ダイスケ
【先輩おつです。可愛い後輩に飯奢って下さい!】7:38
Rent
【メッセージが削除されました】7:52
俺が久々にメッセージを送ったあの日、泉先輩からの返信があった。しかし、そのメッセは削除されており、追記も何もない。それが気になってしまい、その後も何度か送信してみたが反応はない。
ヤス
【蓮斗とは最近全然連絡取れてないな】
狩屋
【てか、俺らの代のグルチャにもあいつだけ全然返信しないよな】
佐介
【ゴールデンウイークの時も集まろうとしたけど来なかったし】
ひろと
【無視とかする奴じゃないし、スマホ壊れたとか?】
Masaki
【んなアホな。データ移行くらいやるやろ】
ダイスケ
【そうですよね】
当時チームのキャプテンをしていた中川先輩に頼んで、卒業した先輩達のグルチャに一瞬入れてもらった。先輩達曰く、4月に入ってから誰も泉先輩と連絡を取れていないとのこと。
佐介
【そういえば、この前蓮斗の母ちゃんに会って挨拶したけど、なんか蓮斗の母ちゃんも連絡取れてないみたいだぞ】
Masaki
【マ?警察案件じゃね?流石に】
狩屋
【2ヶ月も連絡なしは流石になあ】
佐介
【いやほら、天凪重工ってさ、なんか化石燃料に代わるエネルギーの開発?とかなんかそう言うのやってんじゃん?だから、電子媒体の持ち込みとかに厳しいみたいで、外部との連絡とかも必要最低限になってるらしい】
ヤス
【だとしても、親御さんと連絡が取れないってのは流石に】
佐介
【一応会社から勤務中の写真とかが送られてくるみたいだぞ。それ見て安心したって言ってたし】
連絡はだめなのに写真をわざわざ送る?なんかおかしくないか?寮での時間もスマホの使用を禁止しているのか?それとも、連絡出来る状態じゃない?流石に考えすぎか?いや、でも。
ヤス
【まあ、俺らもちょくちょく連絡取れるか試してみるわ】
狩屋
【ごめんな役に立たなくて】
ダイスケ
【いえ!すみませんでした。みなさんお忙しいのに】
佐介
【盆休みにまた帰るからそん時は飯行こうな!】
ダイスケ
【楽しみにしてます!みなさんありがとうございました!お仕事頑張ってください!】
俺は先輩達にお礼を言ってチャットを抜ける。俺は、改めて泉先輩のチャットを開く。
Rent
【メッセージが削除されました】
先輩が連絡を取ろうとしてくれたように見える。もしスマホの使用を禁止されているなら、そもそもメッセを送れないだろうし、時間が限られているならご両親や中川先輩達に連絡を取るはず。それなのに他の誰でもなく俺にメッセを飛ばし、それを削除した。あの日、最新のメッセージが俺からのものだったから、俺に何かを言おうとした?……やっぱ考えすぎか。こう言う時こそ前世の記憶を頼りたいが、正直役に立ちそうにない。
「ん〜、よし!」
考えたとてどうにかなるわけじゃない。こうなりゃ強行突破だ。
週末。俺は先輩の会社の寮まで来た。実は先輩の寮はウチの最寄駅から7駅先にある。行けない距離ではなかった。先輩曰く、いつでも泊めてやるとのこと。本当に可能かどうかは置いといて、訪ねることは許されてるはずだ、会えなくてもどんな様子かを聞くことは出来るはず。俺は覚悟を決めて、寮の玄関へ向かう。しかし、門の前にいた警備員さんに止められた。
「失礼ですがどちら様ですか?」
180センチある俺を余裕で見下ろす警備員さんの目は警戒を隠そうともしていない。圧がすごいが、警備員ってこんな感じだっけ?
「て、帝煌工業高校3年の野神大佑です。今年天凪重工に入社された泉蓮斗先輩に会いに来ました」
「……申し訳ございません。本日泉さんは出勤されていて寮には居ません。お引き取り下さい」
「休日出勤、ですか。あの、定時は17時ですよね?じゃあ、その頃にまた」
「16時以降の訪問は遠慮させていただいております故」
定時が17時なのに16時には訪問を断る?寮で生活している人たちに直接会うにはどうすれば?
「あ、あの、寮内ではスマホ禁止のルールとかってあります?最近先輩から連絡がなくて、先輩の家族や友人も心配してるみたいなんですけど」
「そういった質問は天凪重工の人事総務部へ連絡して下さい」
もはや俺に目を向けず、あしらうように冷たく言い放つ警備員。とっとと帰れと雰囲気が言っている。
「……まだ何か?」
「いえ、失礼します」
今回は諦めて警備員さんに背を向けて引き上げることにした。分かったことは少ないな、高校生の俺に探れるのはここまでか?近くのコンビニ横の路地を歩きながら、頭を悩ませる。
「……先輩は今本当に」
「どこの3流記者かと思えば、高校生か」
一切の気配なく、背後から声が聞こえた。振り返ると、ダボッとしたパーカーを着た長髪の男性が眠そうに立っていた。何かの串を咥えたまま、彼は履いているサンダルの裏の汚れを払い落としながら歩み寄ってくる。
「高校生クン、目的はよくわかんないけど、天凪の事を探るのはやめときな。マスコミとか、配信者とかがネタにしようとして警察沙汰にもなってるし、危ないよ」
胡散臭い。それがこの人に対して抱いた第一印象だ。垂れ目だからなのか眠そうに見えるし、なんか串咥えてんのも意味わかんないし。
「そ、そうですか、気を付けます。でも、気になることがあるんで」
「はぁ、最近の子って、遠回しに言うと伝わらないのかな」
後頭部を掻きながら男性はダルそうに俺を見る。
「あのね、迷惑だから中途半端な詮索はするなっていってんの。俺の調査の邪魔だからもう首突っ込むな」
優しく俺の肩に置かれた手は、一瞬で強く指が食い込むほど力が込められた。しかし俺は痛みに悲鳴をあげる暇もなく、逆に男性の肩を掴む。
「天凪の事調べてるんですか!?どこまで知ってます!?いったいあそこでは何が!?」
「うおっ!急に何だよ」
「天凪に入社してから先輩と連絡がつかないんです。だから」
俺の肩から手を離し、さらに俺の手を振り払った男性は呆れた様子で俺を見る。
「想像以上の馬鹿だったな。ごめんよ、子供の友情ごっこの世話を焼くほど俺は暇じゃない」
「友情なんてものじゃ」
「ああはいはい。もう良いから」
男性は足を開き、少し腰を落とした。左手足を前に出し、完全に戦闘体制を取っている。
「大人の言う事素直に聞かないから、怪我する羽目になるんだよ?」
『プレイヤー1!!』
突然聞こえた謎の声。俺と目の前の男性以外誰もいない筈。男性は気にも留めない様子だし、どこか聞き覚えのある声に頭が混乱する。
「は?何?て、いや、ちょっと落ち着きましょうよ!」
『プレイヤー2!!』
うるさ!てかなんだこの既視感の正体は。なんとなく自分と男性が一つの枠の中にいるような感覚。
「あ」
前世の中にあった記憶の一部。画面の中に対峙する2人のキャラクター。方や大きな体で相手を掴んでは投げ、方や理屈はよくわからないが気の玉のような物を放ち、近寄らせない。
【Round1___】
ああ、そっかこの世界は。
【Fight!!】
格ゲーだ。
「龍刃弾」
男性が右手を突き出した瞬間、龍の様な黒い炎が俺に向かって放たれた。
「あ、死んだ」
黒い炎に飲まれた俺は後方に強く吹き飛ばされた。