ガールズ&パンツァー 〜幼馴染は『戦場のローレライ』〜 作:三坂
せんしゃ倶楽部に訪れた一行は、それぞれのグループで固まりながら各々にお店を楽しんでおり、真帆達はずらりと並んだミリタリーグッズの商品を興味深そうに眺めていた。
「うわー、コレなんだろ。歯車みたい」
「調べたら転輪だって…、戦車やブルドーザーなどのキャタピラ(履帯)式車両で、車体を支えて回転する車輪のことらしいよ」
「へえー、にしても転輪?だけでも色々あるねー」
「あっ…戦車道の操作マニュアルもある…」
その近くのシュミレーターゲームでは優花里がプレイしており、その様子を沙織と華は見学しながら戦車道もこんな感じなのかなーというやり取りをしていく。
「ほっ…とっ!」
「アクティブで楽しそうです…!」
「でも顔は怪我をしたくないなぁ…」
確かに沙織の気にしている通り実弾を使っての戦車道は怪我をするリスクがあるのは否めない、ただ優花里が補足した通り、その分安全に配慮(じゃないと問題になりかねない)されているため大丈夫とのこと。
「大丈夫です!試合では実弾も使いますけど、充分安全には配慮されていますから!」
そんな優花里の言葉に何とも言えない表情を浮かべていたみほだったが、後ろで流れていたテレビの話題が戦車道の話に変わったことに気づくとそちらに視線を向けていく。
「……」
『それでは次は戦車道の話題です』
内容は昨年度戦車道の高校生大会でMVPに選ばれ、晴れて国際強化選手となった西住まほにインタビューをしてみたというもの。
名前の通りみほの姉であるまほは、彼女がかつて在籍してきた戦車道強豪校、黒森峰女学園の隊長であり、あの西住流の長女でもあるのだ。
『昨年度高校生大会でMVPに選ばれて、国際強化選手となった西住まほ選手にインタビューをしてみました』
その際にインタビューのスタッフから強さの秘訣を問われたまほは、諦めないこと…そしてどんな状況でも逃げ出さないことだと説明していく。
相変わらず変わってないな…内心そんなことを思っていた玲に対して、一度逃げ出した自分のことを言われてるような気がしたみほは複雑な表情を浮かべる。
『戦車道の勝利の秘訣は何ですか?』
『諦めないこと、そして…どんな状況でも逃げ出さないことです!』
ー相変わらずだなーまほさん、雰囲気もあの時と変わらないし…ー
「……」
もちろんその様子に気づいていた玲は、話題を変えるようにこれからみほの家に遊びに行っていいかと尋ねていき、それに沙織たちも乗っかっていく。
「あっみほ!今からみほの家遊びに行っていいかな?」
「わたしたちも…!いいかな!」
「私もお邪魔したいです」
「私もー!」
一瞬それに驚いたみほだったものの、初めて友達を誘えるという嬉しさからか、即決でうん!と満面の笑みを浮かべながら答える。
んじゃそうと決まれば早速行こうか!とノリノリな玲だったが、恒一がふと…住んでる場所って今何処か…?と質問する。
「…うん!」
「よーしっ!なら早速レッツゴー……」
「あっ…西住さん、住んでる家って今どこ?」
当然転校してきたばかりなのでアパート暮らしだとみほが答えると、少し考えなざら間を空けた恒一はこの人数だと部屋には入り切らなくない?と指摘していく。
言われてみれば…と華が頷き、マジかー!と玲が悲鳴交じりの残念そうな声を上げた。
「えっ…あっアパートだけど…」
「……なるほど、ってことは…この人数だと…絶対に入らない」
「あっ…言われてみれば…」
「ええ〜…!?マジかぁ……」
もちろん無理やり押し込めれば入れないこともないが流石にそこまでする必要もないことから、恒一が自分たちはお邪魔だけしたら玲の部屋に遊びに行こうかと提案。
それを聞いた玲もそれ採用!と口にしていたが、ふとみほがそういえばどこに住んでるか聞いてなかったよね?と思い出したように尋ねていく。
「まぁ…覗くぐらいならいいんじゃない?…んであとは私たちは私達で玲の部屋に…」
「おっいいね!それ採用!」
「あっってか玲ちゃん?玲ちゃんの住んでる場所って今何処なの?」
確かに玲も元々は大洗の人間ではないため、転校してきたということは何処かアパートを借りて住んでいるということになる。
もちろん隠すつもりもない玲は、住んでる場所の住所を教えていくのだが、それを聞いたみほがそこって…!と驚きの声を上げながらはっとした表情を浮かべた。
「えっ?私の住んでる場所?ふふーん、えっとねー(説明中)」
「なるほど…って待って!そこって…!」
「…?」
あたりが暗くなりつつある頃、みほが暮らすアパートの部屋の前へ訪れた一同だったが、沙織が隣の部屋を横目にこんな偶然があるとはねー…とそんなことを呟く。
「いやー…まさかこんな偶然があるなんて…」
そんな彼女達の視線の先、『西住みほ』と書かれた部屋の隣には『西園寺玲』と書かれた表札の文字が
まあ結果的にはわざわざ行く手間が省けたものの、真帆の指摘通り再会を果たした幼馴染の部屋がお隣というのはなかなかの確率だろう。
だが玲はこれでいつでも遊びに行けるねーと上機嫌な表情を見せており、みほはそんな幼馴染を微笑ましく見つめていた。
「久しぶりに再会した幼馴染の部屋が隣人って、なかなかなの確率だよねー」
「まあ行く手間は省けたっていうか…、私的にはありがたいけど…」
「まっこれでいつでもみほの家に遊びに行けるね…!いやーいいところに引っ越した!」
「…ふふっ♪」
その後お互いの部屋を軽く見たあと沙織達と分かれた真帆たちは、玲の部屋にお邪魔することに。
「んじゃまた後で!」
「はーいっ!そっちも楽しんでねー」
「では♪」ペコッ
ボコられクマのぬいぐるみ、通称『ボコ』があちこちに飾られているみほの部屋と対照的に、玲の部屋は引っ越してきたばっかりということもあって、テーブルやテレビといったシンプルな女子高生の一人暮らしの空間が広がっていた。
「なんかみほちゃんの部屋と違ってシンプルだねー、この感じだと引っ越してきて間もない?」
「まあ急な引っ越しだったからねー、ここに来たのは4日前ぐらいかな?」
「うわっ、本当に来て間もなしだ…!」
そんなやり取りを交わしながらも腰掛けた4人であったが、ふと真帆が玲に対して冷蔵庫に何かないかと尋ねていく。
もちろんある程度自炊などをするため材料は冷蔵庫にあると思うよと告げると、真帆がなら転校お祝いに自分が何か作ってあげる!と腕まくりをしながら立ち上がった。
「あっそう言えば冷蔵庫に何かあったりする?」
「えっ?うん、自炊はするから材料はあると思うけど…」
「よしっ!なら人肌脱ごうかな…!今日は玲ちゃんが大洗にきた祝いに私がみんなの料理作るよ!」
料理出来るの?と恒一が尋ねると、お菓子作りも含めてよく料理はするから得意なんだと答えていき、美咲がそういえば栄養科だったね…と自己紹介の時のやり取りを思い出す。
「真帆、料理出来るの?」
「まあねっ!これでもお菓子作りとか料理は得意な方なんだ!」
「あっ…そういえば栄養科出身だったよね…森下先輩…」
ならお願いしようかな!とそれを聞いた玲は告げていき、真帆も任せて!と告げると駆け足でキッチンの方へと向かっていく。
「ならお願いしよっかなー、期待してるよー♪料理長!」
「ふふっ!おまかせあれ!んじゃキッチン借りるよー」
とはいえその間座って待っているのもあれなので恒一は当たりを見渡しながら、途中の引っ越し整理を手伝うよと告げ、真帆が料理を作っている間に3人は部屋に置かれた段ボールを片付けたりをすることに。
「…その間暇だね、そうだ玲さん。引っ越しの整理…途中ですよね?手伝いましょうか?」
「あっ助かるー!じゃあお願いするよー」
「あっ私も…」
「そういえば西住殿」
「ん?どうかしたの優花里さん」
沙織が気合いを入れて作った手料理を4人で囲って食べていると、ふと優花里が気になったことがあるのかみほへと尋ねる。
その内容は玲に関してであり、お二人は幼馴染なんですよね?と問うと、みほがうんと答えていく。
「西園寺殿と西住殿って幼馴染…なんですよね?」
「うん、小さい頃家が隣でさ。よく遊んでたんだ」
どんな子だったのかと沙織が聞くと、今も昔も変わらず明るくて社交的だと懐かしそうな表情を浮かべながらそんなことを口にする。
「どんな子だったの?今みたいな感じ?」
「そうだねっ、まんま今みたいな感じ…♪明るくて活発で…誰にもフレンドリーで…♪」
もちろん小学校も、なんから中学校時代…黒森峰中等部時代も同じ学校に通っていたらしく、中学時代は一緒に戦車道を打ち込んでいたとか…
「幼馴染ってことは…小中もご一緒で?」
「うん、一緒だったよ。なんなら中学…黒森峰の中等部時代は一緒に戦車道やってたし」
どんな感じだったのか…!と興味深そうに尋ねる優花里をまあまあと宥めながら、ひと言でいえば自分とは比べものにならないぐらい凄い人だったとみほは振り返りながらそう口にしていく。
「どんな感じだったんですか!?中学時代の西園寺殿は!」ガバっ
「あっえっ…、まあひと言でいえば私なんかじゃ比べ物にならないぐらい凄い子だったよ…」
なにせ戦車道の授業や模擬戦では常に上位、自分の姉であるまほとは常にトップの座を争う感じだったらしい。
特に「戦場全体を見る能力」優れていたとか…
「戦車道の授業や模擬戦とかは常に上位、お姉ちゃんとは常に争ってた…って感じで…」
「そんなに凄かったの?みほの幼馴染って」
「うん…、というか戦場全体を見る能力が桁違いっていうか…」
というのもみほ自身も何度か模擬戦で玲の指揮するチームと試合をしたことがあるが、彼女はは正面から敵と戦うのではなく、森や丘を利用して敵を上手く誘導。
みほ達が玲を追えば別の味方が攻撃し、玲を無視すれば側面から突如として現れる。
「私も何度か玲ちゃんと試合はしたことあるんだけど…、なんていうか…戦場を操ってるみたいな感じだったかな」
「戦場を操る…ですか?」
「うん、森とか地形を駆使して誘導するんだけど…無視すれば玲ちゃんに攻撃されて…、追おうとすれば玲ちゃんの味方から攻撃されるっていう…」
当時は西住流の戦い方とは反する戦法ではあったものの、それでも黒森峰では充分と言えるほど脅威。
まるで玲自身が戦場を歌うように操っているように見えたことから上級生達は『戦場のローレライ』といつしか呼ぶようになったらしい。
「その時私とかお姉ちゃんがやってた戦い方とは反してたんだけど…、あまりにも戦場を歌うように操るからいつしか上級生のみんなからは『戦場のローレライ』って呼ばれるようになったの」
「戦場の…ローレライ…」
ただ中等部卒業後自身はそのまま黒森峰女学園に、玲は国際強化選手として海外の学校に行ってしまったためそのまま疎遠に。
黒森峰で自身も色々と大変だったこともあってその後の活躍などはあまり知ることがなかったらしい。
「でも中等部卒業後私はそのまま黒森峰に、玲ちゃんは国際強化選手として海外に行っちゃったから疎遠になっちゃったんだよね」
「ってことは西園寺殿の活躍も…」
「うん、全然知らないかな…(汗)」
そんなに凄かったのか…と沙織が尋ねると凄いもんじゃないと優花里が答えながら、彼女が国際強化選手として活躍していた際の話を目を輝かやせながらしていく。
「ねぇ、そんなに凄かったの?玲ちゃんって」
「凄いってもんじゃないですよ…!国際強化選手時代は欧州の戦車道強豪校相手に全戦全勝!負け無しって言われてたんですから…!」
やっぱり凄かったんだ…優花里の話を聞きながら驚きの声をあげるみほだったが、ふと華がそんなにすごい人が何で大洗に来たのでしょうか…?と不思議そうに首を傾げる。
「そんなに…やっぱり玲ちゃんすごいな…」
「でもそんなすごい人がなんで大洗に来たのでしょうか…」
少なくとも西住流の戦車道に潰されかけて逃げるように大洗にやってきたみほとは違い、国際強化選手として華々しい活躍を送ってきた玲がわざわざ転校してくる理由が見当たらない。
「確かに、みぽりんみたいに戦車道が嫌になったのかな…?」
「いやそんなことはないとは思う…、私なんかよりも戦車道を満喫して華々しい活躍してた玲ちゃんに限って…」
そもそも転校してきたということは国際強化選手を辞めているということであり、現に優花里の指摘通り国際強化選手はつい最近辞退したそうだ。
「ですが大洗に転校したということは…その国際強化選手?でしたっけ?それはお辞めになってるってこと…」
「ええっ、五十鈴殿の言う通りです。つい最近、西園寺殿が国際強化選手を辞退したって記事が…」
ただ辞退した理由も諸般の理由ということだけで詳細な理由は書かれておらず、優花里も詳細な理由は分からないらしい。
「えっ!?国際強化選手を…、なんで…」
「分かりません…、記事では諸般の理由ってだけで…詳細な理由も……」
そんなやり取りを聞いていたみほは、ふと再会した時に杏が言っていた言葉を思い出す。
「……」
『西園寺ちゃんが話したくなったら話すでしょ』
自分にはあれだけ無理を言っていたあの生徒会長が玲のこととなるとあやふやな言い方になっていた…、それにわざわざ国際強化選手を辞めてまで大洗に来たということは…きっと自分みたいに何かあったのは明らかだろう。
ー生徒会長のあの言い方………、きっとわざわざ国際強化選手を辞めて大洗に来たってことは何か理由があって…ー
でも無理に追求はしたくない…そう思ったみほは、沙織達に対してきっと自分みたいに何かあって大洗に来たんだと思う。
けどいまは…話したくなる時まで深くは詮索しないでおこう…そんなことを口にする。
「きっと…何かあって大洗に来たんだと思う…」
「…西住殿…」
「でも、今は詮索しないでおこう。玲ちゃんが話したくなるその時まで…」
その後何とも言えない雰囲気が流れていたものの、沙織がパンッ!と手を叩きながら冷めないうちに晩御飯を食べちゃおう!と提案していく。
「…さっ!冷めないうちに晩御飯食べちゃお!」
もちろん他の3人もうん!と力強く答えると、楽しげな会話を挟みながらおいしそうに晩御飯を囲むように食べていくのであった。
「うん…!」
「ええっ♪それにしても武部さんの手料理美味しいですね」
「流石武部殿です…!」
「ふふー、男にモテるなら手料理っていうからね♪」
「クシュン!!」
「玲ちゃんどうしたのー?風邪でも引いたー?」
それと同時刻、隣の部屋で真帆のお手製カレーライスを4人で食べていた玲だったが、突如として盛大なくしゃみを炸裂。
どうしたのー?と尋ねた真帆に対して、誰かに噂されてるような気がする…とむずむずする鼻を擦りながらそんなことを口にする。
「…なんか、誰かに噂されてるような気がする…」
まあ転校してきたばっかりだしそんな時もあるんじゃないー?と真帆は気にせずに話しながら、それよりお手製のカレーライスはどうかと目を輝かせながら聞いていた。
「まあ転校してきたばっかりだしそんな日もあるんじゃないー?あっ私のお手製カレーライスどうかな?美味しい!?」
もちろん凄く美味しかったため、玲達は美味しいと答えると真帆は良かったーと満面の笑みを浮かべながらガッツポーズを浮かべる。
「うん!すっごく美味しい!流石真帆ちゃん!」
「美味しい…パーフェクト…」
「食べやすくていいです、森下先輩」
「よしっ!一生懸命作った甲斐があった!」
その後晩御飯を食べ終えた4人は協力して片付けを進めていき、そのおかげもあって早く終わった。
とはいえあたりは既に暗くなっており、そろそろかえる時間帯ということもあって、玲は玄関まで3人を見送る。
「また明日!帰り気をつけてね!」
「うん!明日からいよいよ戦車道!お互い頑張ろう♪」
「お疲れ…」
「おやすみなさいです」
すると同じタイミングで隣室の部屋から沙織たちも出てきて、みほもお見送りのために玄関から外に出てきていた。
「ばいばーい、今日はありがとうねー」
「ううんこっちこそ、料理おいしかったよ♪」
「そう言ってくれると嬉しいねー」
「あっ森下殿たちもこれから帰る感じですか?」
「うん!そっちも」
「はいっ!」
その後また明日と告げると6人はマンションを後にする形で帰路につき、2人も手を振りながら見送っていく。
「んじゃまた明日!」
「帰り気をつけてくださいね」
「今度はみんなで遊ぼう!」
「はいっ!」
「お邪魔しました…!」
マンションの出入り口まで見送った2人は、転校してきてよかったね!そんなことを話しなが自分たちの部屋へと上機嫌に戻っていくのであった。
「ねぇみほ」
「んー?」
「転校してきて…よかったかも私!」
「うんっ!私も♪」