死ぬほど痛いけど死ななきゃ安い   作:エドモンド橋本

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プロローグ

 

 

 

 俺には前世の記憶があるような気がする。行ったこともない場所の景色や、知らない人との会話、見たこともないテレビアニメの映像、そんなものが鮮明に蘇る瞬間がある。幼い頃は、これが不気味で親に泣きついたこともあった。解決方法なんてなく、どうしようもないまま時間だけが過ぎていった。結局時間が解決してくれたようで、今ではすっかり慣れたし、悪いことばかりじゃない、小中学校では難しい問題もスラスラ解けたし、人前に出ることも、慣れていたのか緊張することも少なかった。カンニングしてるような気分にもなったりしたが、あまり深く考えないようにしてる。

 

 

 

 「はぁ〜、大したもんだなあ」

 

 前世の記憶が気にならなくなり、普通の高校生活を送れるようになったある日。土曜日の朝だからか、ゆっくりしている父がテレビを見て呟いた。普段から独り言の多い父だから特に気にしなかったが、何となく部活の着替えをカバンに入れながらテレビに目を向けた。

 

 【天凪重工がヴェイロン・ダイナミクスと業務提携】

 

 作業着を着た優しそうなおじさんが、スーツ姿のダンディーな外国人と握手をしていた。ヴェイロンってスポーツ用品から色んなブランド品まで作ってるって言う有名な企業だったよな。そんな凄いとこと、提携してるって言う天凪重工って確か。

 

 「ごめんごめん大佑、はいお弁当」

 

 「ああ、ありがとう」

 

 キッチンから出てきた母から弁当と水筒を受け取り、もう一度テレビに目を向けた。

 

 「ん?あら、天凪重工って、あんたの先輩が就職したところじゃない。凄いわね〜」

 

 「うん」

 

 俺の視線を追うようにテレビを見た母の言葉に頷く。2つ上の先輩が就職した企業だ。内定が決まった時はすげえ嬉しそうに報告してきたのが懐かしく感じる。

 

 「って大佑!のんびりしてると部活遅れるわよ!」

 

 「やべ!行ってきます!」

 

 弁当と水筒をリュックに入れ、バッシュケースを持って慌てて玄関を出る。かなり暑くなってきた早朝の住宅街を小走りで進む。

 

 『野神!俺天凪に内定したぜ!』

 

 そういえば、先輩最近連絡してこないな。休みの日とかもよく一緒に遊びに行ってた人で、卒業してからも入社式までは頻繁にメッセを飛ばしてきてた。寮や会社の雰囲気とかも度々連絡してきてたのに、少ししてからピタリと連絡がなくなった。

 

 「4月4日か」

 

 最後に俺が連絡したのが2ヶ月前。先輩の【働くのだりぃww 】という連絡に返信して、2日後に【給料もらいました?笑】ってイジりのメッセを送ってから返信がなくそれ以降連絡がない。なんかスベった感じになってるし、あまり追及出来ず、それ以降こっちから連絡していない。実際めちゃくちゃ忙しいだろうから仕方ないかもだけど、久々に連絡してみるか。

 

 【先輩おつです。可愛い後輩に飯奢って下さい!】

 

 当たり障りのない今まで通りのメッセを飛ばしてから、俺は改めて学校に向かった。

 

 

 

 

 

 【野神たすけ】

 

 

 

 

 

 【メッセージは削除されました】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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