崩壊したこの世界に取り残されて、それでも君と共に永えるためにできることを 作:霧島 高
その目的は、いずれ起きることが
それを達成するための手段として、この計画は立案されました。
でも、ですね。
実は、わたしだったのです。
それを立案したのは。
わたしは高校にも、まして大学にも通っていません。
実験体となり人工頭脳を手に入れた以上、通う意味などなかったからです。
もちろん、建前上はどちらも卒業していますよ?
でもその代わりに、政府の、そして軍の機密情報に触れ、そしてヒトを救うためのプロジェクトに参加させられました。
いいえ、自ら望んで参加しました。
だってこの頭脳は、とても役立つのですもの。
だったら、存分に使うべきでしょう?
だから、彼が自らの機械の身体をよりよく改造し、来たるべき日に備えようとしているのに対して。
脆弱な身体を保持し続けるわたしは、この頭脳を活かすことで貢献しようと考えました。
あるいは、それしかできなかった、というべきかもしれません。
本当に脆弱で不便な身体です。
しかしこの身体を捨てる
だって彼を
わたしがプロジェクトに参加して、すぐのことです。
「この計画では、まったくダメだね」
すでに推し進められていた計画を一瞥して、わたしは小さく呟きました。
もちろんそれは、
このわたしが自ら計画したのなら、そんな
そんな
この国のヒトを救うため、わたしが参加する以前よりすでに立てられていた計画は、こんな名前で呼ばれていました。
実に単純でお粗末な計画です。
その概要はこうです。
最終戦争において生き残るであろう数少ないヒトビトを、地下
そして何年、何十年、何百年と時を経てから、大地が自らの浄化能力により再生した後に目覚め、そしてまた文明を築く、というものです。
実のところ、以前から避難施設はありました。
最終戦争が起きるのは、それを為し得る戦略兵器があるからです。
その脅威へ対抗するために、再誕計画とは関係なく建造されていたというわけです。
しかし再誕計画により、その避難施設は更に拡張され、そこに新たな設備が追加され始めました。
しかしながら、それには大きな問題がありました。
どう計算しても、エネルギーが足りないのです。
何かを凍るまで冷やし、更にそれを維持し続けるということは、とても莫大な電力を消費します。
外部からの電力供給は期待できません。発電所はすべて破壊されているに決まっています。
頼れるのは、内部に保管された核融合電池のみ。
そこで、わたしはいくつか条件を変えて、試算してみました。
まず、眠りにつく数を最小限にしてみます。
他のヒトは、捨ててしまいましょう。
やはり、足りませんね。
これ以上減らしますと、ヒトが再度文明を築くための子孫を残すことが、できなくなってしまいます。
どうしようもありませんね。
だったら、大地が浄化されるという定義自体を緩くしてみましょう。
そこに至るまでに想定される時間を、ヒトが活動可能となるギリギリまで短くしてみます。
死ななければ、それでいいですからね。
しかし、それでも足りません。
これ以上期間を短くしてしまいますと、せっかく生き残ったヒトビトが何かを為す前に、すぐにただのガラクタになってしまいます。
ヒトは、弱いですね。
本当に。
そして、そんな問題だらけの計画の代わりに。
わたしは
それは、冷凍睡眠状態にしたヒトを、シャトルで
ですが、それにもまた問題がありました。
この計画に従ってしまうと、わたしも、そして彼も、その対象に含まれてしまいます。
だってわたしたちも、見た目はヒトですから。
でも、それでは、いけません。
いけないのです。
だって、彼が誤解してしまうでしょう?
せっかく苦労して移住した先に、他のヒトビトも存在しているなんて。
そんなことになれば、ヒトと共にあることがわたしの幸せなのだなんて、恐ろしいほどに間違った認識を彼が持ってしまいます。
機械ではなく、脆く、弱い、ヒト。
……なんて、穢らわしい。
もちろん、わたしはそんなことを望んだりしません。
だけど、彼は考えてしまいます。
そこにこそ、わたしの真の幸福があると。
わたしが彼に罪悪感を抱いていると、ずっと勘違いしたままであるがゆえに。
そして、わたしが
だからこそ。
やはり、わたしはあのとき、泣くべきではなかったのです。
ところで、
その実現には莫大な予算もさることながら、かなりの時間がかかります。
水面下ではもう始まっていた最終戦争が、その最終局面に至るまでに、計画に必要なすべてを用意しなければなりません。
特に難しかったのは、
もちろん、建造自体が不可能ということではありません。
すでに宇宙空間を航行可能な技術が確立して久しく、実際に多数の宇宙船が太陽系内には存在していました。
しかしながら建造済みのどの宇宙船も、その太陽系を越えて航行することまでは想定されていません。科学はいまだ光速の壁を破ることはできておらず、太陽系外へと赴く必要など、
そのため、超長距離の航行を無事に耐えられるだけの堅牢な宇宙船を、新たに建造する必要がありました。
もちろん地球上ではなく、宇宙空間での建造です。
大気圏を単独で突破できる宇宙船というものは、いまだ実現できていません。
ですからあくまで、スペースシャトルで
シャトルまでの搬送路の整備に、ポッドを射出する装置の設置。
そういったものを含めて、全て造り上げなければなりません。
とはいえ、造り上げてしまえば、いいだけです。
荷造りさえ終われば、あとの作業は単純であり、播種船への運び込みまで含め、全て自動化できてしまうので問題ありません。
それにまあ。
少しばかり失敗したところで、それは誤差の範囲です。
だって、それぐらい、大した損失ではありませんよね。
ただやはり、播種船の建造が、最も時間がかかります。
受け入れ先がなければどうにもなりません。
果たして間に合うでしょうか?
そこでわたしは
その予備計画は。
生まれ変わった
元々あったそれを改良し、新たな計画として復活させました。
ええ、そうなんですよ。
わたしは