車に乗ればいいんじゃないー?」
尚生徒会は3人ということで少人数でも扱えそうな38(t)軽戦車に乗ることにしたらしく、最初に見つけたIV号戦車はみほ達が乗ることになった。
「そんなことでいいんですか?」
「38(t)は我々が、お前たちはIV号で」
尚玲はⅢ号戦車を見つけたということで桃からはそれに乗るように言われれ、嬉しそうな表情を彼女は見せたものの、そこでみほが待ったをかける。
「それと玲、お前はⅢ号戦車に乗れ」
「Ⅲ号!?やったー!」
「あっあの!ちょっと待ってください!」
というのもⅢ号戦車の乗員は最大5名、なので最低でも4人は確保しなければならないのだが…、今の玲は一人、これでは動かすことはできても戦うことが出来ない。
「んー?どうかした西住ちゃん」
「あっえっと…Ⅲ号戦車って5名ですよね…?最低でも4人は確保しないといけないんですけど…今のままじゃ」
すると杏はそのことは分かっていたらしく、当然それじゃ足りないねーと相変わらず他人事のように話す。
尚当の本人である玲は呑気に、一人で動かせればいいんだよね!?と目を輝かせながらアホなことを言っており、みほから鋭い突っ込みが炸裂。
「ふむふむ、要は今のままじゃ動かせても戦えないと…」
「え?なんですか、もしかして一人で全部すればいいんですか!?」
「んもう!!玲ちゃん!」
だがちゃんとその件に関しては考えていた…というか戦車を探している間に新たに3人ほど戦車道を履修したいというメンバーが加わっていたらしく、その子たちを含めればいいよと杏は説明する。
「あーそれならご心配なく、みんなが戦車探してるときに戦車道やりたいって子たちが3人ぐらいきたから。その子たちを含めればいいと思うよー」
新しいメンバー?そう聞いた玲は不思議そうに首を傾げるが、そんな彼女を横目に杏は少し離れていた場所で待機していた3人を手招きでこちらへと案内していく。
「新しいメンバー…ですか?」
「そうそう、おーい。こっちおいでー」
案内される形でやってきた3人は当然玲とはもちろんのこと、双方初対面であるためしばらく見つめ合っていく。
「……」
「……」
その後玲が先ほど言っていた新しく戦車道をやりたいと言っていた子たちかと尋ねていき、杏もその通りだよーと答える。
…が後は4人でいいようにやってねーとほぼ丸投げみたいなことを言いながら、いい感じのことを付け加えながら立ち去っていく。
「えっと…、この子達が生徒会長の言ってた…」
「そーそー、んまあ後は4人でいいようにやっててー。戦車道はチームワークが大事だからー」
「あーっ…行っちゃった…」
玲はそんな杏の背中を見送りながら、改めて三人をみていき、少し考えると切り出すようにお互い初対面だし自己紹介をしないかと提案した。
「じゃあ、とりあえず自己紹介しよっか!」
すると最初に元気よく答えたのは、茶髪ポニーテールの少女。どうやら玲やみほたちと同じ2年生らしく、森下真帆と名乗りながら頭を下げてきた。
「あっじゃあ私から!栄養科2年A組の森下真帆っていいます!よろしくです!」
その次に名を挙げたのは真帆と比べると冷静でマイペースっぽい少女であり、あまり表情を出さないのか落ち着いた雰囲気で高橋恒一と名乗っていく。
「…普通Ⅱ科2年A組、高橋恒一です。よろしくお願いします」ペコッ
そして最後にメガネをかけた恒一よりも無口で大人しそうな少女、1年生水野美咲が自己紹介をしていき、それが終わると玲も元気いっぱいの挨拶でよろしく!と答えた。
「…普通Ⅰ科、1年A組。水野美咲…です」
「普通Ⅱ科2年A組!西園寺玲っていいます♪2日前ぐらいに転校してきたら、よろしくねっ!」
こうして無事Ⅲ号戦車の乗組員も決まったことで、それを確認した桃は戦車を見つけたチームを中心にふりわけていく。
尚振り分けとしてはこんな感じ
Aチーム(IV号D型)
西住みほ、武部沙織、五十鈴華、秋山優花里
Bチーム(八九式)バレー部チーム
磯辺 典子、河西 忍、佐々木 あけび、近藤 妙子
Cチーム(Ⅲ突)歴女チーム
カエサル、エルヴィン、左衛門佐(さえもんざ)、おりょう
Dチーム(M3)1年生チーム
澤 梓、山郷 あゆみ、丸山 紗希、阪口 桂利奈、宇津木 優季、大野 あや
Eチーム(38(t))生徒会チーム
角谷 杏、小山 柚子、河嶋 桃
Fチーム(Ⅲ号J型)
西園寺 玲、森下真帆、高橋恒一、水野美咲
「では振り分けを行う、
IV号 Aチーム。
八九式 Bチーム。
Ⅲ突 Cチーム。
M3 Dチーム。
38(t) Eチーム。
Ⅲ号 Fチーム」
尚明日はいよいよ戦車道の教官がお見えになるとのことなので、それまでに汚れている戦車を綺麗にするようにと桃から念押しされる。
「明日はいよいよ教官がお見えになる、粗相のないよう。綺麗にするんだぞ」
とはいえいきなり戦車を始める…というわけではなく、初めて相棒となる戦車を割り当てられたメンバーは見上げながら各々に話し合っていた。
バレー部
「ガッチリしてますねー」
「いいアタックできそうです」
歴女
「砲塔が回らないな」
「そうみたいぜよ」
「ぱおーん」
「たわけ!Ⅲ突は冬戦争でロシアの猛攻を押し返した凄い戦車なのだ!フィンランド人に謝りなさい!」
「「すみません!!」」
1年生チーム
「大砲が2本あるね…」
「おっきくて強そうー」
その最中沙織が戦車のボディに触れるのだが、思ってたよりも表面がベタベタしているせいで思わず手を離していき、華もこれはやりがいがありそうだと述べていく。
「うわっ!?なんかベトベトするー!!」
「これはやりがいがありそうですね…」
もちろんそれはⅢ号の方も同様であり恒一が見上げながら、これちゃんと動くんだろうか?と疑問を浮かべており、美咲もさぁ…と首を傾げる。
まあなんとかなるんじゃないー?と真帆が答えた直後、玲が駆け足で戦車のもとに歩み寄ると慣れた足取りでよじ登っていく。
「これ…動くのかな?」
「さぁ……」
「まあなんとかなるんじゃない?」
「っと…!」
その後覗き込むように車内に視線を向けた玲だったが、思ったより匂いがきつかったのかうわっ…と声をもらしていく。
やはり外に放置されていたこともあって車内は錆や水垢、水も溜まっており、使えるようにするには水抜きや錆取り…可動部のグリスアップもしておく必要があるらしい。
「…うわぁ!?こりゃ酷い…やっぱ外に放置されてただけはあるわ…念入りに洗って水抜きとかもしないとなー…」
もちろん室内で比較的状態(?)の良かったIV号も同様らしく、そっちはどうかと尋ねた玲に対してみほが動かすには色々しないといけなさそうと答えた(尚みほの隣では優花里が目を輝かやせながら見つめているが…)。
「みぽりんー、そっちはどうー?こっちは色々しないとダメそうー」
「こっちも駄目かも…、水抜きとか錆取りして…古い塗装も剥がしてグリスアップもしないと…」
「……!」
その後体操服に着替えた各メンバーは早速戦車の洗車や掃除を手分けして取り掛かっていく。
尚IV号では沙織がホースの水を暴発させたことで、華がびしょ濡れとなり別人へ変貌。それに優花里がびっくりするやり取りが繰り広げられ
歴女チーム洗車をしつつは水に絡めた有名な歴史を語り合うという謎のやり取り。
バレー部は根性!と根性論満載の雰囲気で徹底的に洗車しており、1年生チームは大野あやから戦車もろとも洗われている始末。
そして生徒会チームは柚子が中心となって洗車をしており、桃が指示役。杏はそれを横目に干し芋をおいしそうに頬張っていた。
もちろん玲達も例外ではなくこれから共にするⅢ号戦車の洗車に取り掛かっており、美咲が車体に水をかけていき、残る3人がブラシやタワシ、タオルといった道具。
洗剤といったものを上手く使い分けていき、外や中を徹底的に洗い続ける。
「戦車を洗剤ってなんかダジャレみたいだよねー」
「真帆…オヤジギャグは寒い」
「んもー、オヤジじゃないよー!」
「美咲ちゃんー、こっちにも水お願いー」
「あっ…はい!!」
当然一筋縄ではいくはずもないが、顔や体操服を煤まみれになりながらも、玲達は初対面ということもあって楽しげな何気ない雑談を交わしていくのであった。
「そういえば、玲ちゃんって何処からきたのー?」
「んー?秘密ー、まあ強いて言うなら遠いところかな?」
「えー教えてくれてもいいじゃんー」
「なんか真帆、ダル絡みする彼女みたい…」
「えぇー!?酷いー」
とまあそんなワチャワチャしながらも朝からずっと洗車をしていたおかげで夕方になる頃には、煤まみれのみほ達とは裏腹に戦車達は見違えるほど綺麗に生まれ変わっていた。
後は整備や動作の確認を行うだけであり、そこから先は桃曰く自動車部に今晩中までに済ませるとのこと。
「…よしいいだろう、後の整備は自動車部の部員に今晩中にやらせる」
ちなみにその自動車部は玲と楽しげに話し合っており、みほは相変わらず打ち解けるのが早いな…そんなことを内心思っていた。
「すみませんーあとはお願いしますねー」
「任しといて、動かせるようにしっかり整備しておくから!あとテストも!」
「にしてもこんなに戦車がうちの学校から見つかるなんてねー、これ下手したら他にもあるんじゃないー?」
「あははっ♪確かに!」
ー相変わらず玲ちゃんは打ち解けるのが早いな…ー
その後解散と言われた言われた乙女達は更衣室などに向かっていき、制服に着替え終わるとそれぞれのグループで帰路へついていく。
もちろん玲やみほのグループも例外ではなく、制服に着替え終わると学園艦から海が見渡せる展望公園に立ち寄ってのんびりと過ごしていた。
「…いやー、この2日ぐらいはよく働いたよぉ…」
「ふふっそうかも、玲ちゃん頑張ってたもんね…♪」
ちなみに真帆達と沙織たちも既に打ち解け(何ならクラスが一緒に子もいるため)、そろそろ陸に上がりたいなーそんなやり取りを交わしていた。
「あぁーあ、早く丘に上がりたいなー。アウトレットで買い物もしたいし」
「わかりますー、私もお菓子店巡りしたいなー」
華や恒一が今度の週末は寄港するんじゃないかと告げていき、沙織と真帆はどこの港だっけ…とそんな他愛もない会話を弾ませる。
「今度の週末は寄港すんじゃ…」
「あー、そんなこと言ってましたねー」
「どこの港だっけ?私港港にカレがいて大変何だよねぇー」
「えっ!?そんなに彼氏いるの!?」
「それは行きつけのカレー屋さんでしょ」
すると少し後ろでモジモジしていた優花里が、この後寄りたいところがあるので寄り道していいかと尋ねていき、玲はいいけど何処にいきたいのかと尋ねていく。
「あっあの…!良かったらちょっと寄り道していきませんか?」
「んー?いいけど、何処に寄りたいのー?」
「あっえっと…」
せんしゃ倶楽部、学園艦内に存在し学校からはさほど遠くない位置に存在する戦車関連のアイテムを専門に扱うショップ。
優花里自体は行きつけであったものの、他メンバー…特に転校してきたみほや玲を除けばつい最近までは戦車道と無縁だった沙織達はこんなお店があったんだ…と驚きの表情を浮かべていた。
「…こんな店あるんだ…」
「私もー、恒一や美咲は知ってた?」
「私はあるってのは知ってたけど…入ったことは…」
「全然知らなかった…、こんなお店」
そんなメンバーたちを引き連れて自動ドアをくぐり抜けてお店へと足を踏み入れた優花里の視線の先には、名前の通りミリタリーや戦車に関するグッズが店内一杯に置かれていた。
「…♪」
「おぉ…」
「これは…凄いですね」
まあその手の人たちからすれば全然違うように見えるのだろうが、境地がない人からすればみんな同じようなもの。
沙織がそんなことを呟くと、優花里が必死の表情を浮かべながら違いますと否定していく。
「でも戦車ってみんな同じように見える」
「ちっちがいます!全然違うんですー!」
まあ見た目こそ同じようでも中身やその作られた経緯、個性なども全然戦車によって違い、更には乗り手によっても大きく変わる場合がある。
もちろん戦車道だけでなく華道や女の子などの人も個性が人によって大きく変わるため、それはそうかも…と沙織は納得しながら恋愛に絡めた決め台詞を放った。
「どの子もみんな個性というか特性があって…!動かす人によっても違いますし!」
「華道と同じなんですねー」
「うんうん…!女の子だって、みんなそれぞれの良さがあるしねー。目指せ!モテ道!」
まあ噛み合ってるような噛み合ってないような気はするものの、人によってわかりやすく捉えられるならそれでいいんじゃない?と横で玲はフォローしていくのであった。
「話が噛み合ってるような噛み合ってないような…」
「まあ人によってわかりやすく捉えられるならそれでいいんじゃないー?」
「…それはそうだけど…(汗)」