六本のバスタード・ソードを抜き放ち、二本を手に四本を
「奇遇だね、君もバスタード・ソードを使うのか」
「『・・・』」
「お喋りは苦てッ・・・!”
亡霊が一息で距離を詰め、そのバスタード・ソードを振り下ろす。警戒していたおかげでどうにか移動スキルは間に合ったが身に着けていた鎧の一部が欠けている、スキル込みでも躱し切れなかったか。速い・・・、だけじゃないな。スキルを使っていた様には見えなかった、つまり純粋な身体強化のみでスキルを使った私に迫り、魔力による強化を施した鎧を切り裂いたわけだ。
「これでも、身体強化は得意な方なんだがね・・・」
「『祈れ』」
「それしか言えないのかな?”
スキルのより視野角を拡げ移動速度を底上げする、そこに全力の身体強化を施し私が出せる最高速度で亡霊に迫る。並みの騎士であれば私が消えたように見えるだろう速度、しかし亡霊は確実に反応してくる。だが、
「”
「『・・・ッ!』」
確かな手応え、スキルによって剣速を増した一撃を亡霊は確実に止めて見せた。しかし、
「硬い、、、が魔力は削れる、決して倒せない敵ではなさそうだ」
「『・・・』」
亡霊が、状態を確かめるように自身の手を見つめている。、、、やはりただのアンデッドではないな、確実に高度な知性を持っている。グリムリーパーの変異個体か、或いは・・・。
「しかし膨大な魔力量だね、それだけの魔力を武具に流し続けて疲れないかい?」
「『・・・』」
私もあまりお喋りは得意ではないが、今は少しでも時間が欲しい。出来ればこの戯言に耳を傾けてほしいんだが・・・。
「ま。そううまくは行かないか」
亡霊が盾を構える、あれは・・・ランタンシールド?これはまた珍しい物を・・・。どうやら亡霊は防御を固めて戦うことにしたらしい、確かに私の戦い方は一撃の威力よりも手数の多さと
「スキルを用いれば速度は互角、手数と間合いに関しては此方が圧倒的に勝っている。生憎、相打ちをする気はッ・・”
「『・・・ッ!”
構えた盾が炸裂し、爆炎が襲い掛かる。・・・赤く輝く瞳に反射的にスキルを合わせたお陰でどうにか避けられた。が、亡霊が先程の爆炎で舞い上がった土煙を突っ切て切りかかってくる。・・・これは避け切れないか。
「グウゥッ!!!ガアァァ!!!」
亡霊の上段からの一撃を両手のバスタード・ソードで受け止める、だが私達の膂力には隔絶した差がある。私の体はその一撃を支えきれず後方へと吹き飛ばされていく。ちッ一本落としたか。
「『祈れ』」
飛ばされた勢いを利用し体勢を整える。がその時には既に亡霊は眼前に迫り剣を振り上げていた。
「ッ!”
闇魔法で視界を潰し、スキルで剣を握る右手首を突き刺す。大振りで助かった、刃が通ることは無かったが流石の亡霊も不意を突かれたらしい、剣を取りこぼす。
「”死掠ッガァッ!!!」
しかし、そう易々とは首を取らせてはくれない様でその人外の膂力で蹴り飛ばされる。
「はぁ、はぁ、・・・あまり・・・、剣術は得意では無いらしいね。ふぅ・・・、君の膂力ならあそこで大きく構える必要はなかった」
「『・・・』」
亡霊が、取りこぼした剣を拾い上げる。・・・隙だらけに見えるが、まぁ今攻める必要はない。・・・風は此方に向いてきた。
少しの距離を置き、亡霊がこちらを見つめる。・・・漸く私を警戒してくれたね。”
「好きなだけ警戒してくれ。”
「『・・ッ』」
まぁ小細工なしで使えばそこまで大きな隙は出来ないだろう。だが君には十分だろう?処断のグルートよ。
「”
「『ッ!!ガッ!!』」
ギフトを使い気配を隠していた処断のグルートに、それでも亡霊は寸前で気付いたらしい。首をそらし躱そうとする、だが若くとも聖堂騎士。亡霊の魔力に阻まれながらも首にロングソードを叩き込み、確実に亡霊の体勢を崩す。
「”
隙を逃さずギフトとスキルを併用した五連撃、明確に亡霊の魔力が減り私に還元される。が、そこまだだった。魔力が減り、守りが薄くなった亡霊の首に処断のグルートがとどめの一撃を叩き込もうとした瞬間。・・・亡霊の腕から剣が、先程落とした私のバスタード・ソードが、
「『”
「避けろ!グルートォ!!」
「『”
「・・・え?」
亡霊の腕から生えたバスタード・ソードが、一切の狂い無く処断のグルートの胸を貫く。確認するまでもない、致命傷だ。煤こけた私の剣が崩れていく、栓を失ったグルートの胸から血があふれ出す。そして私も人形の様に殴り飛ばされる、この戦いで何度目かの距離が開く。
「『”
魔力が、亡霊の魔力が回復していく・・・、敗北だ。
魔力は共に全開、しかし確実にダメージが蓄積している上に私では亡霊の素の身体強化すら突破できない。・・・それならば。
「・・・名前を、教えてくれないかい・・、君、人間だろう?」
此方に歩み寄ってくる亡霊に声を掛ける。しかし、その歩みが滞ることは無い。
兜を脱ぎ捨てる。
「ガフッ!・・・さっきから動作が人間臭いんだ、無駄な大振りだったりゴホッ!ゴホッ!・・・奇襲を受けた時の慌て方だったリがね」
口に血が溜まって喋りづらい。
「何、恨み言を言うつもりはゴホッ!・・・ないよ。君にも事情が、私達を恨む理由があるんだろう」
遂に亡霊が膝まづく私の下にたどり着く。ああ、だから大振りの必要はないって言ったじゃないか・・・。
「『祈れ』」
「またそれか・・・、優しいね君は。でも大丈夫だよ”
振り下ろされた亡霊の一撃を
「ゴホッ!・・・駄目だよ、戦場で敵を信じちゃ」
嚙み砕いたポーションの瓶を吐き捨てる。
「悪いね、私の魔力が尽きるまでは付き合ってもらうよ」
「『・・・・・』」
なんて、カッコつけては見たものの。結果は変わらない、敗北は揺るがない。この後数分間、私は亡霊と互角の戦いを繰り広げるも、結局魔力が切れて殺される。でも十分だろう、この結末は最初から決まってたのだから。この物語は、私の死という下らない結末で終わると、そう決まっていたのだから。
ああ、ボルツマンは元気にしているだろうか。
「あ、モングレル先輩チッス!」
「おーライナ、また貴族街の依頼か?」
「ッス、弓の指導が終わったんで帰ってきたところっス。・・・っていうかモングレル先輩なんすか、その兜?珍しく普通の装備じゃないっスか。やけにぼろぼろっスけど・・・」
「珍しいは余計だぞ。・・・これは俺が昔使ってた兜でな、部屋の掃除をしてたら偶々出てきたんだよ。・・・何かに使えないか考えてたんだが・・・、ボロボロすぎるよなぁ」
「これ、モングレル先輩が使ってたんスか!?・・・良く生きてるっスね。ここなんて完全に貫通してるし・・・」
「とんでもない化け物と戦ったせいで壊れちまってな!サンライズキマイラ五十匹分くらいの強さだった!」
「そんなのが居たらハルぺリア滅んでるっスよ・・・」
「いやぁ、・・・本当に強かったんだぜ?」