反抗者は殺される王宮で令嬢は狂った道化を演じる。 作:冬野晴(旧雪野春)
衛兵が、王侯貴族を守るという誇りを胸に持っているはずの衛兵が、私の愛するお父様とお母様の頭蓋に銃口を押し合てて引き金を引いた。
乾いた音が鳴り響き、お父様とお母様の頭蓋から鮮血が流れ、ゆっくりと地面に滴り落ちていき、また幼い私の顔に滴り落ちていく。
お父様とお母様は倒れながらも何かを呟いていた。
しかし私は何も聞き取れなかった。
私はその姿を見て大笑いした。溢れる涙を流しながら。
なぜ私は笑ったのかは今でも分からない。
これが私の頭の中にある最初の記憶。
私はこの事を全く覚えていないフリをしている。
なぜなら両親はヴォルモント王国前王を支持し現王を非難する立場であったからだ。
前王は伝統を守り、農民と漁師を守り、教会の伝統を守る保守派であった。
それに対して現王は工業の発展による近代化を行い、人々に科学による教育を行う政策を推し進める改革派であった。
前王が崩御した後に現王は強引に改革を推し進め、大枚をはたいて外国から技術者を呼び集め工場で兵器を大量生産して諸外国に売りつけた。王国の産業は発展し多くの者が富を得たが仕事を失った者もまた多く、国内の意見は二分した。
こうして王侯貴族は前王保守派と現王改革派の勢力に分離し、前王保守派の中にはクーデターを行おうとする過激派もいた。
現王は前王保守派を徹底弾圧し次々と処刑した。
こうして王に進言する者は誰もいなくなる。
国家運営には何も問題が無かった。
なぜなら現王は人を動かせる威厳があり、諸外国と渡り合う交渉力もあり、一人であらゆる事をこなす超人であったからだ。
でもその優れた頭脳と胆力が体の衰えと共に錆びついたとしたら?
不信と慢心に陥り判断を誤るようになったとしたら?
王が誤った判断を下した時に進言する従者が誰もいないとしたら?
この国の行く末が破滅に向かうのは想像に難くない。
でもそんな事はどうでもいい。
栄えるなら栄えるでいいし、破滅するならその時はその時だ。
愚かで無力な私はただただ命運に身を任せ流されるしかない。
私は今日も奇行を重ね道化を演じる。
その日は国立記念日だった。
首都には王侯貴族の血を引く者達と国民が集められ、国外からはヴォルモント王国の同盟国の国王或いは特使が派遣され大規模なパーティーが行われた。
狂乱の華と人々から指さされる私も一応は貴族の端くれ。招待に応じてドレスを着こなしパーティーに出席する。
私が会場に入ると、誰もが私を指さして言う。
「あのような者がこの場にいるのは相応しくない。」
「王はどうしてカタドール伯爵家を貴籍から外されないのか。」
私は気にする素振りを見せずにパーティー会場を気ままに歩いていく。