ヒロイン全員を寝取られる鬱世界。脳筋モブが粉砕!破砕!大喝采! 作:無知無知蒙蒙昧たる輩
寝取られ……うっ、脳が破壊される。
手で反射的にコメカミの辺りをおさえる。寝取られという言葉は俺にとってもはやトラウマと言って良い。
「ね、ねぇ……大丈夫?」
「ん、あ……あぁ。俺の脳の鍛え方が足りなかっただけだ」
「ごめん、大丈夫そうじゃないね」
何を言ってるんだ? トラウマでダメージを喰らうよう脳が悪いんだ。やはり、脳も筋トレして筋肉に置き換えねばなるまい。
と言っても……脳の筋トレ方法ってどうすればいいのか具体的な方法は思いつかない。青魚とか脳に良いって言うし、青魚のプロティン煮とかアリか?
そんな中、教室の前方の引き戸がガラガラと音を立てる。
「はーい、授業始めるぞー」
その言葉を聞いて、小鳥遊やほかのクラスメイトも己が席に戻っていく。
俺も水上を席に座らせ、自分の席に戻る。
「……って、おい水上。顔が赤いけど大丈夫か?」
教師が水上の様子を不安そうに見つめる。
「は、はい……んっ、大丈夫……です」
そう言って返事する水上だが、筋トレの疲れで筋肉が攣っているのか小刻みに肩を震わせている。まぁ、そうだよな。いきなり強度の高いトレーニングだったから筋肉が攣ってもおかしくない。
教師も水上の様子を見て察したのだろう。どこか憐みを感じさせながらも引きつった笑みで頷く。
「そ、そうか……なら良いんだ」
そんな中、小鳥遊の小声が耳に入る。
「……バ、バイブ?」
バイブ? 一瞬何のことだと思ったが、すぐに考えに至る。
小鳥遊が言いたかったのは電マのことだろう。確かにあれは疲れを取るのにピッタリだ。筋肉をほぐすのにも良い。そうか、水上を今後も筋トレさせるためにもアフターケアをしっかりしなくてはな。
小鳥遊の助言に陳謝。
放課後。
クラスで机を挟んで談笑している水上と小鳥遊に近づく。
水上は俺に気づいたようで、見上げる。
「じゃ、水上行くか」
「う、うん……」
水上は一つ頷いてから席を立つ、しかしそこに小鳥遊が食って掛かる。
「ちょ、ちょっと!」
「ごめん、小鳥遊……先に帰ってて。僕は剛田君と用事があるから……」
小鳥遊は絶望したような表情を浮かべ、手を伸ばすが水上が俺の体に寄ることで空を切る。小鳥遊と水上の純愛を応援するつもりではあるが、今は時間がないんだ。
水上の肩に手を置くと、ビクッと震える。
「そういうことだ、すまんな」
これも小鳥遊のためでもあるんだ。
軽く手を振って教室を後にする。
水上には事前に約束を取り付けていたが、昼休みだけでは満足な筋トレ時間を確保できない。そのため、放課後には俺の家で筋トレすることを約束していたのだ。
家までの道のり、水上は頬を掻きながら少し照れたように笑う。
「なんか……放課後にどっか行くって、青春って感じでワクワクするね」
「そうか?」
青春というなら小鳥遊と一緒に帰るほうが青春って感じだけどな。
水上は恥ずかしそうに小さく頷く。
「僕、男の友達いなくてさ……友達って言えるのは小鳥遊ぐらいで、剛田くんに誘ってもらえて嬉しかったんだよね」
あぁ~。
確かに、主人公である水上が男のキャラと仲良くしているのは見たことない。というか、ギャルゲーという性質上、主人公と仲のいい男キャラがあんまり必要とされてなかったというのもあるのだろう。ゲームの設定を踏襲する上で水上の周りには男の友達がいなかったと。
なるほどなぁ。
「どうかしたの? 剛田君」
「ん? あぁ、いやなんでもない」
主人公のことを情けないと思っていたが……いや、今も筋肉量は足りてないし、情けないとは思ってはいるが、少しばかり可哀そうだと思った。
折角だ。主人公にはやる気も出してもらわないといけないし、仲良くなるの悪くない。
「少しコンビニ寄ってもいいか?」
そう問いかけると、水上は嬉しそうに何度も頷く。
「もちろん!」