会長は椅子に座り、天井を見ながら呟く。
「生徒名簿見れば、戦車道履修者の数が合わないことなんてさ」
早朝。まだ教師ですら学校へ来てない時間帯。
しかし戦車倉庫の方では、なにやら人影が動いている。
チハだ。
砲弾箱を幾つも抱えながら、各車両を行ったり来たりしている。
それが終わると、今度は履帯を運び始める。チハはその見た目からは想像できないほど力持ちなのだ。
そして運び終わると洗桿に手を掛けた。
勿論自分のものではない。他の車両のものである。
チハは考えた。戦車である自分には睡眠や休息が必要無い。
それを有効活用するために、ちょっとした手伝いとして仕事を勝手にやっているのだ。
脳内CPUを全部、仕事に回すということである。
38(t)を除いて砲身を掃除していくチハ。
ちゃんと説明書のようなものを見ているので、心配はいらない。
「……終わっちゃった」
立ち尽くすチハ。
だが突然向きを変えると、校舎へ走って行った。
「おっと」
校舎へ入ろうとして、少しチハは止まった。
陣羽織からタオルのような布を取り出すと、グルグルと自らの足に巻く。
床を傷つけないためである。
「おはようございます!」
チハは職員室を探し出すと、元気よく挨拶を発した。
「え?え、ああ、おはよう」
中にいた1人の先生が困惑している。
無理も無い。今は何と7時である。本来この時間帯に生徒は来ないはずなのだから仕方ない。
「すみません、大会の決勝のために朝早くから準備してたら終わってしまいまして。
何か手伝えることはありませんか?」
「あっ、いや……それは無理だよ。
だってほら、気持ちはうれしいけど緊急時の避難とかそういった奴とかで色々とさ」
チハの無茶振りにしどろもどろで答える先生。
気弱なのだろうか。
「そうですか。失礼します!」
「あっ、ちょっと!」
呼び止めること叶わず、チハは職員室から退出して行った。
ーーーー
さて、港に入った学園艦。
一番最初に降りたのはチハである。
「お嬢ちゃん、これそっち運んでもらえっか?」
「勿論です!」
上から渡された荷物を地面に下ろすチハ。
今は無理やり頼んで手伝わせてもらっている搬入作業を行っている。
チハの怪力に、かなり作業員のおっちゃんらは驚いていた。戦車道やっていてもかなり驚かれるのだから、かなのものだろう。
「いやぁ、助かったよ。
ありがとね」
「いえいえ!」
トラックを見送るチハ。
途端にやることを失ったので、その場で棒立ちになる。
だが、直ぐに話しかけられることになった。
「ねね、ちょっと良い?」
「はいなんでしょう?」
相手はなんだか元気そうな少女である。
何処かの生徒なのだろうか?制服のような物を着用している。
「ちょっと今さ、あっちの建物の清掃ボランティアを募集してるんだ。
良かったら一緒に貢献しない?」
新しい仕事の時間である。
「勿論ご一緒させて頂きます!」
チハは大きく目を輝かせ、付いていくことにした。
試合は明日なのだ。何の問題もない。
『反動って言葉を知らないのかな』
『戦車のくせして』
『まぁ聞こえてないんだろうけど』
『どうなろうか知ったこちゃないよ。お姉ちゃんのことのんか』