全然寝取れてねぇ……
休息→タップ、回復→アンタップです。
この世界では、一つのカードゲームが世界を支配している。
それが【バトル・ウィザーズ】。
プレイヤーは魔法使いとして、様々な効果を及ぼす魔法が入った、最低でも40枚からなるメインデッキ、魔法を使うためのマナを生み出す工場──最低20枚からなるファクトリーデッキを構築する。
メインデッキには、相手に攻撃し、直接ライフを削る
妨害、手札補充、モンスターの強化、蘇生、その他様々な効果を発動する
場に置いておくことで効果を発揮する
この三種が入る。必ずしも三種入れなければならないなどのルールはない。
そのため人によっては、モンスターのみの《フルモン》、スペルのみの《
メインは各ターン、ドローフェイズに一枚ドロー。
先行プレイヤーの初回ドローはスキップされる。
そしてファクトリーデッキ。ここにはマナを生み出す
ドローとは言うが、工場カードは手札に抱えておくことは出来ないので、そのまま場に出ることになる。
ただし、こちらは先行プレイヤーも初回ドローが出来る。
そのため先行を取った方が、マナが一つ増えるので有利になる。
基礎ルールをさっくりと思い返す──相手はなんてったってバトル・ウィザーズの販促アニメ主人公なのだ。
前世含めればもはや万回はバトルしてきたが、万が一にもルールミスなんてしたら恥で切腹してしまう。
【宣言 歩美】。たしか15歳?
誰もが振り返るレベルの美少女であり、かつその胸は豊満。
カードゲームアニメにしては女主人公というのが珍しかったものの、その可愛らしいキャラデザと、各話のバトルの監修がそれぞれのデッキタイプを扱う、公式トッププレイヤーによって行われているというところから、ネットウケは上々。
そのまま長く続くかと思われたが、
理由は何故か?
それは彼女が使うのが、ガチガチのコントロールが多かったためである。
カードゲームのお約束といえば、闇落ちによって手に入れた新たな力だとか、仲間との友情だとかで逆転の一手を見つけるだとか、まぁ色々あるじゃないか。
彼女にはそれがなかった。
使用デッキは全色──白、青、赤、緑、黒、そして無色の《ジェネレイト》。
どれもこれもコントロールに寄った構築の、である。
全10話にして彼女が使ったのはそれぞれ以下の通り。
第一話 白単コントロール《エリス》
第二話 青単コントロール《ジーン》
第三話 赤単コントロール《ウルラブ》
第四話 緑単コントロール《リース》
第五話 黒単コントロール《ヘラザード》
第六話 無色単コントロール《ニコラウス》
第七話 白青黒コントロール
第八話 白青赤コントロール
第九話 白緑黒コントロール
第十話 5cコントロール
……しかも各デッキ、公式トッププレイヤーが監修しているせいか、高額なトップレアもりもりでデッキパワーがあまりにも高すぎる。
例えば第一話、対戦相手は赤緑ミッドレンジで、先駆を持つ赤のモンスターと、毎ターン強化されていく緑のモンスターを織り交ぜて攻めてくる闇の組織のモブだった。
そしてそいつが、
「うおお!《抑えなき憤怒、ゴブラス》を召喚!こいつは打ち消されねぇ!
さらに自身の効果でタフネスを削ってパワーに変換!
こいつは先駆に貫通に白のカードからの保護持ちだぁ!
つまりお前のデッキじゃあ除去出来ねぇ!
どうブロックしたって俺の勝ちだぁ!」
と言って召喚してきた切札を、
「アタックフェイズ、あなたを対象に《夢の跡地》を唱えるわ。効果であなたの攻撃モンスターを全てゲームから取り除き、代わりにあなたは、この効果で取り除かれたモンスターの数まで、基本ファクトリーカードを休息状態でセットできるの。通りますか?」
「……通ります……」
で次ターンに、モンスタートークンでボコボコにして勝つのが、【宣言 歩美】という女なのだ。
恐ろしい……
あとはシンプルに対局時間の割合が多すぎる。
コントロールのバトルは長期戦になりがちなのは分かるが、所々でカットが入っているのに、約30分のアニメ中23分がバトル、OPEDで4分。日常パートは残り3分ほど。
ちなみにバトル監修時のデモバトルは一戦一時間超えだったらしい。ヤバい(確信)
ストーリーのネタを広げることも難しいし、そのせいか二次創作もあまり生まれず、どちらかといえば薄い本になりがちだったのが悲しい悲劇の主人公なのだ……
「準備はいいかしら?問題ないなら始めるわよ。」
そんな事を考えていたところ、俺から少し離れた場所にいる歩美さんが声を掛けてくる。
バトル・ウィザーズの対戦──バトルは、バトルディスクによるフィールドの展開によって行われる。内部は指定された人物のみ入ることができ、情報の秘匿も可能というわけだ。
特にアンティルールのバトルは情報の秘匿のために、観客は基本0にするんだけど……
今回は観客にさっきの少年がいる。まぁ多少は情報が彼女に流れているだろう。
「大丈夫です。対戦よろしくお願いします。」
だけどそんなものは関係ない。何故なら──俺は強いから。
「ではバトル開始の宣言を。」
「「人の叡智の結晶と──」」
俺たちの言葉とともに、フィールドの展開が始まる。
「「全ての失われた魔力たちよ──」」
現実の上に、薄っぺらな空間がぺたぺたと貼り付けられていく。
「「その力で、我らをその世界の中に招き入れよ!」」
「「バトル!!」」
「私の先行よ!アップキープ、ドローフェイズにファクトリーから一枚セット!、スタンバイ、メイン1まで入るわ」
淀みない宣言とともに、歩美さんの工場カードが一枚出る。
《
「
「……汚らしいからそんな名前で呼ばないでほしいのだけれど。まぁいいわ、効果は知ってるみたいね。《魂の金型》は出る際に種族を一つ選ぶわ。私が宣言するのは《ジェネレイト》!」
ブーンと、低い音を立てて魂の金型が動き出す。
「《魂の金型》は選んだ種族のカードを使うなら、どんな色でも出すことが出来、さらにそのマナを使って唱えたなら、そのカードは打ち消されない……でしたよね。」
「そうよ。早速だけど動いていくわ!《魂の金型》から(白)マナを出して使用、来なさい、《
ガチャガチャと魂の金型がせわしなく動き、中から一人の少女が姿を表す──その髪は縦ロールであった。
「ロールは召喚酔いしているわ──このままターンエンドよ。」
「……ボクのターン、アップキープ、ドローフェイズにメインとファクトリーのドロー。セット《
俺のがセットした工場はティアマト。
その効果は場に存在する全ての工場に──勿論相手の工場も含む。それらに休息させることで(黒)を生み出す能力を与えるというものだ。
俺のデッキはシンボルマナ──(白)とか(黒)とか決まった色のマナが必要なので、このカードは必須級である。
「へぇ……中々のレアカードね。それもアンティで手に入れたのかしら?」
「これは自引きですよ。たまたま手に入って良かったです。」
……しかし、《ジェネレイト》か……
《ジェネレイト》。かつて俺の前世において、【バトル・ウィザーズ】のストーリーにおいて重要な立ち位置にいたテーマ。
彼らは数多の世界を渡り、他の世界を精製する。
それは信仰によるものである。
それは研究によるものである。
それは侵食によるものである。
それは芸術によるものである。
それは繁殖によるものである。
各色ごとに存在する、圧倒的な力を持つレジェンドカード──《法務官》。彼らは各々の主義に則って世界を精製し、抽出する。
自らの格を高めるために。
そして白は信仰……さっき見せて貰った《聖清の法務官、エリス・ノア》が率いるテーマ。
デッキテーマ的にはビートダウンが主な活躍になる。
信仰を強化するモンスターで他のモンスターを強化し、攻め立てる──そして、その教義は相手の力を削ぐ。
そんでもって単体除去での対応は面倒くさいんだよなぁ。
あの《聖清の守り手、ロール》というカード。
あれは白の1コストでパワーもタフネスも1、貧弱なステータス……だが効果がえげつない。
《聖清の守り手、ロール》
『ジェネレイト』レジェンドモンスターカード
(白)/パワー1/タフネス1
このカードはブロックに参加出来ない。
侵光1(このカードが戦闘でダメージを対戦相手に与える度に、侵光の数に等しい教義カウンターを置く。教義カウンターが10以上あるプレイヤーは敗北する。)
(白/ライフ2)、このカードを休息させる/あなたがコントロールしている他のモンスター1体を対象に取る。
色一色を選ぶ。対象になったモンスターは、選ばれた色からの保護と、侵光1を得る。(保護を持つカードは対戦相手がコントロールしているカードや能力の対象にならない。)
うーん、強い!
任意のモンスターを相手のカードから守れる上、アタックが通れば侵光が発動する。
しかもこの保護を付与する効果、(白/ライフ2)と書かれているが、これは白マナを支払うか、ライフ2の支払いかを選ぶことが出来る。
つまり工場が全て休息していても、コイツとライフさえあればモンスターを守ることが出来るのだ。
白なんて元々ライフの回復が得意なデッキだから、2点の支払いなんぞ誤差の範囲。
オマケに本体は白1コストという軽さ、除去されてもさくっと再召喚が可能。
放っておけば単体除去は殆ど機能しなくなり、コイツに除去を割けば結果的に相手エースの除去が難しくなり、除去しなければ侵光によって少しづつ蝕まれる……
恐ろしいカードだ。前世の通常フォーマットではウィニーからコントロールまで、白が1コスト出せるなら気軽に採用されていた。
だから白単色のデッキとも判断が出来ないんだよな。
《魂の金型》の指定は《ジェネレイト》。勿論エリスやロール等を必ず通すためなのかもしれないが、他の色のジェネレイトが入っている可能性もある。
まずは相手の動きに惑わされず、自分の動きを整えていこうか。
「ティアマトを休息させて黒1コスト。《強い言葉》。相手の手札を見て、その中からモンスターカード以外のカードを捨てさせます。通りますか?」
「……ピーピングハンデスね、良いでしょう、通ります。」
初期手札五枚から、ロールの分一枚減って四枚の手札が公開される。
内訳は……
《聖清の法務官、エリス・ノア》
《法外な税の押収》
《致命的なつまづき》
《姫騎士アリス》
……!?
「……《法外な税の押収》を捨ててください。」
「まぁ選ぶのはそれよね。では捨てるわ。」
おいおいおい……《5c法務官》じゃねぇか!!
《法外な税の押収》
トレジャーカード
コスト(3)(白)
相手がカードを引くたび、相手はコスト(2)を支払ってもよい。
そうしなかったなら、あなたは『このカードを休息させ、ゲームから除外する。/好きな色のマナを一つ出す。』を持つファクトリー・トークン一枚をセットする。
《エリス・ノア》はバトル前に見た。
《姫騎士アリス》は多分少年のデッキから借りたのか?効果はシンプルな他のモンスターの強化だから理解できる。
《致命的なつまづき》と《法外な税の押収》……これがおかしい。
《法外な税の押収》だけなら理解できる。白で出せるし《エリス・ノア》の召喚のサポートなのだろうと。
だけど《致命的なつまづき》──これは青のカード。
《致命的なつまづき》
スペルカード
(青)
モンスターではないカードが唱えられた時、それを対象に取る。
そのコントローラーがコスト(2)を支払わない限り、それを打ち消す。
低コストで唱えられる代わりに、モンスターは止められず、オマケに追加コストを(2)しか請求しないから、後半になると腐りがちなカード……
勿論《法外な税の押収》でファクトリー・トークンを出し、そこから唱える線も無くはない。
ただ《5c法務官》だとすれば話は別だ。
赤と青の法務官は、スペルカードの詠唱によって誘発される効果がある。
この感じだと多分アレも入ってるな……《魂の金型》以外にも全色出せるファクトリーが……
モタモタしてるとマズイことになる、早期決着を目標に動いていかないと。
「僕はこれでターンエンドです。」
税が払えないのなら、働き手を貰っていくぞ。
──法外な税の押収