俺の相棒だけ擬人化実装されてないんだけど! 作:寝室にドラゴンが突っ込んで来た!
木々の入り組んだ山奥。多数の魔獣が放し飼いにされており、一般人が迷い込めば彼らのおやつになることは避けられない。
こんな怪物達を飼い慣らしている者達もまた怪物であった。こんな場所に似つかぬ豪奢な椅子に腰を下ろしている男は、顔から四肢に至るまで竜鱗に覆われていた。彼に傅く者達もまた体の各所が竜鱗に覆われている。
「ヴァルザイア様に力を授かっておきながら、なんたる体たらく! 同じ信奉者として恥ずかしいわ!!」
一喝されようと、彼らには逆らう弁は無かった。落ち延びて来た自分達を匿って貰っているのだから。
「ですが、相手はドラゴン娘じゃなくて。もっとこう、何かヤバい魔獣で」
「魔獣ならなおさらだ! 我々はドラゴン娘を超える存在! 魔獣如きに後れを取ったことを恥じるなら、貴様らは自らを供物として捧げるべきだ!」
無論、この場で自害しようなどと言う潔い者がいる訳もない。落ち延びて来た者達の自尊心を悉くへし折った後、この拠点のボスである『プレス』は言う。
「だが、そんなウジ虫の様なお前達だからこそできることがある。調子に乗ったドラゴン娘共を捕え、嬲り、あるいは奴らをただの淫売へと変貌させ貶めるのだ」
現状でも調子に乗ったマスターとドラゴン娘達を退けることには成功しており、上手くいけば自分達も美味しい思いができるのではないかと、下卑た笑みを浮かべていると。慌てて入って来る邪竜信者が1人。
「申し上げます! 例の化け物共が来ました!」
「来たか!」
落ち延びて来た者達が抱いていた薄暗い笑みは一瞬で掻き消え、好敵手を見つけたと言わんばかりにプレスは獰猛な笑みを浮かべていた。
「あの! 逃げた方が良いんじゃ」
「バカを言うな。お前達の様な臆病者は引っ込んでいるがいい! それほどの相手、この俺が手籠めにしてやろう! この俺! プレスが!!」
彼の号令に呼応する様に、森中に雄たけびが響いていた。
彼の剛力と森で待ち構える催淫トラップは未熟なマスターとドラゴン娘を人へと引きずり降ろす。彼の嗜虐心を表したかのような狩場だった。
――
「カラバ。この森燃やそう」
「この森を灰にしよう」
「マトモなのは俺だけか!!」
「ギャァッ! ギャッ!!」
一緒に連れて来たシンキとハクテイにはストッパー役を期待していたが、コイツら自身のストッパーが外れているという不具合にぶち当たっていた。
連れて来たドラゴンは腹が減ってイライラしているのか、近くにあった木をぶん殴って環境破壊に興じていた。ミシミシと音を立て倒れて行く。
「良いですか。この森には沢山の植物、生態系が育まれていて、学園のみならず国的に見ても非常に価値のある森なんだ。それを燃やして解決なんてな。俺達が嫌う邪竜信者と何が違うんだ!」
シンキ達も渋々と言った顔をしていた。この謳い文句使えるな。コレから何かあったら邪竜信者を使おう。邪竜キャンセルだ。
「分かった。でも、探索はどうする?」
「探索はどんな風にする?」
今までみたいに雑に破壊すれば良い訳でないので、ようやく探索らしくはなるのだろう。原作でも、この森は催淫植物やら触手やらが多数設置されていて、エロトラップダンジョンなんて呼ばれていたりもしたが。
「……面倒臭いな」
「でしょう?」「そうでしょう?」
確かに森を灰にするのは良くないと思うが、態々相手の罠を丁寧に踏んで先に進むというのもまた馬鹿らしい。
だが、そもそもの話。俺だってドラゴンを御せている訳じゃない。方向性を与えているに過ぎない。現在のコイツが何をしているかと見れば。
「アゥッ! ハッハハハッ!!」
「なんか出ている」「キモいのが出ている」
破壊された木の中からニョロニョロした物が出て来た。生物かどうかも分からないが、ハクテイの方を見るや勢いよく飛び出して来た。
「フン」
しかし、彼女は難なくキャッチして引き千切っていた。ビクビクと蠢いて、最後に力なく地面に落ちた。ドラゴンが近付いて来て鼻をスンスンさせて、死骸を口に運んだ。モソモソ……。一瞬動きが止まった。
「オォオオオオオ!」
くるりと方向転換ならぬ咆哮転換をして、別の木を破壊した。するとまたもやニョロニョロとした生物。
「(もしかして、コイツらって触手か?)」
エッチなゲームに欠かせないアイツらだ。この森とは相性が良さそうではあるが、まさかこんな来客が来るとは思ってもいなかっただろう。
這い出て来た触手生物をまるでラーメンや蕎麦を啜る様にして平らげ、食いつくしたら次の木をなぎ倒して触手生物を啜り出して……替え玉し放題だ。
「ハクテイ。どう?」「……美味しくない」
「食うな!!」
だが、こうなってはもう制御だとか言っている場合じゃない。アイツについて行くしかない。シンキ達と一緒に破壊跡を目印にして追いかける。
木々は薙ぎ倒され、魔獣や原生生物の食いちぎられた死体が道標の様に転がっている。地面に不自然な大穴が空いている時があったが、中には触手生物の食い残しがあった。身震いした。
「カラバ」
最近は面倒臭い奴だと思わせたり、悪党を追い出してくれたりと。身近な存在の様に思えていたが、やはりアイツは暴力の化身であるのだと思わざるを得なかった。瞬間。
「グルァ!!」
「危ない」
ハクテイが反応していた。飛び掛かって来た狼型の魔獣を引き裂いていた。直ぐに鳴き声が上がる。
「立ち止まっている暇はない」
「突き進むしかない」
「……そうだな」
今更、普通の人ぶるだなんて。とんだ傲慢だ。ハクテイに殿を務めて貰いながら、俺達は破壊跡を追った。
――
「助けてくれェ!!」
「死にたくねェー!」
幾ら数が集まった所で絶対的な力がどうこうできる訳もなく。落ち延びて来た奴らはやっぱりここでも逃げ出していた。そんな逃げ出す彼らに続いて、古参の連中も同じ様に逃げ出していた。プレスも怒り心頭だった。
「この! 恥さらし共が!!」
「いやぁ。随分立派な仲間達ですね」
落ち延びて来た奴らの中でも、ちょーっとえらい奴らはニヤニヤと笑みを浮かべていた。アレだけ大層なことを言っていても自分達と何も変わらないとは。
「で。手籠めにするのでは?」
まさか、こんな規格外の魔獣が攻め込んで来るとは思わなかったのだろう。だが、プレスも一介のボスとして吐いた言葉は飲み込めない。纏っていたローブを脱ぎ捨てた。
「嘗めるな! 俺は邪竜信者の幹部! プレスだぞ!! 魔獣如きがどうした、俺が孕ませてくれるわ!!」
「……え?」
全裸になって堂々と出撃して行った。あまりの潔さに絶句していたが、どう考えても良くはない。自分達が焚きつけた結果、死なれるのは悪党同士であっても寝覚めが悪いと判断したのだろう。誰もが何となくついて行った。
――
場所を荒らされ、同胞を殺され、激昂した魔獣達から猛攻を受けていた。
防御壁を張りながら、シンキと一緒にハクテイにバフを掛けながら走っているが、改めてドラゴン娘と言う存在が強力な物かが分かる。
「容赦しない」
ハクテイの両腕はまるでしなやかな鞭の様に伸びて、相手を打ち据え、引き裂き、払い除けて行く。前世で見たゴムゴムしている主人公を思い出す。
「ドラゴン娘はすごい」
まるで我がことの様に自慢するシンキの様子が、この場に合わない物だったけれど、そのせいもあって少し笑ってしまった。
「ギャアアアアアアアア!」
「うぉおおおおおおおおおお!!」
魔獣達の猛攻を搔い潜った先に開けた場所に出た。ドラゴンの咆哮と人間の雄たけびが響き合う。雌雄を決する戦いが繰り広げられているのかと思った俺達の目に飛び込んで来たのは。
「グルォオオオアアアアアアアア!」
「暴れんなよ! 暴れんなよ!!!」
全身に竜鱗を纏ったハゲ頭の全裸大男がドラゴンの臀部付近に張り付いているという、この世の終わりみたいな光景だった。
雌雄を決める戦いで半句、雌と雄を決める戦いだったのか。と、己の正気を疑いたくなる光景に俺は思考が固まっていた。
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