英霊召喚『グランドオーダー』   作:キュゥべえ二世

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冠位指定術式グランドオーダー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高専に戻ってきてから。

 とりあえず、虎杖の邪魔はしない。

 彼は強くなりたいのだろう。

 他人に隠し事をするのは、別に良い。

 東京の先輩と同級生に出会う翌日。

「お前か。京都で特級祓ったっていう呪術師」

「チビじゃない。こんなのが、私らの同級生?」

 東堂の言っていたとおり、最悪の人選だった。

 虎杖以外、信用できそうに無さそうだ。

 無愛想でウニみたいな頭の男子。

 口も悪い茶髪の女子。

 聞けば片方が例の伏黒恵、もう一人が釘崎野薔薇。

「ああ、じゃああなたが私の親戚の……」

「俺は禪院家に興味は無い。お前とも遠からずの親戚だろうが、関係ないんだ」

 術式が十種影法術の癖に何を言うかと思えば、禪院家に関わりは無いと言い出す恵。

 釘崎に至ってはガラの悪いチンピラみたいな我の強さ。太々しい男勝りな性格が、霞夜は苦手。

 で、先輩に至っては。

「向こうで特級を祓ったって言っても所詮は直哉ありきだろ? そんなん実力に入らねえよ恵。こいつ単独じゃ大したことねえって」

「そう言うなよ真希。この子だって京都校の連中とは仲良かったって言うじゃん?」

「おかか」

「皆、天戸さんが怖がってるよ……」

 マトモそうなのが、白い制服の先輩だけ。

 残りは武器を持ち歩くメガネの女子、マジでパンダ、意味不明な言語の男子。

 三年は停学中。

 尊敬できる空気の人が一人だけだった。

「乙骨先輩。こいつ、役に立ちます?」

「……」

 釘崎の言動に、霞夜は速攻決めた。

 関わるの止めよう。絶対に仲良く出来ない。

「釘崎さんも、初対面でそう言うこと言わないの」

「いや、だって。あの目隠しの秘蔵の生徒って言うから期待してたら、ただのチビだし」

 外見で人を見下すのかこいつ。

 確かに霞夜は小柄だが、無礼すぎないか。

「礼儀作法を知らない人と、任務を共に行く気はありません。すみませんが、関わらないで下さい」

 きっぱり断言する。

 京都校の先輩のほうがずっとマシだ。

「釘崎、お前もいい加減にしろ」

「はぁー……器の小さい奴ね。この程度の口で拒否るとか、真希さん見習えよ」

 恵が割って入れば呆れる始末。

「小学生みたいな人ですね。いい歳して、態度が粗暴過ぎるんですよ」

「あんだと?」

 呆れたいのはこっちだ。何様だこいつ。

 先輩方は釘崎に何時もこれだと言っている。

 つまり、我が強い性格が終わっているタイプ。

「やっぱり京都校の先輩の方が良かったです。何ですか、このレパートリー。常識が通じる相手が一人しか居ないんですけども」

 校庭に顔合わせに来て言えることが、このメンツで好印象が白い制服の先輩だけ。

 後は恵が話して分かる、最低限の人嫌いの空気。

 信用できそうにない。ビジネスライクならともかく。

「あいつが死んで、本来居たっていう補充された呪術師がこんな奴でガッカリなのはこっちの方よ」

(虎杖君、こんな人達と仲良くしてたんですね)

 虎杖の凄さがよく分かる。 

 普通本人前に文句を言うか初対面で。

 太々しいにも程がある。

「もう良いだろ野薔薇。こいつはあの馬鹿と直哉が認めたグランドオーダーの呪術師だぞ。直哉は全部クソだが本物の実力者だ。ムカつくがな。そいつに気に入られて、悟のバカには憂太並みの術式って言われてんだ。一人じゃ大したことねえだろうが、誰かを支えるって意味じゃ最高峰の呪術師だよ」

「……なるほど。真希先輩でしたか、真依先輩のお姉さんは」

 この人か。身の程知らずの目標を掲げる、直哉曰くアホと言われている何もない中途半端な呪術師。

「私のこと真依や直哉から聞いてたか」

「ええ。双方、身の程知らずだと」

「テメエ、真希さんに良い度胸じゃねえか!」

 釘崎が怒鳴るが、流石にこの手のチンピラ擬きが同級生で、先輩は身の程知らず。

 やっていられない。

「東堂さんの言うとおり、マトモなのは乙骨先輩という人だけのようです。そもそも動物が喋るのも驚きですけど、意思疎通の出来ない先輩にチンピラ、身の程知らずの目標を目指す先輩。あからさまな素っ気ない同級生。すみませんが、私にも尊敬したり敬う相手を選ぶ権利があります」

「私らは京都校の連中よりも酷いってか? あの変態の東堂基準なら憂太以外はそうなるわな」

「東堂さん、僕のこと何でか気に入ってますよね……」

 苦笑いする真希という先輩は、過小評価を訂正する。

 一人でも、霞夜はそこそこ強いのだろう。

 だったら模擬戦でもやるか。

 今此処で、自分らも敬える事を教えてやる。

 そう切り出した。

「聞いたら向こうじゃ随分と素直に勉強してたらしいな。良い心構えだ。んでも、こっちじゃその勤勉さは徒だぞ、新人。野薔薇と違って、素直に私に事実を言うのは気に入った」

「おい真希、無茶言って後輩に絡むなよ。確かに京都校の連中は東堂以外は、特に女子は仲良くやってんだろ。そこに居たんだ、俺達がキワモノに見えてもしょうが無いだろ」

「そうだよ真希さん。いきなりは良くないですよ」

 仲裁する動物と乙骨。

 ……訂正するのはこっちも同じだったか。

「ええと、パンダ……先輩? すみません、私も生意気言いました」

 この人も常識が通じる。見た目パンダだけど。

「いや、俺は良いんだ。表に出られないしな、パンダだから。動物園に帰れってよく他の呪術師に言われる」

「事情は聞きません。理由あっての事だと思うので」

 深い理由があると思う。

 失礼なので言わないでおこうと思う霞夜。

「お、おう。本当に普通に丁寧だし素直で呪術師らしくないな」

「パンダ君にも敬意は払うのは、やっぱり呪術師の理屈よりも一般常識の有無っぽいね……」

 困惑するパンダと乙骨。

 霞夜の基準は礼儀だ。釘崎にはそれが無い。

 恵は壁を作って他人行儀。だから相応に対する。

 乙骨は東堂の言うマトモだと言うし、信頼できる。

 狗巻なる人は意味不明で付き合えない。分からない。

 真希は事前に聞いているだけでも無謀に挑む、根拠の無い自信に満ちていて信用したら共倒れだ。

「良いですよ別に。こっちも試したい機会だったので、先輩がいうなら構いません」

「おっ。私への反骨精神か? 良いじゃねえのお前も」

「いえ、単純にやる機会が来ただけです」

 ちょっと切り札を起こしてみようと思う。

 単純に性能が知りたい。

 何なら新しい切り札を見せるのだ。

 特級という五条の最強仲間乙骨に仲裁を頼む。

 釘崎が真希に味方する。一緒に袋叩きにしてやると。

「野薔薇、お前何でケンカ腰なんだよ」

「いや、真希さんディスる奴は潰したいんで」

「あのなぁ。何度も言うけど、これが普通なんだよ。一々初対面で突っかかるな」

 真希ですら釘崎に呆れている。

 恵も止めろと言うが、引っ込んでろとキレる釘崎。

 そうか。彼女は霞夜と同じで真希を慕っているのか。

 そうなら分かる。怒りたくもなる。

 それでも、無謀と無茶をやるのは勝手だが評価も当然妥当に受けるのが普通だろうに。

「私も知らない、サマーオイル先輩から聞いてるだけのグランドオーダーの本気です。気をつけて、死なないで下さいね」

「……サマーオイル? 誰だか知らんが私のこと知ってんだろう。天与呪縛のおかげで身体能力は私の方が上だ。早々死ぬかよ」

 強気に言うが、こっちは試運転だ。加減が分からない。手加減もクソも決戦兵器。

 何もない呪術師に向けるには過剰すぎるか。

 まぁ、誰でも良い。興味があるのか恵も見物する。

 残った男子が心配そうに見る。

 トンカチと釘を持つ釘崎と、薙刀らしき武器を持つ真希。

 距離を開けて、校庭に立っている霞夜。

 前衛は真希で、後衛が釘崎か。フォーメーションが多分そう。

 模擬戦、開始と乙骨が号令をかける。

「グランドオーダー、起動」

 走り出す二人。確かに真希は速い。

 けど直哉には及ばない。圧倒的じゃない。

 降霊、ORT。起動。

「……」

 瞬間、思わず乙骨が叫ぶ。

 霞夜の纏う空気が凍った。

 外見も変わる。

 霞夜の後頭部部分に、黄色い円盤状の物体が出た。

 凄まじい勢いで広範囲の呪力を円盤が吸収していく。

 絶句する見物の男子達。何だ、アレは。

 自分達の呪力も問答無用で吸収している!?

「ダメだ真希さん、今のその子に近づいちゃ!!」

 慌てて止める。

 真希も咄嗟に異変に気付いて止まった。

 遅かった援護攻撃の釘を発射する釘崎。

 右の手を伸ばす、霞夜。

 そこから無数に、四方八方に銀色の根っこのような触手が撒き散らす。

 地面に、空間に。棘のように、有刺鉄線のように。

 飛来した呪力の帯びた釘が触手に触れる。

 刹那、それは食われるように緑の結晶化をしてから、砕け散り、取り込まれる。

「何だよ、あれ……!?」

 パンダが困惑する。広域の呪力を吸い込み、自分達の呪力も身体から吸っている。

「あぁ、ORTって。捕食とか侵食するんですね。全部、全部」

 纏った霞夜にORTのマニュアルのように壊れた部分の能力が理解できる。

 自分すら、一度でも使えば侵食して上書きする。

 グランドオーダーから染み出て、脳を、身体を、書き換える。ORTに相応しい器に。

 自分が変わる。侵食されていく。嫌でも理解できるのは、侵食されていくせいで強引にグランドオーダーの在り方が、変わったからだ。

『おっと。マスター、これ今切り上げは止めておいた方が良いね。脳を物理的にORTが書き換えてグランドオーダーに最適化しているみたいだ。中途半端に終えたら即座に死ぬ。終わるまで待つしか無いね』

 内部で監視している夏油が言った。

 物理的にORTが全てを侵食して、霞夜の肉体をORT化している。

 完全に想定外。肉体の上書き。

 術式の枠を超えて、ORTが霞夜を怪物に変えていく。

 冠位指定術式、グランドオーダーへと。

「何だ、おい! お前、何やってんだ!?」

 真希が駆け寄るにも、触手が遮って襲う。

 反射的に呪具で切り払うが、その呪具も結晶化して散り行き、同時に捕食する。

「何って……言っての通り、模擬戦ですよ先輩? 得物が無いなら白兵戦でもしたらどうです?」

 淡々と、そう告げる。

 書き換えが終了までORTの機能を実行する。

 じゃないと機能不全で死ぬ。やりきる。

 そうか。捕食、侵食、その本質は本来なら居るだけで世界を上書きする星食いの怪物。

 壊れたせいで、自前で発動して世界を食らう手間が増えた。

『マスター、随分と落ち着いてるね? ……そうか、取り乱さないのは物理的な侵食のせいか。グランドオーダーの強制進化は丁度終わったよ。ORT仕様に変更されてるけど、基本的には純粋にグレードアップしたと見て良い。呪術的には拡張術式って形の身体の最適化だ』

(そうですか。凄いですね。壊れていてこれとは……)

 内部では、肉体の上書きが終了。

 外部では大騒ぎだ。

 コントロールが出来ていないと思われているようで、

「憂太! こいつ正気じゃない!!」

「はいっ!!」

 真希に止めろと言われ抜刀して、とんでもない呪力の塊となった乙骨が近くに刺さった触手を切り払う。

 触れたと同時に刀が結晶化。砕け散る。

 絶句する乙骨に呟く霞夜。

「無駄ですよ。そんなもの私に通じると思いますか?」

 普通なら特級の一撃。重たい一発である。

 触手程度なら消し飛ぶはずが、逆に即時に捕食されて、纏っていた呪力を食らう。

 面白いのは、捕食した情報を解析してそのまま会得出来る機能がORTにはあるらしい。

 今、乙骨の呪力を食らった。

 文字通り、食ったわけだ。

 呪力の情報から反転術式の情報を発見。 

 アウトプットも出来るらしい。

 ORTは解析開始。

「こいつ……!!」

「真希さん!! 下がって下さい!」

 超然と立つ霞夜に、逃げ腰の釘崎は懲りずに攻撃しては餌遣りを繰り返す。全部食らう。その通りに。

 呪力から術式、芻霊呪法を確認。自動的に解析開始。

「くっ……こうなったら! 来い、リカぁッ!!」

 乙骨が必死に何かを呼んだ。近くの空間が歪む。

『なぁにぃ? 憂太ぁ』

 不気味な式神らしい頭部と腕だけの異形が現れた。

 見物の男子達も身構えた。全員臨戦態勢だった。

「天戸さんを止めてくれ! あの銀色の根っこには触っちゃダメだ!」

『はぁい』

 呪力の塊の癖に、吸収に堪えている。

 模擬戦は中止。霞夜を止める一同。

「あれ? 皆さん、どうしたんですか?」

 霞夜は侵食を終えた。上書き終了。もう良いのに。

 なのに……何で霞夜は止める気にならないんだろう?

 決死の覚悟で、全員に袋叩きにされていた。

 凄い速度で式神が接近して霞夜を掴む。

『大人しくしてぇ』

「あ……不用意に。私に触りましたね」

 今の霞夜に触れる。最も禁忌の行為。

 直に、即座に式神にも銀色の根っこが根付く。

『いたぁい!?』

 慌てて離す式神、だが呪力を直に頂いていく。

 塊というか、吸っても吸っても無くならない。

 呪力の底無しのような式神だ。

 情報量もヤバいくらい持ってる。

 解析に時間を割かれる量だった。

「リカ!! 天戸さん、もう良いよ! グランドオーダーを止めて!」

「あー……」

 そう言われても。

 グレードアップしたグランドオーダー、ちょっとは止めようとはしている。

 でも何というか。

 グランドオーダー、止めたくない。

 本能的な無意識で侵食されたせいか。

 ORTに自我は無いのだろう。

 でも面白い情報(エサ)が転がってると思うと止める気にならない。

 もっと欲しい。触手を伸ばす。

「おい、止めろ天戸!! もう良いって言ってんだろ! 棘、頼む!!」

 パンダが制止に、最も効率の良い特攻を狗巻に託す。

 

『――止まれ!』

 

 喉元を隠していた、狗巻が何かを叫んで命じる。

 霞夜は術式だと認識。何だ、これ?

 外部からのダイレクトの強制停止? 

 グランドオーダーが一瞬揺らぐ。

 それも受けた。結局捕食するだけだ。

 呪力から情報解析。呪いの言葉の術式のようだ。

「がはっ!?」

 狗巻が吐血した。血反吐を吐く。

 効いてない。反動で自滅したと皆が理解した。

「いい加減にしろ、天戸!!」

 怒鳴った恵が腰撓めに構えて何かを懐から取り出す。

 ……また呪具か。面白くない。

「十種影法術、見せて下さい」

 得物は食っても無駄。術式か呪力を見せろ。

 纏った呪力で、立っている霞夜を襲う。

 接近して斬りかかったが、円盤から突如熱風が吹き出して、迎撃する。

 後方に吹っ飛ぶ恵。 

 彼の秘密、本人の呪力を見つけた。

「頂きます」

 残り滓の残穢だろうが触手で取り込む。

 案の定、十種影法術の情報が少しだけ詰まっていた。

 解析を行う。袋叩きにされても、何も怖くない。

「……」

 ORTに改造されたせいか、本能的に動く彼女。

 霞夜の中で英霊ももう良いと必死に問いかける。

「リカ! 大丈夫!?」

『憂太ぁ、あいつ気持ち悪いよぉ』

 駆け寄る乙骨に式神が泣き言を言う。

 根付いた銀は、未だに呪力を直に吸い上げる。

 霞夜は突っ立ったままだ。パンダは殴ればあの触手同様侵食されると分かって触れない。

 そこに、騒ぎに気付いた世界最強が駆けつける。

 五条悟。目隠しを外して、目を細めて言った。

「うるさいと思って来たら。うわ、何やってんの霞夜? なんつう化け物降霊してんのさ。……随分と身体も変化してるし。これがあいつのアドバイス? ダメでしょ、流石に」

 五条悟。世界最強。

「先生、ちょっと情報を下さい」

 上物の情報だとORTの思考で霞夜は判断した。

 見境なく、触手を伸ばした。

「あーあ、ダメだこりゃ。頭の中まで怪物に飲み込まれて。あいつ、霞夜にアドバイスのやり方間違えてやんの。後輩だろうに、無茶言いやがって」

 状況は分かった五条。

 要するに、霞夜の中の厄介なモノを降霊させている。

 慣れた様子で無下限の蒼で触手を吸い込んで潰す。

 皆が驚いた。五条が普段やらない生徒に無下限を向けている。

 つまり、それ程の状態だと言うことか。

「無下限……あれ、解析できない……?」

 食らう攻撃と同時に情報を捕食。

 なのに、無下限は解析しても再現不可。

 何故?

「ちょっと痛い目見るよ霞夜。その怪物を身体から出しな」

 間合いを侵略、腹パンをブチ込む。

 が……。

「嘘だろおい。手加減してるけど僕を食うつもりか!」

 触手は無くとも食らえば喰らう。無下限の術式を空間が無限にあっても刹那で侵食。

 五条の殴った肉体すら蝕んでいく根っこ。

 歴戦だけあって、自損も辞さずに腕を蒼で切り離す。

 片腕になった五条が後退する。

 出血は無い。反転術式で速攻治して生やす。

 切り離す腕が結晶化、霞夜に取り込まれる。

 情報を解析。簡易領域、落花の情、反転術式、術式反転……。

「美味しい……」

 いっぱい情報の入った肉体だ。

 嬉しい、嬉しい。美味しい。美味しい。

 恍惚の表情で微笑む霞夜。

 腕から理由を解析。

 再現不可能の理由はあの虹色の瞳の欠落。

 六眼っていうあれか。欲しいなと思う。

「不味い……もうあの子の意識がない! ったく、何だこの怪物! あのバカ、何教えた!?」

 五条すら焦る、怪物。

 何なのだと思いつつ一か八かの博打に出る。

 生徒に下がるように言った。巻き添えは危険だから。

 切り札を使って、彼女が堪えることを信じよう!

 生徒は離れた。触手が来る。蒼で潰して、接近して。

 印を結んで、発動する。

「領域展開、無量空処!」

 世界最強の最高の手札。

 領域展開、無量空処。

 飲み込む領域展開に、霞夜は。

 

「領域展開。水晶渓谷」

 

 印も使わず、それより素早く何かを広げる。

 五条が見たそれは、異界の空間。青い水晶の地獄。

 無量空処よりも素早く、五条悟を喰おうとする本能だった。

『おっと、これで腹八分か。満足したかいORT。もういい、悟を喰ったならこれ以上の上物はこの世に居ないよ』

 夏油が内部で腹八分目で満足したORTを御する。

 無理矢理、ORTから霞夜の自我を引っこ抜いた。 

 呪霊操術で慣れたモノだ。

 手を翳す、吸い出して牽引するだけ。

「あれっ……?」

 パリンッ!! と広がった水晶渓谷の世界がヒビ割れた。

 ハッとする霞夜。

 ORTに、知らぬ間に呑まれていたようだ。

 で、当然無量空所を食らう。

「止まった!? 遅えよ傑! もうこっち止まらない……!」

 五条の領域展開、発動。

 包まれる無下限の内側、神秘の宇宙。

 情報の過剰投与。なのに……。

「霞夜! 無事か!?」

「はい……何とか」

 無量空所を食らってんのに、情報を処理できていた。

 有り得ない。普通の呪術師が、無下限の知覚と伝達の無限攻撃に対応できている。

「待って、僕の領域で自由に動けるのか!?」

「はい? 何がでしょう? 頭に凄いいっぱい情報が流れてくるんですけど、何とか動けますよ?」

 ORTの圧倒的処理能力のおかげで、素で無量空処すら堪えられる。

 基礎スペックは爆上げされたせいもある。

「ちょっと待って。ここで事情をとりあえず説明してくれる?」

「はい、すみません……」

 ここで明かされる、怪物ORTの残滓の話。

 世界最強ですら、物理では勝てないと言わざるを得ない、One Radiance Thing。

 異星の怪物であった。

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