インタビュアー『なんで戦ってるん?』ヒーロー『金だろ』 インタビュアー『は?』   作:すねかじり

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第6話 「追いつけない」

 

――高速移動能力を持つヴィランを追う。

 

今回の任務は、それだけの簡単な仕事だったはずだった。

 

ヴィラン自身の戦闘能力も、それほど高くない。

 

ただ、問題が一つあった。

 

とにかく、速い。

 

「待ちなさい!」

 

ルミナは光をまとい、一気に加速する。

 

目の前を走るヴィランとの距離が縮まっていく。

 

あと十メートル。

 

あと五メートル。

 

「もう少し……!」

 

手を伸ばせば届きそうになった、その瞬間。

 

ヴィランが突然、横の路地へ飛び込んだ。

 

「えっ!?」

 

ルミナも急停止する。

 

靴底を地面に擦りつけながら、路地の入口で止まった。

 

左右を見渡す。

 

「……あいつ、どこ行ったの?」

 

誰もいない。

 

「嘘でしょ……」

 

通信機から声が入る。

 

『ルミナ、現在位置を確認してください』

 

「分かってる!」

 

『ウィンドが上空から捜索中です』

 

「分かった。私も探す!」

 

ルミナは再び走り出した。

 

――簡単な仕事のはずだった。

 

ヴィランを見つけて、追いかけて、捕まえる。

 

ただそれだけ。

 

なのに。

 

「……なんで捕まえられないのよ!」

 

*

 

数分後。

 

ビルの屋上。

 

風が吹き抜ける。

 

そこに、一人のヒーローが立っていた。

 

ウィンド。

 

風を操る自然発生型のヒーローで、空中を飛びながら周囲を広く捜索している。

 

「……」

 

ウィンドは街を見下ろす。

 

視界に入る道路。

 

建物の隙間。

 

交差点。

 

その一つ一つを確認していく。

 

『……見つけました!』

 

通信が入る。

 

「どこですか!?」

 

『北東方向です! 大通りを横切りました!』

 

「分かりました!」

 

ウィンドが屋上から飛び降りる。

 

風をまとい、一気に加速する。

 

*

 

「いた!」

 

ルミナがヴィランの姿を捉えた。

 

再び光をまとい、距離を詰める。

 

しかし――

 

「また!?」

 

ヴィランが急激に方向を変える。

 

右。

 

左。

 

さらに路地へ。

 

「ちょっと、待って!」

 

ルミナも追う。

 

だが、角を曲がった先には誰もいなかった。

 

「……また消えた」

 

息を整えながら、周囲を見る。

 

「もう……どこ行ったのよ」

 

そのとき。

 

――ゴォンッ!!

 

背後から、激しい駆動音が響いた。

 

「どけ!」

 

黄色い装甲をまとったヒーローが、大通りを駆け抜けていく。

 

――イエローチーター。

 

チーターをモチーフにした機械式ヒーロー。

 

脚部には大型ブースターが搭載されており、強力な推進力によって一気に加速する、速度特化型のヒーローだ。

 

「俺が追う!」

 

脚部のブースターが唸りを上げる。

 

――ゴォッ!!

 

イエローチーターが、弾丸のように飛び出した。

 

「ちょっと、単独で大丈夫!?」

 

ルミナが叫ぶ。

 

「問題ない!」

 

イエローチーターはさらに加速した。

 

あっという間に、ヴィランとの距離が縮まっていく。

 

「捕まえた!」

 

手を伸ばす。

 

しかし――

 

ヴィランが急停止。

 

そのまま横へ飛ぶ。

 

「なに!?」

 

イエローチーターも慌てて方向を変える。

 

だが、わずかに遅れた。

 

ヴィランはその隙に、建物の間へ消えていった。

 

「……くっ!」

 

イエローチーターは急停止する。

 

*

 

数分後。

 

『……見失った』

 

通信機から、イエローチーターの声が聞こえた。

 

「えぇ……」

 

ルミナは頭を抱えた。

 

「もう、なんなのよ、あいつ……」

 

ウィンドも上空から戻ってくる。

 

「僕も見失いました」

 

「ウィンドまで……?」

 

ルミナは空を見上げる。

 

風を操るウィンド。

 

光を操る自分。

 

そして、速度特化の機械式ヒーロー、イエローチーター。

 

それでも捕まえられない。

 

「……速いだけなのに」

 

ルミナが呟く。

 

「なんでこんなに捕まえられないのよ……」

 

そのときだった。

 

「――追いかけるからだろ」

 

「え?」

 

聞き覚えのある声。

 

ルミナが振り返る。

 

そこには――

 

白い翼を持ったヒーローが立っていた。

 

「……金の人?」

 

ホワイトヘロン。

 

先日の事件で一緒に戦った男だった。

 

「誰が金の人だ」

 

「だって『金だろ』って……」

 

「まだ言われてんのか、それ」

 

「有名だよ?」

 

「嬉しくないな」

 

蓮はそう言って、道路の先を見た。

 

「……あいつなら、もうすぐ来る」

 

「え?」

 

「こっちに」

 

「なんで?」

 

蓮は周囲を見渡す。

 

交差点。

 

建物。

 

道路。

 

そして、いくつかの細い路地。

 

「逃げるなら、あそこしかない」

 

「……分かるの?」

 

「道が限られてるからな」

 

ルミナは首を傾げる。

 

「でも、あいつすごい速さだよ?」

 

「だから追わない」

 

蓮は翼を広げた。

 

「先に行く」

 

「え?」

 

次の瞬間。

 

白い翼が大きく開く。

 

蓮の身体が浮き上がった。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

ルミナが声を上げる。

 

ホワイトヘロンは、そのまま建物の上を飛び越えていった。

 

「……あの人、何考えてるの?」

 

ルミナは呆れながらも、その後を追った。

 

*

 

その頃。

 

ヴィランは走っていた。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

後ろを振り返る。

 

誰もいない。

 

「……撒いたか?」

 

そう呟いて、少しだけ速度を落とす。

 

そして、次の角を曲がった。

 

――その先に。

 

白い翼があった。

 

「……よう」

 

「なっ!?」

 

ホワイトヘロンが、道路の真ん中に立っていた。

 

ヴィランは慌てて方向を変える。

 

しかし――

 

その先にはウィンド。

 

「逃がしません!」

 

風が巻き起こる。

 

ヴィランが振り返る。

 

そこにはイエローチーター。

 

「今度は俺が止めるぞ!」

 

「くそっ……!」

 

さらに上空から光が降りてくる。

 

ルミナだった。

 

「やっと見つけた!」

 

完全に包囲された。

 

ヴィランは立ち止まった。

 

「……なんでだ」

 

息を切らしながら、ホワイトヘロンを見る。

 

「俺は誰にも追いつかれなかった」

 

「そうだな」

 

「なのに、なんでお前がここにいる!?」

 

蓮は少しだけ首を傾げた。

 

「別に追いついてない」

 

「……は?」

 

「先にいただけだ」

 

「…………」

 

ルミナは思わず蓮を見る。

 

「……先回りしたの?」

 

「そう」

 

「私たちが追いかけてる間に?」

 

「そう」

 

「……」

 

ルミナはしばらく黙った。

 

そして、

 

「なんか……ずるくない?」

 

「効率的だろ」

 

「そういう問題じゃない!」

 

ヴィランが隙を見て逃げようとする。

 

だが――

 

ウィンドが風で進路を塞ぐ。

 

「逃がしません!」

 

イエローチーターもブースターを起動する。

 

「今度は俺が止める!」

 

ヴィランが方向を変える。

 

その先にはルミナ。

 

「はい、終わり」

 

ヴィランは足を止めた。

 

「……くそ」

 

蓮は小さく息を吐く。

 

「終わったな」

 

ルミナが振り返る。

 

「ホワイトヘロン」

 

「ん?」

 

「……あんたって、速いわけじゃないのに、なんでこんなに厄介なの?」

 

蓮は少し考えた。

 

「……知らない」

 

「知らないの!?」

 

「追いかけるより、待ってた方が楽だから」

 

「……」

 

ルミナは頭を抱えた。

 

「ほんっと、変なやつ……」

 

蓮はヴィランを見る。

 

「で、これ終わり?」

 

『はい。ヴィランは確保しました』

 

通信機から白石の声が返ってくる。

 

「じゃあ帰る」

 

「ちょっと待って! まだ事情聴取とかが――」

 

蓮は聞こえないふりをして歩き出した。

 

「……面倒だな」

 

その背中を見ながら、ルミナは小さく呟いた。

 

「……やっぱり、あいつ何者なの?」




読んでいただきありがとうございます。
今回はルミナ視点の回です。やったねルミナ出番あったよ。
あと、ホワイトヘロン以外の機械式ヒーローが初登場しました。イエローチーター安直だけど嫌いじゃないよ。あと極振りってロマンがあっていいよね。
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