謎の炎に包まれ、思い切り後頭部をアスファルトに打った。
「あっつ!いった!!」
皮膚が溶けるレベルの炎を浴び、意識を失うほど頭を強く打ったのに、熱いと痛いで済んでいる事に驚く。というか火傷もしてないし、ちょっとすす臭いだけ。身体はピンピンしてる。
「やっぱ格ゲ、へぶらぁ!?」
「よそ見とか余裕じゃんね高校生クン」
俺との距離を詰めた男性は、俺が立ち上がろうとした瞬間、思い切り顔を蹴り上げた。
「いったいなあ!!」
「うおっと」
一瞬だけ激痛が走り、俺は詰め寄って来た男性の足元に蹴りを入れるも、容易く躱される。飛び上がったかと思うと、更に俺の首目掛けて蹴りを放った。
「うぬ!」
「へぇ」
腕を立てて蹴りを防ぐと、先ほど以上の痛みはなかった。やっぱガード判定でノーダメか?まんま格ゲーじゃん。てか最初の黒い炎はどう言う原理なんだよ。
「喧嘩慣れしてない素人高校生クンにしては、よく防げたね」
「それはどうも。ならもうやめにしませんか?」
「なわけ」
再び距離を詰めて来た男性に慌てて、ガード体勢を取る。しかし、寸前で頭上に飛んだ彼は、背後に回り込み、俺の背中を蹴った。
「んだっ!?」
「ふっ!」
首に手を回された俺は、更に背中を強く蹴られ足が地面から離れると、体が宙に浮いた。
「っ!?」
地面に叩きつけられると、あまりの衝撃に声が出なかった。しかし、それもすぐに楽になり、立ち上がり際に放たれた蹴りを後方に飛ぶ事でなんとか躱す。
「反撃されても、文句ないですよね!!」
バックステップで下がった男性との距離を詰める。プレッシャーの掛け方やステップはバスケで身についてる。
「で?これがパンチ?」
顔面目掛けて振るった渾身のパンチは容易く受け止められる。この人多分雰囲気とかビジュ的に格ゲーのネームドキャラみたいだよな。そんな戦闘の専門家と違って、こっちは生まれてこの方まともな喧嘩なんかした事ねえんだよ。多分前世でもない筈。
「でもまあ、動きは悪くない。ただ、まだまだ素人臭いね」
「素人ですから、ね!」
大ぶりのへなちょこパンチをバカにする様に容易く避ける男性に、足払いを決める。俺の中で不意打ちの足払いのつもりだったが、彼は全く気にすることもなく、むしろ払いに来た俺の足を蹴り返す。
「うぐっ!」
一気に体勢を崩した俺の腹を膝蹴りすると、すかさず顎を右拳で殴ってくる。そのまま振り向き様の蹴り、距離を詰めての肘打ち、手刀などを繰り出してくる。ダメだこれ、完全にハマった。
「えふっ!ごはっ!ぼへっ!」
「ふっ!」
一連の攻撃のシメと言わんばかりに、彼は最初に見た黒い炎を足に纏わせ、俺の首目掛けて振り上げた。
「ばはっ!!」
【K.O!!】
「はぁ、マジでだるいんだけど。そろそろ帰ってくんない?」
今まで以上の痛み。全身から一気に力が抜けて地面に倒れ伏す。流石に死んでもおかしくないのだが、身体はなぜか軽いし、起きあがろうとする。それは多分、
【Round2____】
脳内に響くこの声が、まだ戦えと言うのだろう。
「ふぅ」
落ち着け。パンチも蹴りも素人以下だけど、バスケで鍛えた動きは本物の筈だ。よく見て、守って、反撃を狙え。
【Fight!!】
「ッ!」
「うぐっ!」
瞬時に距離を詰めて打って来た蹴りをなんとか腕でガードする。痛くはないけど衝撃が凄いな。なんて考えている隙に、腕を掴もうと伸ばしてきた手を今度はバックステップで躱す。
「龍刃弾!」
「ッう!どわ!!」
黒い炎をガードした瞬間、足払いされ体勢を崩した。不味い、あの炎で見えない隙を突かれた。すぐに建て直そうとするものの、倒れた際に馬乗りになって来た男性に一方的に殴られる。
「んぐ!ぼはっ!だはぁ!!」
「なんか気に入らないんだよね。ビビるわけでも命乞いするわけでもなく、なんとか切り抜けてやろうって目が、ウザいんだよな」
「ごへっ!ぼは!んぐ」
顔の前でガードしていた両手を片手で容易く剥がされる。頭の上で押さえ込まれ、もう片方の手で無抵抗のままボコされる。連続で殴られると流石に痛みが消える前に痛みが襲いかかってくるので結構しんどい。
「君は舐めすぎなんだよ。天凪も、俺のことも、遊び半分で関与して良い相手じゃないんだよ!」
「ぼへあ!!」
やる気のないダウナー系みたいなビジュしてる癖に、結構熱くなりやすいのかよ。てか、一方的に殴られんのも、言われっぱなしなのも、嫌なんだけど!
「っるせえ!!」
「っ!」
押さえつけられた両腕を思い切り振り下ろし、膝を曲げて身体を起こす。起き様に思い切り頭突きをすると、流石に怯んで後ろに下がった。
「案外、軽いんですね」
「……クソガキが」
目に込められた殺意に思わず震え上がる。そんな恐怖心を殺すためにも、軽くジャンプしながら手足を振ってみる。試合前によくやるルーティンなのだが、それが余裕の意図として捉えたのか、男性の顔が更に険しくなった。
「散々殴られといてまだ煽ってくるとか、もしかしてマゾなの?」
「さっきから人のことわかった気になって適当ばっか言っちゃって、お兄さん妄想癖凄いっすね」
言い終わるや否やとてつもない速さの蹴りが飛んできたが、なんとか腕で防ぐ。
「チッ、龍刃弾!」
再び飛ばして来た黒い炎を防ぐと同時に、足元に伸びて来た男性の足を蹴り返す。
「ッ!?」
「っおらああ!!」
憧れの海外リーグの選手の様なトマホークダンクをイメージして、体を大きくのけぞり振り下ろしたパンチは、一瞬体勢を崩した男性の顔面に叩き込まれた。
「ぐっ!」
さっきまでのとは違う。完全にクリティカルヒットした、確かな手応えを感じる。だが、その手応えを感じてしまったことがよくなかった。喧嘩慣れしてないが故に、ほんの僅かな動揺が仇となった。
「なっ」
「舐めすぎなんだよ」
確かに倒れたはずの彼は、瞬きする間もなく立ち上がり、俺の足元を今度は容易く払った。前のめりになった俺の顔面に、先程のお返しと言わんばかりに、炎を纏った拳を叩き込んできた。
「龍刃拳」
「ごはっ!!」
【K.O!!】
その一撃を喰らうと同時に、全身が激しく悲鳴を上げた。アドレナリンが出ていたからなのか、先ほどまで受けた攻撃の痛みが一気に襲って来た。
「……忘れな。その方が君のためだ」
【———Win!!】
【9】
痛い
【8】
苦しい
【7】
やっと、見つけた、手がかりなのに
【6】
この人なら、天凪の事を、泉先輩の、ことを
【5】
知ってるかも、知れない、のに
【4】
クソ
【3】
もう
【2】
とどかな
『諦めんなよ野神』
『大丈夫、まだ30秒ある』
『ゴールまで走れ野神、俺が届けてやる』
『下を向くなよ。最初に教えたろ?』
『頑張れ野神、頑張ろう』
『野神!俺天凪内定したぞ!』
『それじゃあ野神、元気でな』
俺はあの人から、何を学んだ?
痛くても
辛くても
泣きたくなっても
【1】
「ギブアップだけは、しない事だ」
全身から聞こえる悲鳴以上にでかい声を出して立ち上がる。貼り付けたような笑顔で既に背を向けている彼に挑発する様に手招きをする。
【Round1】
「……その体でまだやるのかい。痛みは相当なものだろうけど」
「死ぬほど痛えよ、でも」
【Ready___】
「死ななきゃ安いんだよ!!」
【Fight!!】
「おらああ!!」
きっとさっきよりも荒く、無駄の多いパンチだっただろう。それでも、まだ戦えるという意思表示としては充分だった。
「……」
「ッこの!」
俺のパンチを彼は避けなかった。余裕そうに頬にめり込んだ手を掴む。俺は反対の手を振り上げるが、それは無意味に終わった。
「もういい、やめだ」
【プレイヤー2 _______Give Up】
「は?」
俺の手を離した彼は、両手を上げて呆れた様子でため息をついた。
「ここまでの馬鹿だとは思わなかった。世間知らずの高校生クンの胆力じゃないよね」
やれやれと言った様子で首を振る彼は、最初と同じ様な眠たげな目で俺に手を差し出した。
「俺はリンドウ。とりあえずおいで、天凪についての話をしよう」
なぜ負けを認めたのか、何故俺に天凪のことを教える気になったのか、よく分からないが、俺はそれでも泉先輩への情報を聞き出すために、彼の手を勢いよく掴んだ。
「野神、大佑です」
【ノガミ Win!!】
【称号 負け犬チャレンジャー を獲得しました】
キャラクター紹介
野神大佑
Age:17
Ht:182cm
Wt:75Kg
style:???
趣味はゲームと漫画
好物はラーメンとピザまん
飛び道具はないが、対空とリーチの長いコマ投げが武器。ガードでなんとか相手の攻撃を凌いで、間合いを詰めて一気に自分のペースに持ち込もう。