カバネ溢れる世界に、アラガミ・百鬼あやめ現る。   作:BERSERKER

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カバネ溢れる世界に、アラガミ・百鬼あやめ現る。

 ん?俺は自室で寝てたよな。

 何処だ此処?見慣れない和室こんな所で寝た覚えも無い。

 ん?

 俺は下を見るとそこには女性特有の膨らみが在り、手は小さく指も細い。

 それに驚いた俺は額に手を当て、角が二つ有る事にまた驚いた。

「どっかに鏡無いかなぁ。・・・声が百鬼あやめ様だけどあやめ様に転生しちゃったかなぁ?」

「入ります」

「あ、はい」

 あわわ、家主さん来た。服、乱れてない、ヨシッ!顔、分からん、状況、分からん、でも出たとこ勝負っきゃない、頬を叩いて気合いヨシッ!

 障子張りの戸が開けられ、髭を生やした年配者と青年の男二人少女一人が入ってきた。

「お、お目覚めになられましたか、あやめ様!」

 障子を開けて入ってきた髭の年配者が、私の姿を見るなり、バタバタと慌ただしく畳に両膝を突き、深々と頭を下げた。

 その後ろに控えていた青年と少女も、緊張した面持ちで同じように平伏する。

 その一糸乱れぬ平伏っぷりに、私は内心で完全にフリーズしていた。

(えっ、あやめ様!? やっぱり俺、百鬼あやめ様に転生してるの!?)

 心の中は大パニックだが、ここで「いや、俺男なんすけど」などと言えるはずもない。

 声を出せば、あの鈴を転がすような、しかしどこか凛としたお嬢の声が響いてしまうのだ。

ボロを出すわけにはいかない。

 私は小さく咳払いをし、下を向いたまま、できるだけ落ち着いたトーンで声を絞り出した。

「う、うむ……。苦しゅうない、面を上げよ」

 どこぞの時代劇で見たようなセリフが口をついて出た。

 言葉遣いが合っているか不安だったが、髭の老人は「ははっ!」と顔を上げた。

 その表情には、明らかな安堵の色が浮かんでいる。

「いやはや、意識を失われたと聞いたときは、妖の国中がひっくり返るかと思うほどの騒ぎでございました。何せ、我らが大親分たる百鬼あやめ様が、原因不明の昏睡に陥られたのですからな……。御身に障りはございませぬか?」

(妖の国……大親分……。ってことは、ここ、配信で言ってたお嬢の故郷か!?)

 状況が少しずつ見えてきた。

 どうやら私は、現代の日本ではなく、百鬼あやめとしての本来の世界――妖たちが暮らす世界に転生してしまったらしい。

 しかも、周囲からはかなり敬われている立場、というかトップそのもののようだ。

 だが、問題が一つある。

 私には、この「百鬼あやめ」としての記憶が一切ないのだ。

 このまま会話を続ければ、すぐに偽物だとバレてしまう。

「……少し、頭が痛むのじゃ」

 私は額の二本の角の間に手を当て、眉をひそめてみせた。

 嘘ではない。

 急激な状況の変化に、本当に頭が痛くなってきそうなのだ。

「なんと! すぐに薬師を――」

「いや、待て。騒ぐな。……それよりも、少し記憶が混乱しておるようじゃ。お主たちの顔は分かる気がするのじゃが、名前が、その、うまく思い出せぬ。ここは確かに、我が屋敷、であったな?」

 一か八か、記憶混乱のフリをしてみた。

 ついでに、ここが自分の家なのかどうかも確認する。

 すると、老人は一瞬目を見開いたものの、すぐに納得したように深く頷いた。

「おお、なんと痛ましい……。やはり、あの儀式の反動が……。ご安心なされませ、あやめ様。ここは間違いなく、あなた様の御屋敷にございます。私は長年、あなた様の身の回りのお世話をしております、執事の源蔵にございます。後ろにおりますのは、護衛の若者と、お世話係の娘にございます。記憶が戻るまで、我らが全力でお支えいたしますぞ!」

 源蔵と名乗った老人は、涙ぐみながらそう言った。

 どうやら「儀式の反動」という、都合の良い理由を勝手に想像してくれたらしい。

 これなら記憶がなくても不自然ではない。

 出たとこ勝負だったが、ひとまず第一関門は突破できたようだ。

「そうか、源蔵か……。すまぬな、心配をかけた」

「もったいないお言葉にございます! ……あやめ様、まずは少しお水を飲まれますか? それとも、お姿を確認されますか? お顔色も優れないようですし、鏡をお持ちいたしましょうか」

「あ、いや、そうじゃな。……鏡を、持ってきておくれ」

 待ち望んでいた言葉に、私は思わず身を乗り出しそうになるのを必死で抑えた。

 源蔵が少女に目配せをすると、少女は一礼して部屋を出ていき、すぐに立派な朱塗りの手鏡を持ってきた。

「失礼いたします」

 少女から手鏡を受け取り、私は緊張で震える手を抑えながら、その鏡面を覗き込んだ。

 そこに映っていたのは――。

 白髪のショートヘアに、鮮やかな赤色のメッシュ。

 額から真っ直ぐに伸びる、立派な二本の角。

そして、きゅっと上がった狐のような、しかし愛らしい瞳。

 画面の向こうで何度も見た、あの「百鬼あやめ」そのものの姿だった。

(本当に、お嬢になってる……。めちゃくちゃ可愛いけど、これ、これからどうすればいいんだ!?)

 鏡に映る絶世の美少女(中身は一般男性)は、己のあまりの美しさと、これから始まる激動のファンタジー生活への不安で、ただただ目を丸くするばかりだった。

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