インタビュアー『なんで戦ってるん?』ヒーロー『金だろ』 インタビュアー『は?』 作:すねかじり
「――戦闘開始。」
蓮は地面を蹴った。
次の瞬間――
ズンッ!!
身体が一気に沈んだ。
「……っ」
両足がアスファルトにめり込む。
身体全体に、上から巨大な何かを押しつけられているような感覚。
蓮は歯を食いしばりながら、無理やり身体を起こす。
「……重いな」
目の前で、重力男が右手を上げている。
蓮は腰を落とし、地面を蹴った。
一瞬だけ重力が弱まった。
その隙を逃さない。
蓮は一気に距離を詰める。
右拳。
男は身体を傾けてかわす。
続けて左。
それもかわされた。
「……!」
男の手が蓮へ向く。
「遅い」
ズンッ!!
「――ぐっ!」
蓮の身体が横へ叩き飛ばされる。
空中で身体をひねる。
翼を開く。
地面へ落ちる直前、翼が風を受けた。
蓮はそのまま地面を滑り、片膝をついて止まる。
「……なるほど」
立ち上がる。
その瞬間だった。
「ホワイトヘロン!」
横から炎が飛んできた。
蓮の横を通り抜け、重力男へ向かう。
「――ブレイズか」
巨大な炎が爆発する。
「今だ!」
バルクが炎の中へ突っ込んだ。
全身を硬化させ、拳を振り抜く。
「うおおおおっ!!」
ドゴン!!
重力男が腕で受け止める。
「……!」
バルクの拳が止まった。
「な――」
ズンッ!!
バルクの身体が地面へ叩きつけられた。
「バルク!」
蓮が動く。
だが、その前に風が吹き抜けた。
「こっちは任せろ!」
ウィンドが高速で駆ける。
右。
左。
一瞬で重力男の周囲を回り込む。
「これならどうだ!」
風の刃が連続して飛ぶ。
男が腕を振る。
風の刃が軌道を変え、地面へ突き刺さった。
「……なっ!」
ウィンドの動きが止まる。
重力がかかる。
「くっ……!」
身体が地面へ引っ張られる。
そこへ重力男が手を向けた。
「――終わりだ」
ズンッ!!
ウィンドの身体が地面へ叩きつけられる。
ブレイズが叫ぶ
「ウィンド!」
蓮が重力男へ向かう。
その前に、ブレイズが立ちはだかった。
「奇襲しろ、ホワイトヘロン!」
「……!」
「俺が時間を稼ぐ!」
ブレイズが両手を広げる。
炎が一気に膨れ上がった。
「うおおおおっ!!」
巨大な火柱が重力男を包み込む。
蓮はその横を駆け抜ける。
だが――
炎が歪む。
その中から、影が歩いてくる。
「……!」
重力男だった。
ほとんど傷がない。
ブレイズが息を呑む。
「嘘だろ……」
男が手を向ける。
ズンッ!!
「――がっ!」
ブレイズの身体が地面へ叩きつけられた。
炎が消える。
「ブレイズ⋯」
蓮は足を止めた。
三人とも――倒れている。
「……チッ」
蓮が重力男を見る。
一人で戦うしかない。
蓮は翼を広げた。
「……分が悪いな」
地面を蹴る。
重力を受けながらも、一気に加速する。
男の懐へ入る。
拳。
避けられる。
肘。
受け止められる。
蹴り。
身体を沈められる。
「……!」
蓮は一歩下がった。
重力が襲ってくる。
ズンッ!!
「ぐっ……!」
膝が沈む。
(……強い)
能力そのものが厄介だ。
近づけば潰される。
離れれば動きを制限される。
空中へ逃げても、直接狙われれば落とされる。
「まだやるか」
重力男が言う。
「……仕事だからな」
蓮は立ち上がる。
「逃げるわけにもいかない」
男が手を上げる。
その瞬間――
「――そこまで!」
声が響いた。
空から、眩い光が降りてくる。
蓮が顔を上げる。
光が地面へ落ちる。
一瞬。
視界が白く染まった。
そして――
光の中から、一人のヒーローが現れた。
「ルミナ……!」
ブレイズが倒れたまま呟く。
S級ヒーロー、ルミナ。光を操る能力を持つ自然発生型のヒーロー。
彼女は周囲を見渡し、倒れている三人を確認する。
「みんな、大丈夫?」
「なんとか……」
ブレイズが答える。
ルミナは重力男へ視線を向ける。
「あなたが今回のヴィランね」
「……S級か」
「そうだけど?」
ルミナが構える。
「じゃあ――」
次の瞬間。
ルミナの姿が消えた。
「……!」
重力男が振り返る。
右。
左。
いない。
――ドンッ!!
突然、横から光が突っ込んできた。
ルミナの拳が重力男へ迫る。
男が腕で受け止める。
「……速い」
「まだまだ!」
ルミナが身体をひねる。
蹴り。
男が防ぐ。
さらに拳。
防御。
肘。
回避。
一瞬の間に、何度も攻防が繰り返される。
蓮はその動きを見ていた。
(――明らかに、自分とは地力が違う。さすが自然発生型のS級だな。)
さっきまでの戦いとは、速度も出力も桁違いだった。
「……!」
ルミナが吹き飛ばされる。
空中で身体を回転させ、着地。
「ふぅ……」
ルミナが息を整える。
「やっぱり、強いね」
「当然だ」
重力男が手を広げる。
ズンッ!!
地面全体が沈んだ。
ルミナの身体もわずかに沈む。
「……!」
「地面そのものを対象にしたか」
蓮が呟く。
ルミナが振り返る。
「何か分かった?」
「たぶん」
蓮は重力男の手を見る。
「こいつ、一度に直接狙えるのは一人だ」
「……!」
「さっきまで地面に重力をかけてた。でも俺を直接狙ったときは、その効果が消えた」
ルミナが理解する。
「つまり……」
「地面を狙ってる間は、空中にいる相手には直接かけられない」
「逆に、空中の私を狙えば?」
「地面への効果が消える」
ルミナが笑った。
「なるほど」
蓮は翼を広げる。
「一回だけ、付き合ってくれ」
「もちろん」
「じゃあ――」
蓮が地面を蹴った。
ルミナが光になる。
同時に、重力男が周囲を見渡した。
「……また消えたか」
男が両手を広げる。
ズンッ!!
地面全体に重力がかかる。
アスファルトがひび割れる。
瓦礫が地面へ叩きつけられる。
「どこだ……!」
その瞬間。
上空。
蓮がいた。
翼を大きく広げている。
さらに高度を上げる。
重力男が顔を上げた。
「……!」
蓮は翼を畳む。
身体を一直線にする。
「――ヘロン・ダイブ」
急降下。
白い影が地面へ向かって落ちてくる。
「また貴様か!」
重力男が蓮へ手を向ける。
「ならば――」
ズンッ!!
蓮の身体が一気に引っ張られる。
「……っ!」
落下速度がさらに上がる。
地面へ向かって一直線。
重力男が蓮を見上げる。
「落ちろ!」
その瞬間。
地面にかかっていた重力が消えた。
――蓮を直接狙ったからだ。
「……!」
重力男が気づく。
だが――
遅い。
遠くに、一筋の光が見えた。
「――ルミナ・ブレイク!!」
ルミナが地面を蹴る。
一瞬で距離を詰める。
光のような速度。
いや――
光そのものに近い。
「なっ――!」
重力男が振り向く。
ルミナはすでに目の前。
拳を引く。
全身の光が拳へ集中する。
「――はああああっ!!」
ドゴォォォン!!
拳が、重力男の腹部へ突き刺さった。
「――ッ!!」
重力男の身体がくの字に折れる。
そのまま、遥か後方へ吹き飛んだ。
ズザァァァッ!!
地面を削りながら、重力男の身体が止まる。
「……終わった」
ルミナが拳を下ろす。
その直後――
ドォンッ!!
上空から、ホワイトヘロンが地面へ落下した。
「……!」
大量の砂埃が舞い上がる。
ルミナが目を細める。
しばらくして――
白い影が立ち上がった。
蓮だった。
蓮は身体についた砂埃を軽く払う。
白いスーツには、砂が少し付着しているだけだった。
「……汚れたな」
ルミナが目を丸くする。
「……いや、そこ!?」
「洗うの面倒だな」
「普通もっと心配するところあるでしょ!」
ルミナは呆れながら蓮を見る。
そして、少しだけ真剣な表情になった。
「……本当に、あんた何者なの?」
蓮はルミナを見る。
「ヒーロー」
「…………」
「そういう意味じゃないんだけど」
***
――その日の夜。
場所は変わって、どこかの食卓。
テレビでは、ニュース番組が流れていた。
『続いては、先日発生したS級ヒーロー死亡事件についてです』
画面には、規制線の張られた現場が映し出される。
『現場からは、今回も黒い羽根のような物体が発見されており――』
ニュースキャスターが淡々と説明を続ける。
『警察では、これまでの事件との関連性を――』
――ピッ。
チャンネルが変わった。
『続いて、本日発生したヴィラン事件についてです』
画面が切り替わる。
そこには、破壊された道路と、集まる警察車両。
『本日、市街地で発生したヴィランによる襲撃事件で、現場に駆けつけたヒーローたちがヴィランを撃破しました』
映像が切り替わる。
そこに映っていたのは――
光をまとった少女。
そして、白い翼を持つヒーロー。
『今回、事件の収束に大きく貢献したのが、S級ヒーロー「ルミナ」です』
ルミナの戦闘映像が流れる。
『また、ルミナと共闘した機械式ヒーロー「ホワイトヘロン」の活躍も――』
食卓では、ニュースを見ながら箸を動かす人影。
『なお、今回のヴィラン撃破による被害は――』
テレビの中で、ニュースが続いていた。
読んでいただきありがとうございます。
今回登場したルミナはS級の中でも新人です。
そのため経験が足らず、自分の力を過信している節があります。
なんでここで話すか?それは今後も出てくるか分からないからです。