転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件 作:図画工作で使うトイレットペーパーの芯
「おや、レヴィ様」
「うおっ、ポジンチ大臣か」
自室に向かっている最中に出くわしたのは、ニコニコと純粋な笑みを浮かべているポジンチ大臣だった。
相変わらずこの笑顔がエロい話をする時にニチャニチャして無ければ完璧なんだけどな。
「そんなに驚かれてどうされましたか?」
「い、いや、ちょっと油断してたから」
首を傾げるポジンチだったが、俺の中では会いたくないランキング堂々のナンバーワンに君臨しているものだから、急に出くわしたら驚くのも当然だ。
……くっ……どうにも信用できない部分と風呂場で助けてもらった借りが同居してるせいで、今一どうすれば良いか分からん……!!
ユルルのことを想うなら、間違いなく接点を持たないのが一番なのだが……いや、それも違うか。
もしポジンチが原作のようにユルルを寝取るのだとしたら、俺は彼がどういう行動を取ってどういう思惑を立てているのかを間近で監視する必要がある。
嫌い! 危険! で自分から遠ざけるだけに留めるのは愚者である。
……てかすごい嫌いってわけでもないのが困るんだよな。
「折角ですから、私の部屋でお茶でもいかがですかな?」
「そうだな……ご馳走になるとしようか」
きっとこの誘いも純粋に俺と仲良くなりたいという思いからだろう。俺のことを放蕩皇子と知ってなお関わりを持ってくれる人間は貴重だしな。
……まあ、同じエロ仲間みたいに思われるのは癪だけど。
そう思った俺は、監視も兼ねてポジンチと茶をしばくことになった。
「ここです」
「……大臣の部屋にしては随分と質素だな」
「基本的には寝室でしかありませんから。普段は執務室で仮眠することが多いのもあります」
好色な大臣というイメージには程遠い私室だった。
ベッドには拘りがあるのか高級感のある装いだったが、それ以外は収納棚と机だけという質素オブ質素。
確かに大臣の仕事は超絶激務だ。
仕事場で仮眠を取らなければやっていけないほどブラックな労働環境らしいし、これではストレスが溜まるのもよくわかる。
──ハッ!!
俺はふと天啓が降り立った。
大臣がNTRなどという凶行に走ったのは、睡眠不足とクソすぎる労働環境でストレスが爆発したのでは──!?
あり得る。非常にあり得る。
なにせ女湯を覗いてシコるだけで満足してるような精神性だ。
純粋に考えて手を出す領域にまで至るのは、相当何か重大なことが起こったに違いない。
俺はポジンチの肩に手をポンと置いて言った。
「何か手伝えることがあったら手伝うから言ってくれよな」
「は、はあ。……あぁ、それでしたらレヴィ様は最近違法奴隷の噂をご存じありませんか?」
「違法奴隷?」
ポジンチはふと思い立ったように言った。
違法奴隷とはなんぞや。
「よく街に出向くレヴィ様ならもしやと思ったのですが」
「詳しく聞いても良いか?」
「ええ……ええと、奴隷についてはご存じですか?」
「あぁ。借金奴隷と犯罪奴隷がいて、程度に差はあるが基本的に人権が守られている労働者って感じだろ?」
ポジンチは頷いた。どうやら合っていたらしい。
異世界の奴隷と聞くと、家畜のように虐げられているイメージがあるが、帝国の奴隷法はなかなかに厳しい。
犯罪奴隷はともかくとして、借金奴隷は仕方のない事情から奴隷に身をやつす人間も少なくないらしく、 通常は制限のある労働者という枠に落とし込まれている。
犯罪奴隷は流石に多少扱いが雑らしいけど。
「奴隷は帝国法に則った制限を課した奴隷紋を刻む必要があるのですが、違法奴隷はその奴隷紋に細工を施し、主人に絶対服従にさせるものです。──犯罪奴隷、借金奴隷を問わず」
「……そいつは酷いな」
「ええ。許してはおけない非道な行為です。……防衛院が総出を挙げて捜査していますが、下っ端の人間しか捕まえられていない現状です」
「足がつかないように徹底してそうだな。それに……防衛院の捜査を掻い潜ってるってんなら……流石に
ポジンチは目を見開いた。
そして顎に手を置いて何かを思案しながら言った。
「……レヴィ様は存外知恵が回るのですね」
「失礼だなおい」
「いえ、すみません。かく言う私もレヴィ様のことはあの風呂場でのことと噂でしか知りませんでしたから」
どうやら俺が上──つまりは
……まあ、これは歴史を学んだお陰なのかもな。あとは前世の知恵も含んでる。
防衛院は要は警察みたいな組織だ。
ただ、多少の秘匿性を含んでいる。
だから、いつどこで捜査をするのかは一般的に伏せられている。それを気取られないくらい有能な集団であることは確かだ。
つまり、防衛院の捜査を掻い潜ってるということは、防衛院内部に内通者がいるか、それを知れるほど権力を持った──貴族が関わってる可能性が非常に高い。
防衛院に入るには徹底した身元調査がされるし、裏切りを許さない契約紋が刻まれるはず。流石に内部に内通者がいることは無いはず。
「ここにきて貴族が関わってる可能性が高くなったから、ポジンチ大臣にお鉢が回ってきたわけか」
「ええ……とはいえ私もさっぱりですがね。黒い噂のある貴族など幾らでもいますから、叩くホコリが当たりかどうか」
「……そうか。俺の方でも調査はしてみるよ」
「ありがとうございます」
期待はしていないのだろう。
だがポジンチは誠心誠意頭を下げた。
……やっぱり悪いやつではないんだよな。
「まったく、違法奴隷などクズのすることですよ、本当に。──ところでなんですがレヴィ様。最近良いものを仕入れましてね」
「ふむ」
……なんか嫌な予感がしてきたな。
ポジンチの笑顔がニチャニチャし始めた。
「ほら、例の風呂の仕掛けがなぜか使えなくなったでしょう? ですからどうしようかとお忍びで市場を回っていた時にこんなものを見つけまして!!」
ポジンチは懐から小さい機械のようなものを取り出した。
「集音の機械具です。これを女湯方面の壁に取り付けるとあら不思議!! あちらの音が鮮明に聞こえるんですよ!! 直で見れないのは残念ですが、こちらもなかなか趣がね……想像余裕というやつです。レヴィ様もいかが──」
やっぱコイツダメだわ!!!
俺がストッパーにならんといつか寝取られる!!!
というわけで2章スタートです。
ちなみにポジンチは違法奴隷に本当に憤ってます。