インタビュアー『なんで戦ってるん?』ヒーロー『金だろ』 インタビュアー『は?』 作:すねかじり
昼過ぎ。
鷺沢蓮は、自宅のソファで寝転がっていた。
テレビでは競馬中継が流れている。
テーブルの上には、コンビニで買ってきた弁当。
そして、その隣には馬券。
「……今日は来る」
蓮は馬券を見ながら呟いた。
根拠はない。
いつものことである。
そのとき。
スマホが鳴った。
画面を見る。
白石。
「…………」
蓮はスマホを伏せた。
鳴り続ける。
「…………」
まだ鳴っている。
仕方なく手を伸ばした。
「……もしもし」
『鷺沢さん。仕事です』
「嫌です」
『500万円です』
「行きます」
『…………』
「何ですか」
『……本当に、金の話になると早いですね』
「500万ですよ?」
『分かっています』
蓮はソファから起き上がった。
「で、何の仕事?」
『金融会社の本社ビルがヴィランに占拠されました』
「……へえ」
『社員数名と、会社の代表が人質になっています』
「代表?」
『はい』
蓮は少し考える。
「……それで500万?」
『人質になっている方が、かなり重要な人物なんです』
「なるほど」
『ヴィラン自体の危険度は、そこまで高くありません』
「じゃあ楽な仕事?」
『そう簡単にはいきません』
白石の声が少し低くなる。
『人質の安全を最優先。建物内には複数のヴィランがいます。さらに、相手は人質を盾にしている可能性があります』
「……面倒だな」
『500万円です』
「行きます」
『本当に分かりやすいですね』
---
現場に到着すると、周囲はすでに警察によって封鎖されていた。
高層ビル。
ガラス張りの外壁には、いくつかの亀裂が入っている。
入口には警察車両。
その奥には、日本ヒーロー協会のスタッフも集まっていた。
蓮は車から降りる。
白石から通信が入る。
『今回の依頼について、簡単に説明します』
「聞いてる」
『建物内には確認できているだけで、ヴィランが六名』
「六人」
『はい。全員、そこまで強くありません』
「なら、すぐ終わりそうだな」
『ただし――』
白石が続ける。
『人質のいる場所が分かっていません』
蓮がビルを見上げる。
「……それは面倒だ」
『お願いします』
「500万のために?」
『……はい』
「じゃあ、やるか」
蓮は歩き出した。
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ビル内部。
エントランスには誰もいない。
静かだった。
あまりにも静かだ。
蓮は足を止める。
「…………」
周囲を見る。
受付。
エレベーター。
階段。
監視カメラ。
そして――
床に転がっている薬莢。
蓮はしゃがみ込み、それを拾った。
「銃を使ってる奴がいる」
『分かりますか?』
「薬莢が新しい」
『……なるほど』
蓮は立ち上がった。
「でも、銃撃戦をやった割には壊れ方が少ない」
『どういうことです?』
「ここで撃ち合ったんじゃない」
蓮はエレベーターを見る。
「脅すために撃っただけだろ」
『……』
「なら、社員を逃がしてる可能性もある」
蓮は階段へ向かった。
「上に行く」
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三階。
廊下の角を曲がった瞬間。
「止まれ!」
男が飛び出してきた。
手にはナイフ。
蓮は止まらない。
男が踏み込んでくる。
右手が振り上がった。
蓮は半歩だけ左へずれる。
ナイフが頬の横を通り過ぎる。
そのまま男の腕を掴む。
「っ――!」
蓮は腕を引きながら、男の懐へ入った。
肩をぶつける。
男の身体が浮く。
そのまま床へ叩きつけた。
「一人」
「な、何だこいつ……!」
奥から別の男が現れた。
拳銃を構える。
「動くな!」
蓮は止まった。
銃口を見る。
距離は十メートルほど。
男が引き金に指をかける。
その瞬間。
蓮が横へ走った。
銃声。
弾丸が壁を削る。
蓮は壁に手をつき、身体を反転させた。
二発目。
今度は天井へ飛び上がる。
弾丸が足元を抜ける。
そのまま壁を蹴る。
一気に距離を詰める。
男が銃を向け直す。
遅い。
蓮の拳が手首を打った。
銃が落ちる。
続けて腹部へ膝。
男が身体を折る。
蓮はその肩を掴み、床へ倒した。
「二人」
『……早いですね』
「時間かけると疲れるから」
『理由があなたらしいです』
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五階。
蓮は廊下を進む。
すると、遠くから声が聞こえた。
「社長はどこだ!」
「知らない!」
「嘘つくな!」
蓮が足を止める。
「……見つけた」
『人質ですか?』
「たぶん」
声の方向へ向かう。
そこには三人のヴィランと、数人の社員がいた。
だが――
社長の姿はない。
蓮は眉をひそめる。
「……いないな」
『どういうことですか?』
「人質を探してる」
『ヴィラン自身が?』
「そう」
蓮は廊下の奥を見る。
「つまり、あいつらも社長がどこにいるか知らない」
『……では、誰が?』
蓮は周囲を見渡す。
そして。
壁に設置された非常用エレベーターを見る。
「社長本人だろ」
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一方。
ビルの最上階。
薄暗い部屋の中。
一人の男が、机の下に隠れていた。
高級そうなスーツ。
額には汗。
手にはスマートフォン。
画面には警察への通報画面が表示されている。
だが、指は震えていた。
そのとき。
「――そこにいるんだろ」
男の声。
社長の身体が固まる。
ゆっくりと顔を上げる。
部屋の入口に、一人のヴィランが立っていた。
「……見つけた」
「ひっ……!」
ヴィランが近づく。
その瞬間。
窓が砕けた。
白い影が飛び込んでくる。
ヴィランが振り返る。
白い翼。
白い装甲。
鳥を思わせるマスク。
「ホワイトヘロン……!」
蓮は着地すると、社長を見る。
「怪我は?」
「な、ない……」
「じゃあ動ける?」
「え?」
「逃げるよ」
「しかし――」
「早く」
蓮が振り返る。
ヴィランが殴りかかってきた。
蓮は身体を沈める。
拳が頭上を通過。
その腕を掴み、身体を回転させる。
ヴィランの身体が宙へ浮く。
そのまま窓際まで吹き飛ばす。
「ぐあっ!」
蓮は追撃しない。
「社長」
「は、はい!」
「走って」
「分かった!」
社長が部屋から飛び出す。
蓮も続く。
背後から別のヴィランが現れる。
「逃がすか!」
蓮は振り返る。
翼が開く。
白い羽根が舞う。
「フェザー・スライサー」
放たれた羽根が弧を描く。
ヴィランの足元へ回り込み、武器を弾き飛ばした。
そのまま蓮が踏み込む。
一撃。
ヴィランが倒れる。
「……これで終わりか」
『鷺沢さん』
白石から通信が入る。
『残りのヴィランも確保されたそうです』
「そう」
『人質も全員無事です』
「じゃあ帰る」
『待ってください』
「何?」
『報酬、500万円ですからね』
蓮が止まる。
「……忘れてた」
『忘れないでください』
「じゃあ、帰らない」
『はい?』
「500万円を確認してから帰る」
『本当にあなたは……』
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事件から数時間後。
蓮は自宅に戻っていた。
ソファに座る。
テーブルの上には、今日の報酬の明細。
500万円。
蓮はしばらく眺めていた。
「…………」
そして。
その隣に馬券を置く。
「……これも当たればな」
テレビでは競馬中継が流れている。
レースが始まる。
蓮は馬券を握った。
「……いけ」
馬が走る。
「……いけ」
ゴール直前。
「……!」
結果は――
外れ。
「…………」
蓮は馬券を見つめる。
そして。
「……金返せ」
テレビの中では、何事もなかったかのように次のレースが始まっていた。
読んでいただきありがとうございます。
蓮くんいっぱい稼げて良かったね。でも競馬は当てさせないよ。
次回は掲示板形式です。機械式ヒーローとホワイトヘロンについての深掘りをすると思います。どんどん深掘りするぞ〜。
ちゃんと深掘りした設定を活かせるよう頑張りたいと思います。