俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
「教授。俺達は学園に多大な貢献をしたんですから、そろそろ認められていますよね? 依頼を選り好みしてもいいですよね?」
今日も今日とて、報酬が『子供達のありがとう』と微々たる金銭。後はドラゴンの食事(現物)だった。
両親からの仕送りと報酬はドラゴンの餌代と生活費に消えて、遊興費が全く残らないので高額報酬の物を受けたいのだが。
「カラバ君。力を持った者には義務が生じるんだ。ノブレス・オブ・リージュって奴だね!」
「それは持った奴が自戒の為に使う言葉であって、人に押し付けられる物じゃないんだよなぁ……」
大いなる力には、大いなる責任が伴う。という格言もあるが……いや、力を持っているのはドラゴンだしな。
「それに。君のおかげで学園は富裕層だけじゃなく、平民達からも好意的に見られるようになったんだ。彼らのありがとうが最高の報酬じゃないかね? ホラ。感謝の手紙がこんなにも送られてきている」
「異世界ブラック企業やめろ」
なんで、美少女ブラゲーの世界でも搾取されなければならないんだ。とは言え、感謝の手紙自体は悪い物でもない。パラパラと目を通す。
「『貴方達のおかげで、この冬を越すことができそうです』『お兄ちゃんありがとう。すごく格好良かったです』……気持ちだけじゃなくて、誠意で見せて欲しいけどな」
この程度で満足しそうになっている自分はなんて安い存在なんだろうと思いながら、引き続き手紙を見て行く。
「『よくも我々の拠点を潰したな。〇してやるぞ』『お前を見つけたらナイフでめった刺しにして〇す』『捕まえて裸にひん剥いて尻の穴をほじってやる』……。おい!」
「やられた側の恨みも買っているってことだね!」
「検閲しろ!」
一気に気分が悪くなった。当たり前だが、拠点やら諸々を焼き払われた邪竜信者達が憤慨していない訳もない。
ゲーム的に言えばポップして来る敵と言うことで気にもしていないのだが、幾ら悪党だと言っても彼らも生きている訳で。
「潰した拠点にいた連中はどうなっているんだ?」
「さぁ? 諦めて普通の人に戻るか、山賊や乞食にでもなっているんじゃない?」
どういう訳か。ドラゴンが暴れ散らしても、信者や山賊達の死体を見たことが無い。連中が頑丈なのか、逃げ足が速いのか。
「捕まってくれていたら良いんだけど」
「捕まらなかったから、依頼が来ていたんだよねぇ」
じゃあ、またどこかで再会するハメになるのかと思うとゲンナリした。
好意と謝礼はその場限りなのに、恨みは着いて回るというのはあまりに理不尽ではないかと思ったが、先に理不尽なほどの力を振るったのはこちら側だったので文句も言い難かった。
――
「マスター。私……」
「言うな。今日は治療に当てよう」
「あのクエストは罠だったんだ」
「待っていて。ちゃんと然るべき処置を施すから!」
今日は学園の雰囲気がいつもと違った。治療とか処置とか言う言葉が飛び交っているが、別に殺伐している訳でもない。
ドラクロがどういったゲームかということを考えれば順当な物だったとさえ言えるかもしれない。そう。
「カラバ。今日は皆が臭い」
「カラバ。今日は他の奴らが臭い。発情している」
「そうだったね。これエッチな奴だったね」
最前席でシンキと一緒に授業を受けていたのだが、後方では発情したドラゴン娘とニヤケ面を下げたマスターがいつもよりネッチョリしたコミュニケーションを図っていた。コレには講義をしに来た、ヤウナー教授も抗議した。
「このバカ共が! 盛っている状態で講義を受けに来るんじゃないよ!!」
「た、単位が欲しい……」
「だったら、授業中はいちゃつくな! 己とパートナーの情動を制して、勉学に励める者だけが残ると良い。それができない者は去れ!」
珍しく、教授らしいカッコいいことを言った。すると、皆はゾロゾロと教室から出て行った。残った生徒は俺、シンキとハクテイの3人。
「全員出て行くのか……」
「出て行った者達は幸運だね。最近の私は上機嫌だからね。そうでなければ、連中を全員『不可』にしていた所だったよ」
「いやいや。明らかに様子がおかしかったし、そこは慈悲を」
別に仲が良い連中と言う訳でもないが、1回のミスで積み重ねが崩れるのは厳しすぎる。
「教授。どうして、皆の様子がおかしいの?」
「教授。どうして、皆は発情していたの?」
シンキとハクテイの疑問は俺も同じだ。ベッドシーンがあるゲームだとしても、こんなにも同時に発情を迎えるというのは奇妙な話だ。
「ふむ。どうせ、今日の授業は3人しかいない。その理由を説明する実験をしようか。さぁ、手伝ってくれ」
彼らが座っていた席や机に付着した分泌物を採取した後、ヤウナー教授の研究室に行って、装置に掛けた。
「ほら、採取物全部から同じ反応が出ているだろう? 結論から言うと、これらは媚薬の成分だ」
「なんで昼間から媚薬を?」
「媚薬を昼間から飲むのはなんで?」
前世では創作物でしか縁が無かった媚薬だけど、本当に存在するんだとちょっと感動した。……個人的な感想は置いといて。彼らも昼間からパーティーをしようとしていた訳じゃないだろう。
「飲まされた。とか?」
「あるいは摂取させられたか。実は、最近。こういった症状に陥っている学生達が多いんだよね」
「初めて聞いた」
「私も」「私も」
コミュニケーション下手くそ部は学園の事情に疎いから仕方ない。だけど、別に俺達に迷惑が掛かる訳でないなら問題は無いが。
「いいや。大問題だ。もしも、この学園のそこら中でマスターとドラゴン娘が合体しているという噂が立ってみろ。この学園が学術機関ではなく、お見合い会場とか娼館と思われるじゃないか!」
ドラゴン娘を召喚して、娼館するということか。と、喉元まで出掛かったが、頑張って抑えた。
「それは良くない。ドラゴン娘は崇高であるべき」
「それは良くない。マスターは気高くあるべき」
シンキとハクテイがそれぞれの立場に高い水準を求めているようだが、元ユーザー的には何を言っているんだという気持ちに駆られる。
「よぉくぞ、言ったよ! そう。マスターはかくあるべきだ! だから、この原因を絶つ必要があるんだね」
教授が書類を取り出していた。一番上に名前が書かれているのを見るに、学生の名簿だろうか。話の流れで、何となく察した。
「もしかして、発情している奴らの?」
「そう。皆、特定のクエストを受けた後に興奮状態になっている。クエストは『大規模邪竜信者集団』だね。どうにも最近、あらゆる場所から流れて来た悪党達が邪竜信者として迎え入れられ、徒党を組んでいるらしい」
「何処からそんなに沢山の悪党が?」
「そんなに沢山の悪党達は何処にいたの?」
教授と暫し、顔を見合わせた。ドラゴンによる拠点の襲撃、逃げ惑う悪党達。アイツらが何処に行ったのか。よし! こういう時は!
「軍隊に任せましょう!」
「妥当」「当然」
むしろ、そんな集団を学生にどうにかさせようとしていることがイカれている。大人しく国が持つ最強の暴力で何とかした方が良いと思う。
「カラバくぅん。軍隊の人達を危険な目に遭わせたいのかい?」
「毎度思うけれど、俺なら問題ないみたいに思っている奴多くない!? あんまりにあんまりだと実家に帰りますよ!?」
「え? 君の家、ドラゴン君を置いとけるの?」
場所、餌代を考えると無理の一言。つまり、俺とドラゴンはこの学園以外で生きる場所が無いのだ。
「シンキ達も何か言ってくれ!」
「ドラゴン娘の尊厳を冒す連中許せない」
「エッチな奴らは許せない」
「畜生! 向こうの味方か!」
このシチュエーションにはちょっとした覚えがあった。原作に置いて、序章におけるクライマックス。突破が難しく、ここをクリアできたらルーキーを卒業と言っても良いのだが。肝心のボスが。
「(強化種漬けおじさんなんだよな……)」
ここで負けるとNTR展開が入るのだが、ボスが強い為か。ここで脳を破壊されたマスターも多数いるだとか。
「シンキ君達もノリノリだし、箔を付けることも兼ねて。君達でクエストに行って来たら良いんじゃないか?」
「行こう」「問題ない」
本音を言うと、付いて来たら毒牙に掛かる可能性もあるから断りたい。
でも、何が起きるか分からないし、俺だけを狙うみたいな方法も取ってくるかもしれない。だったら、仲間は多い方が良いとは思うけど。
「他に協力者は?」
「いないねぇ。あまりに学園内がピンクになるから、このクエストを受けるのは非推奨にされてねぇ」
「強制感半端ない」
もっと手練れの人間にやって欲しいのだが、そう言う奴らでも不覚を取りかねないという慎重さあっての選抜か。
いずれにしてもどうして俺ばかりという引っ掛かりがありつつも。俺は教授からの頼みを呑み込むことにした。
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