ガールズ&パンツァー 〜幼馴染は『戦場のローレライ』〜   作:三坂

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第5話 アクロバティックな登場です!

 

 

 

 

 ――暗い。

 

 

 

 どこまでも続く、黒い森。

 遠くで砲撃音が響いている。

 

 

 

 ドンッ――!

 

 

 

「……右、敵車両接近!」

 

 

 

 誰かの声が聞こえる。

 玲は戦車の中にいた。

 手元には砲手用の照準器。

 視界の先には、敵戦車。

 そして通信機から、仲間の声が次々と飛び込んでくる。

 

 

 

『玲、どうする!?』

 

「……」

 

 

 

 

 玲は地図を見る。

 敵の位置。

 味方の位置。

 地形。

 すべてが頭の中で繋がっていく。

 勝つための道筋は、もう見えていた。

 

 

 

「……一両、囮になって」

 

『え?』

 

「敵を引きつけて。その間に私たちが横から――」

 

 

 

 

 そこで、声が途切れた。

 

 次の瞬間。

 爆音。

 車体が大きく揺れる。

 通信機から、仲間の叫び声が聞こえた。

 

 

「待って!」

 

 

 

 玲が叫ぶ。

 

 

 

 けれど、戦車はもう動き始めていた。

 

 

「戻って! 今のは違う! 待って!」

 

 

 自分で出した命令なのに。

 もう、止められない。

 そして――。

 勝利を告げる声が響いた。

 

 

 

『敵フラッグ車、撃破!』

 

 

 

 周囲から歓声が上がる。

 

 

 

『さすが玲!』

『これが“戦場のローレライ”か!』

「……違う」

 

 

 

 玲は小さく呟いた。

  

 

 

「違うよ……」

 

 

 誰も聞いてくれない。

 勝った。

 それなのに。

 胸の奥だけが、ひどく冷たかった。

 

 

 

「私……こんな戦車道がしたかったんだっけ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ!」

 

 

 玲は目を覚ました。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 カーテンの隙間から日差しが差し込む部屋。

 見慣れた天井。

 しばらく状況が理解できず、玲は布団の上で固まっていた。

 

 

「……夢……?」

 

 

 額に手を当てる。

 心臓がまだ激しく鳴っている。

 玲はゆっくりと息を吐いた。

 

 

「……もう、昔のことなのに」

 

 

 その後現在の時刻が何時か確認するために目を擦ながら何気なく玲は枕元の時計に目を向けた。

 

 

「…………」

 

 

 数秒。

 

 

「…………え?」

 

 

 時計を二度見する。 

 

 

「…………えええええっ!?」

 

 

 玲は布団を蹴飛ばして飛び起きた。

 

 

「遅刻するーーーっ!!」

 

 

 昨夜の悪夢など、一瞬で頭から吹き飛んだ。

 

 

「なんで目覚まし鳴らなかったの!?」

 

 

 玲は制服を引っ掴み、部屋中を走り回る。

 その後制服を着て、髪を整えて、鞄を掴む。

 

 

「よしっ!」

 

 

 玲は玄関へ駆け込んだ。

 

 

「行ってきまーす!」

 ガチャッ!

 

 

 勢いよく玄関の扉を開けた、その瞬間――。

 

 

「きゃっ!」

「うわっ!?」

 

 

 隣の部屋から出てきた少女と、正面衝突しそうになる。がその相手がすぐにみほだというとに気づいた。

 

 

「み、みほ!?」

「あっ!玲ちゃん…!」

 

 

 どうやらみほも寝坊しかけてドタバタしていたらしい、しばらく見つめ合っていた2人だったが遅刻しかけていることを思い出すと慌てるように駆け出していく。

 

 

「……ってやば寝坊してるんだった!?みほ急ご!」

「あっうん!」

 

 

 その後駆け足で通学路を走っていた2人だったが、目の前でふらつくように歩く大洗の制服にを身を包んだ少女を目の当たりにするとその足を止めた。

 

 

「にしても2人揃って寝坊とはねー(汗)」

「あはは…(汗)昨日はしゃぎすぎてたのかも……って…ん?」

「ん?どうかしたのみほ……ってあ…」 

 

 

 明らかに大丈夫そうじゃない上に、遅刻ギリギリとはいえ流石に放っておけないということで、2人は目を合わせると大丈夫かと声かけていく。

 が彼女が発した言葉で思わずえっ…という声を発する。

 

 

「…流石に放っておけないよね(汗)ねぇそこの君!大丈夫!?」

「あっあの!大丈夫ですか?」

「辛い…」

「え?」

「…生きているのが…辛い」

 

 

 ちなみに一瞬精神が病んでいるのかと思われがちな発言ではあるが、直後話しながらへたり込んだことでシンプルに朝が弱いだけだと玲は判断。

 自分が支えるからみほに荷物をお願いと伝えながら、へたり込んだ少女を立ち上がらせようとする。

 

 

「これが夢の中なら…ぐぅ…」

「あっこれシンプルに朝弱いだけだ、みほ。荷物お願い、私この人支えるから」

「あっえっ…うっうん!」

「もしもしー、大丈夫ですかー?」

 

 

 だがその直後にスイッチが入ったのか再び歩き出した少女であったが、相変わらず不安定すぎて道路に倒れそうになっていたことから、最終的には玲に支えられる形で学校へと向かうことに。

 

 

「だが…!行く!いかねば…」

「あー駄目だこれ、みほ。遅刻するけど…この人連れて行こっ」

「うん…!」

 

 

 

 

 

 

 

「冷泉さん…!これで連続245日の遅刻よ!」

 

 

 その後なんとか無事に送り届けた2人であったが、校門で待ち構えていた風紀委員の園そど子によって連続245日目の遅刻だと告げられる。

 いや遅刻し過ぎ…と内心そう思いながら苦笑いを浮かべていた玲に対して、当の本人である冷泉麻子は何故朝が来るのかと疑問を呈していた。

 

 

ーいや…流石に遅刻し過ぎ…(汗)一年の半分以上遅刻してるってことにならないそれ…ー

「朝は何故来るのだろうか…」

 

 

 まあ当然そど子から当たり前と言わんばりの突っ込みが返ってきて、それを聞いた玲はでしょうね…と内心同意していく。

 

 

「朝は必ず来るものなの!成績がいいからって、こんなに遅刻ばかりして留年しても知らないよ?」

ーでしょうね……ー

 

 

 とはいえ大丈夫ではなさそうなのには変わりなく、みほがこれ本当に大丈夫なのかと尋ねると、そど子が2人に対して、今後見かけても気にせずに登校するように…!と伝える。

 

 

「あっあの…これ大丈夫ですか?」

「…えっと、西住さんに西園寺さん」

「はい?」

「もし途中で冷泉さんを見かけても、今度からは先に登校するように!」

「あ…はい…」

ーうひゃー、厳しっ…ー

 

 

 その際麻子が何か言いたげな表情を浮かべながら独り言を呟くと、地獄耳のそど子が何?と言ったため何でもないと答えていく。

 

 

「…そど子」

「なんか言った?」

「…いや」

 

 

 とまあそんなやり取りがありながらも無事に通してもらえた玲とみほは、麻子を支えながら校舎のほうに向かって歩いていた。

 

 

「悪かったな…」

「あっいえ…」

「大丈夫ですよ、困ったときはお互い様ですし」

 

 

 その際麻子からすまなかったと謝罪され、この借りはいつか返すと口にしていく。

 

 

「…いつか借りは返す…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いから何かあったのかと思ったよー」

「いやー、寝坊しちゃって…」

「昨日はしゃぎすぎてたんじゃないの…?」

「あははー…、多分」

 

 

 そして場所はうってかわり戦車道倉庫前、履修時間ということもあって各メンバーの姿が…。

 だが教官はまだお見えになっていないらしく、沙織が遅いー…と愚痴を零していた。

 

 

「教官も遅いー…焦らすなんて大人のテクニックだよね」

 

 

 すると美咲がいつもより大きいジェットエンジンの音に気づき、なんかと音でかくない?と当たりを見渡しながら尋ねる。

 

 

キィィィンンン

「ねぇ…なんかジェットエンジンの音…でかくない?」

 

 

 言われてみれば…という表情で当たりを見渡すメンバーであったが、恒一があれっと指差す。

 

 

「言われてみれば…なんか近いしでかいような…」

「あっあれ…」

 

 

 その指差した先、そこには日の丸をつけた航空機(C-2改輸送機)が超低空で接近してしており、それを見た真帆が墜落する!?と声を上げる。

 

 

「あれ…?あれって…、…!?」

「なっなっ…飛行機墜落!?」

 

 

 しかし飛行機は墜落することなく低空で学園の駐車場に降下、後ろのハッチが開くと共にパラシュートを複数つけた板に載せられた戦車(10式戦車)が降ろされる。

 

 親方!空から戦車が…!と言いたくなるような光景だが、板に乗せられた戦車はそのまま勢いを落とさずに滑空、赤色の高級車(フェラーリF40)に激突して停車した。 

 

 

「いや…なんか後ろのハッチが空いて…あっ戦車出てきた」 

「いやいや!?恒一呑気に解説してるけどなんかアクロバティックな登場過ぎない!?(ガシャーン)あっ、ぶつかった」 

 

 

 尚ぶつけられてひっくり返った高級車は柚子曰く学園長が所有しているものらしく、それを聞いた玲は思わずえっ?と目が点になる。

 

 

「学園長の車が!?」

「…え?いま学園長の車って……」

 

 

 何トンもある戦車に勢いよくぶつけられるだけでも満身創痍(原型留めてるだけでもまだマシ)なのに、そこから追い打ちをかけるように戦車は後退。

 そのまま学園長の高級車を踏み潰していき、その光景をみた柚子は何とも言えない表情を浮かべ、真帆はあちゃ~という表情を浮かべた。

 

 

ベキベキベキ!!

「あ…ぁあ……学園長の…車……」

「あちゃ~…、やっちゃった……」

 

 

 しかしそんなことをお構いなし態勢を整えた10式戦車は急発進して加速、そのまま校庭から見守る生徒たちの目の前にやってきて急停車。

 

 

キュルル

キキッ

 

 

 学園長…ご愁傷さまです…内心玲がそう思っていると急停車した10式戦車のハッチが開き、黒髪ショートヘアの女性が姿を現した。

 

 

ーぁぁ…、学園長…ご愁傷さまですー

「っと、こんにちはー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後全員が再び戦車道倉庫前に整列すると、制服姿の女性が一切乱れない歩きで前に出てくる。

 ってきりイケメン講師が来ると思っていた沙織は騙された…としょげていたが、華がフォローするように素敵な方ですねと話していく。

 

 

「騙された…」

「でも、素敵そうな方ですよね」

 

 

 果たして踏み潰された学園長の車はどうなるのだろうか…そんな心配をしている玲とは対照的に話は進んでいき、桃に紹介された特別講師。

 もとい陸上自衛隊 戦車教導隊の蝶野亜美一尉はにこやかに挨拶を交わした。

 

 

「特別講師の戦車教導隊、蝶野亜美一尉だ」

「よろしくね!戦車道は始めての人が多いと聞いていますが、一緒に頑張りましょう!」

 

 

 その際当たりを見渡した亜美であったが、見覚えのあるみほの顔に気づくと満面の笑みを浮かべながら歩み寄っていく。

 

 

「あれ?西住師範のお嬢様じゃありません?」

「ぁ…はい…」

 

 

 どうやら西住流とは縁のある人だったらしく、亜美は悪気のない表情を浮かべながら師範やお姉さんはお元気ですか?と尋ねた。

 もちろん悪気がないのはみほも知っているが、家族の話はしてほしくない現状何とも言えない雰囲気を浮かべる。

 

 

「師範にはお世話になっているんです。お姉さまもお元気?」

「あ…はい……」 

 

 

 あー顔見知りの人だったか…内心そう思いながら玲はその様子をみていたが、戦車道を始めたばかりの人たちは全然知らない人なのでざわつき始める。

 

 

ーあー…知ってる人…というか西住流と縁のある人だったか……ー

「西住師範って?」

「有名なの?」

 

 

 すると亜美が知らない人たちに向けて周囲へ説明するように話した。

 

 

「西住流っていうのはね、戦車道の流派の中で最も由緒ある流派なの」

 

 

 とはいえ流石にこれ以上禁句の家族について話されるとみほのメンタルがやられそうな気がしたため、話題を変えるように沙織がモテるのかと尋ねていく。

 

 

「教官!教官ってやっぱりモテるんですか!?」

 

 

 尚本人曰くモテるかどうかは分からないものの、狙った的を外したことはないらしく、撃破率は120%とのこと。

 

 

「モテる…っていうより…狙った的は外したことはないわ!撃破率は120%よ!」

「おぉー!」

 

 

 ナイス沙織さん…内心そう思いながら玲がグッジョブを玲が送っていると、亜美が玲に気づいたのか貴方もしかして…と言いかけながら近寄る。

 …が優花里の質問で遮られたことで一同の注目は玲に映ることなく亜美へと向けられた。

 

 

ーナイス沙織さん…!ー

「ってあら?もしかして貴方って」

「げっ…」 

「教官!本日はどのような練習を行うのでしょうか!」

 

 

 助かった…そう思いながらホッとした玲であったが、直後亜美が発した言葉を耳にするや思わずえっという声を口にする。

 

 

ーはぁ…危ない危ない…優花里さんがフォローしてくれなかったら色々と面倒なことに…ー

「そうねっ!本格戦闘の練習試合、早速やってみましょう!」

「…え?」

 

 

 もちろん玲だけでなく他のメンバーも同様の反応を浮かべており、柚子がいきなりやるのかと驚愕した表情を見せていく。

 

 

「えっ!?その…いきなりですか!?」

 

 

 そりゃそうだ、ここにいるメンバーのほとんどは撃ち方どころか戦車の動かし方も知らない上、戦車道のルールも教わっていない。

 なので基本的にはそこを中心にまずは座学などで教えるはず…なのだが、亜美はそれらをぶっ飛ばしていきなり実技ときた。

 

 

「大丈夫よ!何事も実戦実戦!戦車なんてバーっと動かしてダーッと操作してドーンって撃てばいいんだから…!!」

 

 

 もしかして…この人教官とは相性最悪の感覚派タイプだな…そう内心指摘しながら苦笑いを浮かべる玲であったが、そんなことをお構いなしに亜美はスタート地点に向かうように促していく。

 

 

ー…あーこの人…教官向いてないタイプだ……(汗)感覚派で覚えるって奴?ー

「それじゃそれぞれのスタート地点に向かってね!」

 

 

 とはいえ乗り方をほとんど知らない人たちがほとんど、現に玲達のチームもこれどうやって動かすの?とⅢ号戦車を見上げながら話し合っていた。 

 

 

「えースタート地点に向かえって言われても…、乗り方わかんないのにどうやって…」

「そもそも担当場所も決まってない…、あの教官。本当に教官?」

「多分……」

「ふーむ…どうしたものか…」

 

 

 一応戦車道の経験があるということで玲が車長兼砲手を兼任すればいいのだが、あとの3人をどうするか…という問題が出てくる。

 

 

「一応私がこのなかで戦車道経験あるから…車長と砲手は兼任するけど…問題は装填手…通信手、操縦手をどうするか…」

 

 

 すると恒一が手を挙げると自分が操縦手をやる…と告げながら昨日せんしゃ倶楽部で買った戦車操縦マニュアルを手にしながら答えた。

 

 

「…あっなら…操縦手…私がやる…」すっ

「あっ、それ昨日せんしゃ倶楽部で見てた…」

 

 

 元々機械には強いタイプらしくマニュアルを昨日夜読んだ限りできそうだとのこと

 

 

「元々機械には強くて…、昨日夜マニュアルも読んだらいけそうな気がしたから…」

 

 

 そんなことを話していると今度は美咲が恐る恐る手を挙げていき、通信手をやりたい…と言ってきた。

 どうやら彼女は通信機器に強いらしく、もしかしたらそれが生かせるかもしれないらしい。

 

 

「あっじゃあ通信手…やる…、私…一応通信機器に詳しいから…」

 

 

 操縦手…通信手が決まったとなればあとは装填手、とは言ってもやる人は限られているため真帆がじゃあ私が装填手やる!と名乗り出た。

 

 

「操縦手…通信手が決まったなら、じゃあ装填手を私がやる!!」

 

 

 こうしてそれぞれの担当が決まったタイミングで亜美が早く乗るように急かしてきたため4人は早速戦車へ乗り込んでいくのであった。

 

 

「さっ!早く乗って乗って!」

「よしっ!んじゃ乗ろっか!」

「はーい!」

「はい」

「あっうん…!」 

 

 

 

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