インタビュアー『なんで戦ってるん?』ヒーロー『金だろ』 インタビュアー『は?』   作:すねかじり

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第2話 『自然発生型と機械式』

 

昼過ぎ。

 

鷺沢蓮は、ようやく目を覚ました。

 

カーテンの隙間から差し込む光が、妙に眩しい。

 

「……眠い」

 

布団から出る気は起きない。

 

スマホを手に取って、画面を確認する。

 

仕事の連絡は――ない。

 

「……今日、仕事入ってないな」

 

それを確認すると、蓮は安心したようにスマホを枕元へ放り投げた。

 

今日は休み。

 

ならば、起きる必要もない。

 

……そう思ったが。

 

「腹減った」

 

結局、蓮は重い身体を起こした。

 

適当に服を着て、財布だけ持ってアパートを出る。

 

向かった先は、近所のコンビニだった。

 

適当に弁当と飲み物を買い、帰ろうとしたところで、入口付近の大型モニターが目に入った。

 

ニュースが流れている。

 

『先日発生した、S級ヒーロー死亡事件について――』

 

蓮は足を止めた。

 

画面には、規制線の張られた現場。

 

その映像の隅に――

 

黒い羽根が一枚、落ちていた。

 

『日本ヒーロー協会は現在も犯人の行方を追っており――』

 

「……まだやってんのか」

 

蓮は興味なさそうに呟くと、そのまま歩き出した。

 

自分には関係ない。

 

そう思っていた。

 

――少なくとも、この時は。

 

 

部屋に戻った蓮は、買ってきた弁当を開けた。

 

テレビでは競馬中継が流れている。

 

蓮はソファに座り、手元の馬券を眺めていた。

 

「……これ、来ると思うんだけどな」

 

レースが始まる。

 

蓮は馬券を握ったまま、画面を見つめる。

 

「……いけ」

 

しかし――

 

結果は、惨敗。

 

「…………」

 

蓮はしばらく馬券を見つめた。

 

「……来ない」

 

そして、小さく呟く。

 

「金返せ」

 

そのときだった。

 

スマホが鳴った。

 

画面を見る。

 

白石。

 

「……もしもし」

 

『鷺沢さん。仕事です』

 

「嫌です」

 

『まだ内容を言ってません』

 

「休みたい」

 

『緊急案件です』

 

蓮は手元の馬券を見た。

 

「……いくら?」

 

『通常より上乗せされます』

 

蓮は立ち上がった。

 

「行きます」

 

『本当に金の話になると早いですね、あなたは』

 

「仕事なんで」

 

『さっきまで休みたいと言っていた人の台詞とは思えませんが』

 

「それはそれ」

 

 

車の後部座席。

 

蓮は窓の外を眺めていた。

 

白石が運転しながら説明する。

 

『今回の相手は自然発生型です』

 

「へえ」

 

『現場では、すでに三人のヒーローが交戦しています』

 

「三人も?」

 

『ブレイズ、バルク、ウィンド。いずれも自然発生型のヒーローです』

 

蓮は目を細めた。

 

自然発生型。

 

生まれつき特殊な能力を持っている人間。

 

炎を操る者。

 

身体を鋼鉄のように硬化させる者。

 

風を操る者。

 

能力は人によってまったく違う。

 

そして――

 

強さにも、大きな差がある。

 

自然発生型だから強い。

 

そんな単純な話ではない。

 

同じ炎を操る能力でも、火をつける程度の人間もいれば、火災そのものを生み出せるほどの出力を持つ人間もいる。

 

能力の性質。

 

出力。

 

精度。

 

応用力。

 

本人の身体能力。

 

使い方。

 

その全部で強さが変わる。

 

つまり――

 

「自然発生型って、ほんと当たり外れがデカいな」

 

『……まあ、そうですね』

 

対して、蓮のようなヒーローは違う。

 

機械式。

 

変身ベルトなどの装置を使い、専用の装甲や武器を身につけて戦う。

 

能力そのものを生まれつき持っているわけではない。

 

装備があって、初めて戦える。

 

そのため世間では――

 

機械式ヒーローは、自然発生型より弱い。

 

そう言われることが多い。

 

当然と言えば当然だ。

 

自然発生型は、能力そのものが自分の身体に備わっている。

 

一方で機械式は、ベルトや装甲が壊れれば終わり。

 

武器が使えなくなれば、戦力は大きく落ちる。

 

「まあ、間違ってるとは言わないけど」

 

蓮は窓に頭を預ける。

 

けれど。

 

戦闘では、それだけが全てじゃない。

 

どんなに強い能力でも、当たらなければ意味がない。

 

どんなに出力が高くても、動きが遅ければ対処できる。

 

距離。

 

地形。

 

タイミング。

 

相手の癖。

 

そして、装備をどこまで使いこなせるか。

 

そこまで含めれば、機械式だって戦える。

 

「結局、戦ってみなきゃ分からないだろ」

 

『珍しくまともなことを言いますね』

 

「俺、いつもまともだけど」

 

『それは初耳です』

 

「……で?」

 

蓮が尋ねる。

 

「相手は何の能力?」

 

白石が少しだけ黙った。

 

『……重力です』

 

「…………」

 

蓮の目が半分閉じる。

 

「よりによって重力かよ」

 

『かなり危険です』

 

「最悪だな」

 

『三人のヒーローも、かなり苦戦しています』

 

「帰りたい」

 

『報酬、上乗せされますよ』

 

「……頑張ります」

 

 

現場に到着すると、そこはすでに戦場になっていた。

 

道路は大きく陥没し、アスファルトには無数の亀裂が走っている。

 

近くの建物では窓ガラスが割れ、看板がいくつも落ちていた。

 

その中心に――

 

一人の男が立っていた。

 

黒いコートを身にまとった、長身で細身の男。

 

筋肉質というわけではない。

 

むしろ、痩せている。

 

顔には深い疲労が刻まれ、目の下には濃い隈が浮かんでいた。

 

無精髭も伸びている。

 

一見すれば、何日もまともに眠っていない人間にしか見えない。

 

だが――

 

その身体から漂う威圧感だけは、異常だった。

 

男がゆっくりと顔を上げる。

 

「……まだ立つか」

 

静かな声だった。

 

その男の前には、三人のヒーローがいた。

 

炎をまとった青年――ブレイズ。

 

鋼鉄のように硬化した身体を持つ大男――バルク。

 

風を操り、高速で動く青年――ウィンド。

 

しかし、その三人とも満身創痍だった。

 

ブレイズは片膝をつき、肩を押さえている。

 

バルクの身体には、無数の亀裂。

 

ウィンドは立っていることすらやっとの状態だった。

 

男が片手を上げる。

 

次の瞬間。

 

ズンッ!!

 

空気そのものが押し潰された。

 

「ぐっ……!」

 

「う、動けねぇ……!」

 

三人の身体が、一斉に地面へ叩きつけられる。

 

ブレイズが歯を食いしばり、炎を放った。

 

巨大な火球が男へ向かって飛ぶ。

 

だが――

 

ぐにゃり。

 

火球の軌道が不自然に曲がった。

 

地面へ叩き落とされ、爆発する。

 

「なっ……!」

 

その隙にウィンドが駆ける。

 

一瞬で男の背後へ回り込む。

 

拳を振り抜く。

 

しかし。

 

ドンッ!!

 

見えない壁にぶつかったように、ウィンドの身体が吹き飛んだ。

 

「がはっ!」

 

バルクが叫ぶ。

 

「ウィンド!」

 

立ち上がり、男へ突っ込む。

 

だが、その足が止まった。

 

「な……!」

 

身体が重い。

 

まるで巨大な山を背負わされているようだった。

 

膝が地面につく。

 

「この……程度……!」

 

それでも立とうとする。

 

しかし――

 

ズンッ!!

 

さらに重力が増した。

 

バルクの身体が完全に地面へ押し伏せられる。

 

「くそっ……!」

 

その光景を見ていた蓮は、小さく息を吐いた。

 

「……聞いてたより、ひどいな」

 

三人ともボロボロだ。

 

蓮が歩み出る。

 

ブレイズが顔を上げた。

 

「おい! 逃げろ!」

 

「こいつはヤバい! 一人じゃ――」

 

蓮は足を止めない。

 

「いや」

 

白いベルトへ手を伸ばす。

 

「仕事なんで」

 

 

蓮はベルトを腰に装着した。

 

白い装置が低く唸る。

 

カチッ。

 

中央の機構が展開する。

 

白い光が足元から走った。

 

脛を覆う装甲。

 

膝。

 

太腿。

 

腰。

 

白い装甲が次々と身体を包んでいく。

 

胸部装甲が形成され、肩を覆う。

 

腕へ白い装甲が伸びる。

 

そして――

 

背中。

 

翼を思わせる装備が左右へ展開した。

 

バサッ。

 

白い羽根が広がる。

 

最後に光が顔を覆った。

 

鳥のくちばしを思わせるバイザーが形成される。

 

そこに立っていたのは――

 

白い翼を持つヒーロー。

 

ホワイトヘロン。

 

「……さて」

 

蓮は軽く首を回した。

 

「さっさと終わらせるか」

 

その瞬間。

 

ズンッ!!

 

重力が一気に跳ね上がった。

 

「……っ」

 

ホワイトヘロンの膝が、わずかに沈む。

 

足元のアスファルトが砕ける。

 

それでも――

 

倒れない。

 

白い翼をゆっくりと広げる。

 

男が静かに告げた。

 

「その程度で、私の重力に抗えると思うか?」

 

ホワイトヘロンは答えなかった。

 

ただ、身体を低くする。

 

片足を後ろへ引く。

 

翼が大きく開く。

 

次の瞬間――

 

地面を蹴った。

 

ドンッ!!

 

白い影が、重力の中を駆け抜ける。

 

「――戦闘開始。」

 




前回から引き続き読んでくだりありがとうございます。
ホワイトヘロンVS重力男は3話でやります。
多分長くなるので⋯
それはそうと自分的には機械式と自然発生型のヒーローの設定は気に入っています。
極論、自然発生型のヒーローが機械式のアイテム使えばいいんじゃねと思うと思います。
なので、設定的には法律で禁止されているということにしています。
なぜ禁止されているのかは今後のストーリーで話したいと思っていますので、お楽しみに。
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